アメリカで開かれたオークションの会場から宝を盗み出したルパン三世は、その帰路で女スナイパーからの銃弾に襲われるが、それをなんとか回避する。
ルパンは、そのスナイパーを誘き寄せる為にとなんと盗んだお宝を返却すると言いだした。
困惑する仲間たちと銭形。
そしてついに、ルパンの目論見通りスナイパーがルパンを狙った……。

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その男、義賊か悪党か?


ルパン三世 Bandit Or Villain-バンディットオアヴィラン-

 

 

 

 夜、ここアメリカでは、世界中のありとあらゆる名画や宝石を中心としたオークションが開かれていた。

 オークション会場はスーツの男達、そして色とりどりのドレスに身を包んだ女達で溢れていた。

 

「隣、いいかしら?」

 

 コートを着た金の髪を輝かせる女性が、白髪の老人にそう語りかけた。

 

「えぇ、構いませんよ……」

 

 老人がそう言うと、その女性は彼の隣に腰掛けた。

 女性が腰掛けたのを見てすぐに、老人は語りかけた。

 

「お姉さん、もしかしてブラッディエメラルドを?」

 

「そういったところですわ、あなたは?」

 

「はて、どうでしょうかな?」

 

 かくして、オークションは開催された。

 次々と名画や宝石が落札されていくが、二人は未だその様子を眺めているにとどまっていた。

 しばらくして、老人はゆっくりと席を外した。

 

「どこへ行かれるんです?」

 

 女性がそう言うと、老人は、

 

「少し御手洗にと……」

 

と言って、会場から離れていった。

 女性はその様子を眺めるだけだった。

 

「お待たせ致しました!、では本日の目玉、世界に数少ない赤く変色した貴重なエメラルド、ブラッディエメラルドになりま……」

 

 主催側の男がそう言った直後、会場の明かりが一気に暗くなり、会場の人達はパニック状態となった。

 

「な、なんだ!?」

 

「皆さん落ち着いてください!、すぐに非常電源に切り替わりますので!」

 

 主催側の男がそう言った直後、会場に再び明かりが灯された。

 会場に集まった全員が安堵した直後のことだった。

 

「なっ、ない……!、ブラッドエメラルドが消えた!?」

 

 本来、出品物として会場に出されるはずだったブラッディエメラルドの姿がまるごとそこから消失した。

 それと時を同じくして、会場の扉が勢いよく開き、ソフト帽にトレンチコートを着た男、銭形が現れる。

 

「ルパンめ……、いつの間に……!。まだ遠くには行ってないはずだ!!」

 

 慌てふためく会場と、その外で構えていた警官達。

 ホールの外を動き回る警官同士も状況を語り合っていた。

 

「ルパンは!!」

 

「まだ見つからない……」

 

「くそっ!!」

 

 そう言って走り去る警官を見て、声をかけられた警官は口元を緩めていた。

 

「にひひひ、そう簡単に捕まるかっての!」

 

 そう言ったあと、その警官もどこかへと走り去っていった……。

 

 

 

 オークションが行なわれたビル周辺は、ただならないほどの騒ぎが起こっていた。

 その様子を、少し遠くの場所から余裕の笑みを浮かべて見つめる青年がいた。

 

「どんちゃん騒ぎだなこりゃ……、悪ぃがとっつぁん、一足お先にトンズラするぜ……」

 

 若い青年にしてはやや変わった喋り方でそう言うと、青年はビルを背にして歩きだした。

 

 その女は、先程いたビルよりも小さなビルの屋上まで上がっていた。

 彼女の目に映るのは、余裕の笑みを浮かべながらビルを見つめる一人の青年だった。

 青年の周りには誰もいない。

 青年がビルを背に歩きだす。

 女はライフルを構え、その男に照準を合わせた。

 

「……!!」

 

 次の瞬間、青年は僅かに体を横にそらした。

 そのすぐあとに、青年の耳に銃声が響いた……。

 

 だが、その銃弾は青年を即死させることはなかった。

 代わりに、青年の顔を掠めていた。

 青年は、咄嗟に後ろを振り向いた。

 

「あの距離で気づいたの……!?」

 

 照準の先のターゲットは、あろうことか生きており、なんなら真っ直ぐに彼女のいる方角を見つめ続けている。

 

「……」

 

 青年は、不敵な笑みを浮かべた。

 間違いなく自分を視認していると見ていいだろう。

 女は、この状況を見て、彼を殺せないと判断したのか、その場から立ち去っていった……。

 

 青年の顔が、銃弾で掠められてできた傷口から徐々にボロボロに崩れていた。

 

「今のは死ぬほど驚いたぜ、かわい子ちゃん……」

 

 その顔が完全に剥がれた時、その奥にある鋭い瞳がギラついていた。

 

「面白ぇ、何が目的で俺に近づいたかは知らねぇが、次はお前さんを盗んでみたくなったぜ……」

 

 男は目にした女の顔を思い出し、そう言った。

 その顔は、まさしくルパン三世の顔をしていた……。

 

 

 

 翌朝、テレビのニュースは昨夜のルパン三世の事件を大々的に報道していた。

 その様子を、街から離れた一軒家のようなアジトで眺めながら、ルパンと次元大介は話をしていた。

 

