Q. シリウスシンボリに弱みを握られるとどうなるのか 作:ルルザムート
そういえば以前の投稿いつだっ…け、え。うわぁ、うわぁ…ほわぁ。
そしてシリウス実装ヤッタァァァア!!
で。全冠達成しました。
そしてこのシリーズどころかこれまでハーメルンに投稿してきた中でトップクラスに長い話。…3戦目です、お楽しみください
「そういえば話に出ていたゴールドシップさんは今何を?」
「さぁ…それは本人とゴルトレぐらいにしか分からないでしょう」
もっとも、本人たちですらわかっていないかもしれませんが
「また会いたいですね…」
「・・・あのー、イーチェさん」
「なんです」
「えーと…いえ、なんでもないです
次のゲームの話をお願いします」
「………」
視聴覚室…ここか
トントントンとノックをし、返事が返ってくるのを待つ
「………」
返事は無い、だがそれでも待つ
「────よし、いいぞ」
10秒程待つとシリウスの声が聞こえて来たので中へ入る
「今回も時間通り、それにちゃんと私の指示を待てたな
偉いぞ子犬ちゃん」
「…次のゲームはなんです」
「欲しがりだな、心配しなくても用意してるさ」
そう言って彼女が差し出したのはまっさらなDVDケースだった、中にはこれまたまっさらなDVDが入っている
それが何か説明する事なく機材にDVDを入れて再生を始めたシリウス
「…?」
再生されたのは…ホラー映画?らしい『恐怖!発光するヒトミミの怪異!』とタイトルが表示されている
これを見ろということだろうか、だが幸い私にはホラーに対する耐性はある。何も問題はない
が、いざ始まって1分もしないうちに画面が暗転、DVDが出されてしまった
「覚えたか?」
「タイトルなら、それで何をすればいいんですか」
「実は例のUSBの映像をDVDに移したんだが、そのDVDがどこかでコイツに入れ替わったかもしれなくてな?それを探してくるっていうのが今回のゲームだ」
「!」
な、なんてことを思いつくんだ…!
今見せられたDVD、表が真っ白だった。恐らくダビングされた物なんだろうが例のUSBのコピーも同じ真っ白なDVDだとしたら──
「ああ心配するな、少なくともトレセン学園の外には出ていないだろう
…今のところは、な」
「っ…」
「制限時間は特に無い、私が決めるより子犬ちゃんが決めたほうが良いだろう
じゃあゲーム開始だ、頑張れよ?」
そう言って心底愉快そうに部屋を出ていくシリウス
「まずい、どころじゃない」
あんなものを他の人間の前で見せ物にされたら終わりだ、絶対に見つけなくてはならない
「急がないと…」
ある意味宝探しですね…
どこが宝探しですか、爆弾処理です。あんなに神経が擦り減る宝探しなんか2度とごめん被ります
そんなにゲンナリするほど擦り減るもんですかね?
探すだけならまだ良いでしょうがあの時は──
「さぁ、どこから探すんだ?」
「…何故一緒にいるのか聞いても?」
当然のように真横を歩くシリウスへ疑問を投げつける
「おいおい、ここはトレセン学園だ。そしてアンタは私のトレーナー、並んで歩く理由なんてこれで充分だろう?」
案の定まともに答えてはくれないようだ、とはいえ今更別行動たなんて言える立場には無い上に現状彼女がルールそのもの。口出しはできない
「私はお前の質問に答えたぞ、次はそっちが答える番だ」
さっきので答えた内に入っていることに納得が行かないが納得せずとも答えるしかない
「………さっきの映画、ホラーに一辺倒というよりコメディホラーに近いように感じた。ホラー好きにとっては面白くないだろうが入門者には良いかもしれない」
「ほう、それで?」
「高等部が見るには少し子供っぽい、DVDを持っていたのは中等部の誰かだ。そしてトレセン学園内に持ち込まれたものであるなら1人で鑑賞する、というのも考えづらい
中等部の複数人はこの映画のタイトルを知っているという認識で良いはずだ、まずは中等部から探す」
「は、いいぞ。中々賢いじゃないか」
上出来だ、と満足そうに言う彼女を尻目にとりあえず中等部の建物へ向かう
中等部に絞ったとはいえ相当な数居ませんか?中身を見られるまでに持ち主を探すなんてかなり難しかったのでは…
そうでもありません、あの時期はURAファイナルが終わってすぐのこと
次の世代の入学準備こそあれど学園自体、卒業式くらいしかやることは残っていなかったので人数もいなかった
なるほど…
それに加えて前回のゴールドシップの時とは違い、意図的にシリウス様が仕組んだものなので分かりやすいというのもありました
?シリウス様が仕組んだものだと分かりやすいんですか?
