どうぞ読んでください。
SAOがデスゲームとなってしまってから一ヶ月の月日が流れた。
その間に二千人は死んじまった。
が…… 誰も第一層を攻略できていなかった。
おかけで俺達は今もなお、この第一層で生活している。
俺も攻略には参加していたがボスの部屋を見つけることもできねぇ。
このままじゃ本当にこの世界で生きていくことになっちまう。
「あーあー、ジャンプどうなってんのかなー」
早くジャンプの為に…… じゃない新八達を安心させる為に現実世界に帰らねーとな。
第一層、トールバーナにて俺はベンチに座り作り物の空を仰ぎ見ながらそんな事を考えていた。
「おーい、銀。攻略会議が始まるぞー!」
向こうから黒人のガタイのいい、なんか粉とか運んでそうなオッサンが俺を呼んでくる。
「へいへい、今行きますよーっと」
俺がオッサンの横に並んで歩くと厳つい顔で、
「おい、銀。お前今スゲー失礼なこと考えてなかったか?」
と言ってくる。おいおい心読まれてたよ。
「いや、なんも。ただチャカとかもってそうだなーと」
「考えてんじゃねーか!」
おー、電光石火のツッコミ。
このオッサンはエギル。
同じジャンプ愛好家だったことがある時発覚し、以来フレンド登録もしてたまに会ったりしている。
「今回の攻略会議で重要な発表があるらしい。ちゃんと話聞いとけよ」
「わーってるよ、いちいち言わなくても。アンタは俺の親父かっつーの」
今回、初めて第一回攻略会議が行われる。
つっても何人集まるか…… まぁ、殺られれば本当に死んじまうこの世界だし、しかたねーことだが。
「もう皆集まってるな、俺達はあそこに座るか」
俺とエギルは座る。
周りを見渡すと思ってたよりは多いな……
まぁ。あくまでも思ってたよりはだから今生き残っているプレイヤーの数を考えればまだ少ないが。
ん? あれは…… キリトじゃねーか!
離れた方で座っている黒髪の美少女キリトが見える。
見たところ一人みたいだな。
「おーい、キリト!」
俺が呼ぶとキリトは一瞬ビクッと体を震わせたが俺を見ると安心したのか明るい顔になってこっちに来る。
「おいおい、なんだよあの可愛いらしいこは? 銀のしりあいか?」
エギルのやつが驚いた顔で聞いてくる。
「あぁ、ログインした時最初に出会ったやつだ」
俺がエギルにキリトの事を教えているとキリトが俺を前に来て、
「銀さん、生きてたんだね! 良かった!」
と抱きついてきた。
ちょっ、いくらなんでも恥ずかしいんですけど!
周りの男達の冷たい目が突き刺さるんですけど!
「ほうほう、なるほどな」
エギルがニヤニヤと笑いながら見てくる。
え、なにその顔? ウザイんですけど!
「本当に…… 良かった」
……! キリトは泣いていた。俺の胸に顔を押しつけながら涙を流している。
「えーと、あのキリト。心配かけたようで悪かったな。でも流石にそろそろ離れてくんない?」
「え…… あ! ご、ごめん、いきなり!」
キリトは即座に俺の体から離れる。
泣きすぎたせいなのか知らないが顔、真っ赤じゃねえか。
その様子を見ていたエギルが唐突に、
「おー、俺もあそこに知り合いがー。ちょっと話してくっからー、今は二人でいろやー」
と何故か棒読みで言って向こうに行っちまった。
なんだアイツ。
しかもエギルの野郎、グーサインをキリトに向けてきやがった。
いや本当になんなの?
キリトが相変わらず顔を赤くしたままになっていると広場の中心にいた青髪の兄ちゃんが手を叩き会議開始の宣言をする。
「はーい! では攻略会議を始めさせてもらいます!」
よく見ると結構なイケメンだな。この世界には珍しい。
「今日は俺の呼び掛けに応じてくれてどうもありがとう! 俺の名前はディアベル、職業は気持ち的に侍をやらせてもらってまーす!」
ディアベルが自己紹介をすると緊張感でピリピリしていた奴等が笑いあう。
SAOにはjobシステムはねーぞ! しかもこの廃刀令のご時世に侍はまずいだろー。攘夷志士かー!
