メガネがガオーン   作:アルピ交通事務局

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メガネがガオーン 20

 有里沙の奴が修達に遊戯王をやらせている。

 カードゲームは戦略や戦術を構築するのに最も効率がいい学習方法であり、遊びながら学べるは強い。

 紅き界賊団が向こうの世界から暫くすれば帰ってくる……赤司の奴がなにを企んでるかは不明だが、少なくともアカレッドの傘下なので言うことは……いやでも、高遠のおっさん居るんだよな。

 

『アオミネ、少し聞きたい事がある』

 

「答えられる範囲内であるならば答えてもいいけど…………なんだ?」

 

 修はまだ見習いだが紅き界賊団の1人だ。千佳は暫定で紅き界賊団の1人でありまだ正式な乗組員として認められていない。

 その辺をどうにかするのは時間が解決するところだろうと家で事務処理をしていればちびレプリカがやってきた。

 

『紅き界賊団は不思議なトリガーを所有していると聞く……オサムとチカに渡しているのもその一種だろう』

 

「ん〜……流石に遊真の分を用意してくれは無理だからな。あいつは自前で黒トリガーを持ってるんだから、それで戦えって話だ」

 

『ゴセイジャーのセンタイギアというものを用いれば記憶を操作、消去する事が出来る…………ならば、受けた傷を回復させるトリガーを持っていないだろうか?』

 

「それこそ爆弾の爆発にやられてしまった傷を完治させるお宝はある……ただし、レプリカ……お前はなにを差し出せる?」

 

 恐らくだが、遊真の生身の傷を元に戻す方法をオレに聞いてるんだろう。

 あるかないかで言えばある……ただし、それを俺が行使する権利は無い。だからこそ、レプリカに聞く。なにを差し出せるのか。

 

「紅き界賊団は自警団やボーダーみたいな組織じゃない、日本という国の秘密の組織でジャンルで言えば公安警察と呼ばれる代物に近い存在だ……タダじゃ動かねえし動いたらいけねえ事だ。仮に不治の怪我や病気を治したいと願うならばそれ相応の代価を支払わなきゃならない」

 

『100万円ではダメか?』

 

「レプリカ……お前がどうにかしてやりたいと思っている人はたった100万円の価値なのか?この国の有名な医療漫画じゃ、100億円だろうが人の命には代えられないという医者が居るんだぞ……」

 

 100万円で物事を解決しようと考えているレプリカ。

 確かに100万円は大金だが、果たして遊真の命は100万円の価値で正しいのか?もしかするともっともっと重い物かもしれねえんだ。

 命の価値を金で決めるのは愚かな行為だが、明確にそれぐらい出しても構わないと言っているも同然だ。金と命はどちらも重い物なんだ。

 

『では、逆に聞くがなにを支払いに出せばいい?お金は幾らでも積めるが私個人の意見では金に変える事が出来ない代物だ』

 

「あ〜……ぶっちゃけ聞く治したいと思ってるのは遊真の事か?」

 

『ああ……ユーマの命の為ならばなんでもする』

 

「……なら、親父の形見である黒トリガーと嘘を見抜くサイドエフェクトを渡して30歳になるまで紅き界賊団の傘下で割に合わなくても不条理でも命令に従えと言うだろうな」

 

『……治せるのか?いや、それよりもサイドエフェクトを渡すとはどういう意味だ?』

 

「レンジャーキーを挿していないラッパラッターをサイドエフェクトを持った人間の前で吹けばサイドエフェクトを奪う事が出来る……幾つかサイドエフェクトをコレクションしている」

 

『そんな事も出来るのか…………だが……』

 

「親父さんの形見と力を渡したくない、お前も遊真もそう思うだろう。それは極々普通の事だ……だが、多少の怪我ならまだしもアレを使って現代の医療技術じゃ治らない命を救うって事はそれ相応の代価を支払わなきゃならねえ……うちは無償の正義じゃなくて有償の正義で国の犬なんだよ」

 

 遊真の親父さんの形見と力を渡したくないという気持ちは間違いじゃない。極々普通の事だ。

 しかしそれと遊真の命を天秤に吊るした際にどちらが重いのか?少なくともレプリカには決められず、遊真は父親との繋がりや生きた証を失いたくないと言うだろう。

 

「だが、義理と人情に反する事は……約1名を除けばしねえ事だ」

 

『つまり?』

 

「紅き界賊団に何かしらの貸しを作ればいい……その貸しを自分の傷の治療に使ってくれと言えばそれでいいだけだ」

 