ええ、彼女は隠れたりコソコソしたりするのが嫌いなのでディスクを堂々と渡したと思います
もしシリウス様と会ったばかりの中等部の子が見たらきっと──
──目論見通り、簡単に見つかった
「あっ!シリウスさん!シリウスさんのトレーナーさん!」
声をかけて来たのはハルウララ、キングヘイローやマヤノトップガンとよく一緒に居る桃髪のウマ娘だ
「お前か」
「こんにちは、ハルウララさん」
どうしたの?と声をかけるよりも早く『ソレ』が目に入った
あのねあのねー!となにから話そうか迷っている彼女の手元には新品のDVDケース、無地ではなく映画のタイトルと表紙絵で飾られている。タイトルは──
「昨日の夜シリウスさんから貰った『恐怖!発光するヒトミミの…』ええと、これなんて読むんだっけ?」
「怪異(かいい)、だな。もう見たか?」
「まだ見てないよ、怖いからキングちゃんと一緒に見ようと思ったんだけど『夜更かしはダメ』だって」
まだ見ていない、その一言に内心胸を撫で下ろした
あのケースの中身が例の記録であることは間違いない、見られる前になんとか回収したいが
「ねーねー!シリウスさん達も一緒に見ようよ!」マヤちゃんとキングちゃんも来るんだよ!
「──らしいが、どうする?トレーナー」
選択の余地は、無い
「…そうですね、たまにはDVD鑑賞も良いでしょう。ご一緒しても?」
「うん!!じゃあ視聴覚室で見ようよ!あそこならみんなで見れるよ!」
キングちゃん達を連れてくるね!
うっらら〜♪と上機嫌で走っていく彼女をひとまず見送り、どうするか考える
持ち主を見つけたまでは良かったがここから先を考えていなかった
「クク、DVD鑑賞か。楽しみだな?」
「貴女が楽しみにしているのはそれを見る私の顔でしょう」
「そうだが?分かりきった確認をしていると言うことは余裕がありそうだな」
く、ダメだ!今いちいちシリウスの言葉に噛み付いていたら彼女の思うツボだ。何か考えないと…!
「…先回りだ」
キングヘイローとマヤノトップガンが来るのは間違いない、たしかハルウララはキングヘイローと同室だから先にそっちへ向かうはずだ
マヤノトップガンのところに行こう、本来ウマ娘の寮にトレーナーが入るのは規則違反だが寮に入らなければ良い
「………」ツカツカ
マヤノトップガンが寮の外に居て、私より早くハルウララに出会う可能性は大いにあるがそうなったら別の手を考えるしか無い
ウララさんを待ち伏せするのはまぁなんとなく分かりましたけど、出会ったところでどうするんです?
理由を付けてDVDケースを一瞬借りてDVDに傷を付ける、あの時はそう考えていました。無傷で取り返せ、というルールはありませんでしたから
中等部寮前、周囲に誰も居ないことを確認して親指の爪をこれでもかと言うくらいに噛む
見栄えは悪いがこれだけ歪な爪なら少し引っ掻いただけで大抵のディスクはお釈迦になるだろう
「あれ?シリウスさんのトレーナーさんどうしたの?」
そしてさっき会ったばかりのハルウララが10秒遅れてやってきた
キングヘイローとカワカミプリンセスは居るがマヤノトップガンは一緒じゃないらしい
「いえ、少しこちらに用があっただけですよ」
「そうなんだー」
『必死だな子犬ちゃん?』と小声で言ってくるシリウスの言葉を無視してハルウララの手に持つソレを注視する
「ところで…そのDVDケース、少し見せていただいても良いでしょうか」
映画のジャンルを知りたい、ともっともらしい理由を付けてみる
「いいよー!はい、どうぞ!」
荒んだ大人には眩しすぎる笑顔と丁寧な手つきで手渡してきたケースを受け取る
荒んだ大人って…
言いたいことはなんとなく分かります、ですが苦いも辛いも経験した大人にとって子供の無邪気さは眩しすぎるし毒にもなるんです
さ、流石に意味が分かりません…
分からなくていい、貴女はまだ若いのだから。…話を戻しましょう
「ありがとう」
ケースの外面を見つつ、機会を伺ってケースを開ける
理想は中央の穴から外輪まで一直線の傷を作ることだ、DVDという物の性質上内側から外まで1本引ければほぼ再生不可能──うん?
