メカ丸に転生した……   作:SK-ピズム

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第壱話:呪縛

 

 

 

2006年 ◯月◯日 曇り

 

今日の出来事。

 

 5歳になった。そろそろ鉛筆を手に取っても怪しまれないだろう。

 俺としては、鉛筆を持つのもやっとだが、今はそれ以上に記録が必須であると判断した。

 

 

 俺の今世での名前は(むた)幸吉(こうきち)

 

 “今世での”、なんて書いたとおり、俺は俗にいう転生者だ。

 前世では、普通の日本人として生まれ、普通に生活していた。

 だが、ひょんなことで死んでしまった。

 

 ……別にテンプレみたいに、トラックに轢かれた訳でも、自殺した訳でも、ましてや天罰的な何かではない。

 火事だ。お隣が燃えたんだが、寝てて気づかなかった。そのまま火に巻かれて焼死。

 

 ……アホだろ? 俺もそう思うんだから、誰だってそう思うと思う。

 

 

 まあ、俺の死因はどうでもいい。問題はその後だ。

 火に巻かれた後、数秒は意識が保ってたんだけど、直ぐに意識が落ちた。

 そして、目が覚めたら、体が縮んでしまっていた!!

 

 最初は本当に混乱した。目はよく見えないし、体は自由に動かせない。声を出そうとしても泣くことしかできない。そして、()()()()()()()()()()()()()

 

 

 しばらく経ち、落ち着いたところで、自分が赤ちゃんになってしまっているのだと分かった。

 

 その考えに至った時、俺はすごく喜んだ。

 だって転生よ!? ラノベやアニメでは、転生者は総じてチートを手に入れ、美少女にモテまくりのハーレムを築けるのだ。嬉しくないという方が嘘になる。両親は共に日本人で、美形だ。この両親から生まれた俺なら美形になると確信できた。

 

 

 だが、現実はそんなに甘くはなかった。むしろ辛かった。

 

 というか、今になって考えてみると、凄くアホだと思う。

 そんなことを考えるよりも先に気づくべきことがあるだろうに。

 

 別に、ブサイクに育ったとかそういう訳ではない。……いや、ある意味ブサイクなのか?

 

 

 俺には、先天的な疾患があり、右腕と膝からの下の肉体及び腰から下の感覚が無かった。加えて、肌は日光でも焼かれるほど脆く、常に全身の毛穴から針を刺されたような痛みがある。

 

 気づいたのはある程度身体が自由に動かせるようになってから。

 該当箇所が動かせないこと、痛みから体を掻いた時に肌が剥がれたことから。

 

 治療方法はない、と医師には診断された。

 

 

 今の俺は、ファラオのミイラみたいに包帯ぐるぐる巻きで病院のベッドに寝かされている。

 どこの志々雄(ししお)真実(まこと)だよ? いや、志々雄の方がマシだ。彼奴(あいつ)はまだ自由に動けるんだから。

 

 俺のチート&ハーレムな未来は、完全に閉ざされた。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

2006年 ◯月◯日 曇り

 

今日の出来事。

 

 今日は気分が幾分かマシなので、久々に日記を書こうと思う。

 

 ……特に書くこともない。

 当然だ。ここは病室。特に物珍しいことも起こる筈もない。

 

 

 ……何も書かないのも勿体無い。

 そうだ、最近よく見ているアニメについてでも書こうか。

 

 

 タイトルは「究極(アルテメット)!! メカ丸!!」。

 主人公のメカ丸というロボットが、人間と仲良く過ごすSF的日常を描いた作品だ。

 

 悪いロボットとの爽快感のあるアクションも魅力的だが、同時に、どうしても人間とのコミュニケーションとの間に無意識のうちにどこか一線を引いてしまっているメカ丸がとても良い。また、他のロボット側の心情が小出しにしかないことでできる絶妙な余白も、こちらの想像力を掻き立てられた。

 背景や作画も美しく、なによりも登場キャラクター全員が魅力的な素晴らしいアニメだ。

 

 

 ……今度見る時には、一人じゃなくて、誰かと一緒がいいな。

 それまでに、この身体が治っているといいのだけれど……。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2007年 ◯月◯日 雨

 

今日の出来事。

 

 久しぶりに日記を書いた気がする。

 今日はそれだけ体の調子がいいからだろう。

 

 唐突だが、俺の疾患の詳細が分かった。「呪いによる被害」だという。

 

