メガネがガオーン   作:アルピ交通事務局

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メガネがガオーン 21

 遊真は現在、紅き界賊団の拠点と言うか寮とも言えるアパートに引っ越している。

 家賃を取らない便利な8畳一間のアパートに住んでいる……と言っても大した私物は持ってきてねえから何もねえに等しいけども。

 

「炊けたか……便利だな、炊飯器は」

 

 遊真にオレは色々と仕事を与えている……っつうのはちょっと違えか。

 こっちの世界の常識とかを修と一緒に学んでたりするわけだが、オレは遊真に対してなにか特別な事は教えてねえ。今もこうして日本の大手の家電メーカーの炊飯器で米を炊く方法を、精々炊くときに炊飯用の備長炭を入れる方法を教えている。

 

 別に教えようが教えまいがどっちでもええことだ。

 しかしまぁ、食事と言うのは道楽の世界の一種でもある。追求しておいて損はねえんだ。

 

「米を炊くだけの機械があるのは不思議だな……レプリカにも似てるし」

 

『私はもう少し小さいぞ、ユーマ』

 

「じゃあ、日本ならではの食事をしますか」

 

「うぉ!?……アリサさん、気配を消して現れるの驚くよ」

 

「別に気配を消してるわけではありませんよ?ただ単純に見えなくなってるだけです」

 

 炊飯器で炊いた白米を見て満足げな遊真。すると有里彩が現れて遊真はビクッとして驚くのだが有里彩は特に気にしない。

 それよりもと満足げな顔で白米を見て有里彩は朝ご飯を食べようと主張する……コイツは飯を食わなくていい体になってるのに、完全に食道楽に走ってるな。

 

「おにぎりはこの前食べたし、今度はなに?」

 

「日本以外で食べれば確実にロクな目に遭わない料理を教えましょう!……そう、卵かけご飯です!」

 

「お前はちぃっとは料理しようとか思わないのか?」

 

「卵かけご飯だって立派な料理ですぅ!」

 

 塩鮭とか色々とあるのに、卵かけご飯を主張する有里彩。

 自分の部屋に置いてあるから持ってきたであろう鰹節、ごはんですよ、ちりめんじゃこ、出汁醤油、生卵をテーブルの上に置いた。

 炊飯器の中に入ってある白米を茶碗に乗せたら卵を入れて醤油をかけてちりめんじゃこを入れてひたすらに混ぜる。混ぜ終えたら鰹節とごはんですよを乗せて有里彩は卵かけご飯を啜る。

 

『大丈夫なのか?卵には火を通さなければ死滅しない危険な菌が潜んでいるが』

 

「日本の卵ならば許されるんです!外国とか近界(ネイバーフッド)でやれば下手すれば死んじゃいますけど日本のは衛生的に問題は無いんです!」

 

「特別な卵なのか」

 

「いや、その辺のスーパーで売ってる卵だぞ……お前、ガツガツいくな」

 

 親父臭いと言うか爺臭いと言うか、有里彩は「染みる」と言いながら卵かけご飯の2杯目に突入する。

 ホントに美味しいのかとか生卵を啜ってるので疑いの眼差しを若干だが向ける遊真だったが、オレも卵かけご飯を食べれば信じることが出来たのか食べるのだが直ぐに驚いた顔をする。

 

「美味い、美味い……チカ達にも教えなきゃ」

 

「日本じゃメジャーな料理です……もし、もし向こうの世界に遠征した際に向こうの世界で卵を見かけて自前で持ち込んだ醤油があるから食べれる!って思っても絶対に食べてはいけませんよ」

 

「オレ、昔1回当たったな……」

 

 この世界じゃなくてテイルズオブゼスティリアの世界に転生してた頃に卵かけご飯で死にかけた。

 有里彩も日本がおかしいから卵かけご飯を食べる事が出来る……ナーロッパでも卵かけご飯は難しいんだよな。

 

「ニホンはホントにご飯がうまいな……ニホンがコレならこの世界の飯は」

 

「いえ、外国のはそこまでです」

 

 ニホンでこのレベルならばニホン以上の大きな国ならばもっと美味しいと言おうとする遊真に先に言っておく有里彩。

 何度か過去に海外に行ったりしたが……なんだかんだで、日本食が落ち着く。ジャポニカ米はコシヒカリ的なのは最高の逸品だ。

 

「オレ達日本人が遠征する上で飯関係は割と大事だ……見知らぬ土地で見知らぬ文化を接する観光旅行じゃない、食料は途中で現地補充したりするが、日本から持ち込んだ物と比べれば品種が違う可能性が高い……食事は遠征と言うか旅をする上で大事だ、飯が美味いか不味いかでモチベーションは大幅に変わる。飯が美味いってのは言い方を変えれば文化の象徴だからな」

 

「実際問題、外国から日本食を食べる為に来るケース増えましたしね…………その辺の自販機で買える緑茶や麦茶が最高はよくわかりませんが」

 

 外国基準ならば極上に美味えんだろうか?

