IS 篠ノ之束討伐any%RTA レギュ:キャラシ固定、ソロ、バグ技あり【完結】   作:九時誤字くじら

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体調不良を起こしたので初投稿です。


4話「希望か、狂人か」

今のこの道を選んだことに、後悔はない。

 

暗部にいれば命の危険がつきまとう。

専用機を持てば、責任がつきまとう。

生徒会長になれば生徒から挑戦される。

 

姉として完璧であれば、妹に重圧をかけるかもしれない。

 

だが、私はそれを選んだことに後悔はない。

 

暗部にいれば、裏から日本を守れる。

専用機があれば、表からも守れる。

生徒会長になれば学園を変えられるし、優秀な妹に恥じない自分であることもできる。

 

「あっ……生徒会長!」

「あら?闇討ち──」

 

だが、この時私の頭によぎったのは「人生のどこを間違えたか」だった。

だって、何の因果もなしに現れるには、『ガスバーナーを手に持ち、ペンダントを炙りながら火だるまで走ってくる少年』は少しホラーすぎたから。

 

近くに来るなり殴りかかってくる……ような行動を見せた彼を止めるべく、私は咄嗟に消火器目掛けて走り出す。

 

「待って……何が起こってるの⁉︎」

「簪ちゃんにあなたがかけた『呪い』、解きに来ました」

 

突如、飛んできた燃え盛る油と膝。

完全に受け切ることができずに、私は手のひらと手の甲を同時にヤケドしてしまった。

 

だが、ようやく私は理解できた。

目の前の敵は、()()()()()()()()()()なのだと。

 

簪ちゃん云々はよくわからないが、この火だるまになって標的を襲うような頭のおかしさでシャバにいる方法なんて……暗部に潜るしかないだろう。

 

「驚かせてくれるわね。でも……ここから先はあなたが驚く番よ」

「驚きませんよ。簪ちゃんより強いんでしょう?」

 

どうやら、簪ちゃんの事はご存知だったらしい。

ならば本気を出さなきゃな、と思いながら周囲の火を消し始める私に、しかし彼は消火器を投げつけてくる。

 

咄嗟に腕部の装甲でガードするが、そこで彼の斬撃が飛んでくる。

 

「あら、この距離でお姉さんとやり合うつもり?……そういう無謀(オイタ)は感心しないわねぇ」

「この距離が比較的楽だから……更識楯無(ロシア代表)、試合は全部見たよ」

 

試合を見た上で近接戦闘を挑んでくる、この辺から見るに胆力はなかなかだ。

ランスで頭や足を狙って突いてみたり、払ったりしてみても全部的確にガードするあたりセンスも高い。

 

──恐らく、手練の剣客だ。

 

「腕に自信がお有りのようね」

「無いよ……だから、これから付けるんだ……!」

 

戦ってみると、彼は何やら理不尽なくらい強かった。

突きは全てガードしてくるし、距離を離そうとすれば拳銃で攻撃しながら距離を詰めて斬りつけてくる。

 

まるで蜃気楼でも相手にしているかのように、攻撃が届かない。

脳裏に浮かぶのは、ダリルとフォルテの2人と同時に練習試合をして、始めて敗北した日のこと。

 

──少しどころじゃなく弱気になってしまうくらいに、彼の剣には隙がない!

 

「……キミ、本当に1年生?」

「簪ちゃんと同じ……1年生だよ」

 

反撃の袈裟斬り。

それを受けた瞬間に、私は行動に出ていた。

 

ランスの先端にナノマシンを仕込んだ『爆裂突き』。

……躱された、見たことのある技だったのだろう。

 

ガトリングで可動域を制限しながらの蛇腹剣。

……ダメだ、しっかり蛇腹剣の軌道を読んで、ガトリングの弾丸ごと全部受け流されている。

 

自分を巻き込む覚悟を()めて、水蒸気爆発の連発。

……ついに彼を吹き飛ばす。

 

それはそうだ、避けようの無い面制圧なのだから。

あの超集中を強いられた直後のアレは、絶対に避けきれない。

 