ケースを開いて思わず2度見した
中身が、無い?
ケースの中には私が破壊、回収すべきハズのDVDが無かった
「ウララさん、これ──」
待て!!
「どうしたの?」
「い、いえ別に」
中身が無い、と言いかけてその言葉を飲み込む
ここで黙っていれば彼女は友人達を連れ、空っぽのケースを持って視聴覚室に向かうだろう
危ない手だがその間に寮の中に潜入してDVDを探し出して回収すれば──
「おいおい、このケース中身が入ってないぞ?」ヒョイ
中身をどこにやったんだ?とわざとらしくその場に居た全員に聞こえるようにシリウスが言う
くそ!シリウス…!
「あれー?ほんとだ!」
「どこかに落としてしまわれたのでは?」
口々に言うウララとカワカミだがこちらの内心はたまったものではない
「そういえばウララさん?昨日の夜あのDVDを見ようとしてませんでしたか?」
DVDはきっとレコーダーの中でしょう、とキングヘイローが言う
「あっ!そうだった!ありがとうキングちゃん!」取ってくるね!
またしてもケースを持って走っていくハルウララ
もうこうなったら手段を選んでいられない、この様子じゃマヤノトップガンだけでなくその同室のトウカイテイオーも来るかもしれない。そうなったら監視装置と化したテイオーがその自覚無しに私とシリウスを延々と見つめ続けるだろう
そうなる前に──
自分のスマホを取り出しつつ、唯一の協力者である彼女宛てに画面を見ずにLINEを打つ
『ハルウララを足止めしろ』
…
ポコン
1秒で返信が来た、斜めから見えた文字は『了解』の2文字
──よし
「では用も済んだので先に視聴覚室に向かいます」またあとで
「ええ、私もウララさんと一緒に後から向かいます」
一瞬キングヘイローへ会釈をして、早過ぎず遅過ぎない速度で視聴覚室──ではなく寮の裏手へ
確かハルウララの寮室は3階の右から4番目だったな
最悪不法侵入が発覚しようとあの映像がバラ撒かれるよりマシだ、ここはリスクを取って潜入する!
幸いこちらは学園の外側を向いており、外壁も高く2階までは外から見えない。3階からは…諦めるしか無いだろう
そういえば協力者のマルトレはちゃんと止めてるんだろうな…?
「ああっ!いた、いたた、たた、うーんアタマがいたいよー!
だれかー!」
「・・・」
中庭から知ってる声がフザけた声色で何かを喚いている
…まさかアイツじゃないよな?
「だれかー、なでてくれないかなー、具体的には身長が低くて桃髪でウマ娘で中等部の子ならこのアタマも治りそうなんだけどなー!」
露骨すぎるマルトレに思わず頭を抱える
他に無かったのか…?
完全にふざけているとしか思えない行動(実際そうだと思う)だが直後
「だ、だいじょうぶ!?えっと、ウララ背が低くて桃色の髪で中等部でウマ娘だよ!」
おい冗談だろう、今ので引っかかったのか?
「うう、ありがとー。離れるとアタマが痛くなるから少しだけ一緒にいてくれないかなー」
「いいよ!」なでなで
ハルウララは真剣みたいだ、ここまで純粋だと今からやろうとしていることに少し、いやかなり罪悪感が生まれてくる
「どうする?止めるか?」
既にこちらのやろうとしていることと心境を見透かしていたシリウスが聞いてくる
「やる」
やるしかない、罪悪感では何も救われない
「へぇ、そうか?じゃあ私は少し離れたところから見守ってやるよ」
高みの見物と言わんばかりにシリウスが離脱する
勝手な奴だ、着いてこられても困るが。
「──さてと」
壁登りの経験なんて無いがそうも言ってられない
1階の窓の奥が無人なのを確認し右足を掛ける
窓枠の上部へ左手を伸ばし、続いて左足を窓の淵へ強引に押し付ける
窓枠を掴んでいた左腕に全力で力を込めてよじ登る。生粋のクライマーなら違うのだろうが私には壁登りの知識なんて無い
いや本家クライマーでも垂直のコンクリートは無理でしょう
そうなのですか?