「で、お前さんを狙ったその女は真っ先に逃げだしたというわけか。それにしてもよく気づいたな、それくらいの距離じゃ普通は相手に有利なもんだと思うがな……」

 

 次元がそうルパンに語りかける。

 それに対し、ルパンは、

 

「その普通ってのはプロの範疇での話じゃねぇのか次元。まっ、長年こんなことやってんだかんな、経験が味方してくれたってやつさ」

 

と返した。

 

「経験ね……」

 

 と、つぶやく次元に対し、ルパンはさらに語りだす。

 

「もひとつついでに言うとな?、あれはまだ仕込まれてからそう長くはないタイプだぜ?」

 

「言わばセミプロってわけか……、それも経験からそう思ったのか?」

 

「まそんなとこだな、しかしあの女……」

 

「ん?」

 

 ルパンが少し間を置いたあとに言う。

 

「どこか寂しい目をしてやがったぜ……」

 

 それを聞いた次元は、

 

「ケッ、相変わらず美女には見境なしか……!」

 

 と、呆れたように吐き捨てた。

 

「そういうんじゃねぇよ!、まぁどちらにせよ、俺を狙うということは、また会える可能性があるってわけだ……」

 

 やれやれという表情を浮かべる次元。

 しばらくして、ルパンは昨日手に入れたお宝である真紅のエメラルド、ブラッディエメラルドを取り出す。

 それを見た次元は、ルパンに語りかける。

 

「で?、お前さんが手に入れたそれはどうするつもりだ?、まさかとは言わんが、不二子にでもプレゼントするつもりじゃねぇよな?」

 

 と、次元はあえて不二子の名前を出して問いかけた。

 それに対しルパンは、

 

「それなんだがな?、やっぱ返すことにするわ……」

 

と言った。

 

「そうかい……、今なんてった?」

 

「だぁかぁらぁ、返すって言ったんだよ」

 

 ルパンのまさかの発言に、次元は頭を抱えた。

 

「……とうとう長年の経験と共にボケも回ってきやがったか」

 

「んなわけねぇだろ!!、おびき寄せるんだよ……」

 

 ルパンは、目をギラギラと輝かせながらそう言った……。

 

 

 

「ルパンが宝石を返す!?」

 

 ICPOのアメリカ支部で、銭形が声を荒らげた。

 それを気にすることもなく、銭形の一応の上司にあたる男が語りだす。

 

「あぁ、今朝このようなビデオメッセージが我々の元に届いた。立会人としてルパンは君を指名している」

 

『よぉアメリカの警察の諸君……、ルパン三世だ……。先日盗んだブラッドエメラルドなんだがな、ちょっと諸事情ができちまってな、やっぱ返すことにするわ。まぁ俺に言わせればお宝なんて盗む過程のおまけみてぇなもんだからよ、どの道手放す気ではいたんだがな。さて返すにあたってなんだが、場所は……』

 

 ビデオメッセージを睨みながら、銭形は思う。

 

(ルパン……、一体なにが目的なんだ……?)

 

 

 

 その夜、銭形はルパンから指示された場所へと足を運んだ。

 

「来たぞルパン!!」

 

 銭形がそう叫んだ時、ルパンは、特にこそこそするわけでもなく、堂々とその姿を顕にした。

 

「よぉとっつぁん!、悪ぃな遠路はるばる……」

 

「一体どういう了見だ?、わざわざお宝を返すだけであんな予告をするなんて……」

 

 ルパンの会話を遮ってそう問いかける銭形。

 それに対してルパンは、

 

「ただ返すのもあれだったからな、ちょっとした遊び心ってやつだよ。それに、目的はもっと別なところにあってな……」

 

と返す。

 

「別なところ……?」

 

 ルパンの意味深な発言に疑問を持つ銭形。

 そんな中、ルパンは語りだす。

 

「そんなことよりさっさと返すぜこの宝」

 

 そう言うと、ルパンは懐からブラッディエメラルドを取り出した。

 

「本物か?」

 

 銭形の問にルパンは、

 

「気になんなら確かめたらどうだ?」

 

と返した。

 

「いいのか?、俺はお前を逮捕するかもしれんぞ?」

 

「そう聞くってこたぁ、逮捕する気ねぇんだろ?」

 

 ルパンは、銭形のその言葉にそう返し、銭形に近づこうとする、だが……、

 

「……っ!?」

 

 ルパンは、背後に自身に対する殺気を感じた。

 

「あぶねぇ!!」

 

「のぁっ!?」

 

 ルパンは、銭形にいきなり飛びついた。

 その時、先程ルパンの立っていた場所に向かって銃弾が放たれた。

 

「今の銃声はなんだ!?」

 

「やっぱりやってきやがったか……」

 

 パニックになった状態の銭形に対して、冷静に何かを眺めるような顔でそう語るルパン。

 

「ブラッドエメラルドは!?」

 

 銭形のその言葉を聞いたルパンは、周りを見渡した。

 その時……、

 

「ここよ……」

 

