IS 篠ノ之束討伐any%RTA レギュ:キャラシ固定、ソロ、バグ技あり【完結】 作:九時誤字くじら
あの男に、私は無性に腹が立っていた。
……初対面で「地獄に堕ちろ」、などと言われたこともそうだ。
「なによ、これ」
「ハァ、ハァ……コイツ、″
そして、セカンドコンタクトではなんの説明もなしにアリーナにISを叩き落とし、グレネードで爆発させた。
尋常ではない事態に客席の人間は概ね全員避難しているが、まだ事態を把握できていない生徒もいる。
──私もその1人だ。
「あ、あのぉ……!助けて下さい凰鈴音!お願いです!初対面で生意気なクチ効いた事は謝ります!」
「謝ってお願いされてもわかんないわよ!」
目の前まで飛んできて、地上スレスレでの減速、着地という意外にも綺麗な機体操作を披露した星。
何も理解できないが、しかし彼の実力はわかった。
「……わかんないから聞くけど!アンタの後ろの奴ぶっ飛ばすの⁉︎」
「あっ、はい!そうです!」
彼がノールックで大剣を受け止めた事で、一瞬ISの胴体がガラ空きになる。
だから即座に『衝撃砲』をチャージすると、そのまま後ろにいた巨大な機械を吹き飛ばす。
「──その話、乗った!」
「さすが鈴音さん……!」
──よくわからないが、敵だった奴に頭下げて頼られるのはいいものだ。
人間の姿のない奇妙なISを吹き飛ばし、彼のガードを潜り抜けるようにして次々に機体の中心へと衝撃砲を当てていく。
効いてるはずだが、しかし機体の巨軀はよろめくだけで倒れる気配がない。
無策では無理か、と思った私は、そのまま後ろの彼に続きを要求した。
「で……どういう作戦⁉︎」
「作戦は
──彼。
この学園で彼を除いた該当者が1人しかいない呼称に、思わずISを止める。
その隙にレーザーの砲口がこちらを覗いてきた。
回避することも叶わず、砂煙を巻き上げながらレーザーがこちらに向けて放たれようとしている。
……それを見た時、やらかした、と思った。
「──なんなんだよ守、作戦名:無人機をブッ
「え……」
──だが、砂煙の中から聞こえた声に、私は耳を疑う。
その中には、一夏が。
私とあの日、結婚を誓った幼馴染が、剣を突き立てた姿勢で立っていたのだから。
再び、あの日のように胸の高鳴る音が大きく聞こえた。
「無人機なら、一夏は壊せるよね」
「正直、無人機なんざ信じられねえけどな。でも、こうして向き合ってみると……″無人なんだな″って感じがした」
「なら作戦成功……ぶい!」
そして、同時に私は隣の男に、どこか得体の知れないものを感じた。
「ともあれ、無人機撃破だ……」
「ブッ
──どうしてこの作戦立案者は、ここまで読めていたのか、と。
☆
女子校に、男子として転校することになった。
……何を言っているかわからないと思うし、僕も正直そんな計画を聞いた時は正気を疑った。
「シャルル、次の時間移動だぞ。急げ!」
「あっ……じゃあ、
──だが、どうやら目的はこの2人のどちらかを騙し、データを奪うことらしい。
正気を疑う境遇に巻き込まれた男子2人、確かに心を開きやすくなってくれているかもしれない。
そんな風に考えていた僕は、しかし突然織斑、と名乗った少年に体を引き寄せられ、星、という少年の脇に抱えられた。
「うわ……うわぁ⁉︎何して……むぐっ!」
「重量、成人男性2人……無理そうだったけど、いける。体力ついてきた……かも!」
そして、何かを考えるより先に僕が感じたのはISのそれとも見まごうほどの浮遊感。
ついでに言うと何故か、階段が回っていた。
──いや、違う!