そうですよ!ああいうのって本来岩とかの切れ目割れ目に手足引っ掛けながら力を使わずに移動してくものですし!…私少し齧ってますけど今度やりますか?
もうあんな機会は来ません、必要ないでしょう
「ふっ…!」
力業で2階の高さまで登り切り、外壁の上へ立つ
く、腕が死にそうだ、だがここでモタモタしていれば誰かに見られるかもしれない
そう思うが早いか目的のハルウララの寮室の窓淵へ向かってジャンプ、疲労困憊の両腕を使って窓をよじ登る
よし、窓に鍵はかかって無い
足跡を付けないよう靴を脱いで中へ侵入し、テレビの元へ
レコーダー…これか!幸い知っている機種だ
電源を付けてDVDを取り出す
よし!これで──
ガチャ
「!!!」
ドアが開く音を聞いて反射で窓から飛び出す
ここは3階だが外壁の上に着地すれば──
「っ!」ガクン
まずい届かない!お、落ち──
「おっと」
地面に叩き付けられるのを覚悟していたが来たのは優しく受け止めた2本の腕
「シリ、ウス?」
「慌てるお前を見るのはいいが無茶は褒められないな、だが飼い主の見ている範囲内だったことに免じて1回目は許してやるよ」
漫画でしか見たことのないお姫様抱っこの体制のまま、私の顔を覗き込んだシリウスが言う
も、もしやガチ恋距離というやつですか?
そんなんじゃありません。第一どこでそんな言葉を?ああ、いえ察しました。デジタルさんですね
「さてと私が助けてやるのはこれっきりだ、もっとも上手におねだりできたら考えてやってもいいがな?」ククッ
こちらが何かを言う前に地面へと降ろし、今度こそそのままどこかへ行ってしまった
「………」
「あれー?窓が空いてる?ちゃんと閉めたと思ったのに
…?DVDはどこだろう、レコーダーの中に無いよー」
早く離れたほうが良さそうだ
「………」
そうして私はその場を離れた、DVDを回収できた安堵と気付かれるかもしれないという緊張からか
「行かないと…」
………
「………詳しく、話を聞かせていただかなくてはなりませんわね?」
カワカミプリンセスに一部始終を見られていたことに気が付かなかった
え、ヤバくないですか?下手したらバラバラにされかねませんよねコレ!?
アナタは彼女をなんだと思って──有り得そうだったのがまた怖いですね…
「…ごめんなさい、シリウスさんから貰ったDVD無くしちゃった」
なんとかハルウララより早く視聴覚室に来れたが場の空気は最悪だった
だがこれでいい、これで諦めてくれれば──
しかし『諦める』という言葉が他の誰よりもハルウララに似合わないことを私は知らなかった
「私、もう一度探してくる!」
「私も行くわ、同じ部屋だし昨日は確かにディスクがあったのは間違いないもの」
「マヤも探すよ!」
「ボクも!シリウスのDVD見たいし!」
ハルウララ、キングヘイロー、マヤノトップガン、トウカイテイオーの4名が視聴覚室から出ていく
よし、誰も居なくなった
無いはずのものを探しに行った彼女達へのお詫びを考えながら懐のディスクを取り出す
あとはこれをシリウスに渡すだけだ、ディスクを傷付ける予定だったが完璧な状態である必要があるかもしれないから「なにをしていますの?」
!!!
遅れてやってきた、いや他の4人が出ていくまで敢えて待っていたであろうカワカミプリンセスが部屋に入ってきた
「そのディスク、ウララさんがシリウスさんから貰った物ですわね?」
「──見ていたのですか」
「…!やはりウララさんの部屋から盗ったんですわね!?」
う…!まずい、シリウスが相手ならこうはならなかっただろうがつい答えてしまった!
落ち着いて考えればディスクを見たことがあるのはハルウララとキングヘイローだけなのに!
