メカ丸に転生した……   作:SK-ピズム

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わわわ。いきなり赤バーになった!!

嬉しい反面、いきなりな事で戸惑っている作者です。
プレッシャーに弱い作者ですが、期待に答えられますよう頑張っていきたいと思います。

三話、前回の続きからです。


第参話:勧誘

 

 

 

「失礼するよ。そして、はじめまして与君。私は夏油傑」

 

 

 そう言って、特級呪詛師__夏油傑は入室してくる。

 ゆっくりとした様な動作だったが、気づけば夏油は幸吉の目前に迫っていた。

 

 

「……高専から除名された呪詛師が、俺に何の用だ?」

 

 

 ぶっきらぼうに返事をするが、幸吉は内心クソ程焦っている。

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 いや、正確には日記をつける為の書記用傀儡がいるにはいるが、戦闘用ではない。

 加えて、相手は元特級呪術師。今の動きからも分かるが、相手は術式だけじゃない。恐らく体術も鍛え抜いてある。五体満足にすら動けない幸吉に勝てる相手ではない……。

 

 

(少しでも時間を稼いで、誰かに連絡が取るしかないか……)

 

 

 書記用傀儡を気づかれない様に操作しながら、幸吉は夏油の様子を伺う。

 

 

「……君は、素晴らしい才能を持っているね」

 

「なんだ、嫌味か? で?」

 

 

 突然、甘い声で語りかけてくる夏油に警戒しながら、続きを促す。

 

 

「私はね。大いなる力は大いなる目的のために使うべきだと考える。今の世界に疑問はないかい?」

 

「……疑問、か……」

 

 

 夏油の質問につい耳を傾けて、考え込んでしまう。

 

 

 ない、と言えば嘘になる。

 

 なぜ自分がこの様な不条理(天与呪縛)に縛られなければいけないのだ。

 なぜ自分がこの様な辛い思いをしなければいけないのだ。

 なぜ自分が……。

 なぜ自分が……。

 なぜ自分が……。

 

 呪術界(このせかい)を知ってしまってから、そう思うことは増えた。

 

 

 ……だが、分からない。

 それは所詮、()()()()()()()での話だ。

 俺が何か被害に遭ったからと言って、他人も害を被る訳じゃない。加えて俺の内情は、夏油(かれ)がわざわざ口を出す事じゃない。

 

 

 夏油と自分との間に何か明確な溝があるのを感じながら、幸吉はゆっくりと頷く。

 その様子に満足したのか、夏油は含みのある笑いを浮かべて話を続ける。

 

 

「私はね、()()()()()()()()()()というものを目指している」

 

「呪いの生まれない世界?」

 

 

 思わず復唱してしまう。

 

 呪術の世界を学んだばかりの幸吉にとって、呪いとは『どうやっても止められない自然災害』の様なものだった。

 しかし夏油が語るのはその真逆。呪霊の発生要因を取り除くことで、いとも簡単に止められる『病』の様なものであると言うのだ。

 

 

「そう。ある人はそれを『呪力からの”脱却”』と呼んでいる。私はこれに賛同し、実現しようとしている」

 

 

 聞く限り、至極真っ当な意見だ。

 「呪いを無くす」という原因療法はとても効果的だろう。この世界から呪いが消えれば、それは素晴らしい事だ。

 

 

 ……だが、夏油は呪詛師に認定されている。

 目標に間違いはない。ならば、その過程に彼を呪詛師たらしめる要因があるのだろう。

 

 

「……なるほど。して、その方法は?」

 

 

 

 

 

「呪術師だけの世界を作るんだ。…………非術師を皆殺しにしてね

 

 

 

 

「____は?」

 

 

 何を言っているのか全く理解できなかった。

 その目標は正しい。その理想は正しい。だが、過程が、方法が、あまりにも狂っている。

 

 魂の底から嫌悪感が溢れ出る。きっと、右腕が動いたのであれば、その顔面を殴り飛ばしていただろう。

 

 そんな幸吉の様子にも気づかず、夏油は高らかに演説を続ける。

 

 

「一般社会の秩序を守るため、呪術師は日々暗躍している……この世界はね! 強者が弱者に適応する矛盾が成立してしまっているんだ。__なんって嘆かわしい!!

