ロザリアの口から語られた真実、シリカは夜兎族と聞かされ銀時はーー
「はーん」
と言いながら、ふてぶてしく鼻をほじくっていた。
「「「「ええ!?」」」」
銀時のあまりにも意外すぎる反応にロザリアを始めその場にいたプレイヤー全員が驚きの声を上げた。
当然だろう。
夜兎族といえば見た目は地球人と大差ないが秘めている力はとんでもなく恐ろしく強く宇宙でも最強と言われている。
それがあのシリカが夜兎だったと聞かされば、まさしく驚天動地誰もが驚愕し騒ぎ立てるはずだろう。
だが目の前にいる銀髪天然パーマの男は臆することも驚くこともなくただ鼻をほじっているのだ。
「あ、あんたよくもまぁ、鼻ほじってそんな風にしてられるわね。ど、どういう神経してんのよ」
逆に驚きロザリアは目を丸くしている。
銀時は相変わらず表情を変えずに、
「別にコイツが夜兎だからなんだっつーんだよ。言っとくけどな俺んとこには声優さんの無駄使いゲロイン夜兎娘がいんだぞ、こら」
銀時の言う無駄使いゲロインが誰なのかロザリアには知るよしもなく、ただただ困惑してしまう。
そんなロザリアに銀時は続けて、
「それに、お前夜兎かあぁぁぁ!? とかいうネタは原作でもうやってんだよ。今更同じネタ使われても面白くねーだろうが」
「意味がわからないわ……」
ロザリアは信じられないとこめかみを抑えながら呟いた。
「意味がわかんねーか? じゃあ教えてやるよ。俺はコイツが人間だとか天人だとかましてや夜兎だとかゴキブリだとかそんなのはどうでもいい」
「最後のゴキブリはいりませんよね!?」
シリカは思わずツッコムが反面驚いていた。
今までこのSAO、アインクラッド内で拒絶を受けるのを恐れ生い立ちを隠していたシリカにとって銀時の言葉は一つ一つが信じられないものだったからだ。
ロザリアはそんな銀時に刃を駆り立てるような鋭い目で睨み付ける。
「ふざけないで! そいつら天人がどれだけ私達を苦しめたと思ってるのよ!」
「俺達を苦しめた…… ねぇ。確かにそういうこともあるかもしれねえか。けどよお少なくとも俺はコイツに…… シリカに苦しめられた覚えはねぇよ!」
先程までの適当な様子から一風かわり少々の怒りが込められた真剣な表情の銀時にロザリアは一瞬怯んだ。
だがやはり数で勝っているからか余裕の表情に戻り銀時へと槍を突きつける。
「あんたの価値観なんてこの際どうでもいいわよ。さっさとそいつを私に引き渡しなさい。そうしたらあんたは見逃してあげる。元々あんたがそいつから離れた所を狙ってたわけだし」
その言葉の通りロザリアは前夜、銀時とシリカをずっとつけていたのだ。
シリカは人気があまりにあり一人になる様子が中々見受けられない為である。
銀時はロザリアの言う最後のチャンスに、
「ふざけんな。お前なんかに渡すぐらいだったら、ひろみちお兄さんに渡すわ」
「銀時さん! 私はそんなに年齢低くありません! ていうかそのネタはわかりづらいです!」
「あんた達一応今シリアスシーンなんだなら一々ボケとツッコミを入れないでくれない!」
流石に苛立ちを感じたロザリアは声を荒げる。
「うるせーな。いっとくが何度言われようとも答えは変わらねーよ」
「あ、そう、それは残念ね。天人に味方するような奴もまた罪人よ。ここで処刑してあげる」
ロザリアの言葉を合図に周りの男達が武器を構える。
シリカは不安そうに小声で銀時に囁きかける。
「銀時さん、いくらなんでも数が多すぎます、ここは転移結晶で脱出を……」
「何言ってんだ、ここで逃げてもいつかはこのバカ共につかまんだろーが。ここは俺に任せとけよ」
「でも……!」
シリカはやっぱり駄目ですと言いかけると銀時は優しくポンッと頭に手を置き、
「大丈夫だ、心配すんな」
と言い静かにロザリアへと歩み寄っていく。
「…… ん? こいつ…… まさか……」
ロザリアの仲間の一人が気づく。
銀時が何者なのか。
すると男の顔は一気に蒼白へと変わっていく。
「ちょっ、ロザリアさん! こいつのこの格好…… 銀時だ! 攻略組の銀色の侍、白夜叉の銀時!」
「はあ? ……あ!」
ロザリアもその場にいる仲間達も全員が顔を強張らせる。
白夜叉の銀時。
いつからかいつの間にか流れていた銀時の二つ名。
何故か攘夷戦争時代と丸々同じ二つ名をつけられた銀時は少々の不服を感じてはいる。
実際今も眉をひそめ面倒臭そうに頭をポリポリとかいている。
「銀時さん…… 攻略組のメンバーだったんですか!?」
シリカも驚きの声を上げる。
強いというのは理解してはいたがまさか目の前にいる銀時があの攻略組の一員とは夢にも思っていなかったからだ。
「んな、大層なもんじゃねーって。ただの暇潰しでやってまーす」
銀時はかなりふざけた言い方をしているが、ロザリア達はツッコム気にもなれない。
自分達が勝てるはずない者が今、目の前にいる。それだけで足の震えは止まらない。
「な、なに怖気ついてだい! 数では圧倒してんだならさっさと殺ってきな!」
とロザリアは木の影に隠れながら言った。
「だったらロザリアさんも戦ってくださいよ! 何一人だけナチュラルに逃げる準備してんすか!」
