音速の妹のヒーローアカデミア   作:えきねこ

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GWってスゲェ!連日投稿できる!
というわけで、新章です。


第七章 Undefeatable
女子会


 洸汰と話をしたあと、アンジェラはクラスメイトの女子陣と共に風呂に入った。

 

 ちなみに昨日覗き未遂なぞやらかした峰田は相澤先生とアンジェラ主導の元持ち物検査を受け、明らかに合宿に必要のない、というか、犯罪を企んでいそうな小型ドリルなどの物品はあえなく没収……いや、恐ろしい笑みを浮かべたアンジェラの手で粉々に破壊された。ちなみに勇敢にも文句を言おうとした峰田は、首元に輝きの刃(シェーヴァ)をあてがわれ、アンジェラに無言の圧力をかけられて恐怖で気絶した。

 

 あの時のフーディルハインは目がマジだったと、後にその現場に居合わせていた瀬呂は語る。

 

 また、両クラスの女子の入浴時間の間、峰田は相澤先生の監視の元、ひたすらに反省文を書かされていた。峰田は唸っていたが、果てしなく自業自得なのでクラスの誰も峰田を庇わなかった。女性陣は相澤先生お疲れ様です、と労っていた。

 

 この中で一番割りを食っているのは、明らかに相澤先生である。

 

 

 

 

 

 

 そして現在。

 

 A組の女子部屋では、女子会が開催されていた。

 

 峰田の蛮行を事前に止めてくれたお礼として、B組の拳藤、小大、塩崎、そして柳が持ってきたお菓子とA組女子がそれぞれで持って来ていたお菓子を布団が敷かれた部屋の真ん中に広げ、自動販売機で買ってきたジュースを片手に乾杯し、気分はいっそう盛り上がる。アンジェラは取り敢えず楽しけりゃいいやというスタンスだ。

 

 そして盛り上がった女子が集まってする話といえば。

 

「女子会といえば……恋バナでしょうがー!」

 

 テンションの上がった芦戸の言葉に、周囲はテンションを上げたり消極的だったりと様々な反応を見せた。ちなみに、就寝前ということでポニーテールのリボンを解いていたアンジェラは、恋バナにはかなり消極的である。

 

 ……しかし、いざ恋バナをしてみようと思っても、A組女子にもB組の四人にも、付き合っている人が居るわけでもなければ片思いの相手が居るわけでもない。なので、話が思ったように出てこない。ヒーロー科は月曜から土曜までギッチリ授業が入っているので、当たり前といえば当たり前なのだが。

 

 恋バナの発案者の芦戸も、別に今恋がしたいわけではない。ただ、キュンキュンしたいだけなのだ。心臓が切なく縮こまるようなあの感覚を、少しでも味わいたいだけなのだ。

 

 妄想でどうにかしようにも最後には恋バナでもない別の話に帰結してしまい、このあと補習が待っている芦戸はキュンキュン不足で唸る。

 

「……あ、そうだ。アンジェラちゃんはどうかな? 女子の中でも男子と仲いい方だし、すっごい美人だし!」

「そうだ、まだフーディルハインが居た!」

 

 葉隠と芦戸の言葉に、今の今まで煎餅を貪りながらひたすらに無反応を貫いていたアンジェラに全員の視線が向く。当のアンジェラは、煎餅を口の中でバリボリと砕き、飲み込んでいた。

 

「というか、さっきからフーディルハイン何一つ喋ってないし。こりゃ、何かネタがあるな?」

「ケロ、まだアンジェラちゃんに好きな人が居ると決まったわけじゃないわよ」

「そうです、あまり迫ったりしてはいけませんよ」

「でもフーディルハインの好きな人とかの話は気にならない?」

 

 拳藤の問いかけに、蛙吹と八百万は思わず頷く。芦戸のように熱狂的というのも珍しいが、やはり蛙吹や八百万も気にはなるのだろう。そういう類の話も、アンジェラの話も。

 

「で、フーディルハイン、そこんとこどうなの!?」

 

 先の八百万の話をもう忘れたのか、芦戸がグイっと物理的な意味でアンジェラに迫る。

 

 アンジェラは、一度手元の缶コーラを飲み干した。

 