『成る程…………私の持っている向こうの世界の遠征記録はどうだろうか?』

 

「オレの担当はこっちの世界に侵攻してくる奴等をぶっ殺す事だからそういうこと言われても困るし、地図は自力で作るのが船長の方針だ……少なくとも、向こうの世界で日本に対して友好的になってくれる国を探しているからな」

 

 遊真の傷をどうにかして治したいと思っているレプリカだが、オレにはどうしようもない事だ。

 あくまでもオレの担当はこっちの世界に、チーキュの日本に侵攻してくる馬鹿野郎を消すことでありその辺はオレの専門外だ……う〜ん……。

 

「あ〜…………」

 

『どうかしたか?』

 

「いや、ほら……迅が言うには千佳の力を借りなきゃヤベえ事が起きるって言ってただろ?……最低でもトリガー使いが出てくる事を想定しておかなきゃならねえだろ?」

 

『アオミネが実際のところどれだけの技量なのかをこの目で見ていないから定かではないが、ユーマが居れば黒トリガー使いが出てこない限りは負けることはありえない』

 

「いや、そこじゃねえんだよ……基本的には誰が出てきても力の限り潰せって命令を受けてるんだよ、オレに出来る事と言えばそれしかねえから……ただ……」

 

『ただ?』

 

「綺麗な言葉で取り見繕っても隠せない現実ってのがあるんだ」

 

 忘れちゃいけない事だが、ワールドトリガーは異世界とのガチの戦争モノだ。

 人と言う資源を求めて近界民は侵略行為をしてきており、今度発生する大規模な侵攻もその内の1つだ。

 なにが悪でなにが正義か?戦争においてそれは分からない事だ。喰う為の資源を求める為に命を奪うと言うのは極端な話をすれば、家畜を殺すのとこっちの世界に侵攻してくるのとなんら変わらない事なんだ。

 

 有里沙の奴も分かってるけども、修と千佳に対して言わないようにしている事もある。

 向こうの世界は紛争地域が当たり前で、人の死がとにかく多い……だから人を撃つことが出来ないなんかは致命的な欠点であり、仮にライトニング狙撃とかが出来てもオレは遠征艇には乗せねえな。向こうの世界に行けるのは人を殺しても構わないと言っているも同然の事だからな。

 

「正直な話、修と千佳には最初から無かった事にしてえよ……オレや次元や高遠のおっさんみたいな悪人ならまだしも、修みたいな真っ直ぐな奴を闇に叩き落とすのは嫌だよ」

 

 本人に何処までその事に関して自覚があるのかは定かではないけども、少なくとも向こうの世界に行きたいと言うならば向こうの世界で生き抜く事が出来るようにしておかなければならない。

 

「……彼奴等に人を殺せって言えるかな?」

 

『……殺さない、という道は無いのか?』

 

「レプリカ……そんな道が最初から存在してるんだったら向こうの世界が基本的には紛争地域みたいな状態じゃねえだろ?話し合いで通じる段階をとうの昔に過ぎていて全て暴力で物事を解決する段階にまで至ってる……こっちの世界に対して技術提供するからそっちは人材を提供してくれないか?の一言もねえ、それがあれば使えない引きニート共を向こうの世界に送りつけて労働力に変える事が出来るんだがな」

 

 向こうの世界に行けるようにするという事は人を殺せる様になるということだ。

 バトル物の世界なんだから人を殺したりするのは当たり前?なんて考えは持ってねえんだよ。人の生き死には割と大事なんだ。

 そう考えれば高遠のおっさんがプリキュアの世界で…………いや、アレは無しだな。幾らなんでもそれは無しだな。

 

 修達に人殺しの業を背負わせるかどうか。

 少なくとも、彼奴等は向こうの地域が紛争地域だと知っている上で行きたいと言っている……はぁ

 

「はい、ということでだ……農場から取り寄せた牛と豚を解体するDVDだ」

 

 いきなり踏ませるわけにはいかねえから幾つか段階を踏ませるしかねえよな。

 紅き界賊団のコネクションを使って農場から取り寄せた食肉の解体のDVDをボーダーのミーティングルームで千佳と修と遊真の前に置いた。

 

「遊真から向こうの世界が紛争地域なのは聞いてるだろ……お前達の目当てはともかく向こうの世界に行きたいって思いはマジならば、人が死ぬのと殺すのが当たり前にならなくちゃならねえ」

 

「あの、青峰さん……」

 