と、二人にとっては聞き覚えのある高い声が耳に入った。

 その声が聞こえた方へと顔を向けると、黒いライダースーツに身を包んだ美しい女性が、ブラッディエメラルドを片手に持っていた。

 

「不二子ちゃんか……、まぁ来るだろうとは思ってたぜ?」

 

「あなたが変な動きしてるから着いてきてみたら、まさかお宝返却とはね……。でも、ブラッドエメラルドは私も狙っていたの、返されてもらっては困るわ……」

 

 不二子のその言葉を聞いて銭形は吠えた。

 

「ふざけるな!、それはルパンが返すと……」

 

「そんなに欲しけりゃ不二子ちゃんにくれてやるのも悪かぁねぇな……」

 

「えっ?」

 

「なっ!?」

 

 ルパンのまさかの発言に凍りつく二人。

 そんな二人をよそ目にして、ルパンは、顔を上げた。

 

「それより……」

 

 彼はその視線の先にある何かを睨みつける。

 

(みつけたぜ?、かわい子ちゃん……)

 

「ちょっと行きてぇとこあっからよ、今日のところはトンズラさせてもらうぜとっつぁん!!」

 

 そう言うと、ルパンはその場から一目散に走り去ってしまった。

 

「な、待てぇ!!、ルパン!!」

 

 銭形が叫んだ時には、ルパンはもういなかった……。

 一方の不二子は、先程のルパンの発言を思い出す。

 

(どうしちゃったのよ一体……)

 

 

 

(また……、またし損ねた……!)

 

 女は自らの失敗を深く恥じていた。

 昨日に引き続き、またしてもルパン三世を殺し損ねたからだった。

 

「せっかくのチャンスを二度も……!」

 

「ほぉ、そいつぁどういうわけかじっくり聞かせてもらおうか?」

 

「……っ!?」

 

 女はその声を聞いて振り向いた。

 

「こんばんは、お嬢さん……、泥棒です……」

 

 女は驚愕した。

 逃したはずの男がまさか目の前に現れたからだ。

 

「わ、わざわざ殺されに来たの?」

 

「まさか、アンタじゃ俺を殺せはしない……」

 

 ルパンは極めて冷静な口調でそう返す。

 

「分からないわよ、私みたいな女をあなたは撃てないでしょ?」

 

 そう言われたルパンは一回溜息を吐いてから言う。

 

「何か勘違いしてるようだなお嬢さん……」

 

 その直後、一瞬にしてルパンは女の背後に回った。

 そして、自分の愛銃であるワルサーP38を彼女の頭に突きつけた。

 女はあまりの状況に恐怖した。

 

「俺は気に入らないと決めたからには、女であろうが殺した男だ……」

 

「あっ……、あぁ……」

 

 恐怖が女を襲った。

 それを見て、なおもルパンは銃を突きつける。

 

「言え、俺を狙っている理由はなんだ?」

 

 ルパンの問いかけに対し、女は、

 

「何も覚えてないのね……」

 

と、何やら意味深な発言をした。

 ルパンは、疑問を浮かべた。

 そして、女は再び口を開いた。

 

「あなたが……、あなたがセルゲイを殺したんでしょ!!」

 

「……」

 

 ルパンは特に何も言わなかった。

 だが、背後からでもわかるほどに、彼女が涙を流しているということは察することができた。

 

「やっぱり、何も覚えてないんだ……。最初から分かってた……。だからあなたを殺そうとしたのに……」

 

 ルパンは、ワルサーを下ろした。

 

「やめだ……」

 

「えっ……?」

 

「俺はお嬢さんの命を奪おうとここに来たが、今はお嬢さんの涙を奪いたくなっちまったぜ……」

 

 そうキザなセリフを吐く大泥棒に対し女は、

 

「ふざけないで……!」

 

と、吐き捨ててその場から逃げ出した。

 ルパンは、女が置いていったライフルを眺めて言った。

 

「女を捨てきれないくせに、手を汚すこたぁねぇだろうがよ……」

 

 

 

 女は走っていた。

 その目には涙が、その心には悔しさと憎しみを背負って。

 そんな女の道を塞ぐかのように、数台の車が彼女の前に突如飛び出してきた。

 そして、数名の武装した人間達と、それを率いていると思われる強面の男が、彼女の前に立った。

 

「またし損じたのか、カーラ……」

 

「……っ!!」

 

「今回は向こうがわざわざチャンスを作ってきてやったというのにこの結果か……」

 

 男にそう言われ、カーラは、

 

「つ、次こそは絶対!!」

 

と、男に叫んだ。

 だが、

 

「お前の言う次はいつ来るんだカーラ?。それとも、先程のルパンに気でも狂わされたか?」

 

と、男はカーラに言い放つ。

 

「そ、そんなことは……!!」

 

「ならなぜ無理やりにでも殺さなかった?。忘れているようだが、ルパン三世は世界を股にかける悪党だ。その気になれば人間の一人や二人殺すことも厭わないような凶悪な男だぞ。だからお前の恋人、セルゲイは殺されたんだ……」

 

「……」

 

 カーラの表情が曇っていく。

 

「恩を忘れたなカーラ。そのためにわざわざお前を二年間仕込んでやったというのに……」

 

「なぁるほど、そういうわけだったの……」

 

 突如、その場に何者かの声が響く。

 

「誰だ!」

 

 男がそう言った直後、カーラの後ろから緑のジャケットを着た男が現れた。

 

「よぉ……」

 

「ルパン三世……!」

 

「どうしてここが!?」

 

 カーラにそう言われると、ルパンは答えた。

 

「さっき付けておいたんだよ……」

 

 カーラの身につけた服を指さすルパン。

 カーラは服の周りを見て、小型の発信機が着いていることに気がついた。

 

(さっき銃を突きつけられた時……!)

