音速の妹のヒーローアカデミア   作:えきねこ

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襲撃編じゃあー!色々変化があるぞ!というわけで、どうぞ。


会敵

 ヒーロー。

 

 人を不条理から救うことを生業とする者達。

 

 かつてあの人が憧れて、あの人を裏切った者達。

 

 あの人を、さらなる絶望へと叩き落した者達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が、二番目にこの世から滅するべき、憎き敵。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……だけど、卵は、まだ違う……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご機嫌よろしゅう雄英高校! 我ら敵連合、開闢行動隊!!」

「敵連合……!? 何でここに……!」

 

 月明かりが照らす中、トカゲの男が両腕を広げて意気揚々と名乗りを上げる。その団体名に、その場の全員が警戒を強めた。

 

「この子の頭……潰しちゃおうかしら、どうかしら? ねえ、どう思う?」

 

 オネエ口調のサングラスの男は、そう言いながら手に持った柱のような物体をピクシーボブの頭に乗せた。やろうと思えば、サングラスの男は今すぐにピクシーボブの頭を潰せるだろう。

 

「させぬわ、この……!」

 

 当然チームメイトの危機に虎が拳を構えるが、サングラスの男と虎を静止したのは、敵であるはずのトカゲの男だった。

 

「待て待て、早まるなマグ姉! 虎もだ、落ち着け! 

 

 

 生殺与奪は全て…………ステインの仰る主張に、沿うか否か!」

 

 ステイン。彼の因縁深きヒーロー殺しの名前に、飯田が目を見開く。

 

「奴の思想にあてられた連中か……!」

「ああ、そう、俺は……そうお前、君だよメガネ君! 保須市にて、ステインの終焉を招いた人物……! 

 

 申し遅れた、俺はスピナー。彼の夢を紡ぐ者だ!」

 

 スピナーと名乗ったトカゲの男は、背負った大剣を手に持ち構えた。その大剣は、いくつもの刃物を無理矢理固定したかのような、異様な形をしていた。

 

 他のクラスメイト達がその異様な刃物を前に一歩下がる中、アンジェラはソルフェジオを杖に変形させ構えた。

 

 今の飯田への発言内容。「飯田が直接ステインと接触したこと」を、スピナーという男は知っている。そして、ステインと敵連合に繋がりがあったということを、アンジェラは死柄木から直接聞いている。

 

 ここから推察できるのは、スピナーらが模倣犯などではなく、本当に敵連合と繋がりを持っている、ということだ。

 

「何でもいいがなぁ……貴様ら……その倒れてる女……ピクシーボブは、最近婚期を気にし始めててなぁ……女の幸せ掴もうって、いい歳して頑張ってたんだよ………………

 

 そんな女の顔傷物にして、男がヘラヘラ語ってんじゃないよ!!!」

「ヒーローが人並みの幸せを夢見るか!」

 

 ヒーローを人間として見ていないスピナーの発言にアンジェラは一瞬頭に血がのぼりかけるが、今の状況を鑑みて抑えた。

 

「虎、「指示」は出した。他の生徒の安否はラグドールに任せよう! 私らは、二人(・・)でここを抑える! 

 

 皆行って! いい、決して戦闘はしないこと! 委員長、引率!」

「承知しました!」

 

 非常時だからこそ、テキパキと指示を出すマンダレイ。しかし、彼女は「彼」が今何処にいるのかが皆目検討もつかない。仮にここを抑えて救けに行きたくても、救けに行けない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、彼女は「友達」に託す。

 

「アンジェラ! 洸汰のことを頼みたい! アンジェラなら知ってるでしょ、洸汰の居そうな場所を!」

「……ヒーローとして、いいのか、それ」

「ヒーローじゃない、友達としてのお願い! アンジェラのスピードなら、洸汰を迎えに行ってそのまま委員長達と合流できるでしょう!」

「そういうことなら、よっしゃ任せろ!」

 

