音速の妹のヒーローアカデミア   作:えきねこ

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 一人目は抗い、

 二人目は壊れ、

 三人目は惑い、

 四人目は逃し、

 五人目は恐れ、

 六人目は嘆き、

 七人目は迷い、

 八人目は失い、







 最後の一人は、何も残さなかった。




追憶の大樹

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フォニイと名乗った桃色の髪の少女は、その姿を肉の大樹へと変え、アカイロに染まった瞳をアンジェラ達へと向け、狂ったように笑い叫ぶ。

 

「ふふふあはははははは殺す殺すヒーローは殺すこの世界から概念ごと消え去ってしまえあははははははは!!!」

 

 肉の大樹がフォニイの笑い声に合わせて血液を噴出する。嫌に甘い香りを放つその液体に、常闇は思わず口を手で抑えた。

 

「……なんと、冒涜的な……」

「どうする、轟と爆豪を担いで逃げるか?」

「……そうしたいのは山々だが、どうやら奴さんは逃しちゃくれねえみたいだぜ?」

 

 アンジェラ達の視線の先で、肉の大樹が、葉のようにつけた大量の手を揺らす。その手に魔力が収束されていることにアンジェラが気付いてそう零した、次の瞬間。

 

 その手の一つ一つから、大量の桃色の光弾が、物凄いスピードで発射された。

 

「っ、触れる境界線(エスディーアベント)!」

 

 アンジェラは咄嗟にソルフェジオを肉の大樹へと向け、触れる境界線(エスディーアベント)を展開する。アンジェラだけであれば光弾を躱し続けることも出来ただろうが、この場には障子と常闇、そして意識のない爆豪と轟も居る。さしものアンジェラも、四人を同時に避難させることなど出来ない。

 

 フォニイが放った光弾は、恐らくは星の弾丸(ストライトベガ)と同質の魔力弾だろう。アンジェラ自身がその魔法の使い手であるからこそ分かること。だから、触れる境界線(エスディーアベント)で防いだのだ。

 

「逃げちゃ、駄目……はははははっ!!」

「っ!?」

 

 フォニイのアカイロの瞳が光を放ったかと思うと、肉の大樹を中心として巨大な魔法陣が展開され、その周囲に巨大な桃色の半透明のドームのようなものが形成された。アンジェラはその半透明のドームが空間を隔絶させる結界の魔法であると、すぐに見抜く。

 

 桃色の光弾の応酬を抑えながら、ソルフェジオにこの結界を解除できるか念話で問いかけたアンジェラだったが、ソルフェジオから返ってきた返答は、否だった。

 

『申し訳ありません、我が主。私の能力では、この結界の解除が出来ません。どうやら、相当に高位の結界魔法のようです』

 

 どうやらアンジェラ達は、結界の内側に閉じ込められてしまったらしい。結界の内側からワープで逃げることも不可能だと、ソルフェジオの試算が出た。アンジェラの魔法の技量では結界の解除も破壊も不可能。物理的な破壊もかなり難しい。通信も遮断され、外部に助けを求めることもできない。

 

 しかし、希望がないわけではない。

 

 結界魔法は総じて、術者からの魔力供給がなくなればその効果が消失する。アンジェラの魔法の一つ、時を止める境界(アンハードサークル)もそうだ。

 

 そして、その魔力供給を断ち切る方法は、術者の魔力を空にするか、術者の意識を失わせるか。基本はそのいずれかだ。

 

 つまり、今はどうあがいても眼の前にそびえる肉の大樹と戦い、勝たなければならない。

 

 そうすれば、魔力供給が絶たれた結界は消失する。ソルフェジオの試算でも、その方法が一番効率的であり安全だと出た。

 

「唄」を使った結界の破壊も考えたが、アンジェラの技量では逆に常闇達をさらなる危険にさらしてしまう可能性が非常に高い。結界を無事に破壊出来ても、メンタルが万全ではないアンジェラが「唄」を使ってしまえば、精神安定剤があっても発狂してしまう可能性がかなり高いことを考えると、「唄」は本当にどうしようもなくなったときの最後の切り札として取っておくべきだ。

 

 アンジェラは一つ小さな溜息と吐き、口を開く。

 