「キミ……随分と、強かったわね……!」

「あっ……危なかった……!」

 

だが。

 

──彼は、その爆風の中から飛び出て、私を袈裟斬りにしてきた。

 

「……嘘でしょ、ガードしたの⁉︎」

「しきれてない……ボロボロだよ」

 

見れば、その日本刀はすでに刃が欠け、全身にヒビが入っていた。

それでも彼が無事な理由は、わかる。

 

……今の今まで彼は、一撃も受けていなかった。

つまり、彼はベストの状態で水蒸気爆発を受けた……

 

「″火遁″……!」

「あっ……」

 

そして、それに驚いて止まった瞬間に、私の装甲が突然火を吹く。

彼は爆煙に紛れるようにして、見えないようにグレネードを投げたのだ。

 

やられた、と思った次の瞬間に、頭を撃たれて『絶対防御』が作動する。

ついに敗北した。

 

……めちゃくちゃすぎる撹乱戦法。

心を乱されて、暴れられた末の、大敗。

 

翌日に決闘で引き起こした騒音被害について先生に叱られている最中にも、私は昨日の彼の事が忘れられないでいた。

 

「……あの、楯無さん。一つ、聞かせてください」

 

私は、彼の手に付着した粉のお陰で彼の目的をすぐ理解した。

この粉末は、ISの整備科で使われている塗料と同じもの。

そして、最近(うつほ)が整備科の人間たちと話していたもので、最新の機体に使うような最新式のモノ……

 

打鉄タイプの新機体に使う塗料、つまり簪ちゃん関連だとわかる。

だから、私はあえて彼の口から目的を白状させることにした。

 

「あら、生徒会長になりたいって話?」

「あっ、違います……昨日も言いました、ごめんなさい。……あの、簪ちゃんを、どう思ってますか?」

「適当に嘘言って暴れられると困るから正直に言うと……優秀で可愛い、私の大好きな妹よ。最近、疎遠になってるけど……」

 

彼の表情は、無表情のままだった。

あまり表情豊かなタイプには見えないが、慎重に言葉を選べている、ような気がする。

 

──本音を言って、正解だったのだろう。

 

「そうですか。じゃあ、次に……ISの作り方を教えてくれませんか?」

「私なりのやり方でいいなら、メンバーは少数精鋭がいいと思うわ。情報を共有するのは信頼に足る相手だけにしたいもの」

「……単独開発(ソロ)は?」

 

「はっきり言って無謀ね。私も一人でできたのは途中まで」

 

彼の表情が、小さく動く。

その姿を見て、ようやく私は彼の真意を察する事ができた。

 

彼は、簪ちゃんの開発を手助けしようとしているのだ。

そうなれば、私が彼を邪魔する理由はもう、ない。

 

彼女のコンプレックスを克服させ、成長する機会を与える人間に。

そして、彼女と私を引き合わせる共通の知り合いに。

 

──彼は私の、最後の希望なのだ。

 

「とりあえず、簪ちゃんの事はキミに任せるよ。その自分勝手さ(エゴイズム)、簪ちゃんにもいい方向に影響を与えるかもしれないからね」

「はいっ!……まかせて、ください!」

 

拳を突き合わせ、彼に向けて微笑む。

彼が簪ちゃんを導いてくれるように、今はそう祈るしかなかった。

 

 

俺の人生で、選択肢なんて出た覚えがない。

 

ISに乗ってアメリカの代表候補生になったのは、必然だった。

専用機が支給されたのも、やはり血筋からして必然のことだった。

 

今付き合ってる彼女ができた時だって、確かに見える世界は変わったけど『運命』は変わらなかった。

 

そうだ、『呪われた血』の運命は決まっている。

……闇に落ちて、悪に染まる。

 

「……んで、ここはドコだ?」

「あっ、はい。更識簪ちゃんの部屋です……」

 

確かこんなシリアスな事を考えていた矢先、俺は全身が激痛に苛まれて気絶したというのを思い出した。

 

