IS 篠ノ之束討伐any%RTA レギュ:キャラシ固定、ソロ、バグ技あり【完結】 作:九時誤字くじら
「……ここは?」
「守!箒っ、守が目を覚ましたよ!」
シャワーを浴びていた私は、不意にそんな言葉を聞いてタオル一枚のまま、『防火寝袋』で包まれた私のベッドの上に寝る少年の元に急ぐ。
「……やったよ、箒ちゃん」
「馬鹿!姉さんから聞いたぞ、随分と無理をしたようだな!」
いつも通り困ったように笑う少年に、しかし私は思わず掴み掛かるようにしながら叫んでしまう。
……彼は、やはり
だから思わず近づいてしまったワケだし厳しくもしてしまったのだが、無理するところまで同じだったとは恐れ入る。
「本当に心配してたんだよ、箒は。ここ数日寝不足で体調不良気味だったから、織斑先生が無理矢理保健室に連れて行ってたくらいだし……」
「まっ……待て、シャルロット!守も聞くな!えっと……これはアレだ、みんなそんな様子だったからな!私だけではない!」
守は寝袋に入っていて耳を塞げないのだから、こうして怒鳴るのもなかなか理不尽だとは思うが……仕方ない。
どうしても私は誰かを素直に心配したり、まっすぐ思いを伝えたりするのが気恥ずかしいと思ってしまうタチなのだ。
これは、彼も理解した上で付き合ってくれている。
いい友人だ、と思うし、それに救われている。
「確かにそうだね。みんな心配してたんだよ、一夏もそうだし、のほほんさんも鈴も、ラウラも簪ちゃんって子もそうだし……あと、先輩方まで心配してお見舞いに来てたんだよ。金髪の先輩は特に心配そうにしてたし、簪ちゃんそっくりの先輩は何故かロシア産の
「ごっ……ごめん、って伝えといて……!最後の人は僕が燃えてる姿しか目にしてない人、多分だけど誤解してる……!」
「守、お前は
「……あっ!」
「まずい、バレた!」といった感じの表情を浮かべた彼の腹部に、思わず無言で竹刀を振り下ろす。
病み上がりということもあってかなり手心を加えてしまったものの、まぁ自分の体に火を付けた事への叱責としては十分だろう。
「はぁ……謝る気があるなら、自分の足で謝りに行け。あと、4千度の高熱を出して倒れていたお前を連れてきてくれた織斑先生にも礼を言うことだ」
「そうだよ!織斑先生がジャケット焼かれながら学園まで連れてきてくれてたんだからね!」
「あはは……熱は僕のせいじゃなくて、この子のせいなんだけど……」
そう言ってもぞもぞ、と寝袋の中から取り出したペンダントトップを指差す彼の体から、なぜか再び炎が迸る。
何故だろうか、その炎は「私は悪くない!」というISからの必死の弁明のようにも感じられてしまい、慌てる彼の姿を見てもなお、少し笑ってしまうくらいだった。
そして、彼は笑顔を浮かべたままの私の顔を見つめてから、少しだけ真剣な顔になって、寝袋から手を出した。
「……ねえ、箒。束さんを倒したけど……話せた?」
「ああ、今はIS学園に拘束されている。面会に行ったが、
「世界中のどこからも干渉できないから、話す時間はたっぷりあると思うよ。箒と束さんの関係を修復するには、まだ時間が要るかもだけど……」
そこで、私は改めてあの後の事を話す事にした。
千冬さんの手で姉さんが拘束され、学園の地下で幽閉されている事。
束さんはIS学園の所有する守のデータを奪い、今はそれを解析しながら「謎の現象」を地下で研究していること。
そして、人間の限界を超えた守の姿を見た束さんは、時折り千冬さんに人間の限界を越える方法にまつわる研究を提案している事……
「ちなみに件の″人体実験″に纏わる要請は人道の観点から却下されているが、お前の健康診断をできる人間は姉さん以外いなかったから通った。……それで、そろそろ姉さんがお前の『沸騰しない血液』と『灰にならない骨髄』を解析しにくる」
「目を覚ましたからもう少しの辛抱だよ。がんばってね、守!」
「言われてみると、大変な体になっちゃった……かも?」
言われるまでもなく、大変な事だった筈の彼の体の改造。
……それの発端となった願いを思い出して、私はそっと今回の件を最高の友人に感謝した。
「……まぁ、発火体質の事はもういいや。だから箒、今度こそお姉さんとも仲良くね」
「ああ。今年の夏にでも、一緒に海に行きたいな!」
中学生のころ、剣道の全国大会の1日前。
決勝戦に進む男女の内二人が同じ学校、なんてことは想定されてなくて、まさかの男女同室になった夜。
2人きりの合宿所の中で、彼にだけ話した夢が再び鮮明に蘇った。
「……私でも忘れようとしていた夢だったが」
「任せて。次は箒の親族を狙う全テロ組織を壊滅するターンだねっ!」
あまりに物騒で強引だが、しかし今となっては彼の圧倒的な実力のおかげでどこか現実味を浴びた『私の夢を叶える計画』。
……初めて私にそれを語った日から全く変更もされていない
「ふふっ……覚えていてくれたんだな、守っ!」
「忘れないよ。友達の夢だもん!」
儚く消えるはずだった、七夕の夜の小さな願い。
雨の夜だから、彦星も織姫も聞いてくれやしなかった、だからこそ彼にだけ伝わっていた願い。
──それでも彼は、たった1人で私の願いを叶えようと頑張ってくれている。
「最初に言っておくね。どんな
「わかっている、お前はそういう奴だ……だが、
「もちろん!……じゃあ、よーい……スタート!」
再び彼の口から、始まりを告げる言葉が聞こえる。
『また家族で誕生日に海に行きたい』なんていう無謀だったはずの願いは、案外叶いそうなところまで近づいてきていた。
これにて完結とさせていただきます。
感想をくれた皆さま、途中から返信できなくなってしまいすみません。
本当にありがとうございました、励みになりました。
最後まで見てくださった皆さま、本当にありがとうございます。