 

 

 彼の言葉が何一つとして頭に入ってこない。

 止めどなく溢れる嫌悪感に思考が支配される。

 

 

「万物の霊長が、自ら進化の歩みを止めている訳さ! ナンセンス!! そろそろ人類の生存戦略を見直すべきだよ」

 

 

 ようやく、落ち着いてきた。言葉が理解できる。

 だが、同時に怒りも湧いてきた。

 

 

「……だからね、君にも手伝って欲しいわけ」

 

「……俺に、非術師を殺せ、と?」

 

「そう。()()()()()()()()、共に理想の世界を作らないか?」

 

 

 今度こそ本当に拳が出た

 と言っても、本体のものではなく、呪力で操作した書記用傀儡のものだが。

 

 知っているか知らないかはどうでもいい。

 こいつは、俺に両親を殺せ、と言いやがったも同義だ。

 

 威力は十分。いきなりの不意打ちを予想していなかったのか、夏油は床を転がる。

 

 

「……俺はまだ呪術師じゃない。まだ呪術界を全て知っている訳じゃない。お前が正しいかどうかなんて、今の俺には分からない。だけど……」

 

 

 心に浮かんだ言葉をそのまま口に出す。

 それが、彼の理想に対する答えとしては最善だと思うから。

 

 

「強者が弱者を痛ぶっていい道理なんてどこにもない。そんな奴の手伝いは、俺にはできない」

 

 

 幸吉が夏油を拒絶すると、夏油は何事もなかったかの様に立ち上がる。

 

 

「それは、随分と大人びた答えだね。齢6歳の子供の発言とは思えないな。

 まるで、()()()()()()()()()。あ、いや呪物なら道理なんて気にしないか」

 

 

 夏油はその言葉を機に、踵を返してこの部屋唯一の扉へと向かっていく。

 

 

「帰るのか?」

 

「ああ。君を勧誘できなかった時点でここでの用事は終了だ。君も別に引き止めるつもりはないんだろ?」

 

「……」

 

 

 扉を閉める前に夏油は、思い出したかの様に一つ言い残していった。

 

 

「言い忘れてたけど、多分君はこれから色々と苦悩することになると思う。

 ……もし耐えきれなくなった時は、私の元まで来るといい。改めて()()()()()迎え入れよう」

 

「……余計なお世話だ」

 

 

 

 

 

___________

 

 

 

2007年 ◯月◯日 曇り

 

今日の出来事。

 

 夏油が俺の部屋を訪れた日。

 その後、俺の連絡を受けた数名の呪術師が訪れて事情聴取を受けた。特にこれといった被害はなく、ただ勧誘を受けただけだと話したら、すぐに引き上げていった。

 

 時間にして十分程度の出来事。

 しかし、二日経った今日でも、俺は夏油の言葉が喉に刺さった魚の骨になっていた。

 

 特級術師、それもそこまで評判が悪い訳ではなかった夏油が、何故呪術師を離反し、非術師を鏖殺するまでに至ったのか。

 

 俺はそれを知りたいと思った。

 この世界で生きていく上で、この世界の仕組みを、理を、知っておかなければいけないと思った。

 

 俺はこの日、呪術師になることを決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

2007年 ◯月◯日 晴れ

 

今日の出来事。

 

 前回の日記から一週間ほど経ってしまった。

 今日から本格的に呪術師になるための必須事項、ガチガチの戦闘用の傀儡を作っていこうと思う。

 

 とりあえず、継続的な戦闘ができる様な耐久力を持たせたいところだけど……。

 良い素材とか知らないからなぁ……。楽巌寺さんに相談してみるか。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

2007年 ◯月◯日 晴れ

 

今日の出来事。

 

 なるほど。良い助言がもらえた。

 しかし、盲点だった。呪力を込めてしまえば良いんだ。

 

 長い間、呪力を込めて使っている武具は呪具化することが多々あるという。

 傀儡の装甲も同じ様に呪力を込める機構を作れば、長く使えば使うほど耐久力が増していく、という寸法だ。

 やっぱり楽巌寺さんは頼りになるなぁ……。

 

 

 そうと決まれば次は武装だが、それに関してはもう決まっている。

 

 この間、過去の術師の資料を見ていて面白いものを発見した。

 「大砲」という異名を持つ、江戸時代の伊達藩に所属していた術師で、その男が得意としていたのが『呪力の放出』。即ち、呪力によるビームである。

 

 ビーム。良いよね、ビーム。ロマンがあって。

 俺はこの資料を見た瞬間に思ったんだ。俺の傀儡にビームを撃たせたいって。

 

 という訳で、ビームが打てる傀儡を作って行こうと思う。

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

2008年 ◯月◯日 晴れ

 

今日の出来事。

 

 年内に終わらせたかったのだが、それは叶わなかった。

 しかし、時間をかけた甲斐もあって、自信作の傀儡(へいき)を造ることができた。

 

 

 その名も、『装甲傀儡(そうこうくぐつ) 究極(アルティメット)メカ丸 試作0号』!!!