 ……ちょっと意味が分からなかった。

 禿頭で耳、鼻、口にピアスをつけ、白い顎髭と眉毛を伸ばし、着物を着た、物々しい雰囲気をたたえる老人が、わざわざ俺の病室に来て言うんだから、嘘とかではないんだろうが……にわかには信じがたい内容をマシンガンのように浴びせられた。

 

 

 呪いのこと、呪術師のこと、呪術高等専門学校のこと、そして俺の疾患の正体__()()()()のこと。

 きっとその時の俺は、大量絶滅時に隕石が降ってくるのを見る恐竜の様な表情をしていたことだろう。

 

 そして、理解した。

 この世界は現代ダークファンタジーの世界だ。

 転生があるのだから、そういう世界もあるのだろう。

 俺は理解のある転生者だ。そういうのは分かる。

 

 

 老人は俺に言ってくれた。

 「君に降りかかった呪いは、生憎と治すことはできない。だが、その縛りによって得る力は、使い方次第で人を助けることができる」、と。

 

 病室に訪れた老人__楽巌寺(がくがんじ)嘉伸(よしのぶ)は、俺を引き取り、然るべき処置を施してくれることを約束してくれた。

 

 もちろん、俺はOKを出した。

 このまま病室にいても、両親に迷惑をかけて死ぬだけだ。それならば、少しでも人の役に立ってから死にたい。

 ……それと、両親にこれ以上心配をさせたくない。

 

 

 父さん、母さん、最後にお礼を。こんな所で言うべきではないのだろうけど、どうか許してほしい。

 

 今まで育ててくれて、ありがとう。

 

 

 

 

 

__________

 

 

 

 

 

 病室を訪れた時、楽巌寺嘉伸は目を疑った。

 

 

 その無惨な様相にではない。その痛々しい出立ちにではない。

 

 病室を埋め尽くす威圧感。

 側に立つだけで死を濃厚に実感させられる程の呪力。

 

 彼、与幸吉はアチラ側の人間なのだと、その時理解した。

 

 

 元々は才能のある野良術師のスカウトという呪術師にとっては何気ない任務の一環だった。

 こちらの提案に乗れば人材確保。乗らずとも大した問題はなかった。

 

 だが、彼を一目見て意識が変わった。

 

 彼は、強くなれる。

 呪力操作をマスターすれば、圧倒的な呪力の出力で殆どの呪霊を祓えるだろう。

 問題は四肢の麻痺だが、それも呪骸の操作で十分解決可能だ。

 

 恐らく、この少年であれば二級は軽く超えて行くだろう。

 これは勘だ。勘でしかないが、彼は殉職率の高いこの呪術界であっても生きていけるだろう。

 

 彼にとって、この世界こそが天職となりうるだろう。

 

 

 私が一通りの説明をすると、彼は私に問うてきた。

 「俺も、呪術を学べば、この体を治し、人を助けられるだろうか」、と。

 

 故に、私は答えた。

 「君に降りかかった呪いは、生憎と治すことはできない。だが、その縛りによって得る力は、使い方次第で人を助けることができる」、と。

 それは本心であり、紛れもない事実であり、嘘を孕んだ言葉でもあった。

 

 

 確かに、呪術師になれば、人を助けることができるだろう。

 だが、それは一握りの、手の届く範囲の人間だけだ。

 

 日本国内での怪死者・行方不明者は年平均10000人を超える。

 その殆どが人間から流れ出た負の感情"呪い"による被害だ。

 

 未だに、10000人だ。呪術界が始まって2000と少し。

 未だに、我々は呪いを完全に御する術を持ち合わせていない。

 

 

 私は、彼に期待していたのかもしれない。呪力だけで言えば、あの忌々しい五条悟とも並ぶかもしれない、あの少年に。

 

 私は、与幸吉を呪術高専で保護するという形で、利用しようとしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あんな、悲しい結末に至ると知っていれば、そんな選択はしなかっただろうが……。

 

 

 







主人公__与 幸吉(むた こうきち)
 死んだら転生した系主人公。前世は男。
 『呪術廻戦』なるものはよく分からない。現代版のダークファンタジーなことは知ってる。それ以外は知らぬ。天与呪縛のことも、もちろん知らなくて絶賛困惑中。
 歩けない、身体中痛い、死にそう、の三点セットが無知な主人公に襲い掛かる!!
 生得術式は変わらず、傀儡操術。傀儡を操作する術式。この存在についてはまだ知らない。


読んでくださり、ありがとうございます!!
もし好評だったら、続きを書くかもです。
作者は本当にその場の"熱"で生きてるので、直ぐに別の場所に移ろいやすいです。
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