IS 篠ノ之束討伐any%RTA レギュ:キャラシ固定、ソロ、バグ技あり【完結】 作:九時誤字くじら
私はハッキリ言って、目の前の男を見下していた。
目の前の男は、なんでも無いごく普通の一般人だったから。
箒ちゃんを見ていたから知っているけど、彼は「剣道やってる中学生の中では日本一強い」……っていうだけの
忍術を箒ちゃんの影響で齧ってるだけの一般人。
体格も小柄で、真っ黒いロングヘアとも合わさってやる気が感じられない。
「……ただの凡人ごときが、なんで束さんの前に立ち塞がってんのかな?」
「ぶん殴るため……です!」
言葉と共に浴びせられた、手榴弾。
それを重力で押さえつけながらついでに範囲内に捕らえて、私は目の前の凡人を踏み潰そうとする。
……だが、そうしたと同時、束さんの胴体には火花が走った。
「これは、混乱した社会の分……!」
「ハッ……そんな速度で動くなんて!ビックリしたけど、そんな手品で……」
ISの兵器としての動き方について、束さんは一切全力を出した事がなかった。
……目の前の男は、徹底的に
「凡人の割には随分と研究したねぇ!」
「これは、荒れたシャルの実家の分……3発!」
……射撃センサーについても、狙う箇所は頭に強めの補正がかかる筈なのだが胴体と脚を狙われた。
目の前の男は、いやらしいまでに徹底的だった。
身体のあちこちから血を流しつつ、私はようやく決心を決めて男の肉体ごとISを解体する事にする。
「でもねぇ、いい加減に鬱陶しいんだよ!」
「シャルの実家、大変な事になったんだから……!」
殺意を込めて、踏み込む。
……だが、あと紙一重で指が触れようというところで日本刀で指先を弾かれて、ISを解体することは叶わなかった。
それどころか反撃のクナイに斬り裂かれ、私は思わず腕を引きながら舌打ちする。
「鬱陶しいね、お前……まるで、束さんの事をずっと見てたストーカーみたいだ」
「箒ちゃんの苦労を隣で見てました。お陰で束さんの人格はいやでもわかりますから!」
「へぇ……!そんなモノで束さんを解析しきった気になれるなんて、凡人のくせに自己肯定感高いね!」
クナイを奪ってやろうとすれば、その次の瞬間に束さんが握っていたのは手榴弾のピンで。
咄嗟に後ろに大きく避けるべく飛べば、今度は手榴弾が足元に飛んでくる。
口では強がってみたが、確かにこの男はかなり私を解析している。
──ちくしょう、まるで私との戦いを
「篠ノ之束。切り捨ててやるぞ……っ!」
「くっ……ハハハッ、やってみろよ
居合の構えでこっちに向き直った男。
その姿を見て、私は思わず強がり、笑った。
──ここまでやられたら、ちーちゃんの不意を突けなくなるリスクを承知でISを使うべきか。
そう思って少し迷っていた私の肩に、突如鋭い痛みが走る。
日本刀の切先が、肩口を深々と切り裂いていた。
「……っ⁉︎投げた……⁉︎」
「
束さんは、一応だが自分の弱点を知っている。
──王道の戦闘スタイルにしか対策を練っていない。
それは
王道の戦闘スタイルは
「凡人……褒めてあげるよ、
「褒め慣れてないから上から目線の言い方になっちゃうかもけど、こっちも褒めるね。僕に、命懸けで本気を出させる決意をさせた。束さんはすごいね!」
──だが、目の前の男はまともじゃない。
徹底的に読んで、徹底的にめちゃくちゃな戦いをして、徹底的に異常な行動でこっちの意表を突いてきた。
「ごめんね!
「ありがとう。
……そして、束さんがISを展開したと同時に、彼のISが燃え上がる。
実を言うと、非常に厄介だ。
だが、一方で問題ない、という風にも考えていた。
何故なら、そもそものスペックが違うから。
機体のスペックも、
だから束さんは、今回こそ余裕だと思っていた。
「ISが燃えただけ……そんなんで束さんの意表は付けないな」
「いや、僕が燃えてるんだ」
だが、違った。
体に走る灼熱感に、
直接、ISスーツを貫いて火に焼かれた。
何故?胸部装甲を削り取られたから。
否、
「その技……ッ!」
「束さんも燃え上がりなよ!炎最高!炎最高!」
自分もやる技だが、それ故にかけられると混乱してしまう。
そこで距離を取った束さんの胴体に、追い討ちするようにさらに斬撃が飛んでくる。
手に刃物はない。
なら、何が束さんを斬り裂きにくるのか?
──答えは、剣のように燃え上がる火柱だ。
「束さんに問題だ!バーンはバーンでも食べられないバーンはなーんだ!」
「おかしいよ、お前……!」
「答えは
ISは自己進化するシステムを搭載している。
……でも、
否、既に理論として作り上げているシステムでは『理論上の永久機関』なんていうのもあるし、ありえないとまで言い切れるわけではない。
だが、この目の前で起きている事は、私の頭脳でも理論的に説明できない。
まるで、異世界の何かを召喚する儀式でも見せられているようだった。
「続きだよ……テロで危険な目にあった鈴ちゃんの分!」
だが、それでも勝てる見込みはある。
燃え盛る火柱を杖で受け、そのまま受け流そうと体を捻った。
──だが、その瞬間、束さんの足に突如として鋭い衝撃が走る。
「急遽呼び出された一夏くんの苦労の分は軽めの鉛玉換算にしておいてあげるよ!無傷だし割引ね!」
「ぐうっ、銃を……!」
「抜いたとこ、見えないでしょ。
そうだ、彼の武器は『目立つ無の炎』だけじゃない。
片手で、器用になんでも武器を使ってくるのだから……
そこまで考えて、私は気づいた。
──ただの凡人に、執念と狂気で押されかけている。
このままではいけない。
そう考えて後ろ手にホログラムのキーボードを出現させ、咄嗟に『
「強制発ど……ぐっ!」
「そんな不穏なモノ、入力する前に止めてやる!」
──だが、発動する寸前で手首を燃え盛る手に掴まれ、阻止された。
0.01秒もなかった、ほんのわずかな瞬間で……距離を詰められたのだ。
動揺しつつも、至近距離に現れた彼の喉元目掛けて
「お前は……なんなんだよッ!」
「僕は星守、箒ちゃんの友達で……!」
だが、そのドスが入ったと思った瞬間……私の視界が
不可解な現象に見えたが、私はこの技を知っている。
だが、それ故に警戒していなかった。
篠ノ之流古武術の投げ技、『鍔迫り返し』なんてマイナーな技。
──本来なら警戒するほうが愚策なレベルの、そんな小技なんて。
「──生徒だよ、
「箒ちゃんに、友達……!」
篠ノ之流の技を身につけた、まさかの伏兵。
驚きつつも立ち上がったが……
──なるほど、足は動かない。
「友達として……僕はあなたをぶっ飛ばすと決めていたんだ。OK?」
めちゃくちゃな事を言う奴だ。
正直な話、束さんのした事はそんなんで済ませられるレベルの事でもない。
それを考えて燃え盛る彼の瞳を見つめたとき、束さんの口は勝手に動いていた。
「──OK!」
夕暮れの街に、炎が空を切る音と鋭い打撃音が響く。
それと同時刻をもち、篠ノ之束は。
──生涯の『無敗伝説』に、幕を下ろすことになった。