それぞれが笑みの混じった好意的な野次を飛ばす。
あーいう奴が指揮官に一番必要なタイプなんだよな。
つっても攘夷戦争時代の阪本もとい声のデカイ人はやりすぎでウザイがな。
全員の緊張が解れたのを見るとディアベルは爽やかな笑顔から一転、急に真剣な顔つきになる。
「実は俺のパーティがついにボスの部屋を見つけた」
ディアベルの言葉にその場の誰もがどよめいた。
「ついに……」
俺の横でさっきの様子とは違い真剣な表情でキリトは感心している。
「俺達の手でボスを倒し第二層への道を開く! そして始まりの町で待っている皆にこのゲームは必ずクリアできるということをわかってもらうんだ!」
ディアベルの熱いセリフに全員が、
そうだ! やってやる! おうよ! こんだけいりゃボスなんてあっというまだ!
といった感じに声援をディアベルに送る。
「よし! じゃあまずは、次のボス戦に向けて5、6人でパーティを作ってみてくれ」
皆、それぞれの仲のいい連中で集まる。
てことは俺は、
「キリトと同じパーティか」
「え!? いい……の?」
「あ? そんなの当たり前だろ? 俺達は仲間なんだからな」
「…… うん!」
よし、まずは一人だな。あとは…… もう他にはいなさそうだな。エギルは戻ってこないし、ん?
見ると向こうの方でいつからいたのかフードを着込んだ恐らく女が座っていた。
キリトと同じように一人らしいな。
ちょっくら行ってみるか。
俺はキリトと一緒にフードの女の所に行く。
「おい、あんた」
俺の呼び掛けに驚いたのか、警戒しているのか女は立つと少し後ろにさがり、
「…… なに?」
と
聞いてくる。
「えーと、アンタはパーティ組まないのか?」
「別に…… 周りの人達は友達同士らしいし、全く関係のない私が混ざったら邪魔だと思ったのよ」
「そうなのか。じゃあ良かったら俺達二人とパーティ組まないか? 流石に二人だけはキツいし」
考えているのか暫く黙っていると女は、キリトの方を見て、
「私は別にいい。でもそちらの方は私が入って本当にいいのかしら?」
と言ってきた。
最初キリトはキョトンとしていたがまた顔を赤くして、
「か、構わないよ! わ、私と銀さんは別にそんなんじゃないから!」
手を振り回す。
ちょっ、危ない! つーかこんなん始まりの町で別れたときもあったよな!?
それとキリトはなんでこんな慌ててんだよ?
俺が困っていると女は、
「そう、じゃあいいわ。私もそのパーティに入る。よろしく」
とパーティに入ることとなった。
「じゃあ、パーティ申請するから申請メールを送ってくれ」
メールが送られ俺はメニュー画面を開き申請ボタンを押した。
するとライフゲージと一緒に女の名前、《Asuna》と出
てきた。
アスナっつーのか……
「皆、組み終わったようだし、じゃあ会議を『ちょっと、待ってんかぁ!!』」
なんだ?
俺を含めたその場の全員が声のした方を振り向くと一人の男が階段を駆け落りディアベルの前にたった。
なにあのサボテンみたいな頭。恥ずかしすぎるだろ。
「人のこと、言えないと思うわよ……」
アスナはボソッと呟いた。
「あれ!? 声に出てたぁ? つーか人のこと言えないってどういう意味だコラァ! 頭かぁ、この天パのことを言いたいのか!」
「そこ! ワイの話聞けや!」
「うるせぇ! サボテンなんかより天パの方がいいもんね!」
「なんの話や!」
「ぎ、銀さん、話聞こう」
キリトに言われちゃ、しかたねーか。
俺はとりあえず黙る。
「ワイはキバオウってもんや。ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある」
いったいなんだっつーんだ?
