IS 篠ノ之束討伐any%RTA レギュ:キャラシ固定、ソロ、バグ技あり【完結】   作:九時誤字くじら

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裏3話:クソ野郎

わたくしは、ずっと努力して生きてきた。

手の届かない先に、手を伸ばすみたいにして。

 

ずっと、長い間努力してきたのだ。

血反吐を吐く思いで努力して、積み重ねて。

 

──だが、それでも目の前の男には、一太刀も浴びせられずにいた。

 

冷たい瞳と、突き立てられる刀。

その感触を嫌でも覚えてしまいそうになる程、圧倒されている。

 

「……来て、『日本刀(カタナ)』」

「何を、してますの……!」

「インターセプターのハンデは……なかった事にしようかなって」

 

焦るわたくしの顔を立てるみたいに、わざとらしい決闘の形で投げつけられた日本刀。

 

──お膳立てされていることはわかっても、何故か負ける未来が浮かんできたわたくしは、思わずその日本刀に手を伸ばす。

 

「……参りますわ」

「はい、いいですよ」

 

そして、日本刀を腰だめに構え、彼の方を向きながら抜刀しようとした瞬間。

 

──突如、熱い爆風と破片がわたくしの体を吹き飛ばした。

 

その勢いと共に壁に叩きつけられるまでが、まさしく一瞬の出来事。

わたくしは、その事態を理解するのに一瞬だけ時間を要した。

 

そして、バリアにもたれかかるような姿勢でダウンしながら、やっと事態を理解した。

 

「……騙し罠(ブービートラップ)!」

「です!」

 

元気のいい返事と、突き刺さる日本刀。

わたくしの心の中に満ちていたのは、煮えたぎるような憎悪だった。

 

調子にノせられて、近接武器(インターセプター)を捨てた。

一瞬のことを理解できず、無防備に撃たれた。

無防備に距離を詰められ、武器を封じられながら至近距離で斬られまくった。()()()()()に、無様にも敗北した。

 

そして、何より最後まで自分を信じ切ることができなかった……

 

──心が、わたくし自身への憎しみに満たされた。

 

 

俺は、昔から卑怯な人間が嫌いだ。

よってたかって、女の子1人を虐めるような奴が嫌いだ。

武器なんか手にして、クラスメイトを虐めるような奴らが嫌いだ。

 

──力があるのに、汚い手を使う奴は特に嫌いだ。

 

至近距離での鍔迫り合い、声が聞こえる距離で俺はそっと声を絞り出す。

 

「お前……その戦い方。箒に教わったとは思えない邪道だな」

「……!」

 

その距離で、彼は投げ飛ばしてくるでもなくこっちに対応してきた。

だから俺は彼の目を見つめながら、そっと詰め寄る。

 

「なんであんな戦い方をしたんだ、守!」

「僕が……篠ノ之流の″忍術″を継いだからだよ」

「……ッ!お前、箒に『剣術』以外も教わってたんだな……⁉︎」

 

──意外な返し。

 

確かに彼の使った技は、火薬を使う『忍術』の『火遁』、そしてそれまでの行動は『五情五欲の理』と呼ばれる感情誘導の忍法に分類されるものだ。

そうなると、彼があんなことをした理由もわかる。

 

「ああ。相手の心理を利用する忍術があったな。それを使ったのか?」

「……詳しいね。一夏くんも経験済みなのかな?」

「ああ。これでも、篠ノ之流(そっち)は一通り経験済みでな」

 

全力を尽くす、というのはある種では規範に乗っ取ったもの。

だが、彼にとってはそれが手段を選ばない事と繋がるのだ。

 

それについては、良いとも悪いとも言うべきではない。

オルコットさんは決闘に乗ったし、彼は正面から試合中に騙したのだ。

 

だから、あの件はそれで終わり。

……つまり、ここから先はただの戦いだ。

 

「じゃあ……行く(ブッ倒す)ぞ、守」

「あっ、うん。来て(ぶっ殺せ)よ、一夏……!」

 

互いに、勝負に賭ける思いは別だ。

ノールックで放たれる銃弾を覚悟と共に受け止めながら、俺は突撃する。

 

──この距離なら、()()打てる。

 

SEの量は残り少ない。

だが、『零落白夜(れいらくびゃくや)』に賭けてみるには十分な量が残っている。

 

一撃。

全身全霊をかけた、魂の一撃が。

 

「……タイミング、ここでしょ」

「なっ……!」

 

──胸元への突きで、完全に勢いを殺された。

 

思わず止まった俺の『白式(びゃくしき)』を白刃は理不尽にも斬り裂き、文字通りの返す刀で受ける間もなく袈裟斬りにされた。

 

そして、無慈悲なブザーの音が鳴る。

 

「セシリア・オルコット。織斑一夏。対立候補2人……」

 

ざわめく客席。

その中で、彼は笑みを浮かべることもなく、困惑するでもなく、無表情で刀を鞘に収めてから宣言する。

 

「ブッ(コロ)した」

 

客席が撤収していく様子が見える。

……もう、試合は終わったのだ。

 

俺は痛む体に鞭打ち、そのまま自分の入ってきたピットまで戻っていった。

 

 

「守はともかく……大見得切っておいてオルコットにも負けたな、一夏」

「ぐぅ……」

 