「現行犯ですわ!…しかしわたくしも鬼ではありません、そのディスクをこちらに渡してください
何故こんなことをしたのか分かりませんが心から反省し、みなさんに謝罪すると言うのならわたくしも一緒に謝って差し上げます」
さぁこちらに。と差し出された手を私は──
迂闊に触れたら握りつぶされそうですね
くだらない茶々を入れないでください
「っ…お断りします」
「──そうですか」
刹那
風を切る音と拳が頬を掠める
「う、わ…!?」
格闘技初心者でも分かる、あんなパンチを受けたらゴルトレでもない限り──
「殺す気ですか!?」
「いいえ、暫く入院生活していただくだけですわ」
言葉は丁寧だがあり得ないレベルで怒っている、イライラしているウマ娘は見たことがあるがここまでのものを見た事がない
怒髪天をつく、とはこのことだろう
しかしだからと言ってこのディスクは渡せない、公開されれば死んだも同然の私にとって即死の恐怖は耐えられないものでは無かった
「っ!」
「逃がしませんわ!」
とにかく逃げよう、多分追われている最中にシリウスに会ったところで受け取ってもらえない!まずカワカミプリンセスを撒かなければ
窓から飛び出し、花壇横の通路に着地する
ぐ…!2階からでもかなり痛い…!だがこれで時間は稼げた、この高さだと足にダメージがあるのはたった今実証できた
カワカミプリンセスが窓から来るのはあり得なドズン
──え
「逃げられると思わないことですわ!!」
うわもう完璧にタイラントじゃ無いですか!
たい…?なんですそれ
え?バイオハザード知らないんですか?
…知らないですね
「まずい…!」
平地でウマ娘と競走するなんて自殺行為だ、おまけに今の衝撃で足が痺れている
「観念なさいませ!」
「ック…!」
「待ちなさい!」
迫り来る嵐から痺れた足に鞭打って走り、校舎内に戻る
どうやらカワカミプリンセスも足が痺れたらしく、少し足が遅くなっている
このまま階段を駆け上がって2.3回角を曲がれば「あと探してないのはどこだろう?」
こ、この声は…!
階段の方からハルウララの声がするし複数の気配も感じる
言われてみれば当然だ、さっき視聴覚室から出て降りていったのだ
「鉢合わせするのはダメだ」
幸い話し合いをしているようで降りてくる気配は無いが今遭遇するのはマズいのでやむを得ず直線の廊下へ、どこかの教室に入ろうとするも
「こっちは開かない!じゃあ次──こ、ここも!?」
どこも開かない!
「地の果てまで追いつめますわよ!」
「!!!」
なんとか柱の陰に隠れたが身を縮めてなんとか隠れられるレベル、身動き1つできそうに無い
く、どうすれば「助けてやろうか?」
!
ふと真上──正確には天井近くの小窓からシリウスの声がする
どうやらこの壁の向こう側、建物の外にいるようだ
「お前が誠意を持って頼めば助けてやるか考えてやるよ」
またこれか…!だが背に腹はかえられない
「頼む…お願いだから助けてくれ…!」
「んー?よく聞こえないな、もう少し大きな声で頼む」
こ、この…!これ以上大きな声を出したら見つかるだろう!
「このままじゃカワカミプリンセスにバラバラにされる…!助けて…!頼む…!」
なーんだ、ルチアーニさんだってバラバラにされると思ってたんじゃないですか
・・・アナタはコンクリート片を片手で粉々に握り潰せるウマ娘を見たことがあるんですか?
えー?居るわけないじゃないですか、そんな怪物みたいな──ゑ、まさか、カワカミプリンセスさんが…?
「ウララさんを悲しませた挙句、コソコソと逃げ隠れ…ぜっっったいに許せませんわ!覚悟なさい!」ゴシャ
どこで拾ったのかコンクリート片を片手で握り潰し、ゆっくりこっちへ歩いてくる
「これ以上大きな声は出せないんだ…!なんでもするから助けてくれ…!」
「──へぇ?なんでも、か」
最後の手段だった、こんなことを言ってしまえばゲーム自体が終わってしまう可能性もあったが流石に顔面を握り潰されて死ぬなんてグロッキーな死に方はゴメンだ
「はっ、それじゃあ哀れな子犬を助けてや「ルチアーニトレーナーが居たぞーっ!」
!!見つかった!?…いや、この声は外から?
それにこの声聞き覚えのあるような?
「!!いつの間に外に出ていたのですわね…逃がしませんわよ…!」
弾丸の如くすっ飛んでいくカワカミプリンセスを影から窺いつつ、周りの様子も窺う
「ち、誰だ水を差しやがったのは?」
「やっほ!ルチアーニ!」
ぴょこんと入ってきたのはマルゼンスキーのトレーナーだった、さっきの声の主は彼女か!