 

 一方、武装集団を率いている男は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「まさか三度も我々にチャンスを与えるとはな……、ちょうどいい、目の前の約立たずと共に蜂の巣にしてやる……!」

 

 それを聞いたルパンは、男に言い放った。

 

「悪ぃが俺も一人じゃないんだよな……、てなわけで五右衛門!!」

 

 ルパンがその名を叫んだ時、彼の頭上にいる一人の侍が目を光らせた……。

 

「……承知!」

 

 五右衛門は頭上から颯爽と現れ、ルパンとカーラの前に降り立った。

 武装集団はルパンとカーラに対してマシンガンを撃つ。

 

「秘剣竜巻返し!!」

 

 五右衛門はその銃弾の雨を、刀を高速回転させることで全て弾き返してみせた。

 今度は武装集団のほうに銃弾が向かっていき、彼らは慌てふためいた。

 

「次元は……!」

 

 ルパンがそう五右衛門に問いかける。

 

「もう少しで来る……!」

 

 五右衛門がそう言った直後、彼らの前に一台のルノー・8・ゴルディーニにが現れる。 その運転席には、次元が座っていた。

 

「待たせか!?」

 

「ナイスタイミングだ次元!、じゃあ行こうぜカーラ……」

 

「ちょっ!?」

 

 ルパンは、カーラを強引に引っ張り、車に乗り込んだ。

 そして、五右衛門も乗り込んだのを確認した次元は、一気に車を飛ばした。

 武装集団の人間達はマシンガンを再度構えるが、それを率いていた男はそれを止めた。

 

「よせ……」

 

「いいんですか?」

 

「後で奴らは始末できる、劇的な形でな……」

 

 

 

 ルパン一味とカーラは、依然車で逃走していた。

 

「あいつら追ってこねぇぞ?」

 

 後ろを確認しながら次元はそう言う。

 ルパンも後ろを見てから語りだす。

 

「それもそれでなんかおっそろしいぜ……。んな事より、さっきの話の続きといこうぜカーラ。お前さんは俺がセルゲイを殺したとか言ってたな。奴らの話からして、セルゲイはお前の恋人だそうだが……」

 

 カーラは暗い表情で話し出す。

 

「えぇ、生きてれば私と今頃……。あれはロシアでのことよ。二年前、警察官だったセルゲイは、博物館で盗みを働いた泥棒を追跡していた」

 

「その泥棒とは、ルパンのことか?」

 

 五右衛門がカーラにそう問いかける。

 

「そう、車で逃走していたルパンを追いかけていたセルゲイは、その際にルパンの発砲を受けて……」

 

「と、言っているが?」

 

 次元はルパンに向かって話しかける。

 ルパンは真面目な顔つきになって話しだす。

 

「思い出したぜ……、あん時確かに俺は警官隊を撹乱するために発砲した。だが……」

 

「だがなんだ?」

 

「俺はわざと奴らに弾が当たらないように発砲したつもりでいた。だがあん時一瞬妙なことが起こったのを覚えてる」

 

「妙なこととは?」

 

 五右衛門が問いかける。

 ルパンは再び話しかける。

 

「一人撃たれたんだよ……、俺が銃をしまったその直後にな……」

 

 それを聞いたカーラが目を見開く。

 

「それって、どういうこと……?」

 

 ルパンが再び話す。

 

「警官から逃れるために曲がり角を曲がった後だった。微かに銃声の音が響いて振り返ってみれば、そいつは殺されていたんだ。カーラの言っていることと、あの武装した連中の言っていることが間違いなければ、おそらくそいつがセルゲイだ……」

 

「嘘よ!、あの人達はあなたがセルゲイを殺したって!!。だから私は、あの人達の元で……!!」

 

 そう叫ぶカーラに対し、ルパンは言い放つ。

 

「まだ分からねぇか……、お前は嵌められたのさ、奴らに……」

 

「……っ!?」

 

「奴らとはどのような形で出会った……?」

 

 ルパンの問いかけに対して、カーラは答える。

 

「セルゲイの葬式のあと、あの人達に呼び止められたの。その時……」

 

 

 

「ルパン三世……!?」

 

 カーラはその名前を聞いて驚く。

 カーラの前に立つ男は、事件を撮らえた写真をカーラに見せながら話す。

 

「そうだ、セルゲイはルパン三世を追っていた最中に発砲されて死亡した」

 

 それを聞いたカーラは、怒りで体を震わせていた。

 

「許せない……、なんであんな泥棒のせいでセルゲイが死ななきゃならないの……!!」

 

 怒りから込み上げられた涙が、カーラの瞳から流れだす。

 それを見た男は、再びカーラに語りかける。

 