「違うわよ! これは高等戦術よ! いわゆるキューティーエスケープ」
「つまり逃げるじゃないすか!」
ギャーギャー騒ぎだしシリアスはどうしたい、と言いたくなるような光景にシリカは目を丸くする。
これも銀時からおりなす不思議なオーラのせいなのか…… とシリカは一瞬思うが直ぐにそれはないと首をふった。
「おい、お前ら。俺は殺し屋じゃねーんだ。だから殺すつもりはねぇ。依頼人からも牢獄にぶちこむよう言われってからな。だからこの転移なんちゃらで大人しく牢屋にいきな」
銀時の取りだした転移結晶を見るとロザリアは深くため息をつき、
「わかったわ…… あんたの言う通りにする」
ロザリアは大人しく武器をしまい他の男達も渋々文句を言いながら転移していく。
最後に残ったロザリアはいったん足を止め、
「…… 全員行ってしまったらか言うけど…… 実の所、感謝はしてるわよ。あんたにね」
「あ?」
たった今ロザリアの邪魔をしたはずの銀時に礼を言った事にシリカも共に驚く。
ロザリアは何処か悲しそうに空を見つめて言った。
「私は現実世界じゃただの一般人だ。別に攘夷浪士でも何でもない。でも戦争に参加していた私の父は天人共に殺された。だからこの世界に閉じ込められた時、天人共に復讐するチャンスだと思ったよ」
ロザリアの言葉にシリカは顔を俯せる。
銀時は黙って聞き続けるままだ。
「でもいざ天人を…… シリカ、あんたを殺そうとした時は手が震えていたよ。殺人ギルドって言っても私自身人を殺した経験はないし、結局銀髪のあんたの言う通り私はただの臆病者さ。まあおかげで手を汚さずにすんだけどね」
ロザリアは実際は今までシリカを殺すチャンスはあった。
だが勇気が出ず、結局迷いの森でシリカを孤立させるのを作戦を選びわざと嫌みをぶつけていたのだ。
銀時によって阻止されたが。
ロザリアの悲しそうな言葉を聞いた銀時は、
「…… 別にいいんじゃねえの、臆病者で」
「なに?」
「人を殺しちまうよりは臆病者でいた方がましだろうが。俺みたいな奴よりはよっぽどな」
ロザリアはしばらくポカンとし黙っていたが、ハッと笑い、
「訳の解らないやつだねあんた。でも…… 少しは救われた感じはするよ」
ロザリアはそう言うと転移し、その場から消えた。
目的を果たした銀時は嬉しいと感じる訳でもなくただ悲しそうな顔を一瞬ではあるが見せた。
シリカはその事に気づいていた。
◇
「大元のリーダーから連絡があったよ。ロザリアの奴、失敗したみたいだね。ハッセー」
「え!? あ、うん」
フードに身を包み込んだ二人の男は暗い洞窟の中で疲れた体を癒すように座り込んでいた。
「まあ、元々あいつは攘夷浪士じゃないし。仲間に誘うこと自体間違いだったんだよ。わざわざプレイヤーの個人情報まで教えてやったのに」
「いや…… 俺も違うんすけど……」
ハッセーと呼ばれた男は小声で呟くがもう一人の軽い感じの話し方をする男は聞こえたらしく、
「え? なに?」
と聞き返してくる。
するとハッセーは慌てて手をふり、
「いや、何でもないっすよ!」
上擦った声でいかにも怪しい感じで返すが、対して興味がないのか、ふーんと言い仰向けに寝そべった。
「はあ…… 職探してただけなのに…… 何でこんなことに……」
ハッセーは自身の手の甲に刻まれた奇妙に笑う棺桶を見つめ深く深くため息をついた。
◇
私と銀時さんは三十五層の風見鷄定に無事帰っていた。
ロザリアさんの話を聞いた途端、自然と口が閉じてしまって私は銀時さんと会話をする気になれくっなっていた。
まるで喉に小石でも詰まったのかのように言葉が出てここない。
私が黙っていると銀時さんは不意に口を開いた。
「んじゃここでお別れだな。ピナのこと大事にしてやれよ」
そのまま離れようとする銀時さんに私は思わず声を高くし、
「待ってください!」
と言ってしまう。
銀時さんは足を止めた。
言わないと…… ちゃんと……
「あの…… その……ごめんなさい! 黙ってて! 本当は天人なのに……」
私の為にピナの為に依頼の途中なのに…… 私を助けてくれた銀時さんに本当の事を言えなかった。
だから謝るのは当然だ。
「別にどうでもいいって。つーかそれはもう冒頭で言ったろ」
「でも…… でも!」
「…… はぁー。あのなぁ、お前が天人だからなんだっつーんだ。お前は…… お前だろう、ただの可愛い普通の女だよ」
「……!」
私は思わず口をつぐんだ。
よりにもよって夜兎という恐れられる存在を知った上で言ってくれたその言葉が私の心に深く染み込んでくる。
「じゃあな、まぁなんかあったら連絡くれや。俺は直ぐに飛んでくるからよ」
私は今度こそ銀時さんの大きな背中を静かに見送った。
◇
一人部屋に残った私はピナの心を実体化させる。
ウィンドウ表面に浮かび上がった水色の羽をテーブルに優しく置いた。
「待っててピナ……」
プネウマの花を呼び出し溜まっている雫を羽に振りかけた。
ピナ…… いっぱいお話しよう。
私を…… ピナを助けてくれた…… 私が師匠以外で初めて心を許した人の話を。
私の憧れの人の話を…… ピナ。
次回あたり番外編やらをやりたいと思っています(本当にやるかはわかりませんが)
感想など待っています。