「さっきのは──」
「ええ私!状況もなんとなく把握してるから大丈V!さ、行くわよ!」
「あれ?シリウスさんのトレーナーさんと…」
そのまま手を引かれて建物の外へ、後ろからハルウララの声がするが気にせず前へ
「ところでそれが黒歴史データ?」
「言い方考えてくれ!」
「変な勘違いしなくていいじゃない、でやっぱりそのDVDなのね?」
「そうだけど…」
任せて!と言っているが何を任せていいか分からない、一体何を──
ささっ
「え?」
ディスクを取られ
「ふんぬ!」
「きゃ!?」
不意打ち、それ以上に似合う言葉がない滑らかな動きで背負い投げされた!
「いった!?何す「ここよ!!シリウスのトレーナーを捕まえたわ!誰か来て!!」
!!??
「な!?マルトレ──「静かに!今は味方だから!ね?信じて?」
前科持ちの時点で何を言ってるんだと言いたくなったが地面を抉りながら走ってきたカワカミプリンセスに黙るしか無かった
「助かりましたわ!通りすがりのトレーナーさん!さて、覚悟はよろしいですね?」
「う…」
「待って!彼女へのお仕置きは私がするわ、それよりもこのDVDをウララちゃんに届けてあげて、きっとまだ探してるわ」
あのー、ルチアーニさん
なんですか今度は?
『彼女への』って今──
『彼への』の間違い、ただの言い間違いです、本当に!
当たり前のようにディスクを差し出すマルトレにトレーナーバッチの針を突き刺してやろうかと思ったがカワカミプリンセスの圧が強すぎて何もできない
「…そうですわね、今はウララさんのところへ。ご協力感謝致しますわ」
マルトレからディスクを受け取ったカワカミプリンセスはそのままどこかへ行ってしまった
ああっ…
「もうダメ…」
「だから大丈Vって言ってるでしょ」
「どこが!?」
あの映像が出回るのは時間の問題だ、もうゲームオーバーだ!
「ほら!」
「なに!?…え?」
マルトレが取り出したのは今渡したハズのディスクだった
え?
「今カワカミちゃんに渡したのは私が持ってきたホラー特集の『怨怨怨怨怨』、それをダビングしたディスクよ」
また借りてダビングしなきゃ、なんて涼しく言う彼女に腰が抜ける
「だ、だったら私からディスクを取らなくても…」
「あなた、追い詰められたら自分でディスク叩き割るつもりだったでしょ?」
う、確かに…
「これでいいのだ、なんてね?
ともかくそれをシリウスちゃんに渡しておいで、不機嫌な彼女がさっきのところで待ってるワ」
「ありがとう…マルトレ、貴女は?」
「私?私は視聴覚室に行くわ──多分担架と人手がいるだろうから暇になったら貴女も来て?」
人手…?
〜
「約束のディスクです」
「──ああ、確かに私のディスクだな。見たところ傷も付いていない、今回もお前の勝ちだ」
そう言う彼女は目に見えて不機嫌だ、耳や尻尾を見なくても分かるくらい
「…私が反則行為を行ったと?」
「いや、そんなものは今回決めていなかった、マルトレの介入も許していた」
「そうですか」
それ以上の質問はしなかった、藪をつついてなんとやら。不安事項はあるが勝って終われたのならそれでいいだろう
ラウンド3/7 VS天使ハルウララ
勝利
ところでルチアーニさん
はい
結局マルトレさんは何しに視聴覚室に行ったんですか?
ああ、それですか
さささっ、と視聴覚室の前までやってきた。どうやら今まさに再生しようとしているらしい
視聴覚室の予備の鍵も貰ってきた、準備ばっちぐー!
『怨怨怨怨怨』…本当にあった怖い話、というわけでは無いが昔は今と違って加減というものが無かった、その時代に作られたホラー映画だ
「………」
開け放しの扉の影に隠れて中の様子を見る
ハルウララ、キングヘイロー、カワカミプリンセス、マヤノトップガン、トウカイテイオーの5名が律儀に椅子に座ってテレビに釘付けになっている
「あれ?タイトルが違うよ?」
「あら変ね」
「なんか怖そう…」
「マヤノ怖いの?ふっふーん、マヤノはまだ子供だね!」
「…それにしても何故ルチアーニトレーナーは執拗にディスクを奪おうとしたのか分からないままでしたわ」
「?なんの話?」
「い、いえお気になさらず!それよりもブランコが出てきましたわ」なんでしょうアレ
よし、ブランコが出てきたのならあと20秒くらいあるその間に…
今の時代、どこの駄菓子屋にも売ってないパチンコとビー玉を出し、誰にも破片が届かない遠い蛍光灯を狙って──
バリン!