「……二人共、落ち着いて聞けよ。オレ達はあのグロい肉の木を倒さなきゃならなくなった」

「……理由を聞いても?」

 

 桃色の光弾の応酬が収まる。アンジェラは触れる境界線(エスディーアベント)を解除し、肉の大樹を睨みつけながら障子の疑問へ返答を出した。

 

「あの半透明のドームな、どうやら結界みたいなんだ。その結界が、オレ達をここに閉じ込めてる。あれの破壊はオレらじゃ難しいと、ソルフェジオのお墨付きが出た。しかも、通信も遮断されてるからこっちから助けを呼ぶことも出来ない。

 

 ただ、あの肉の木をどうにか倒せれば、あのドームも消失するらしい。

 

 というか、脱出のための一番安全な手段はあの肉の木と交戦して勝つことだ。あの肉の木がドームへエネルギーを供給してるから、その大本を伐採すりゃいいって話だ。

 

 一応……もう一つ手立てがないことはないんだが……」

「その言い草だと、その方法には交戦以上のリスクがある、と……?」

「お前らが轟と爆豪を庇いながら、発狂したオレ相手に逃げ切れるか勝てるんだったら、そっちでもよかったんだがな」

 

 アンジェラは苦笑いしながら言う。常闇と障子は発狂とはどういうことだとか色々とアンジェラに聞きたいことがあったが、今はそれどころではないと思考を切り替えた。

 

「……まあ、本当にどうしようもなくなったらその手を使うが……その前に、やれる事は全部やっとくべきだろ?」

「勝てるのか?」

「…………」

 

 アンジェラは、障子のその疑問にすぐに答えることが出来なかった。

 

 フォニイの技量やその能力は、まだ未知数で不明瞭な部分が多い。

 

 しかし、魔法使いとしての技量は、確実にアンジェラよりもフォニイの方が上だ。適性の問題もあるだろうが、アンジェラには扱うことが出来ない結界の魔法を操っていることからも、それは明白だった。

 

「さぁね。勝利の女神サマのみぞ知る、ってところかな」

 

 だが、脱出のための一番安全な方策が戦うことである以上、そして、他のクラスメイト達や先生達に危険が及ぶ可能性を考えると、ここで戦わないという選択肢は、アンジェラ達には用意されていないも同然だった。

 

 そしてアンジェラも、負けるつもりなどなかった。

 

 技量は相手のほうが上、しかしそれは魔法の技術に限定した話。アンジェラの武器は魔法だけではない。

 

 勝算も、ないわけではない。フォニイの頭が生えた場所、狙い目はあそこだろう。

 

 勝算が少しでもあるのならそれで結構。何せ、ゼロではないのだから。

 

 アンジェラは、勝算がゼロの戦いはしない。

 

 それは裏を返せば、勝算が少しでもあるのなら、それは十分彼女が戦う理由になるのだということ。

 

 ゼロではないということは、無ではないということ。

 つまり、勝てる可能性が少しでもあるということ。

 

 その状況で、戦うことが最善の策なのであれば、アンジェラは戦うことになんのためらいも持たない。

 

「まあ、やれるだけのことはやるさ。簡単にくたばってやるつもりも毛頭ない」

 

 アンジェラは障子と常闇の方へ顔を向け、決意を込めた声で言った。

 

「……ならば、爆豪と轟のことは俺と常闇に任せておいてくれ。フーディルハインが、心置きなく戦えるように」

「ああ、先の攻撃を見きれなかった俺達では、足手まといにしかならないだろうからな……フーディルハイン、

 

 俺達のことはいい……その代わり、俺達の分も、爆豪と轟の分も、あの冒涜的な樹木とその主に礼をしてやってくれ」

「……ははっ。ああ、任せろ。ケテル!」

《うん!》

 

 障子と常闇のエールに、アンジェラはソルフェジオを肩の上に乗せ、二人に向かって紺碧の護り(ディアスフェヴォード)を張りながら応えた。そして、両手足のリミッターをそれぞれ一段階解除させ、ウエストバッグから飛び出たケテルがアンジェラの身体に入り、カラーパワーを発揮させると、アンジェラはソルフェジオを振り下ろしてフォニイの頭部に向けて構える。