「彼が憎いか……、なら我々のところに来るといい」

 

「え?」

 

「ルパン三世を、お前の手で殺せるようにしてやる……」

 

 

 

「それで奴らに色々と仕込まれたってわけか……」

 

 ルパンがそう語ったあと、カーラは俯いたまま語る。

 

「でも想像以上だった……。あなたは私の二手三手先を読んで動いていた。やっぱり私程度の腕では、あなたを殺せないのね……」

 

「……」

 

 ルパンは再び真っ直ぐ前を向いて黙り込んだ……。

 

 

 

 アジトに戻ったルパン一味とカーラ。

 カーラを一旦部屋へと向かわせたあと、ルパンは次元と五右衛門に話しかけた。

 

「おそらくさっき俺達を狙った武装集団はブラックファングって奴らだ……」

 

「どういう組織なんだそいつは?」

 

 次元が問いかける。

 ルパンは再び話しだす。

 

「ブラックファングは、ミスターファングってのを中心に、世界中の悪党と呼ばれる人間を影で葬っている裏社会でその名が知られている武装集団だ……」

 

 五右衛門はそれを聞いて、

 

「一見すると正義の味方のように聞こえるが?」

 

と言う。

 それに対しルパンは、

 

「結果だけ見りゃな。だがその実態は賞金狙いの殺人狂共だ……。奴らには名誉もクソもなく、殺しそのものに快楽を得て金を手にし、正義を語って他者を洗脳しては自分達のような殺人狂を増やしていく。そのために、死んでも誰からも恨まれないような悪党や凶悪犯をターゲットにすることで、比較的伸び伸びと殺人行為があのように続けられるって寸法さ……」

 

と語った。

 

「なかなか面倒なのを敵に回したか……」

 

 と、次元が言う。

 ルパンはそれを聞いて、

 

「まぁ、それはいつものことだけどな!。少しカーラの様子を見てくる……」

 

と言って、カーラのいる部屋へと歩いていった……。

 

 

 

 扉の外から二回くらいのノック音が響く。

 そして、

 

「俺だ……」

 

と、ルパンの声が小さく聞こえた。

 

「いいわよ入って……」

 

 カーラにそう言われ、ルパンは部屋へと入っていく。

 

「失礼するぜ……」

 

 ルパンがカーラに近づく。

 カーラは暗い表情を浮かべながら話しだす。

 

「これからどうすればいいのかしら。この二年の間、私はあなたを殺すためならとあの集団の中で生きてきた。でもよく考えたら、その後に私は前の生活に戻ることができたのかしらね……。たとえ、セルゲイが死んだ事件のことを知らずにあなたを殺してたとして、私の胸に空いた穴は埋まったのかしら……」

 

 ルパンはそれを聞いて、しばらく黙った後に語りだした。

 

「埋まらねぇだろうな……。きっとその先にあるのは、果てしなく長い虚無だろうぜ?。俺を殺してたら、お前はその虚無を埋めようとまた誰かを殺し、そしてそれでも満たされずにまた深い虚無へと落ちてただろうぜ?。復讐ってのは、きっとそんなもんなんじゃねぇかと俺は思ってる」

 

「ルパン……」

 

 ルパンはすっと顔を緩ませて、カーラに再び語りかける。

 

「だが結果オーライじゃねぇか、お前はギリギリのところで踏みとどまれたんだからよ。これからいくらだってやり直せばいいのさ、そして思う存分人生を楽しめるようになった時、お前の心の穴はいつの間にか埋まっているだろうぜ……」

 

 カーラはそれを聞いて、少し笑みを浮かべた。

 

「変な話ね……、私が殺そうとした男に、逆に助けられちゃうなんて……」

 

「いい顔になったじゃねぇか……、どうやらお前の涙を奪うことはできたみてえだな……」

 

「あっ……」

 

 ルパンのその言葉を聞いて、いつの間にか自分が笑みを浮かべていたことに気づいたカーラだった……。

 

 

 

 ブラックファングのメンバーが、ある一軒家へと近づいていた。

 

「ん?」

 

 次元は、先程から少しずつ感じてきていた違和感に反応した。

 その様子を見て、五右衛門が次元に問いかける。

 

「どうした次元……」

 

「外がざわついてきやがった……」

 

 次元と五右衛門が恐る恐る窓の外を見た。

 そこには、ブラックファングのメンバー達がアジトを囲んでいた。

 

「奴ら……!、なぜこの場所が分かった……!?」

 

 次元はルパンとカーラのいる部屋へと走りだした。

 扉を勢いよく開き、次元は二人に向かって叫ぶ。

 

「ルパン!!、さっきの奴らがっ!?」 

 

 アジトの周りから、マシンガンの弾が無数に襲いかかってくる。

 次元は、窓から少しずつ身を晒し、マグナムをぶっぱなす。

 何発かの弾がブラックファングのメンバー達に命中するが、その数はなかなか減らない。

 

「どうしてこの場所が!?」

 

 カーラがいきなりの事態に驚く。

 ルパンは、カーラの腕へと目を移す。

 そのカーラが身につけていた時計を見ると、小さな光が淡く点滅しているのが目に入った。

 