「ひっ!?蛍光灯が…!?」
「きゃ…──おほん!誰?こんなイタズラでこのキングを怖がらせようだなんて甘く見られたものね!」
「そうですわ!備品を壊すなんていけません!出てきなさい!」
貴女がそれ言っちゃうカンジ…?
「ね、ねぇテイオーちゃん」
「こわ怖く無いよ!?マヤノひょっとして怖いのー?お子さまだなぁマヤノは「そうじゃなくて!テレビのブランコ、動いてない?」
「え?…あ、あれ?誰も乗ってないのになんで…」
キコキコとゆっくり、だが横の静止したブランコとは別に動いている
「あと5秒、4、3、」
「もう!なんなのよ!だいたいブランコだけの映像で何が楽し
あ"あ"あ”あ"あ"あ"あ"あ"あ”あ"あ"あ”あ"あ"あ"あ"あ"あ”あ"あ"あ"あ"あ"あ"
「「「「「──────」」」」」
画面は見えないが恐らく画面下部からいきなり迫り上がってきたアレを見たのだろう、当時は規制なんてものが無かったから怖がらせるためならどんな手段でも使っていた
確か今のシーンは顔面から〇〇が湧き出て、頭から◼️◼️◼️がはみ出て目玉が◇◇にされた女の顔がドアップで──
「きゃああああ!!!」
「トレーナー!とれーなぁ!誰かぁぁぁ!!!」
あ、こっちに来る
「そおい!」
バァン!と扉を思いっきり閉めて鍵をかける
「え!あ!えっ!なんで!?開かない!誰か、誰か!!開けて!出して!うわぁぁぁ!!!」
ドカドカ壊す勢いで扉が叩かれるがここはウマ娘たちが通うトレセン学園、備品の殆どはちょっとやそっとじゃ壊れないゾ♡
「ひぃぃぃぃ!!」
「き、キングちゃん!しっかりして!」
「 」ブクブクブク
「マヤ分かっちゃった…マヤ達はここで終わりなんだって…」
「ああああああ!!消えやがれですわああああ!!!」ガチャン!
あ、テレビ壊した
「終わったから来たけど…なにがあったの?」
「あ、ルチアーニ。見ての通り!とりあえず今入ったらあのテレビみたいに粉砕されそうだからもう少したったら助けに行こう」
「・・・そう」
〜
以下、事件の犠牲者と関係者について
ハルウララ
たまたま近くに居合わせたルチアーニトレーナーとマルゼントレーナーに助けを求め、気絶したキングヘイローとトウカイテイオーを保健室まで運ぶ
キングヘイロー、トウカイテイオー
恐怖のあまり気絶、衝撃が強すぎたのか事件についての記憶が亡くなっていたが割れた蛍光灯を見た瞬間ただならぬ様子で怯えるようになった
マヤノトップガン
錯乱。『マヤ分かっちゃった、マヤ達はね、もう終わりなんだよ』と保健室のベッドの上で虚に繰り返していたが、近くを彷徨いていた不法侵入者の針治療により回復。
カワカミプリンセス
あんなディスクをハルウララに渡したシリウスシンボリを絶対に許さないと誓い、また執拗にディスクを奪おうとしていたルチアーニトレーナーの真意を(彼女なりに)理解していつか謝罪したいと考えている
ルチアーニ
生徒会からの軽い事情聴取の後、気を落ち着かせるためにシークレットバーへ。
シリウスシンボリ
不機嫌。ここでマルトレが明確に邪魔だと認識した。
マルトレ
流石に悪いことをしたなと思っているがルチアーニと一緒にバーに行き、次の日その事実を忘れている
マルゼンスキー
特に被害は受けていないがマルトレに関しての愚痴をシリウスから受けるようになった
友達だと思って後ろからハグしたらシリウスで、振り返った彼女のイケメンな顔の爆風を至近距離でまともに食らって消し飛びたい作者のルルザムートです、ハイ。
長すぎぃ!!文もスパンも長すぎぃ!前回の投稿3.4ヶ月以上前じゃないか!…多分シリウスが実装されてなかったらコヤンスカヤの方しか進めてなかったかも…あっちもなかなか進んでないですが…
次は…2週間以内には書こう、うん。
次回の相手はラーメン殿下です、お楽しみください