 アンジェラはマンダレイにニヤリ、と笑いかけると、天を駆る翼(ローリスウィング)を発動させて空を飛んだ。

 

「飯田、そういうわけだ! 先に行け、後から合流する!」

「……わかった、アンジェラ君、気を付けて!」

「You too!」

「行くぞ皆!」

 

 飯田達は宿泊施設へと走る。アンジェラもその場を離脱しようとしたが、何かに引っ張られるような感覚を覚えた。

 

 しかし、それくらいで慌てるアンジェラではない。

 

「ソルフェジオ!」

『出力増大』

 

 ソルフェジオの宝石部分が光を放つと、引っ張られるような感覚がなくなった。なんてことはない、引力を振り切るほどの出力を出しただけのことだ。アンジェラの圧倒的な魔力量が為せる技である。

 

 この“個性”を仕掛けたらしいサングラスの男は驚愕する。その隙に、アンジェラはマンダレイと虎に祈りの鐘(アーディベル)による身体強化を施すと、即座にその場から飛び去っていった。

 

「行かせないわよ、仔猫ちゃん! あなたは特に!」

「それはこっちの台詞よ!」

 

 どうにかアンジェラへ攻撃しようとしたサングラスの男を、マンダレイが祈りの鐘(アーディベル)で強化された渾身の蹴りで吹き飛ばす。

 

「そう……アンジェラが、狙いの一つなの。

 

 だったら尚更……貴方達を今ここで抑える! 

 私の友達に、手を出させたりなんかしない!!」

「マンダレイの友は我が友と同義! 傷付けられたピクシーボブの分も、ここで返してくれよう!!」

 

 マンダレイと虎は、眼の前の二人の敵を見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 洸汰の両親はヒーローだった。

 敵から市民を守って、死んだ。

 

 そのことを知った時のことを、そして、そのことを報じるニュースのことを、洸汰は忘れない。

 

 

 

 両親を殺した、敵のことも。

 

 

 

 

 

 

「あ…………」

 

 秘密基地である崖の上に居た洸汰の眼の前に、今、敵が居る。

 

 恐らくは敵連合の手の者だろうが、洸汰にそんなことは分からない。

 

 分かっているのは、命の危険が迫っているということと、

 

 

 

 

 その敵が、かつて自らの両親を殺した、マスキュラーという敵であるということ。

 

「景気づけに、一杯やらせろや!」

 

 マスキュラーの拳が振り上げられる。洸汰は自らの死を予感した。力なき子供でしかない洸汰には、マスキュラーに抗う術などない。

 

「パパ…………ママ…………!!」

 

 洸汰には、そうやって声を絞って両親を喚ぶことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『洸汰…………ごめんね……』

『だけど、まだお前は……こっちに来ちゃ、駄目だ』

 

 

 

 

 洸汰の耳に懐かしい声が聞こえたような気がした、その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拒絶する星の瞬き(ディレイアルタイル)!!」

「っ!!?」

 

 空色の光弾がマスキュラーに音速を超えるスピードで激突する。不意打ちだったこともあり、マスキュラーはそのまま岩壁へと吹き飛ばされた。

 

「あ……お前……何で……!」

 

 瞬きの間に、洸汰の前で浮かんでいる影が一つ。その影は地面に降り立つと、マスキュラーに向けて杖を構える。

 

「助けに来たんだよ。ピンポイントで敵に出くわしたか……今年分の悪運を早くも使い切ったんじゃないか?」

「……かも」

「ふっ、なら上々。さっき使い切ったんなら、もうこれ以上悪いことは起きないさ」

 

 洸汰は先程まで死ぬかもしれない状況だったのに、何故かふふ、と笑みをこぼした。こんな状況であっても、眼の前の彼女は余裕一つ崩していない。

 

 それが洸汰を安心させるための虚勢などではなく、自然体であるということがなんとなく分かったから。

 

 洸汰の前に立ち、岩壁にめり込んだマスキュラーを見据える影……アンジェラは、左手を洸汰に向けて守護の幕(ディアスメイル)の強化版である、紺碧の護り(ディアスフェヴォード)を張った。