「…………っつっても、オレもそんなネタ持ってるわけじゃないんだけど」

「ウッソだぁ! クラス一の美少女なのに!」

「まぁ、フーディルハインってクラスの男子と仲いいって言っても、何か男同士の会話をしてる感じで、そこに恋愛感情とかは無さそうだよね」

「うんうん、口調だけじゃなくて男子の「熱血」とかの考え方もちゃんと理解してる感じがする」

「なんか、こうして話してても女友達じゃなくて男友達と話してる、って感じがするよね」

 

 クラスメイトの男子とアンジェラの会話を思い出して、麗日達はうんうんと頷く。

 

 アンジェラはその生い立ちや性格、口調がゆえに、男子と割と波長が合いやすいのか、他の女子陣であれば共感しにくいような話題……例えば、切島の熱血話や常闇の厨ニ的な話などのような話題にも、一定以上の共感を見せる。お昼休みに男子の会話にアンジェラが混ざっているのはよくあることだ。最初はクラスの男子陣は戸惑っていたようだが、今となっては慣れたものである。

 

 まあ流石に、アンジェラは男子の下世話な話に混ざったりはしないし、「峰田を除く」男子陣もアンジェラとの会話の中で下世話な話をしたりはしないが。

 

 ちなみに、一度セクハラじみた下世話な、それも女子にしてはいけない類の話を峰田がアンジェラにしかけたときは、峰田は世にも恐ろしいものを見て、しばらくそれが夢に出たとかなんとか。

 

 ただし、アンジェラは峰田とも「セクハラや性犯罪が絡みさえしなければ」普通に会話していることも多い。前後の席ということもあり、峰田が純粋に授業で分からなかった所をアンジェラに聞く、というのもたまにあることだ。しかも、峰田はアンジェラが説明している間はセクハラに走ったりはせず、真面目に話を聞いている。

 

 ただし、説明が終わった途端に峰田がセクハラに走ることはあり、その度にアンジェラが色々と制裁している。それはセクハラをする峰田が全面的に悪いうえに、峰田のそれは善意で勉強を教えてやってるアンジェラへの恩を仇で返す行動でしかないので、クラスの誰も峰田の心配をしたりはしない。特に女子にとっては、セクハラ犯は粛清の対象なのである。それでも、何度制裁されても懲りない峰田は、将来色んな意味で大物になりそうである。

 閑話休題。

 

「うーん、確かにそうなんだけどさ……やっぱ、フーディルハインの恋愛話聞きたい聞きたい! これだけの美少女だもん、絶対にネタがあるはず……!」

「でも、フーディルハインの浮いた話とか聞いたことないし……あったら多分B組まで噂がくるでしょ」

「ん」

「確かに……」

「諦めた方がいいと思うわ。詮索のしすぎは良くないわよ、三奈ちゃん」

「う────ーっ……」

 

 皆に口々に言われ、唸る芦戸。

 

 このままでは、キュンキュンすることなく相澤先生の補習を受けることになってしまう。それだけは、絶対に阻止せねばなるまい。

 

「……………………じゃあ、フーディルハインの好きなタイプってどんな人?」

「無理矢理恋バナを続けようとすんな」

「だってだってー! これだけ! これだけだから!!」

 

 どうしても、本当にどうしても恋愛成分を摂取したい芦戸がキラキラした目をアンジェラに向ける。他の皆も、芦戸のあまりの必死さには呆れつつも、アンジェラの好みは気になるのかじーっとアンジェラを見ていた。

 

「とは言っても、オレはそういうのよく分かんないし、考えたこともないんだが…………」

「この際顔でも性格でも何でもヨシ! フーディルハインが将来こういう人とだったら付き合ったりしてもいいかなー、って人の特徴教えてよ」

 

 ふむ、とアンジェラは考え込む。

 

 ソニックにアプローチを仕掛けるエミーや、リリィとリゼラフィなんかが身近に居たためそういう概念自体は理解しているのだが、いざ自分がその対象に誰を選ぶのかと問われると、これがなかなか難しい。そもそもアンジェラは、自分が対象に入る恋愛というものを、今まで一切考えたことがなかった。単純に興味がなかっただけ、とも言う。

 

 ……一瞬だけ、脳裏にちらついた影を、アンジェラは意図して無視した。

 

