IS 篠ノ之束討伐any%RTA レギュ:キャラシ固定、ソロ、バグ技あり【完結】 作:九時誤字くじら
明日やる。
……そう言って本当にやる人間も、いなくはないらしい。
明らかに常人より手の温かい彼に手を引かれ、僕は今……飛行機に乗っている。
真意の見えない彼の目を見つめ、そっとため息を吐いた。
「ねえ……本当に1日で解決する気、なの?」
「やって……みせる!」
親指を立てる彼の姿に、不安を感じない訳ではない。
だが、彼に手を引かれながら携帯食料を渡されて、僕は断れずに席に腰掛けた。
……今日の彼は、どこか強引な気がする。
「守、本当に大丈夫なの?」
「大丈夫。作戦は……ある!」
Vサインを出した彼に『冷麺味』の携帯食料を渡し、そっとオレンジジュースに口をつけた。
どうするつもりなのか、それを先に聞いておきたかったのだが彼はずっと黙り込んでいる。
──冷麺味は流石にNGだったのかな。
そんなことを考えていたら、抱き抱えられて僕は再び宙を舞った。
「……ッ⁉︎」
何を言いたかったのかも忘れ、あまりの急加速にISを展開することもしないまま。
デュノア社の上空まで来たところで、ようやく僕は落ち着いてISを展開することができた。
「あっ……舌噛むよ」
「遅いよ!」
「でっ……でも、言わないと今から噛むんだよ……?」
どういうことか。
そう尋ねようとした瞬間、デュノア社に手榴弾が投げつけられた。
「……えっ?……え?」
「突入……いこう!」
白昼堂々の凶行。
同級生が起こした異常事態に、混乱しながら黙り込む。
すると、手榴弾の爆発範囲はちょうど社長室の手前で止まっており、その先に父さんがいたことがわかった。
「な……貴様か!」
「アルベールさんですね。シャルをこっちに送り込んできた
守は真っ直ぐな男だ。
ISから降りると、そのまま父さんに本題を切り出す。
──でも、やっぱり父さんが簡単に答える、なんてことはない。
「それが目的か……しかし、答えるわけにはいかんな」
「なら……
次の瞬間、父さんの顔目掛けて守の拳が叩きつけられる。
らしくもない大ぶりのパンチに、父さんもやはり同じように殴り返す。
その姿を見て、僕は一つ違和感を覚えた。
「答えてください……娘をデータ採取のための道具として使い潰すつもりで送り込んだなら、僕はあなたをシャルから引き剥がす必要がある!」
「生意気な……!青二才が!」
数秒遅れて、僕はその違和感の正体を言語化することに成功する。
IS操縦の時間も、教室移動のときも、ずっと身軽に動き回っていた……そんな彼が。
──今は、足を止めて父さんと殴り合っている。
「本当に使い潰すつもりなのか!シャルさんを守る気なのか!あなたは……中途半端すぎるんだ!」
「……黙れッ!お前に……娘を危険に巻き込みたくない親心などわからないだろう!」
無論、背丈が僕と変わらない守と人種からして大柄な父さんでは、なんの工夫もなく力任せに殴り合った時の差は歴然だ。
……だが、守の拳は重かった。
反撃の拳で父さんの体が浮き、それと同時に鼻血が社長室の床へと滴り落ちる。
「わからないし、シャルさんにも伝わってないんだよ!」
「がっ……!」
拳だけ、ではない。
その言葉を受けて、明らかに父さんの顔色も変わる。
僕の事を思って送ってくれた、と言っていた。
……でも、確かに僕はその事を何も知らない。
一体何が、と思っていた僕の前で、しかし父さんは再び拳を握りしめた。
「
「ッ⁉︎……言われんでも……!」
父さんの巨躯が揺らぐ。
……同時に、守が無防備になる。
「わかってるに……決まっているだろう!」
「見事……!」
反撃の一撃が守を社長室のリングに沈める。
……だが、はっきりとわかる。
守の言葉は届いた。僕たちの勝利だと。
それを一瞥してから、父さんは足音も聞こえ始めた社長室の中、そっと口を開いた。
「シャルロット。お前に、全てを話す……」
「……全部聞かせて、
それから、僕は全てを聞かされた。
二人の女を愛した男の人生のことを。
社内での刺客のことを。
IS学園に送り込んだ、全ての真相を。
あの日の、あの平手打ちの真相を。
全てを許して家族になるには、時間がかかるとは思った。
──でも、強引な手ではあっても、僕は向き合う気になれたから。
「ありがとう、守。キミのおかげで……また、
「……僕は何もしてないよ、シャル。君の実家に爆発物を投げ込んで、君の父さんを殴っただけ」
「確かに、そうかもだけど……」
こうして文字に起こすと確かに最低だな、と思ってしまう。
でも、彼は僕の問題を確かに今日中に解決してくれたわけで。
──頼り甲斐のある小さな背中を見て、そっと微笑んだ。
「ここから先、いろいろあるけど安心して……シャル」
「……うん」
「
「ふふっ……あまり噛まれるとちょっと不安になるかな」
「あうっ、ごめん……」
やっぱり一見頼りないけど、それでも彼はなんだかんだで助けてくれた。
そんな彼を信じて笑って送り出した、その日の朝だった。
「ねえ、聞いた?VTシステムが搭載された機体が出たってさ!」
「知ってる!星くんが練習中に巻き込まれたんでしょ?」
「……え?」
気がついたときには、アリーナに向かって全力で駆け出していた。
彼がどうにかなってしまっているような、悪い予感がしたから。
走って、走って、階段を飛び降りるみたいに駆けて、走って。
……そして、最初の曲がり角で僕は、誰かに激突した。
「痛っ……ぁ……!」
「こふっ!……シャル、廊下を走らないで……」
僕と変わらない背丈。
華奢な体躯に、気弱そうだがどこか芯の強さを感じさせる瞳。
「む……無傷で済んだって、箒センパイに報告しようと思ったのに……」
「あっ、ごめんね、守……!」
「だ、大丈夫……!シャルには、報告できたから……V
すごく心配だった、渦中の星守は。
鼻血以外は無傷の状態で、僕に満面の笑顔とVサインを向けてくれたのだった。