「オレだってこんな憎まれ役したかねえんだ……ただな、向こうの世界に行くって事はそういうことなんだ。死ぬ覚悟も殺す覚悟も無いのに紛争地域に紛争地帯に兵器を持って武器を持って足を運びに行くのはダメなんだよ」

 

 ボーダー本部のミーティングルームで修と千佳と遊真の前に食用の家畜の解体のDVDを見せる。

 有里沙の奴が色々と言いたいことがありそうだが、オレだって好きでこんな事をしてるわけじゃねえんだよ。

 

「先に言っておく、オレも有里沙も人を殺した事はある」

 

「!……」

 

「そしてその事に関して深くは罪悪感を抱いてねえ……オレは人間って言う種族を動物だと認識している、人間は同種や別種で生存競争を行い続けた。時には群れを作り王を作り文明を築き上げた……そして裏切り騙したりもした。オレは人を殺す時は思いとか信念とかどうでもよくて人という種族が自分という個体が死なない為の生存競争に勝った負けたの認識をしている」

 

「…………どうして、どうしてそんな風に割り切れるんですか?」

 

 あまりにもバッサリとした倫理観に思わず千佳は聞いてくる。

 

「そうだな……先ず善と悪があるからって認識がある時点で間違いだ。人には心があり、方向性は違う。辛い物が好きだけど甘いものは苦手、甘いものは好きだけど辛い物が苦手、コレだけで争いの火種になる。ただ向かっている方向が違って人はよくぶつかり合う。無論、仲良く手を取り合う事も出来るがその反面、絶対に相容れない奴も居る……そういう奴等と分かり合う事は無理なのを認める……だから明日の為に、自分達や周りの奴等が生きる為に犠牲になってくれって言わなきゃならねえ……………向こうの世界では戦争が当たり前だ。ボーダーの大人達はその辺を意識させないように勧善懲悪な風に見せているが、異世界とのガチの戦争だ……まず、認識を改めろ」

 

 コレは自分達が生きる為の1歩だとDVDを手に取る。

 

「この世界に襲ってくる近界民を倒すだけならば文句は言わねえ、後始末はオレの仕事だからそこの業は背負わせねえ……それでも向こうの世界に行きたいなら、腹を括れ。マジの戦争なんだ……それが無理ならトリガーを返せ……オレはこの辺はシビアで厳しかったり人の心が無いのかと言われたりするけども、そういうとこはくだらねえ嘘は言わねえ、乗り越えれば強くなれる」

 

「……………………分かり合うってのは無理なんだね?」

 

「そんな事が出来るんだったら最初からこの世に戦争は存在しねえだろ?世の中にはお前達みたいな高潔な精神を持っていて話し合いで応じようとする人間も居る、だがその反面、話し合いが通じない改心もしねえクズも存在するんだ。1つの側面だけじゃなくて全てを見ろ、話し合いが通じない改心もしねえクズの存在も認めろ……世の中はそんなどうしようもねえクズを裁ける様にしなきゃならねえが、理不尽な事に皆が破らないで守ろうって決めたルールを改竄したり盾にしたりする馬鹿野郎も居る…………そういう奴のせいで苦しむ奴が大勢居るからそのバカを殺すことで救えるって考えも大いにありだ。だが、とある女は裁けない悪をどうにかして正しい方法で裁ける様にしないか?と考えていた……あんまりにもアホで愚かだがオレはその女の頑張ってる姿が大好きだったよ……自分には無理だって思ってたからな」

 

「……そっか…………千佳、僕は見るよ……青兄や空閑の言うことが確かなら、向こうは紛争地域だ。向こうの世界に行くって事は色々と覚悟しないといけない」

 

「私は……………」

 

「手を汚したくねえって言うのは無しだ……汚れないで済みたいならば進路を三門市の外にしろ。家族や友達の存在を最初から無かった事にして現実から目を逸らした平穏な日常を送ってろ。それでも辛い現実を生き抜きたいなら、歩ける道を教えてやる」

 

 オレはこういうところはドライだ。みやのんやぐっさんにその辺りの倫理観が狂っていると普通に言われた。

 でも、言ってることは間違いでもない、一理ある。オレは歩く方法は知っているけども歩ける道しか教えない。この世に絶対に正しい道なんて存在しない、人によってはそれはそれ、これはこれで割り切ってる奴等も居る。オレがその一例だ。

 

「……それを見れば船に乗せてくれるんですか?」

 