「…………」

「……え、そこまで熟考する?」

「本当に考えたことなかったんだ……」

 

 あまりに長い間考え込んでいるアンジェラの様子に、葉隠と拳藤がそう零す。

 

「じゃあさ、じゃあさ! フーディルハインの好きそうなタイプをこっちで予想してみようよ!」

 

 芦戸の言葉に、考えを巡らせる一同。芦戸は特に必死である。そんなに恋バナをしたいのかと、アンジェラは色々な意味で呆れ返った。

 

「うーん、フーディルハインって意外と包容力ある人とか好きそう。ほら、男勝りだからこそ、気兼ねなく甘えられる人に惹かれたり、ってあるじゃん?」

「なるほどなるほど……でもアンジェラちゃん自由なとこあるし、生真面目な人とは合わないかも」

「いいえ、意外とそうでもないかもしれないわ。自由だからこそ、生真面目な人に背中を預けられるかも」

「強さはどうでしょう? 肉体的なものはなくても、精神的な支えとなってくれるような強さがある殿方は、アンジェラさんの好みかもしれませんわ」

「フーディルハインは頭いいし、相方は熱い人の方がバランス取れそうだよね。突っ走るくらいがいいかも。いや、冷静な人でもいいかも……」

「これは私の勝手なイメージだけど、欧州の人なら紳士的な人が好みだったりしそう。本当に勝手なイメージだけど」

「うーん、分野はどうあれ、アンジェラちゃんと張り合える人、とか?」

「ん」

 

 わいのわいのと話は盛り上がる。アンジェラは周囲の話を聞きながら、サクサクとクッキーをつまんでいた。

 

「……で、フーディルハイン、どう!? さっき出た中で、ビビっと来るようなタイプあった!?」

「……あのさ、お前らひょっとしてわざとやってるのか?」

 

 その可能性が低いことはわかっていたが、アンジェラはそう言わずにはいられなかった。芦戸達は当然といえば当然だが、頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。

 

「……なんか……その条件に心当たりが……」

「えっ、嘘!? 本当に!? 教えて教えて!!」

「ちょちょ、襟首掴むなって」

 

 興奮してアンジェラの襟首に縋りついた芦戸を落ち着かせ、アンジェラはクッキーを一口齧った。

 

「で、それって誰!? クラスメイト? それとも学外!?」

「いやだから落ち着けって……クラスメイトでは、ない」

「じゃあ学外か……で、誰!?」

「…………」

 

 アンジェラはその名前を声にして紡ごうとして…………口を閉ざした。

 

「…………………………」

 

 直感的なものだった。

 

 しかし、確信出来た。

 

 

 

 

 

 

 言葉にしてはいけない。

 

 認めてはいけない。

 

 口にしたら、戻れなくなる。

 

 二度と、戻れなくなる。

 

 

 

 

 ……そうだ、自分には関係がない。理解が及ばない。それでいいじゃないか。

 

 それでいい……はずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『その先に溺れ、より深く絶望するくらいなら、せめて、見ることをやめなさい。

 

 せめて、その絶望を知らぬまま、無垢なままで、崩れ行くまでは…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ………………」

 

 アンジェラは、手で震える口を押さえる。何かに恐怖しているかのように、身体を震わせる。やがて、呼吸も少しばかり荒くなって、額から汗が流れ、顔色もどことなく悪くなっていく。

 

 アンジェラの様子がおかしくなったことにいち早く気付いた蛙吹が、アンジェラの背中を擦りながら口を開いた。

 

「…………三奈ちゃん、やっぱり、無理強いはよくないわ。アンジェラちゃんも話したくないみたいだし」

「そっか……ごめん、フーディルハイン」

「……いや、いいよ……」

 

 アンジェラはそう言いながらも、やはり顔色が悪い。そんなアンジェラを気遣ってか、八百万が口を開いた。

 

「アンジェラさん、少し休んだ方がいいかと思います。歯を磨いて、もう寝てしまった方が……」

「そうだな……そうさせてもらうよ」

「じゃ、じゃあ私が洗面所まで一緒に行く! 私も、ちょっとお腹いっぱいなんだ!」

「…………ありがとう」

 

 アンジェラのその声は、今にも消え入りそうなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




女子会ですら暗くなっちまう。何でだろうね。
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