 

 アンジェラの記憶が正しければ、今眼の前に居る敵は血狂い「マスキュラー」。何がしかの増強型の“個性”の持ち主だ。紺碧の護り(ディアスフェヴォード)であれば、計算上はナックルズの一撃であっても一回は耐える。実際に試した訳ではないし、実戦使用はこれが初めてだが、守護の幕(ディアスメイル)では破られる可能性が高い。

 

「今すぐお前を担いで逃げたいところだが……あの敵をここで放置すれば、間違いなく死人が出る。お前の両親……訓練と経験を積んだプロヒーローを二人同時に殺した輩だ、ヒーローの卵が相手をしていい奴じゃない。次襲いかかられても、プロヒーロー含めて誰にもお前を守ってやれる保証がない。

 

 だから、こいつは今ここで、抑えなきゃならない。

 

 洸汰、少しの間、怖いの我慢できるか?」

「うん……でも、お前は……」

「大丈夫だ」

 

 アンジェラは不安気に言う洸汰に向かって、笑いかけた。

 

「オレは、勝算がゼロの戦いはしない主義なんでね」

 

 そう言うと、アンジェラは自身のスマホを洸汰に預けて再びマスキュラーを見据える。

 

「話し合いは終わったか?」

 

 マスキュラーは岩壁から抜け出し、右腕が筋肉のようなもので覆われていった。恐らく、あの肉の筋がマスキュラーの“個性”なのだろう。

 

「お前、知ってるぞ。リストにあったフーディルハイン、ってやつだろ? 面倒だが、お前は生け捕りにせにゃならんらしい」

「へぇ、じゃあ尚の事、あんたを今ここで潰さにゃならんわけだ」

 

 アンジェラは挑発的な笑みを浮かべて、ソルフェジオをガントレットに変形させて構えを取る。それを見たマスキュラーは、どことなく嬉しそうな、好戦的な表情になった。

 

「はは、まあ、殺さなければ何してもいいって話でもある。

 

 なぁ、死なねえ程度に甚振ってやるから……」

 

 マスキュラーはマントのように羽織っていた黒い布を取っ払い捨て去る。そして、心底楽しそうに言った。

 

「血を見せろ!!」

 

 マスキュラーの拳がアンジェラへと飛んでくる。アンジェラは身体強化魔法をかけた上に、上半身にワン・フォー・オールを35%纏わせ、最小限の動きでマスキュラーの拳を躱してマスキュラーの懐に潜り込むと、思いっきり音速を超えるスピードの拳を入れた。

 

「ガハッ……!」

 

 マスキュラーは咳き込みながら、地面を転がっていく。“個性”の筋がクッションにはなったものの、それでもダメージを抑えることは出来なかったようだ。身体強化魔法にワン・フォー・オール35%でただでさえ高威力な拳に音速以上のスピードまで乗せられていたから、当然といえば当然だが。

 

「ははっ……げほっ、強いな、ちっこいのに超強いな、お前!」

「ちっこい言うな、割と気にしてんだよ」

「あはは、そいつはすまねえ! でもさ、褒めてるんだよ。俺を殴り飛ばしたヒーローなんか今まで一人も居なかった、お前は凄えや! 

 

 凄えから……本気の目で相手してやる」

 

 マスキュラーは立ち上がると、懐から何かを取り出した。落ちた物を見るに、どうやら義眼らしい。取り出した義眼を左目のものと付け替えたマスキュラー。アンジェラは、マスキュラーの纏う空気のようなものが変わったことを察知して警戒心を強め、洸汰の足元の地面の強度を強化する魔法をかけた。

 

 マスキュラーは上半身の服を脱ぎ捨てると、上半身に筋を纏わせる。先程までとは比べ物にならないほどに高密度だ。

 

「俺の“個性”は「筋肉増強」! 皮下に納まんねえほどの筋繊維で底上げされる速さ、力! 