 

「Hey,フォニイ、とか言ったか。

 

 オレと、遊ぼうぜ!」

 

 フォニイのアカイロの瞳が、魔力光を立ち上らせながら大声でそう宣言したアンジェラを捉える。肉の大樹の幹に生えたフォニイ自身の両腕が広げられ、手の葉に光が宿る。

 

「……琥珀の黎明(テレジア)

 

 フォニイがそう呟いた瞬間、手の葉から黄色の魔力弾が無数に発射された。その全てが、アンジェラを狙ったものだった。

 

 アンジェラはその軽い身のこなしで魔力弾の群れを躱しながら、ソルフェジオに魔力を収束させる。狙うは、幹から露出した頭部。

 

流星砲(スターストリングス)!」

 

 ソルフェジオを振るい、アンジェラが放ったのは空色の魔力砲。アンジェラに迫っていた魔力弾を巻き込み、フォニイの頭部へ目掛けて放たれたその一撃は、

 

 

 

 

 

 

 しかし、桃色の障壁によって阻まれた。

 

「……だよな」

 

 魔法を使う相手であれば、当然防御魔法を使ってくることは予測できる。

 

 しかし、様子見で威力が低めの魔法を使ったとはいえ、それでも莫大な魔力量を誇る、しかもセカンドリミット状態でその上カラーパワーまで使っているアンジェラの砲撃で、まさか障壁に傷一つ付けられないとは。フォニイの防御力は、かなり高いらしい。

 

『結界魔法は防御魔法からの派生なので、結界魔法が得意な魔法使いは総じて防御魔法が得意でもあります』

 

 ソルフェジオの補足を聞きながら、アンジェラは身体強化魔法を使用しワン・フォー・オールを45%ほど全身に纏わせる。

 

「防壁があるのなら……壊せばいい話だ」

 

 今はまず、フォニイの頭部を守る障壁を突破せねばなるまい。流星砲(スターストリングス)が効かないのであれば、それ以上の火力を直接ぶち込むまで。

 

 どこかの誰かを馬鹿に出来ないほどの清々しいまでの脳筋戦法だが、砲撃魔法は収束までに時間がかかること考慮すると、これが最善の策だろう。

 

深紅の白昼(シャーデンフロイデ)

 

 肉の大樹が再び手の葉から魔力弾を繰り出す。今度の魔力弾は紅色で、それぞれが複雑な軌道を持ち、さしものアンジェラであっても、その軌道を読み切ることは難しい。

 

「ソルフェジオ、弾道計算は任せた」

『かしこまりました、我が主』

 

 それを即座に理解したアンジェラは、ソルフェジオに弾道計算を任せた。この合宿中の特訓で、身体強化魔法とワン・フォー・オールを併用して移動してもすぐには事故らなくなったアンジェラは、ソルフェジオから送られてくる弾着予測に従い、複雑な軌道の魔力弾を躱し、肉の大樹に接近する。

 

 そして、障壁が展開されているフォニイの頭部に向かってジャンプし、全力の蹴りをぶつけた。

 

「っ、ラァッ!!」

 

 ガキィンッ!! 

 

 障壁とアンジェラの脚が衝突し、火花が散る。されど、障壁に傷は付かない。

 

「っ、一度で傷付かないんなら、何度でもやるだけ、だっ!」

 

 アンジェラはその表情に驚愕を見せつつも、何度も何度も、身体強化魔法とワン・フォー・オール45%が乗った蹴りを障壁に浴びせる。その度に桃色の障壁からは火花が散り、金属同士がぶつかるような音が周囲に響く。アンジェラは上限ギリギリの出力のワン・フォー・オールを発揮した影響である鈍い痛みに耐えながら、ひたすらに蹴りを繰り出す。

 

 そして、ついにピシリ、と防壁にヒビが入った。このまま押し切れば破壊出来そうだ。アンジェラは一層力を込め、脚を振り上げ、その脚を障壁に叩きつけようとした、その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫の夕暮れ(アルリウネ)

「なっ……!?」

 