「あれ……?僕、回ってるよ……⁉︎」
体、ついでに目も回しながら、さっきまで光る壁だと思っていたものが蛍光灯のある天井だと気づくまでに、1秒。
その時点で既に、教室からはだいぶ引き離されていた。
「舌噛むぞ、シャルル!守は女子を避けるのが上手いから、今日は大人しく頼っとけ!」
「うん、得意……!」
「えっ……ええええ⁉︎これっ、何……⁉︎」
廊下。
壁から反対側の壁に飛び移ったせいで、腹に軽く衝撃が走った。
……衝撃的な事の連続。
アリーナの更衣室に連れて来られても、しばらく僕は動けなかった。
「あっ、一夏。簪ちゃんの件、あまり気に病まないでね……!」
「おう!言ったろ、『打鉄弐式』を完成させて、胸張って更識さんと友達になるって!」
だから、そのせいだろう。
……目の前の男子2人が着替え始めたことに、全く気が付かなかったのは。
「……うわあああ⁉︎」
「ど……どうしたんですか……?」
前途多難。
なんだか本当にデータを盗めるのか不安になった状態のまま、授業は始まった。
◇
……だが、いざ話してみると2人とも案外普通の人だった。
一夏は、姉のために頑張って強くなろうとしている普通の少年。
守は、聞いた話によれば圧倒的に強いものの……人と話すのが苦手。
特に年上の女性とは、拳を合わせるか仲良くなるかしなければ目も合わせられないレベルらしい。
そんな有様なので、一緒に『打鉄弐式』なるISを作るチームでは、そんな彼に代わって一夏が指揮をとっているらしかった。
……なんだか、妙に人間らしい。
同時に、彼らしい……とも思ってしまう。
「……ふふっ。二人は、仲いいんだね」
「ああ。守はいい奴だぞ、同室がアイツならよかったな、シャルル!」
「あっ、シャルルくん……部屋割り、同じでしたね……」
そんな話をしていると、後ろからISスーツ姿の少年が出てくる。
……つまり、自分のやるべき作業は彼が先にやっていた。
思わず、背中から汗がどっと出てくるのを感じる。
「ごめん!話してて、作業全部やらせちゃった!」
「悪いな、守。代わりになんか奢るから許してくれるか?」
「……じゃあ、2人とも……1回『特盛冷麺』奢ってください!ここの冷麺、大好きなんです……」
だが、彼の口から出てきたのは意外な言葉。
……冷麺。なんというか、細身の彼らしい好物な気もする。
「ふふ……同室になるわけだし、せっかくだから一緒に食べる?」
「あっ、あ、はい!じゃあ……今日
「その口ぶり……明日は俺に奢らせるつもりだな?」
いつぶりだったろうか、笑顔で食卓を囲むことなんて。
飯を口にしてて胃が縮まないのなんて、久しぶりのことだった。
◇
「あっ、シャルル君!
「──ぁ……」
だが、長くは続かなかった。
その日の夜、ボディソープを持って来た彼が、僕の正体に気付いたのだから。
なんだか、全て無駄だと言われている気分になった。
心の中に入ったヒビが、わずかに軋む音を立てる。
冷静になって、体を拭いてからジャージに着替えて風呂を出る。
すると、鉄板の上に腰掛ける彼の姿が見えた。
促されるままベッドに座り、彼の言葉を待つ。
鉄板に座る尋問者と、ベッドに座る尋問対象。
一瞬、困惑してしまいそうになるくらいに絵面がバカバカしくて、こんな時だというのに笑ってしまいそうだ。
「あの……目的はなんですか?」
「デュノア社は、守くんか織斑くんのデータを求めてる。それがあれば、シェア3位のラファール──」
「あっ……シャルル君の目的だよ」
僕の言葉を遮り、彼は僕の目的を聞いてきた。
……まさか、と思った。
まさか、僕ですらわからない僕の目的を、彼は知っているのか……とも。
……いや、真意がそうでなくてもよかった。
僕は確かに、会社の目的を今は話したくなかったから。
「……僕はね、母親がいたんだ」
「あっ……死んじゃったんだ……えっ?」
「結論が早いね。……うん、そうだよ。驚くのも無理はないだろうね、僕はデュノア社の公にされている夫人の子じゃないから……」
まるで心を読まれているかのように。
……言おうとしていた事をすっ飛ばされて、僕はまた笑う。
その後も、言われるがまま僕は喋り続けた。
アルベール夫人との不仲のことも。
スパイとして、データを取ってくるしか道がないことも。
それを聞き終えた彼はそのまま布団を被り、鉄板のダイヤルをひねった。
「明日やるので……今日はおやすみなさい」
「……明日?」
「デュノア社へのデータ提供とか、ご夫人との問題とか、アルベールさんの不貞とか……明日解決する!」
明日。
僕の目を、彼はしっかりとした目で見つめ返してくる。
「……えええっ⁉︎」
あまりにも大規模な、デュノア社への宣戦布告。
混乱して大声を上げる僕を無視して、彼はついに居眠りをし始めた。