──あの感覚は知ってる、テーザーだ。

 

つまりその女の部屋に、俺は閉じ込められたということで。

 

「……で、お前(ホシ)だよな?縄を解いてくれねえか?」

「あっ、ご存知で……でも、いやです」

「なんでまた」

「僕……誘拐犯(ホシ)です」

 

随分な有名人に誘拐されたらしい。

光栄に思い、俺はひとまずISを展開するために手先に感覚を集中させた。

 

──だが、突然響いた爆音に意識をかき消され、ISは展開できなかった。

 

何故だ、と彼の方を見れば、彼の床に置いていたスマートフォンが最大の音量でびっくり系ホラー動画を流していた。

 

まるで俺がISの展開を試みるタイミングをコンマ以下まで読んでいたかのような、ジャストタイミングでの妨害。

思わず頬に冷たい汗が垂れる。

 

「……和製(ジャパニーズ)ホラーは心に来るな。絶望感しかねえよ」

「あっ……お言葉ですが、これは普通の忍術です。″霊遁の術″。……誘拐しておいてあつかましいですが、武器を持たずに話を聞いてください、ダリル先輩」

 

あつかましいですが、というのは気弱な傾向にある日本人(ジャパニーズ)がたいてい頭に着けがちな接頭語で、決して「あつかましい事を言いますよ」という意味ではない。

 

……だからだろうか、ここまであつかましいお願いをされたのは初めてだ。

頭を抱える俺に、彼はそのまま続けた。

 

「この学校には、テロ組織を招かんと試みている()()()()がいます。僕がそれを知ったのは、つい最近のことです」

「……」

 

──俺のことだ。

 

まさかバレたか、と思いつつも、しかし彼の様子を見て思い直す。

こっちに興味はなさそうな顔。

つまり、まだ彼は気づいていないのだ。

 

どこまで察しているのかはわからないが、冷や汗をかかないようにしつつ彼の顔を睨みつける。

 

「……実はお前なんじゃねえの?そうでもねえなら人拐う目的はなんだ?」

「あっ、はい。……テロ対策のため、エンジニアが必要です。協力してください。専用機持ちが疑わしいので、信頼を得ておけばダリルさんにも有利に働きます」

 

エンジニア、テロ対策。

正直、彼の言うことは疑わしいことこの上なかった。

 

──だが、フォルテに疑いの目が向かないよう動いてみるのはアリだ。

 

今のところ、フォルテは何も悪くない。

彼女がみんなの信頼を得る事ができるなら、それはいい事だ。

 

「聞くが、テロ対策ってなんだ?」

「あっ、はい!(かんざし)ちゃんの専用機を完成させ、有事の際に動け(キレ)専用機持ち(カード)を一人増やします!」

 

聞けば、確かに方法は単純。

しかし、なかなか確実な方法である。

 

それに、チームワークをする中でフォルテを暗部(こっち)に引っ張らないでも済むような……

俺が抜けた後のフォルテにとって、支えになるような絆ができれば。

それが、きっと最善だ。

 

「ハッ、なら選択肢はねえな……」

「エンジニア、なってくれますか?」

「おうよ!ハードだろうがソフトだろうが、なんでもイジってやる!こちとらそういうのは得意なんだ!」

 

その答えと同時に、縄が解ける。

彼の結び方は特殊なものだったらしく、どうやら全身の縄全てが一箇所を引いただけで解けるものらしかった。

 

ひとまず、決まりだ……彼の作戦に一旦委ねてみよう。

そう考えた俺は、目の前の男に向けて拳を突き出す。

 

「ひっ……いいいいイキってすみません……!

「まだ何も言ってねえ!それと謝るなら誘拐した事だろうが!」

 

拳を突き合わせて承諾してやろうと思っていたが、しかし彼が頭を抱えて蹲ったせいで未遂に終わる。

 

ずいぶん頼りない希望だな、と俺は、冷や汗の垂れる頬を掻いてため息を吐いたのだった。

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