IS 篠ノ之束討伐any%RTA レギュ:キャラシ固定、ソロ、バグ技あり【完結】   作:九時誤字くじら

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投稿が遅れたので初投稿です。


裏6話「正義の狂人」

明日やる。

……そう言って本当にやる人間も、いなくはないらしい。

 

明らかに常人より手の温かい彼に手を引かれ、僕は今……飛行機に乗っている。

真意の見えない彼の目を見つめ、そっとため息を吐いた。

 

「ねえ……本当に1日で解決する気、なの?」

「やって……みせる!」

 

親指を立てる彼の姿に、不安を感じない訳ではない。

だが、彼に手を引かれながら携帯食料を渡されて、僕は断れずに席に腰掛けた。

 

……今日の彼は、どこか強引な気がする。

 

「守、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫。作戦は……ある!」

 

Vサインを出した彼に『冷麺味』の携帯食料を渡し、そっとオレンジジュースに口をつけた。

どうするつもりなのか、それを先に聞いておきたかったのだが彼はずっと黙り込んでいる。

 

──冷麺味は流石にNGだったのかな。

 

そんなことを考えていたら、抱き抱えられて僕は再び宙を舞った。

 

「……ッ⁉︎」

 

何を言いたかったのかも忘れ、あまりの急加速にISを展開することもしないまま。

デュノア社の上空まで来たところで、ようやく僕は落ち着いてISを展開することができた。

 

「あっ……舌噛むよ」

「遅いよ!」

「でっ……でも、言わないと今から噛むんだよ……?」

 

どういうことか。

そう尋ねようとした瞬間、デュノア社に手榴弾が投げつけられた。

 

「……えっ?……え?」

「突入……いこう!」

 

白昼堂々の凶行。

同級生が起こした異常事態に、混乱しながら黙り込む。

すると、手榴弾の爆発範囲はちょうど社長室の手前で止まっており、その先に父さんがいたことがわかった。

 

「な……貴様か!」

「アルベールさんですね。シャルをこっちに送り込んできた真意(ワケ)、知りに来ました」

 

守は真っ直ぐな男だ。

ISから降りると、そのまま父さんに本題を切り出す。

 

──でも、やっぱり父さんが簡単に答える、なんてことはない。

 

「それが目的か……しかし、答えるわけにはいかんな」

「なら……(コレ)で聞きます」

 

次の瞬間、父さんの顔目掛けて守の拳が叩きつけられる。

らしくもない大ぶりのパンチに、父さんもやはり同じように殴り返す。

 

その姿を見て、僕は一つ違和感を覚えた。

 

「答えてください……娘をデータ採取のための道具として使い潰すつもりで送り込んだなら、僕はあなたをシャルから引き剥がす必要がある!」

「生意気な……!青二才が!」

 

数秒遅れて、僕はその違和感の正体を言語化することに成功する。

IS操縦の時間も、教室移動のときも、ずっと身軽に動き回っていた……そんな彼が。

 

──今は、足を止めて父さんと殴り合っている。

 

「本当に使い潰すつもりなのか!シャルさんを守る気なのか!あなたは……中途半端すぎるんだ!」

「……黙れッ!お前に……娘を危険に巻き込みたくない親心などわからないだろう!」

 

無論、背丈が僕と変わらない守と人種からして大柄な父さんでは、なんの工夫もなく力任せに殴り合った時の差は歴然だ。

 

……だが、守の拳は重かった。

 

反撃の拳で父さんの体が浮き、それと同時に鼻血が社長室の床へと滴り落ちる。

 

「わからないし、シャルさんにも伝わってないんだよ!」

「がっ……!」

 

拳だけ、ではない。

その言葉を受けて、明らかに父さんの顔色も変わる。

僕の事を思って送ってくれた、と言っていた。

 

……でも、確かに僕はその事を何も知らない。

一体何が、と思っていた僕の前で、しかし父さんは再び拳を握りしめた。

 

(テメエ)が、(シャルさん)を愛したからには!絶対に……寂しがらせるなんてマネはするな!」

「ッ⁉︎……言われんでも……!」

 

父さんの巨躯が揺らぐ。

……同時に、守が無防備になる。

 

「わかってるに……決まっているだろう!」

「見事……!」

 

反撃の一撃が守を社長室のリングに沈める。

……だが、はっきりとわかる。

守の言葉は届いた。僕たちの勝利だと。

 

それを一瞥してから、父さんは足音も聞こえ始めた社長室の中、そっと口を開いた。

 

「シャルロット。お前に、全てを話す……」

「……全部聞かせて、()()()

 

それから、僕は全てを聞かされた。

二人の女を愛した男の人生のことを。

社内での刺客のことを。

IS学園に送り込んだ、全ての真相を。

 

義母(かあ)さんからは、不妊症のこと。

あの日の、あの平手打ちの真相を。

 

全てを許して家族になるには、時間がかかるとは思った。

 

──でも、強引な手ではあっても、僕は向き合う気になれたから。

 

「ありがとう、守。キミのおかげで……また、()()と向き合う気になれたんだ」

「……僕は何もしてないよ、シャル。君の実家に爆発物を投げ込んで、君の父さんを殴っただけ」

「確かに、そうかもだけど……」

 

こうして文字に起こすと確かに最低だな、と思ってしまう。

でも、彼は僕の問題を確かに今日中に解決してくれたわけで。

 

──頼り甲斐のある小さな背中を見て、そっと微笑んだ。

 

「ここから先、いろいろあるけど安心して……シャル」

「……うん」

不束(ふちゅ)っ……未熟(みじゅ)っ、及ばずながら、全力でキミを守るよ!」

「ふふっ……あまり噛まれるとちょっと不安になるかな」

「あうっ、ごめん……」

 

やっぱり一見頼りないけど、それでも彼はなんだかんだで助けてくれた。

 

そんな彼を信じて笑って送り出した、その日の朝だった。

 

「ねえ、聞いた?VTシステムが搭載された機体が出たってさ!」

「知ってる!星くんが練習中に巻き込まれたんでしょ?」

 

「……え?」

 

気がついたときには、アリーナに向かって全力で駆け出していた。

彼がどうにかなってしまっているような、悪い予感がしたから。

 

走って、走って、階段を飛び降りるみたいに駆けて、走って。

……そして、最初の曲がり角で僕は、誰かに激突した。

 

「痛っ……ぁ……!」

「こふっ!……シャル、廊下を走らないで……」

 

僕と変わらない背丈。

華奢な体躯に、気弱そうだがどこか芯の強さを感じさせる瞳。

 

「む……無傷で済んだって、箒センパイに報告しようと思ったのに……」

「あっ、ごめんね、守……!」

「だ、大丈夫……!シャルには、報告できたから……Vだよ(やねん)!」

 

すごく心配だった、渦中の星守は。

鼻血以外は無傷の状態で、僕に満面の笑顔とVサインを向けてくれたのだった。

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