Q. シリウスシンボリに弱みを握られるとどうなるのか 作:ルルザムート
いや3年間もそんなことしてたらそりゃシリウス様キレますよ!?
でしょうね、でもナメられたら終わりとかいうヤ〇ザみたいな取り決めが彼の中で存在していたんです
事実そのおかげでアイスは彼女を制御できていた
もちろんアナタの言う通りシリウス様の中には《どうやってやり返すか》その一点だけが積み重なっていき、アイスの弱みを握ったことでそれが爆発しました
弱みって…?
シンボリ家から戻った翌日のことです
「こんな朝早くに呼び出してなんのつもりだ?」
朝からよく走っているサイレンススズカだってまだ寝ている時間だ、もうすぐ4月とはいえここまで早いと外はまだ暗い
シリウスが鍵を開けていたのか教室まですんなり入れたが
彼女曰くこの上なく大事で重要な事項だと…そう言われた以上トレーナーとして行かないという選択肢はない
飲みかけのコーヒー缶を片手に扉を閉める
「そのために昨日早く帰らせたんだ、とりあえずこれでも見ろ」
わざわざ呼び出した用というのはお前のスマホを見ることなのか?
外付けのUSBメモリーをぶら下げながら再生される動画に目をやる
『マスター!もう一杯頼むよー!』
…私の声?というかここに映っているバーは──
「もっと先だな、少し飛ばすぞ」
「いい加減に何がしたいのか早く
『しりうすぅー!すき!すきすき!大好き!ねーしりうすは?』
!!??
うわぁなんてふざけた口調…弟さん男性ですよね?
…………ええ、まぁ
人間って3年間もほとんど休まず張り詰めていたら気が狂ったりするものなんでしょうかね…
『おいおい良いのか?そんなこと勢いで言って?後で後悔するかもしれないぞ?』
『しなーい!大丈夫ー!』
普段の氷のような表情が崩れかけるがプライドで持ち直す
シリウスはスマホに全く興味を示さず、私の顔を見て不敵な笑顔を浮かべている…
「で、後悔したか?」
「────」
いや、待て慌てるな、そもそもあのバーは普段張り詰めている私が唯一自由に寛げるシークレットバー。入るには12桁の暗証番号が必要で、その上私自身がスポンサーをやっているおかげで退店毎に暗証番号を変更できており、当然窓や裏口も無い
言ってはなんだが部外者が中に入れるかどうかという一点だけで考えるならばそこらの銀行以上のセキュリティだ、シリウスが入れる要因は一つもない
私の声によく似ているが今の時代音声なんて簡単に作れるものだ、シンボリ家の財力があれば片手間にできる
バーの内部も住所と建築家、経営者、職員が分かればある程度推察できる
あれは私じゃない、ハズだ
「……そんな冗談を言うためだけにこんなに朝早く呼び出したのか?」
「っはは、流石は氷の女って二つ名がついただけはある、だが冗談のつもりはないぜ?」
…え?氷の女?でもトレーナーさんは弟──男性なのに?
…………
ルチアーニさん?
………さっきの、写真を見たでしょう
ああ確かにアレなら女性にも見えますね!
「4、6、8、1」
「シリウス、冗談はやめろ」
謎の数字を呟いていくシリウスだったがその意味に気付いた瞬間血の気が引いた
「2、2、7、0、9、3、5、1」
12桁の、数字…
「ああ、確か昨日まではこれで扉が開いたんだったな?」今もそうかは知らないが
「………その番号をどこで知ったんだ」
あの店は私以外には客が3人しかいない、マルゼンスキー、マルゼンスキーのトレーナー、そして理事長秘書のたづなだけだ
もちろん3人以外に暗証番号を教えたことはない
「んー?教えてやってもいいが…そんな態度じゃ教える気にはなれねぇな」
────グ…
背に腹は変えられない、私はこの3年間で初めてシリウスに頭を下げた
「──お願い、です。その番号をどこで見聞きしたのか教えて、下さい」
「はっはっは!なんだ、アンタもおねだりできるじゃねーか
かなり下手だがその顔に免じて教えてやるよ
マルゼンスキーのトレーナーだ、あのバーを使ってた奴が少なすぎて少しだけ苦労したが新車をチラつかせたらアッサリと寝返ってくれぜ?
いい友達を持ってるじゃねーか」あっはっはっは!
「!!!そうか、マルトレか」
というかマルトレって呼んでますが名前は無いんですか?