「こん中に今まで死んでいった二千人にワビいれなアカン奴等がいるはずや!」
キバオウの言葉にキリトが一瞬ビクッと体を震わせる。
なんだ? 顔色も少し悪いが……
あ、ディアベルがキバオウとかいうやつに話かけてやがる。
「キバオウさん、君の言う奴等とはつまりも元βテスターの人達…… のこと、かな?」
「決まってるやないか!」
βテスター…… 最初は知らなかったがエギルに教えてもらった。
地球限定で行われたSAOのテストプレイをした奴等のことだ。
あ! そういや聞いてなかったがまさかキリトも……!
俺がキリトを見ると、気づいたのか暗い顔で俺に対しコクリと頷く。
それでさっきも……
「β上がり共はこんクソーゲームが始まったその日にワイら初心者を見捨てて消えよった。奴等はうまい狩場やら簡単なクエストを一人じめして自分らだけポンポン強っなってその後もずっーと知らんぷりや! この場にβテスターがいるなら土下座して溜め込んだアイテムと金を吐き出してもわなあかん! パーティメンバーとして命あずかれんしな!」
ま、確かにそういう奴等もいただろうな…… けど
「銀さん……?」
立ち上がった俺にキリトが今にも泣きそうな声で俺の名を言う。
「おい、サボテン大王」
「誰がサボテン大王や! こんの天パ大臣!」
「あぁん! テメェ天パをナメんなよ! あの○泉さんだって天パだぞコラァ! じゃない! 危うく話が脱線するとこだった。おい、キバオウ、テメェは元βテスターが面倒見てやんなかったから死んだ。だから責任とれ、そういうことだな?」
「そ、そうや!」
「確かにテメェの言うことにも一理ある。けどなぁ、いきなりデスゲーム始められていきなりライフポイントなくなったらマジで死ぬなんて聞かされたら誰だってテンパるだろうが? そんな精神状態で人のことまで気にしていられるか? お前がもしβテスターだったら他の奴等を助けていたか?」
「ムグ…… けど……」
「それでも納得いかねぇのはわかる。けどよぉ、これを見てもんなこと言えるか?」
俺は本を出す。
道具やで無量配布されたこの世界の詳しいことが書かれている本だ。
「そ、その本がどうしたんや」
「コイツはβテスター共が書いたやつだ。これのおかげで俺は勿論、いろんな奴等、アンタも含めこれまで生き残ってこれたんだ」
「……」
「なのに、二千人は死んだ。たくさんの情報が手に入るこの本があってもだ。つまりβテスターがプレイヤー達の死の原因じゃねぇ。だから俺達が今すべきことはβテスターを突き詰めることじゃねえ。この死を踏まえ次に生かすことだ…… 死んじまった奴等の分まで最後まで戦って生き抜くことだ !」
「……!」
キバオウを含め、全員が黙って聞いていた。
するとキバオウは、
「まぁ、アンさんの言う通りかもな…… 騒がせて悪かったわ」
と言い頭を下げる。
「いや、別にいい。お前の言い分も全部が間違いってわけじゃねーしな」
キバオウが落ちついたのを見るとディアベルが今度こそと話を再開する。
「よし! キバオウさんも納得してくれたみたいだし、会議を始めよう!」
こうして俺達は明日ボスとどう戦うか相談しあい解散した。
◇
攻略会議が終り夜になった頃、俺達はディアベルに誘われ飲み会を始めていた。
「明日の成功を願って…… 乾パーーーイ!!」
「「「「「「乾パーーーイ!!!!」」」」」
そこらかしこからドンチャン騒ぎが始まる。
おいおい、酒でも飲んでじゃねーだろうなコイツら。
俺が食い歩いていると薄暗い小さな階段に座り固そうなパンをかじっているアスナがいた。
また、一人か……
キリトはエギルとなんか話てるようだしちょっと話かけてみるか。
「おい、アンタは皆と一緒に食わないのか?」
アスナは俺を見ると顔を反らしてから返事をする。
「特に仲がいい人はいないし。というか貴方は私なんかと話てていいの? 」
「あ? どういう意味だ?」
「あの黒髪の人を放っといていいのかって聞いているの。貴方達はとても仲が良さそうだったし」
「そんな仲よく見えるか?……」
「あんな風に、だ、抱きつかれてる所を見たら誰だってそう思うわよ……」
なんか恥ずかしそうにボソボソ言ってるがよく聞こえん。
「えーと、言ってる意味がやっぱりよくわからねーが、今アイツは俺の知り合いと話してるから別に大丈夫だぞ」
「…… はぁ、なるほど貴方はそういうタイプなのね」
「え、なに? どういうタイプ?」
「いや、別に。ハグ……」
アスナは再びパンをかじる。
けどそれあんま旨くねーんだよな…… あ、そうだ。
「なあ、これ使ってみるか?」
俺は一個のビンをアスナに渡す。
少し警戒する素振りを見せてくるが素直に受け取った。
男が怖いのか?