 幹から生えたフォニイの両腕がアンジェラへ向けられ、魔法陣が展開されたかと思うと、そこから紫色の砲撃が放たれた。ソルフェジオが反応を見せなかった所を見ると、どうやら速射砲の類らしい。

 

 障壁の破壊に気を取られていたアンジェラは反応が遅れモロに直撃を受けてしまい、そのまま勢いよく吹き飛ばされて近くの木に激突した。

 

「「フーディルハイン!」」

 

 障子と常闇の叫びが木霊する。二人はアンジェラに駆け寄ろうとするが、防壁に阻まれ行くことが叶わない。

 

 アンジェラは何度か咳き込むと、ソルフェジオを支えにしながら立ち上がる。

 

「いっつつ……やってくれた、なぁ……げほっ!」

「フーディルハイン、大丈夫なのか!?」

「ああ、なんとかな」

 

 常闇の声にそう応えながらも、アンジェラは内心で少し焦りを見せていた。

 

(速射砲……しかも、ソルフェジオにすら感知させないほどのスピードでの収束と発射……その分威力は低いようだが、厄介だな……)

 

 アンジェラはそう考えながら、ソルフェジオを構える。そうこうしている間にも、障壁のヒビは修復されていく。障壁がフォニイの頭部に展開されている所を見ると、やはりフォニイの頭部は弱点のようだ。そうでなければ、ああやって守ったりはしないだろう。

 

 しかし、この状況を打開しようにも先の連撃を超える威力の攻撃は少々難しい。砲撃魔法は威力が分散するがゆえに一点集中の一撃が必要な今は不向きであり、先のもの以上の一撃となると、ワン・フォー・オールの出力を上げるしかない。

 

 だが、これ以上ワン・フォー・オールの出力を上げると、いくら頑丈なアンジェラといえど耐えられるかは分からない。下手に出力を上げ過ぎれば、骨折の危険がある。

 

 アンジェラの脳裏に「唄」を使うという選択肢が浮かぶ。しかし、今のアンジェラの精神状態では精神安定剤をオーバードーズしても発狂する可能性が非常に高い。

 

 と、肉の大樹が光を放つ。

 

 その光は段々と強くなっていき、幹の線を伝ってフォニイの頭部と両の腕へと注ぎ込まれてゆく。その光の正体を直感的に理解すると、アンジェラは目を見開いた。

 

 その光は、臨界状態に達したフォニイの魔力だった。

 

 それが今、一点に注ぎ込まれている。

 

 

 

 

 

 

 それが意味するのは、

 

 

 

 

 じきに、大規模な魔力爆発が起こるということ。

 

「なっ……まさか、諸共に……!?」

 

 アンジェラはそれを阻止すべく、再びフォニイの頭部へ身体強化魔法とワン・フォー・オール45%を乗せた蹴りをおみまいしようとする。

 

 

 

 

 

 しかし。

 

 ガキィンッ!! 

 

「っ、やっぱりか……!」

 

 案の定、ヒビが治った障壁に拒まれる。しかも、臨界状態の魔力を用いているからか、先程までよりも硬度が高く、何度蹴りを加えても傷一つ付かない。

 

 

 

 

 

 

 アンジェラは必死に頭を回転させる。

 

 この状況を切り抜けるには、どうすれば……

 

 

 

 

(いや……むしろ……)

 

 ふと、アンジェラの脳裏に、ある考えが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

「唄」を使って発狂して、常闇達を危険に晒すくらいなら、

 

 

 

 

 

 

 

 いっそのこと、

 

 

 

 

 先に、この手足を潰しておいた方がいいのではないか。

 

 

 

 

 

 

『っ、我が主! いけません、それは……!』

 

 主を最優先にするソルフェジオは、当然の如くアンジェラの考えに反対の意を示す。アンジェラだって、これが本来であれば愚策も愚策であることは理解している。

 

 しかし、事態は一刻を争う。臨界状態の魔力が爆発すれば、紺碧の護り(ディアスフェヴォード)も突破され、常闇達は恐らく、なすすべなく死ぬ。アンジェラだって、無事で済むはずがない。

 

「……悪いな、ソルフェジオ、ケテル」

 

 もはや、迷っている時間はない。今は一刻も早く、フォニイへの魔力供給を絶たなければならない。

 