「カーラ、その時計……」

 

「えっ……?」

 

 ルパンに言われ、時計を見るカーラ。

 それを見てルパンは、

 

「なるほど、身につけていたものに最初から発信機をつけてやがったか……、それを追ってここを嗅ぎ付けたってわけか……!」

 

 ルパンがそう語っていると、先程まで続いていた銃撃が急に止み始めた。

 

「静まり返った……?、何故だ……」

 

 ルパンと次元が窓の外を覗く。

 そこでは、ブラックファングのメンバーの一人がロケットランチャーを構えていた。

 

「マジか!?」

 

 アジトの中にいるメンバーが一斉に動き出す。

 次の瞬間、ロケットランチャーの弾がアジトの外壁を破壊し、物の見事にアジトは崩壊した……。

 

 

 

「ぐっ……!?、ちきしょー……、派手にやりやがって……」

 

 ボロボロになった体を起き上がらせて、瓦礫をどかしていくルパン。

 そこへ、ブラックファングを率いていた男、ミスターファングが現れる。

 

「お目覚めかな?、ルパン……」

 

「よぉ……、さっきぶりじゃねえか……」

 

 ルパンは、ミスターファングの顔を見て笑みを浮かべる。

 

「これほどまでやっても生きているとはまた驚きだ……」

 

「そんな御託を並べる暇があったらさっさと俺を殺したらどうだ?」

 

「そうだな……、それでは心置きなく……」

 

 ミスターファングは銃をルパンに向ける。

 

「いや待ったぁ……!」

 

「ん?」

 

 ルパンが急に声を上げる。

 

「なぁ、せっかくなら俺もおたくらの中に入れてくれねぇか?」

 

「命乞いか?」

 

「分からねぇか?、今ここで俺を殺せば、おたくらは現状維持のまま代わり映えもしない正義気取りの殺人集団で終わる。だが俺が入れば、もっと刺激的な殺しができるぜ?、それも毎日のようにな……」

 

「……!」

 

 ミスターファングの表情が一瞬緩む。

 ルパンは問いかける。

 

「さぁどうする?」

 

 そう問いかけられると、ミスターファングは銃を下ろした。

 

「面白い……、この男を連れていけ、丁重にな……」

 

 ルパンは、ブラックファングのメンバーに体を起こされ、そのまま連行された……。

 

 

 

「どうなってるのよこれ……」

 

 ルパンのアジトに向かっていた不二子は、そのまさかの光景を見て困惑する。

 その視線の向こうで、次元は、自身に乗りかかっている瓦礫を蹴り飛ばしていた。

 

「たくっ……!、ひでぇことしやがるぜ!!」

 

 五右衛門も瓦礫から這い上がる。不二子は彼らの元へ駆けだし問いかける。

 

「ルパンは?」

 

 五右衛門はそれに対し、

 

「どうやらいないようだ……」

 

と返す。

 その横で、次元が舌打ちする。

 

「チッ……!、こうなったらもう打つ手なしか!」

 

 次元がそう吐いた直後、

 

「いえ、そうでもないわよ!」

 

と、カーラが声をだす。

 その手には、小型のデバイスが握られていた。

 それを見て、次元が問いかける。

 

「これは?」

 

「ルパンから渡されたわ、もし俺に何かあったらこれを使えって」

 

 カーラがそう言うと、三人はデバイスの画面を見つめる。

 五右衛門はその画面を見て言う。

 

「南に向かっている……」

 

「この方角、ブラックファングのアジトがある場所だわ」

 

 カーラも画面を見てそう言う。

 それに対し次元は、

 

「ルパンのやつ、俺たちにそれを知らせるために……」

 

と、ルパンの目的を把握する。

 そんな三人に対して、不二子は問いかける。

 

「どうするの?、ルパンを追いかける?、それとも……」

 

 その言葉に対し次元は、

 

「決まってんだろ、追いかけるさ……、俺達の相棒を奪われたんだ、取り返してやらねぇとな……!」

 

と、即答した。

 そして、

 

「姉ちゃんはどうする?、ここに残ってもいいんだぜ?」

 

と、カーラに問いかける。

 それに対しカーラは、

 

「いいえ、私も行くわ。あの組織のことは、この中の誰よりも知っているから!」

 

とかえした。

 

「なら決まりだな……」

 

 次元は少しだけにやりとした笑顔を見せた。

 

 

 

 一方ルパンは、石段で覆われた建物の中にいた。

 

「しばらくはここで大人しくしてもらう」

 

 ミスターファングによって、檻の中に入れられるルパン。

 

「おいおい……、よっぽど信用ねぇんだな俺」

 

「なに、お前が信用できる行動を見せればすぐにでも外に出してやる……」

 

 檻に鍵をかけ、ミスターファングは部屋から立ち去っていく。

 ルパンは思う。

 

(さて、向こうは上手くいってっかどうか……)

 

 

 

 次元達は、カーラの指示するようにルパンを追いかけ、ついにブラックファングのアジトの近くに辿りついていた。

 黄色いフィアット500から次元が顔を出し、カーラに問いかける。

 

「ここか……」

 

「えぇ……」

 