私はそう簡単に他人の個人情報を晒すようなことはしません、偽名とでも思ってくれれば良いんです
「さァ、アンタはコレをどうしたい?はっきり口に出して言ってみな」
迷う、ことはない、ここで下手に意地を張ればシリウスはあっさり引き下がる
そうなったら私はこの特大スキャンダルをバラ撒かれるかもしくはいつバラされるか怯えながらトレーナー人生を歩んでいくことになる
これがただのウマ娘とトレーナーなら時期もあってどうにかできる。(普通ならこんな状況にはならないという揚げ足取りは置いといて)
だが相手はあのシリウスシンボリ、3年間一緒にいたんだ。こうするしかないのは既に理解している
「っ…なんでもす、します…だからその録画データをこちらに引き渡してくれ…いや、ください…」
側から見れば学生相手に深々と頭を下げて懇願している大人──いや、その通りなのだが
…なんとも情けない話ですね
ええー?私はすごく羨ましいですよ!だってシリウス様の興味が彼にしか向いてないじゃないですか!ああ…私もあと10年早く産まれてトレーナーになっていたら…!
………貴女を見ていたら少し元気が出てきましたよ
そ、そうですか?いやぁ、それほどでも──
褒めていません
「はっ、さすが私のトレーナーだ。相変わらず理解が早いし判断も良い
そこまで頭を下げられちゃ私も考えなくちゃならねぇな」
さて何をしてもらおうか?なんて悩むフリをするシリウスシンボリに冷や汗を流すアイス
…これは間違いなく『考えてるフリ』だ、恐らくデータを手に入れた時からずっと考えていてずっと前に──少なくともここに来る前に要求を考えついている
表情を見られてその事実に気付いている、とシリウスにバレたらまた厄介なことになると直感し、頭を下げたまま時が過ぎるのを待つ
「…よし、じゃあ2つ選択肢を出してやる」というかそろそろ顔上げろ、イジり甲斐のある顔が見えねえだろ?
「選択肢…?」
「1.私が卒業すると同時にそのトレーナーバッジを私に寄越せ、そしたら無条件で録画した全てのデータを渡してやるよ」
おっと、バッジを渡す相手は秋川理事長でもいいぜ
え、ええっ!?いや、ちょ…どんだけ3年間のウラミ詰まってるんですか!?
落ち着きなさい、いくらシリウス様とはいえこんな無茶な要求はしません。選択肢を出すと言っていたでしょう
…だとしたらそれは事実上の1択では?
ええ、そもそもあの場面でシリウス様がアイスに『選ばせる』という自由を渡すわけが無い
「シリウス…!?いくらなんでもそんな──」
ぴと
…!!
あまりの要求に口を挟みそうになるが彼女の人差し指が私の口元に触れ暗に『まだ喋るな』と言っていた
「2.私が卒業するまでの間に1日1回、私の提示したゲームをやる
もし1度も失敗や敗北することなく勝ち越せたらアンタの言うことを1つ聞いてやるよ
さてどうするアイス?どっちを選んだって私は構わないぞ?」
いつの間にかトレーナー呼びも無くなったシリウスの瞳には冷や汗をかく私が映っている
選ばせる気無いだろう、と言いたくなるのを堪えてただ一言
「…2番を選ぶ」
「よし決まりだ。さっきはああ言ったが10日間全てゲームをやるってワケじゃないから少しは安心しろ
ほら開始伝達用のスマホだ、持っておけ
日程が決まったら電話してやるから2コールで出ろよ?」
真新しいスマホをこちらに渡し『またな』と空き教室からシリウスが出て行き1人になる
これからどうなるのか、頭を抱えたくなったもののゲームとやらが始まる前に一つだけ終わらせておかなければならないことがあったのを思い出し自分のスマホを取り出して電話をかける
………カチャ
『んぅ…マルトレ、です…誰…?こんな朝早くに…』
「お前のせいでとんでもない目に遭っている中央のトレーナーだ、最近新しい車を手に入れたらしいな?」
『ゑ?…アッ。
────その、えっと、ね?………ホントウニゴメンナサイ』
「謝罪はいらない、新車と一緒にスクラップにされたくなかったら協力しろ、いいな?」
『……ハイ』
あの時マルトレに対してかなり怒っていたようです
うわぁ八つ当たりもいいところじゃないですか
…八つ当たり。
そうですよ、そりゃ飲み友のマルゼンスキートレーナーに売られたショックはあるかもしれませんが結局記憶を無くすほど飲んだのはアイスさん自身ですし
………ええ、そう、その通りですね
ところでなんでこんなことになったんですか?シークレットバーとやらで何が?
それはですね…
シリウスに「ギャーギャーうるせぇクチだな、塞いでやるよ」と言われて飴玉突っ込まれて「どうした?何を期待してたんだ?」と言われたい作者のルルザムートです、ハイ。
サポカとか見てもやっぱり、うん。顔が良すぎる。声が良すぎる。性格が刺さりすぎる。実装を待っています。うん。