帰り道。

同行していた幼馴染にぐうの音を出す、くらいしかできない正論を浴びせられ、思わず胸を押さえる。

 

「……いや、箒。アイツは何者なんだ?篠ノ之流の忍術とか使ってたし、ノールックで刺しにきたよな?」

「ああ、中学時代に色々あったんだ。私はアイツの友達になって色々教えたし、私は()をアイツに託した」

「夢……?」

 

中学時代の、夢。

箒がなかなか語ってくれなかったブラックボックスの話に、思わず興味を持ってしまう。

 

「……なぁ、箒」

「なんだ一夏。焼肉の匂いの事か?」

「いや、そうじゃねえよ。……でも、確かにするな」

 

だが、その思考を打ち切ったのは焼肉の匂いだった。

ホットプレートで、肉を焼くような匂い。

……いや、肉を焼き終えた匂い、というのが正しいか。

既に焦げ臭くなっている、恐らくホットプレートから発せられる匂いだ。

 

元を辿ってみると、俺たちの部屋の中から匂いは発生していた。

ドアを開けて中を覗く。

 

すると、ホットプレートの中には蓋がされており、星はどっちも寝ていない空っぽのベッドで眠っていた。

 

「……このホットプレート、何焼いてるんだ?」

「ともあれ、空焚きは危険だな。ホットプレートの電源は落としておこう」

 

眠っているというのに、まだ焼き続けるとは不用心だ。

ため息を吐きながら箒が蓋を取る。

 

すると、突然真っ黒い煙が周囲に広がる。

 

「けほっ、こほっ……!」

「ごほっ!……箒、口を押さえて下がってろ!」

 

目に痛いほどの煙。

思わず涙目になりながら下を見れば、ようやくホットプレートの中身が見えるようになっているのが分かる。

 

──中では、ラファール・リヴァイヴが焼かれていた。

 

 

「「わからない!」」

「……どうされましたの、お二人とも」

 

激戦を終えての、翌日。

私はどうやら星守という男について理解していなかったような気がして、思わず頭を抱えた。

 

「ああ、セシ……オルコットか。守がホットプレートで専用機(ラファール・リヴァイヴ)を焼いていたのだが、あれはどういう意味があるのかわかるか?入試主席なのだろう、分かるのではないかと思ったのだが」

「セシリア、で結構ですわ。……ISには自己進化のプログラムが搭載されておりますわ。ですから、それを使って強くなろうとしているのではないでしょうか……ISはどんな過酷な状況にも適応する、と言われてますから」

「なるほど。肉のコゲを焼いた煙で燻し続けていたのもそれが理由か」

「それは……その、一体どういう状況ですの?」

 

困惑するセシリアと共に、冷麺を啜る彼を見つめる。

どうやらクラス代表にはそのままストレートで彼が選ばれたらしく、その顔にはどこか誇らしげな笑顔が浮かんでいた。

 

……そういえば、剣道の試合で師である私を差し置いて初めて大将に選ばれたときもあんな顔をしていた気がする。

 

「あっ……みんな、おはよう。あっ、あと、セシリアさん、昨日の破片で……ケガとかしてない?」

「一つも。……ISの『絶対防御』システムは優秀ですわ」

「よっ、よかった。じゃあ、気兼ねなくセシリアさんをナンパできるね!……痛い!」

 

遠回しに姉を褒められた事には複雑だったが、わざとらしい彼の発言のおかげで私は彼を遠慮なく蹴ることができた。

 

なんというか、彼はこういう時に妙に気を回してくれるのである。

 

「守!お前は代表になったんだ。代表らしい事の一つでもしたらどうだ?」

「いいな、それ。代表らしいことって……宣戦布告とかか?」

「そういうと思って、宣戦布告ならしに来てやったわよ!」

 

一夏と一緒に盛り上がりながら話していると、教室の入り口に見かけた事のない少女が入ってくるのが見えた。

 

茶色い髪を2つに括った、小柄な少女だ。

勝ち気そうな表情を浮かべた少女は、そのままこちらを指差してくる。

 

「──そこのチビ男!一夏を差し置いてクラス代表やる気なら覚悟しなさいよ!」

 

正直、この発言は一瞬だけ意味がわからなかった。

一夏は2回負けたわけで、2回とも勝った守がクラス代表になるのはむしろ自然な事。

 

だが、彼は色々と抗議しようとする私たちを腕で制して立ち塞がると、そのまま会話中の少女の前に立ち塞がった。

 

机の上に空っぽの冷麺の器を置き、スープまで飲み干した彼にそっと合図をする。

 

彼は代表だ、このくらいのトラブルは難なく収めて貰わなくては……

 

「ハッ、何よ……やるの?言っとくけど、私、強……」

「地獄に落ちろ!」

 

ダメだ。

親指を下に向けて笑顔で叫んでいる彼の姿を見た瞬間、私はそう確信した。

 

少なくともこの星守という男、取り繕わなかった時の人当たりの悪さはあの()()()()()なのだから……

 

「……あァ⁉︎」

「はぁ……」

 

案の定ブチギレた少女を前に、私は慌てて守を回収する。

 

一瞬で恨みを買った彼女との対決まで、残り1週間。

またしても、彼に対して特訓を付ける日々が始まろうとしていた……

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