「やはり見張りがいるか……、どこかにこっそり入れるような場所がねぇか探さねぇとな……」

 

「それなら覚えがあるわ……」

 

 カーラに着いていく次元、五右衛門、不二子の三人。

 しばらく歩くと、カーラは人一人ずつなら入れるほどの穴を指さした。

 

「ほぉ、こいつぁいい……」

 

「ここはあまり知られてない場所だけど、アジトに繋がる通路になってるわ」

 

 四人はカーラを先頭に、その穴からアジトへと侵入した。

 やがて、歩き続けていくと通路がいくつかに別れた場所まで辿りついた。

 

「ここいらで分かれるか……」

 

 次元がそう提案する。

 

「そうね、私はカーラと行くわ」

 

 不二子がそう言うと、カーラは不二子へと着いて行った。

 

「分かった、五右衛門……」

 

「承知……」

 

 そして、五右衛門は次元と行動を共にすることとなった……。

 

 

 

 次元、五右衛門は、身を潜めながら通路を進んでいた。

 その時、

 

「隠れているのは分かってますよ……、御二方……」

 

 何者かの声が響く。

 

「チッ……、気づいてやがったか……」

 

 次元と五右衛門は、大人しく自らの姿をさらけ出す。

 

「やはり生きていましたか。ルパンと同じくあなた方もタフな男だ……」

 

 メガネをかけた男がそう言う。

 

「次元、ここは某が引き受けよう……」

 

 五右衛門が次元の前に立つ。

 

「任せて大丈夫か?」

 

 次元の問いかけに対して、五右衛門は静かに頷いた。

 

「任せたぜ……」

 

 次元は別の通路へと向かっていった。

 

「二人がかりでもよかったというのに舐められたものだ……」

 

 男の発言に対して、五右衛門が言う。

 

「お主を相手にするならば、某だけでも事足りる……」

 

「っ……!!」

 

 男が目にも止まらぬ早さで五右衛門に襲いかかる。

 

「……!!」

 

 五右衛門も、少し遅れながらも斬鉄剣を手にし動きだした。

 

 

 

 ルパン一味の侵入は、割と早くにブラックファングのメンバー全体に行き渡っていた。

 

「ミスターファング、ルパンの一味が侵入してきました!」

 

 部下の伝言を聞いたミスターファングは、静かに目を閉じた。

 

「そうか……、早急に始末しろ。俺はルパンを殺す……」

 

 ミスターファングはそう言うと、ルパンのいた部屋へと向かっていった……。

 

 

 

 一方、そんなことになってるとは思ってもないであろうルパンは、檻の中で呟く。

 

「そろそろか……、ん?」

 

 ルパンの耳に、小さな足音が入った。

 しばらくすると、足音は扉の奥で大きくなってから止まり、ゆっくりと扉が開いた。

 その奥にいたのは……。

 

「待たせたわねルパン……」

 

「ルパン!」

 

 不二子とカーラの二人だった。

 

「不二子ちゃん……、カーラ……」

 

「待ってて、今鍵を……」

 

 不二子がルパンのほうへと近づき、鍵を壊そうとする。

 だが……、

 

「動くな!」

 

「……っ!?」

 

三人の前に、ミスターファングが現れる。

 

「信用できる行動をすればすぐにでも外に出すと言ったのだがな……」

 

 ミスターファングが冷たく言い放つ。

 それに対してルパンは、

 

「俺は何もしてねぇぜ?、こいつらが自分で決めたことだ……」

 

と言い返す。

 ミスターファングは、カーラのほうへと顔を向ける。

 

「カーラ、まさかルパンの仲間になったとはな……」

 

 カーラに詰め寄るミスターファング。

 

「ルパンが言っていたわ、セルゲイはルパンが殺したわけじゃなかったのね……!」

 

 ミスターファングは、カーラの発言を聞いて笑いだした。

 

「ルパンの言う事を真に受ける気か?、やつは目的のためなら平気で嘘をつくような俺だぞ?」

 

「えっ……?」

 

 困惑するカーラ。

 ミスターファングは、再び話しだす。

 

「俺達が邪魔になり、カーラを使ってアジトごとブラックファングを壊滅させようとしたんだろルパン?」

 

 それに対しルパンは、

 

「ひでぇ言われようだぜ……」

 

と、否定でも肯定でもない返しをする。

 カーラはルパンに問いかける。

 

「そうなの……?、ルパン……」

 

「だとしたらどうする……、俺を消すか?」

 

 その場の空気が一気に凍りつく。

 ミスターファングは、カーラにある銃を渡す。

 

「ルパンの使っている銃だ……。最後のチャンスをやろうカーラ、この銃でルパンを殺せ……!。そうすれば、お前の裏切りは無かったことにしてやる……」

 

 カーラは、ミスターファングの指示通り、ワルサーを手にする。

 一方ルパンは、

 

「不二子、はけろ……」

 

「でも……!」

 

「早くしろ……!」

 

と、不二子に対して言い放つ。

 ワルサーをルパンに向けるカーラ。

 その様子をまじまじと見つめるミスターファング。

 

(さぁカーラ、お前はどうする?)

