シルバー・ザ・ヘッジホッグは200年後の未来の世界に住む超能力者である。
毛先がハリネズミのように尖った白髪に、黒いタンクトップの上に緑色のラインが入った白のジャケットとズボンを身に着け、白いブーツを履き、金色の腕輪と白いグローブを身に着けている。ハリネズミの耳と尻尾を生やし、金色の瞳を持っている。
そんな彼は今、何故か彼で言う所の200年前の世界の白亜の港町、アポトスに居た。
そう、何故か。
「……ん?」
……おかしい。自分はメフィレスとイブリースと共に居間でテレビを見ていたはずだ。なのになぜ、ここに居るのだろうか?
ちなみにメフィレスとイブリースというのは、シルバーの家にいつの間にか上がり込んできていた同居人である。なんやかんやでこれまで一緒に暮らしてきていた。閑話休題。
「……これ、帰れるかなぁ……」
理由がどうあれ、過去の世界に来てしまったシルバーが未来の世界に帰るには、カオスエメラルドとカオスコントロールが使える者……ソニックやアンジェラ、シャドウなどの協力が必要だ。しかし、カオスエメラルドはまだいいとして、ソニックやアンジェラは自由に動き回っているし、シャドウは仕事でこれまた行方が分からないことが多い。それに、シルバーは彼らの家がどこにあるかを知らなかった。
「……ま、何とかなるか」
シルバーは持ち前の前向きな性格で、考えても仕方ないと、ひとまずはこの過去の世界の観光地を楽しむことにした。
結論から言ってしまえば、シルバーの心配は杞憂だった。
「シルバーじゃねぇか! 観光か?」
「ひょっとして迷子?」
「……当たらずとも遠からず?」
「何故疑問形なのだ……」
シルバーに話しかけているのは、時を同じくしてアポトスを訪れていたカオティクス探偵事務所の面々。
緑色の髪を持ち、黄緑色のインナーと濃い緑色の上着、黒いズボンにブーツ、手首に黒いリストバンド、手に白い手袋、頭の上にヘッドホン、そして金色のチェーンネックレスを身に着け、ワニの尻尾と茶色い瞳を持つ大柄な男、ベクター・ザ・クロコダイル、
紫色の髪を持ち、紫色の和風な袴に身を包み、黒いブーツと手首の周りが黒いパーツに覆われた白い手袋を身に着け、額の部分に金色の角のようなものを生やし、金色の瞳とカメレオンの尻尾を持つエスピオ・ザ・カメレオン、
そして、黒い髪を持ち、黒とオレンジのボーダー柄のインナーとオレンジ色のパーカーにブーツ、頭の上にはオレンジ色のゴーグルを、手には白い手袋を身に着け、頭からミツバチの触覚を、背中からミツバチの羽を生やし、オレンジ色の瞳を持つチャーミー・ビーの三人だ。
なんでもこの三人は、探偵の依頼帰りに近くまで来たという理由でアポトスを観光していたらしい。
シルバーは、ここで知り合いと会えるとは思っておらずに驚愕して目をぱちくりさせている。先の当たらずとも遠からず発言は、混乱している中でベクター達に話しかけられてびっくりして、咄嗟に出てきた言葉である。
「……いや、オレ、ひょっとしたら迷子かもしれない」
「マジで迷子だったのかよ」
「いや、迷子というか、なんというか……」
シルバーは自身の身に起こったことをベクター達に説明した。
居間でテレビを見ていたら、いつの間にかこの時代に来ていたこと、帰るためにはソニック達の協力が必要なことを。
「……だから、ソニック達に会いに行きたいんだが、オレあいつらの家の場所知らないんだよな……」
シルバーが困ったように言うと、ベクターはシルバーの肩に右手を乗せ、左手でサムズアップをして言った。
「そのお悩み、このカオティクス探偵事務所所長のベクター様に任せな!」
自信満々なベクター。まぁ、その実態は……
「……ソニック達の家の場所を知っているだけでは?」
「エスピオ、しっ!」
その点を指摘しようとしたエスピオはチャーミーにポカっと頭を叩かれた。ちなみにしっかりとシルバーに聞かれている。
少々不安になってくるが、まぁ、今は彼らを頼るしかあるまい。シルバーは苦笑いしながら言う。
「じゃあ、よろしく頼むよ……」
「おう! ……と、その前に」
ベクターは懐から何かを取り出す。それは、何かの紙であった。シルバーは不思議そうに首を傾げる。そんなシルバーを横目に、ベクターは宣言した。
「スペシャルチョコチップサンデー食べに行こうぜ!」
「…………はい?」
ベクターの言うスペシャルチョコチップサンデーとは、アポトス名物のスイーツである。アイスとチョコの甘みとさくらんぼの酸味が絶妙だと評判だ。
ベクターは先の依頼の依頼人から、スペシャルチョコチップサンデーのクーポンを貰っていた。先程ベクターが見せた紙は、そのクーポンである。
シルバーは受け取ったスペシャルチョコチップサンデーを片手に目をキラキラさせながら、本当に自分が貰っていいのかとベクターに問いた。
「いやだって、ベクター達が依頼の報酬で貰ったものだろ?」
「いいから、遠慮するなって! クーポンは余ってたし、期限も短かったからな!」
「ひょっとしてシルバー、甘いの苦手?」
「いや、そういうわけじゃないけど」
「いいから、いいから! 食ってみろって!」
シルバーは遠慮がちにサンデーにかじりつく。瞬間、シルバーの動きが止まった。
「ん? おーい、シルバー?」
ベクターがシルバーの眼の前で手を振ってみたりしても、シルバーは動かない。エスピオに肩を叩かれて、ようやくシルバーは動き出した。
「はっ……ごめん、ベクター。あまりの美味しさに、つい動きが止まった……」
「そうか……普段、どんな食生活してるんだ、お前」
「……普段は、メフィレスが……」
シルバーの脳裏を過ぎったのは、メフィレスが料理するとか言って勝手に台所に立ち、美味しくもなく不味くもない料理を量産する光景。しかし、時折本当に美味しいこともあれば、本当に不味いこともあり、特に不味い時は、食べるときに毎回三途の川が見え……
「……あばばばばばばばば」
「シルバーが壊れた!?」
「ちょ、しっかり、シルバー!」
ヤバいことを思い出してしまったのか、シルバーが思いっきりバグってしまった。
このあと、シルバーは目を覚まし、ことの一部始終をベクター達に説明し、それが後にアンジェラ達に伝わって、メフィレスはしばかれることになる。
また、その時笑い話にもできない事態になっているということも、シルバーに知らされることになるのだが、このときはまだ、知る由もない。