「いや、乗せねえぞ……ただ、お前等は何時かはぶつかる壁に対して越えたりする特訓をしなきゃならねえって話だ……お前は友達を助けたいって思ってるならば、覚悟を決めろ。友達が人殺しに、戦争が当たり前の世界に何年も居て倫理観が狂っていても友達だ、元の道とは言えないけども一緒に家に帰ろう、そう言える様な人間にならなくちゃ……じゃなきゃ誰も救えねえ」

 

 人を救うって事は最も尊くて最も難しい事だ。

 自分が正しいと思っている思想とは異なる人が多く存在している……宗教なんかがいい一例だよ。

 自分の考えや信念を伝えたけども、聞いた人的にはこうじゃないのか?と意見を述べて開祖とは似て異なる宗派になる。開祖の教えを継いでるようで異なっているんだ。

 

「誰かを救うって事は誰かを犠牲にする事だ……吐いてもいい泣いてもいい苦しんでもいい、誰かに助けてって言ってもいい、オレ達が手を差し伸べる、支えてやる……でも、前に進むんだ。例えそれがお前達の弱さだとしても受け入れて、ゆっくりでもいいから一歩ずつ一歩ずつ前に進むしか道は無い……そうやって強くなるんだ」

 

 オレの口から言えることはこれだけだ。

 これ以上は口で説明をしても意味は無い。このDVDを見てスプラッターに、流血や殺しに対する耐性を得なければならない。

 まだコレでも充分優しい方だ。地獄の転生者養成所の人間は1回は家畜を育てて解体して全てを食べ切るという訓練をしなければならない。オレは特に問題は無かったが、狂う奴はとことん狂う。

 

 修は覚悟を決めた。千佳も覚悟を決めた。遊真はとっくの昔に覚悟を決めている。

 ならばとミーティングルームを出ていこうとすれば迅が立っていたので膝蹴りを入れておく。

 

「邪魔すんじゃねえ、こいつらが覚悟を決めた事だ……汚い現実を厳しい現実を後回しにさせねえ」

 

「っ……未来あるメガネくん達にそんな業は……」

 

「ダメです!そこで逃げるのだけは許せません……貴方達はどんなに綺麗な言葉で取り見繕っても戦争屋である事には変わりません……こちらも1度はちゃんと交渉の場を設けようと試みますが向こう側が拒むのであれば……悪いですが絶滅してもらいます」

 

 きっと迅の目には段々と後戻りする事が出来なくなる修達が見えてるのだろう。

 だが、こんなロクでもねえ世界に足を運んだ以上は覚悟を決める……オレは最初に逃げてもいいと道を示している。それ以外に道は無いのだと、後になって後悔をするのはお前達だと言っている。有里沙は迅が修達が重荷を背負わせない様にしたいが、早々に出来ねえよ。

 

「……それしか、道は……」

 

「迅さん……青兄はふざけたことはしますけど、くだらない事はしません……僕達が苦しくて辛い目に遭う未来が見えていたのかもしれませんが構いません……それでも、それでも手を伸ばしたいところがあるんです」

 

 もっといい道が、いい方法があるんじゃないのかと迅は言いたげな顔をしている。

 そんな道があるんだったら、オレも有里沙も潔く普通に受け入れる。オレ達のやり方に反発したいのならば、オレ達のやり方よりも効率が良くて納得する事が出来る事を提示するしか無い……そして迅はそれが無いのを、その方法を知らない。

 

「お、有里沙じゃん……今日もバトルしてくれよ」

 

「太刀川さん、申し訳ないですが今日はダメです」

 

 ミーティングルームではDVDを見ることは出来ないので部屋を移動する。

 DVDを見ても問題無い部屋に移動していると太刀川と遭遇するのだが、有里沙は誘いを断った。

 

「コレを見なくちゃいけないんです」

 

「なんだそれ?」

 

「気になるなら見ればいいですよ」

 

 DVDを見る覚悟は出来ている。

 太刀川も見ないかと誘ったら太刀川もあっさりと来たが……直ぐに退場した。流石にグロいのは苦手だろう。修も千佳も途中で嘔吐した。それが普通だろう。遊真やオレ達は馴れているので吐かなかった。後で何を見せたのか知った忍田本部長達頼れる大人は子供に見せるんじゃないと言っていたが、じゃあ何時見せればいい?と聞けば返事は帰ってこなかった。




これぐらいしとかねえと殺しが出来ねえ世界観なんだよ……つまり、大規模侵攻では徹底的に殺るということです
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