 

 

 

 一方、五右衛門は例のメガネの男と死闘を繰り広げていた。

 

「っ!!」

 

 男の素早い動きが五右衛門に襲いかかる。

 

「くっ!?」

 

 先程から斬鉄剣でそれを受け流すことしかしない五右衛門。

 その様子は、よほど手こずっているようにも見えた。

 

「どうしました?、まさかその程度ですか?」

 

 五右衛門を執拗に挑発する男。

 五右衛門は真っ直ぐ男を見て考える。

 

(彼奴が踏み込み、某にナイフを向けるまで約0.5秒……。その隙をつけばおそらく……)

 

「それでは、これで終わりです!!」

 

 再び男が駆け出す。

 五右衛門は、特に動くこともせずに斬鉄剣を構える。

 

「……っ!!」

 

 男がナイフを振り下ろそうとするよりも早く、五右衛門は彼の懐に斬鉄剣を当てた。

 男の腹部から大量の血が飛び散り、男の手はナイフを離した。

 

「なっ……、馬鹿な……」

 

 腹に大きな切り傷を作り、男はばたりとその場に倒れた。

 五右衛門はゆっくりと斬鉄剣を収め、言い放つ。

 

「またつまらん者を斬ったか……」

 

 

 

 カーラはルパンに銃を向けながら言う。

 

「ルパン、あなた言ったわね?、復讐で空いた穴は埋まらないだろうって……。あの言葉は私を信頼させるための言葉だったの?」

 

 ルパンはその問いに対して、少しニヤつきながら言う。

 

「そいつを判断すんのはお前だカーラ。もしそう思うんなら、俺を殺せ……」

 

 カーラは、そのまま銃を下ろした。

 そして、

 

「……っ!!」

 

 その銃をルパンのいる檻へと転がした。

 それを見た不二子は、驚愕の表情を浮かべた。

 もちろん、カーラの近くにいたミスターファングも同じであった。

 

「貴様っ!!」

 

 ミスターファングは、自身の銃をカーラに向けた。

 

「っ!?」

 

 目を見開くカーラ。

 直後、銃声が響いた。

 倒れたのはミスターファングだった。

 カーラがルパンのほうへと顔を向けると、檻の僅かな隙間からワルサーを手にしたルパンの姿があった。

 

「それでいい……、そいつを殺すのは俺でいい……」

 

 そう言って、ルパンはワルサーを下ろした。

 部屋に一人の男が入ってくる。

 男はルパンに問いかける。

 

「終わったか?、ルパン……」

 

「あぁ……、そっちはどうだ?、次元……」

 

「あらかた片付けてきたさ……。ご臨終か……」

 

 次元はミスターファングを見てそう言う。

 不二子によって鍵が壊され、ルパンは檻から出た。

 

「あぁ……、さっさとズラかるとすっか……」

 

 ブラックファングはほぼ壊滅状態になり、ルパン一味と、カーラはアジトから立ち去った……。

 

 

 

 翌日、カーラは街でルパンと別れることとなった。

 フィアットから顔を出して、ルパンはカーラに語りかける。

 

「これからどうするんだ?」

 

 カーラはそれに対し、

 

「分からないわ、でも分からないなりにやっていこうと思うわ」

 

と、ルパンに言った。

 ルパンはただ、

 

「そうか……」

 

と返す。

 

「ありがとう、ルパン。こう思えるようになったのは、あなたのおかげよ……」

 

 カーラはルパンに感謝を述べた。

 そんなカーラの顔を見てルパンは言う。

 

「やっぱり笑ってる時のが一番いい顔してんぜ?、カーラは……」

 

「えっ……」

 

 いきなりの言葉に困惑するカーラ。

 だが、気づけばカーラの前にいたはずのルパンは達はフィアットを走らせていた。

 どんどん小さくなっていくフィアットから顔を出し、ルパンは手を振る。

 

「んじゃあな!!」

 

 そしてとうとうその姿は見えなくなった……。

 

「まんまと盗まれたのね、私も……」

 

 

 

「それで?」

 

「あん?」

 

 次元がルパンに問いかける。

 

「カーラの恋人を殺したかどうかさ。お前が撃ったつもりはないと言っていた、あれは本当か?」

 

 ルパンはそれに対して返す。

 

「あぁ、あれは嘘さ……」

 

 黙り込む次元。その直後、ルパンは再び口を開いた。

 

「もしそうだったとしたら、お前は俺から離れるか?、次元……」

 

「ケッ!、だとしても着いていってるさ……」

 

 次元はそうルパンに言い放った。

 すると、そんな彼らの後ろからけたたましくサイレンの音が鳴り響く。

 

「見つけたぞルパン!!」

 

 銭形に率いられながら、数台のパトカーが近づいていた。

 ルパンは、呆れたように言う。

 

「あらまぁまた大勢でおいでなすって……」

 

「たとえどちらであっても、銭形には追われるんだな!!」

 

 と、愚痴を吐くように言う次元。

 ルパンは、前を向いて言った。

 

「飛ばそうぜ次元!!」

 

「あぁ!!」

 

 フィアットのトランクが開き、スーパーチャージャーが露出した。

 直後、フィアットはものすごいスピードを出して走り去っていった……。

 

 

[完]

 




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