 前世でハマっていた『エ◯ァンゲリオン』と、今世でハマった『究極(アルテメット)!! メカ丸!!』を合わせた様なデザインの巨大ロボットだ。

 『エヴァン◯リオン』の名前を使うのはちょっと憚られたのと、「メカ丸」は調べたところ商標権がまだ無かったこともあり『究極(アルティメット)メカ丸』と名付けた。

 へへへ、使ったもん勝ちなんだよ!!

 

 

 こいつを一体作るために、莫大な資金援助を楽巌寺さんと、守銭奴の一級術師から受けた。

 …………その分、メカ丸開発の際の仕組みとか技術は、全部その人に売る羽目になった。まあその分に見合うだけの潤沢な資金を受けられたからwin-winではあるのだけれど……。

 一級術師の方には、追加で古いダムを研究施設として譲ってもらった。

 貸し一つ、と言われた。ちょっと怖い。

 

 

 機体の作成は主に人型傀儡たちに任せた。俺は別の建物の地下で生命維持装置に体を浸して、意識と呪力を割くだけだ。命令を与えれば、勝手に傀儡たちが配列を組んだり、パーツをつけたり、設計図通りにやってくれる。

 生命時装置然り、傀儡然りではあるが、この世界は呪術と現代技術を組み合わせるだけで簡単にオーバーテクノロジーな代物を作れてしまう。保守派はもっと現代技術に寛容になった方がいいよ。多分そっちの方が伝統とかを守って得るものよりも、多大なメリットが得られると思う。

 

 

 

 ………うん、我ながら完璧な仕上がりだ。

 

 このフォルム、この性能、そしてこの機能!!

 俺の呪力をチャージして放出できる砲撃を両手に備え付けてある。つまり念願のビームが撃てる訳ですよ!!

 設計上は、一発で1級以下の呪霊を瞬殺できる威力を持っている。破壊力が高すぎて被害がえげつないことになりそうだから、あまり多用するつもりはないけど……温存してた方が、最終兵器っぽくてカッコいいよね!!!

 

 だが、この究極メカ丸は、その拳だけでもそこいらの呪霊を簡単に祓え(やれ)る。

 だから、ビームを使う機会はほとんどないかもしれない。しかしいざ使えば、戦況をガラッと変えられる。まさに戦略兵器にふさわしい機体となるだろう!!

 

 

 強靭! 無敵! 最強!! フハハハハハハ!!

 

 

 さらには『◯ヴァンゲリオン』みたいにコックピットに入って戦える機能も…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……書いてた今気がついた。

 

 俺、乗れないじゃん。

 

 コックピット作ったけど、意味ないじゃん。

 

 しかも、乗り込むなら呪力はそこから補填すれば良いよね、ってことで外部からの呪力供給をイメージして設計されてない…………。

 

 あ、やらかした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あああぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!

 

 なにやってんだあああああああああ!!!!!!

 

 バカやろぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!

 

 

 

 ……ぁぁああ……一頻り叫んで喉も痛いし身体も痛い……もうやだ。この身体…………

 

 

 

 ……今日はもう寝る…………

 

 

 







第三話でした。


作者は思ったのですよ。

「究極メカ丸 絶対形態(モード・アブソリュート)」は別名、「装甲傀儡 究極メカ丸 試作0号」と呼ばれていました。試作0号、つまりはプロトタイプ。作中登場する全てのメカ丸のプロトタイプであるならば、何故にコックピットが内蔵されているのか、と。
だって考えてみてくださいよ。当時幸吉くんは片腕動かせない、両足動かない状態なのに、試作0号は両手で使うことが前提に作られています。

作者は考えました。
多分、幸吉くんはうっかり屋さんだったんじゃないかな、と。ロマンを求めすぎた結果、自分では扱えない代物になってしまったんじゃないのかな、と。

そんな考えから生まれた第三話でした。


夏油との絡みは入れるかどうか悩んだんですが、入れました。場面カットする案もあったけど、それだと幸吉くんが絶賛呪詛師コースへ進んじゃいそうだから……。
あくまで呪術師として先へ進んでもらわなきゃいけないんで、今回は無い脳を絞って書きました。


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