 

 何が言いてえかって!? これでフェアだろ!? 俺はお前のことを少しは知ってる、けどお前は俺のこと知らねえもんなあ!」

「これはこれは、ご親切にどうも」

 

 わざわざ“個性”について教えたマスキュラー。その真意はアンジェラにはさっぱり分からないが、マスキュラーが戦いを純粋に楽しみたいタチであることは分かった。

 

「さあ、殺し合おう! お前はいい、俺を楽しませてくれる!」

 

 マスキュラーはそう叫ぶと、アンジェラへ殴りかかった。アンジェラはジャンプでマスキュラーの拳を躱す。マスキュラーの拳は地面へと突き刺さり、崖にヒビを入れた。アンジェラは洸汰の居る地面の強度を強化しておいてよかったと、内心少しばかり冷や汗をかく。

 

 マスキュラーは跳び上がり、再びアンジェラに向かって拳を飛ばした。当たればいくらアンジェラでもひとたまりもないだろう。

 

 しかし、ソニックの動きを視認出来るアンジェラにとって、マスキュラーの拳は、遅い。

 

 またも紙一重の動きで拳を躱したアンジェラ。マスキュラーは勢い余って岩壁に激突し、拳が抜けなくなってしまう。

 

暁に落ちる(フェクトフェージュ)!」

 

 アンジェラは両腕をマスキュラーに向けて、砲撃を放った。腕を引き抜いた途端に砲撃が直撃したマスキュラーは悲鳴を上げることすらままならず、マスキュラーの“個性”である筋繊維が、バラバラと剥がれていく。どうやら、マスキュラーは気を失ったようだ。

 

 暁に落ちる(フェクトフェージュ)。人体に傷を付けずに蓄積する負荷ダメージを与え、その意識を刈り取ることに特化した魔力ダメージ砲撃だ。その負荷は、骨折をした時のものに匹敵する。負荷の強さはピンからキリまで調整可能。ただし、収束までにかかる時間が割と長めで、高威力の場合はアンジェラ本人へかかる負担も大きいと、使い所は限られる魔法だ。アンジェラはマスキュラーの攻撃を避けながら、ずっと魔力を収束させていた。

 

「はぁ……白亜の鎖(フィアチェーレ)

 

 アンジェラは暁に落ちる(フェクトフェージュ)の負荷による独特の疲労感に苛まれつつも、間髪入れずに白亜の鎖(フィアチェーレ)でマスキュラーをぐるぐる巻きに拘束すると、洸汰の元へと駆け寄り紺碧の護り(ディアスフェヴォード)を解除した。

 

「……あんなに、あっさりと……」

「ま、あいつ本人のミスがなきゃ、もうちょい苦戦してたかな」

 

 アンジェラはさも何でもないことのように言っているが、マスキュラーはネームド敵。ウォーターホース夫妻の他にも多くの人々を屠り、傷付けてきた敵だ。当然、敵としての経験もそんじょそこらのチンピラよりは遥かに豊富。

 

 そんな敵を相手にして、ほぼほぼ無傷で制圧してみせたアンジェラが、どれほど規格外なことか。まだ幼い洸汰でさえ、アンジェラがしでかしたことがとんでもないことだということは分かった。

 

「なあ……何で、助けに来てくれたんだ?」

「なんだ、今更そんなこと」

 

 アンジェラは洸汰の頭を撫でて、いたずらっ子のような笑みを浮かべて言った。

 

「お前にもしものことがあったら信乃が悲しむし、オレもへこむ。それが嫌なのさ。

 

 それに、

 

 友達の頼みは、どうにも断れない性分でね」

 

 

 

 

 




アンジェラさん、無傷でマスキュラーを撃破する。

まあ作中アンジェラさんが言ってた通り、マスキュラー本人のミスもあってのことですが。ま、マスキュラー戦はこの作品じゃあんま重要じゃないんで。



最近Limbus Company始めました。プロムンは、いいぞ。
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