 アンジェラが意を決してワン・フォー・オールを100%発揮させようとした、

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アンジェラ』

 

 その場でアンジェラだけに聞こえた、確かな声。柔らかく、自分を呼ぶその声にアンジェラが振り返る。

 

 後ろには、常闇と障子、そして意識を失った爆豪と轟しか居ないはずなのに、

 

 

 

 

 

 

 アンジェラの目には、確かに、メリッサの姿があった。

 

『私を………………私を呼んで』

 

 幻聴ではなかった。

 

 幻覚ではなかった。

 

 それは、人間としての肉体を失いながらも、魂だけは現界に残ったメリッサの、確かな声だった。

 

 アンジェラの力になりたいと、アンジェラと同じ世界を共に見たいと、切に願ったメリッサの魂が、届けた声。

 

 もはや、迷いなどなかった。

 

 アンジェラは、そのトパーズの瞳に一筋の涙を浮かべながら、魂の残響(ソウルオブティアーズ)を手に取り、

 

 

 

 一番下の吹き口に口をつけ、息を吹き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピイイイイイィィィッ!! 

 

 笛の音が、魂の残響が響き渡る。

 

 瞬間、魂の残響(ソウルオブティアーズ)の花の宝石が眩い光を放つ。力が、暖かい力が、アンジェラの身体へと流れ込んでゆく。ケテルはそれに驚いて、思わずアンジェラの中から出てきてしまった。

 

 魂の残響(ソウルオブティアーズ)から溢れた光はアンジェラとソルフェジオを包み込み、花の蕾のような形へと成る。

 

 そして、光の花が開き、空色の魔力光と共に粒子となって散り、周囲一帯に広がっていった。

 

 その粒子の広がりの中心に居たアンジェラの姿は、変わっていた。

 

 青いノースリーブのパーカーは、裾が左前の白い和装に、腕には白い袂が現れ、肩は露出しているがよく見ると脇の部分で和装と繋がっている。手袋は青い装甲を持つ指ぬきの手甲になり、腕のリミッターは手甲と一体化している。青いミニスカートは空色のインナースカートと白いオーバースカートになり、ウエストバッグは麗日のコスチュームのものと似た、留め具に赤と青の陰陽玉のような宝石が嵌め込まれたベルトに、赤い靴は白地に赤のバッテンラインが入った、足の部分が青い装甲で覆われたブーツへと変わり、黒のスパッツは消え、代わりに太もも辺りまで空色の靴下が覆い、足のリミッターはブーツの装甲部分と同化し、髪を結いていた黒いリボンは解けて消え、魂の残響(ソウルオブティアーズ)はブローチのように、和装の胸元に着いている。そして、アンジェラの背に背負われるように、金色のリングのようなものが浮かんでいた。機械的な杖だったソルフェジオには、青い宝石の周りに刃のような装甲が追加され、まるで刃の広い槍のような形になっていた。

 

 まるで、物語に出てくる天使のように神々しいその姿に、障子と常闇は思わず息を呑む。

 

「……そうか、そういうことだったのか……」

 

 アンジェラは胸元の魂の残響(ソウルオブティアーズ)に手を添える。メリッサの魂の残響が、鼓動のように響いているような気がした。

 

「……ありがとう、メリッサ」

 

 アンジェラはまた一筋涙を零すと、フォニイに向き直る。今だに臨界状態の魔力が注ぎ込まれ、爆発するのは時間の問題。

 

 だが、アンジェラの胸の内には、先程まであった焦りなど、微塵もなかった。

 

 今はただ、眼の前にそびえる肉の大樹を、伐採するのみ。

 

「……さあ、第二ラウンドと行こうじゃないか」

 

 アンジェラはそう言いソルフェジオを構えると、不敵に笑ってみせた。

 

 




魂の残響、まさかの変身アイテムでした。アンジェラさんの。変身シーンは成れ果て村編のオオガスミ戦をもろパ………参考にしております。

今回アンジェラさんが前半で苦戦していたのは、魔法使いとしての技量不足が最大の原因です。魔法使い相手にするのはこれが初めてだからね仕方ないね。
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