アスナがビンの上部に触ると指先が光る。
「それをパンにつけてみろ」
アスナはパンに指で触る。するとクリームが出てくる。
「これは……!」
アスナはパンを一口食うと、自分の口に合ったのかガツガツと食いまくり 一気に食べ終える。
「うめえか? そいつはな俺の特別な情報網で手に入れたもんだ。つーか二つ目の町でのクエストやりゃあ手に入るがアンタもやるか?」
「いや、いい…… 私は美味しい物を食べるためにここまで来たんじゃない」
「この世界から出るためか?」
「それもあるけど、他にも理由はある。私が私でいるため。始まりの町で布団にくるまって腐っていくぐらいだったら最後まで戦ってこの命が尽きるまでこの世界に抗う。私はそう決めたの」
「そういうこと…… なんかアンタ俺に似てんな」
「え?」
「いや、俺もよぉ、昔そんな風に考えて世界を相手に無茶しまくってたんだよ。でも俺は結局……なんも守れなかったけどな」
って、俺はなんでこんなこと会ったばかりの女に話てんだ?
いけねえな感傷的になっちまってる。
「貴方…… もしかして侍?」
「ああ…… ってええ!? なんでわかった!」
「命尽きるまで無茶するなんて侍ぐらいしか思いつかないわよ。それに世界を相手にってことは貴方侍は侍でも攘夷戦争で戦った志士よね?」
「…… まあ、そうだが」
「守れなかったって…… やっぱりたくさん死んだの?」
「……まあな。俺が救えずに死んじまった奴等がたくさんいたよ」
「そう…… だったら……」
「?」
「だったら明日は誰一人死なないよう頑張ればいいわ。最後まで戦争を生き抜いた貴方だからこそ…… できるはずよ」
アスナは相変わらず顔を背けて話ているが、もしかして
慰めを込めた激励か?
なんか気を使わしちまったな。
「まあ、お互い頑張ろうぜ」
「ええ……」
◇
うーん、銀さんと話がしたいけど…… 攻略会議の時、だ、抱きついちゃって恥ずかしくて…… 話せない!
飲み会が始まる前だってマトモに口が聞けなかったし……
私がそんなことを考えていると会議の時、最初に銀さんと一緒にいた、確かエギルさんが来る。
「よお、キリト…… でいいんだよな」
エギルさんは周りに聞こえないよう小声で、
「あの後、銀とはどうだ?」
と言ってきた。
ど、どうだってどういうこと!?
「はあー、にしても銀も罪なやつだ。こんな娘に好かれるとはな」
「ええ!? わ、私は別にそんな風に思っていません!」
あ、いけない。おもわず大声で言っちゃった……
エギルさん、ビックリしてるし。
「えと驚かしてすいません」
「いや、いいんだ。俺もデリカシーがなかった。いい大人がいけねぇな」
「いえ、そんなことは……」
「けどな、お嬢ちゃん」
エギルさんは周りに人がいないか確認してから言ってくる。
「これは一応だが…… アイツはああ見えて変にモテる。だからもし本当にアイツを好きだと思ったらすぐに行動に移らねーとやべーからな」
「だ、たからそんなことは…… ええ!? 銀さんモテるんですか!?」
「いや、ちょっ痛い!」
私は思わずエギルさんの首をつかんで聞いてしまう。
ってどうして私はこんなに必死になってるの? 別に銀さんがモテても私には関係ないはず……
ゴホゴホと咳をするエギルさんの横で私は変なモヤモヤ感にとらわれていた。
でも明日はボス戦、こんな気持ちでいたらダメだ!
私は頬をパンと叩き、気持ちを切り替えた。
ご感想お待ちしております。