 あんまり外国に行かない、食事が美味しいイメージが無かったりするからその辺は色々と曖昧なところがある。遊真は3杯卵かけご飯を啜ると満足したらしい。というか卵が無くなったからそこで終わった。

 

「菓子折持って本部に行って一応は謝らねえとな」

 

「アオミネさん、ボーダーの本部に行くの?」

 

「菓子を買いに行ってからな……」

 

「日本のお菓子か」

 

「お詫びの品として送るのですよ……何処ぞのセクハラ魔がこうしないと良い未来に繋がらないからとはいえ巻き込んだ……黙っていた青峰さんもいけないことですが……じゃあ、私は玉狛支部に行って修くん達を鍛えていきますね」

 

「おぅ、いってら」

 

 有里彩はそういうと玄関のドアを開き、姿を消した。遊真がついていこうかとドアを開けばそこには誰も居なかった。

 どういう事だと頭に?を浮かべているが、有里彩は色々ややこしい立ち位置だから説明はしねえ。余程深くに聞いてこねえ限りはな。

 

「どうせ玉狛支部に行ってもやる事は無いに等しいし、ついてくるか?」

 

「うん。そっちの方が面白い気がする……お菓子ってなにを買うんだ?ケーキ?」

 

「んな身内の挨拶みたいなのじゃねえよ……いくぞ」

 

 そんなこんなでオレも遊真を引き連れてボーダーの本部を目指そうとする。

 と言ってもその前に高級なコーヒーゼリーの詰め合わせを購入する。コーヒーゼリーは基本的には日本にしかないから遊真は興味津々だったので1個だけ奢ってやったので冷やして食えとだけ言っておく。

 

「いきなりの来訪で悪い……先日のお詫びと言うかなんと言うか……」

 

「んなの気にしなくていいんだぞ?そりゃ確かに驚いたがあれは完全にこっち側の不手際なんだから」

 

「いや、ああなるのを薄々と察してたんだ」

 

 そんなこんなで購入したコーヒーゼリーの詰め合わせを弓場隊に持っていった。

 この前の1件、千佳の規格外のトリオン量とアイビスの組み合わせから生まれる砲撃で生まれた穴に関して謝りに行った。

 オペレーターの藤丸ののしか居ないのでとりあえずはとコーヒーゼリーの詰め合わせを差し出しておくが、大して気にはしていなかった。ああなるのを薄々と察していた事についても言ったが怒らなかった。

 

「お前等は、この前の……」

 

「おぅ、穴開けた事に関して詫びに来たみてえだ」

 

「あの1件は不手際、いや、迅が裏で暗躍してた事だ。最善の未来に繋ぐ為の事だったから、受け入れることが出来てる」

 

 弓場達が来るのを待っていれば、弓場が柿崎を連れて現れた。

 珍しくもなんともない組み合わせであり、何だと思っていたら防衛任務を理由に出ることが出来なかった大学の講義のノートを渡していた。

 

「えっと……誰だ?」

 

 柿崎とは初対面なので割と誰なんだ状態。

 こういう物だとオレは警察手帳を取り出せば柿崎は大きく慌てる。

 

「弓場、お前なにしたんだ!?そういう見た目だから誤解されたのか!?」

 

「違えよ!俺はなんもしてねえよ!青峰ぇ!テメエ、わざとだろ!わざとなんだろ!」

 

「いやでも、身分を証明する物を出せって言われればコレしかねえぞ?」

 

「運転免許証だマイナンバーだ学生証だ色々とあんだろうが!!」

 

 わざとかどうか聞かれればその通りだ。

 柿崎は弓場がなにかをやらかした、見た目的な感じから誤解されてるかどうかネガティブな事を考えるのだがこの光景は楽しい。

 弓場は他にも色々とあったのに警察手帳を見せてきた事に関してキレてる。

 

「ちょっと待て、お前警察なのか?」

 

「ジャンルで言えばメン・イン・ブラックと公安警察を足した感じなのだ」

 

 警察である事を知れば意外そうな顔をする藤丸。

 

「メン・イン・ブラック……なにそれ?」

 

「宇宙人とかとの関係を取り締まる警察的なの……アメリカって国じゃ都市伝説の存在だ」

 

「えっと、じゃあ……お前は近界民(ネイバー)関係の警察って事なのか?」

 

「それ+公安警察的なのが混じってる……一応は政府の秘密の存在だから、胸の内に留めておいてくれ」

 

 メン・イン・ブラックと言われてもイマイチピンと来てない遊真。

 ざっくりとした説明をすれば柿崎はオレが近界民関係の警察だと認識をしてくれた。秘密の存在だと釘は刺しておく。

 

「なんでそんなのが弓場に?」

 

「この前、アイビスで大穴が空いた事件があったのを知ってるか?アレはうちの見習い候補生がやったことでな。何処ぞの実力派エリートはそれが最善の未来に繋がるからやってることだが、一応はとお詫びに来たんだ。コーヒーゼリーの詰め合わせだから冷やして食べてくれ」

 

 アイビスで大穴を開けた一件だと言えば柿崎もその事を耳にしているのであのことかと反応する。

 流石にアイビスの1件は有名になりすぎているか……アレをやった奴を探そう!スカウトしよう!って考える奴は居るだろうが、既に雨取はうちの傘下の人間だ。

 

「三雲達はどうしたんだ?」

 

「玉狛支部で訓練してる……ボーダーはある一定のレベルにまで鍛え上げるにはちょうどいい訓練システムがあるからな……頭を下げに来やがれって言うなら下げに来るけど……呼び出すか?」

 

「いや、呼び出さなくていい……あの1件に関してはコレでもう貸し借り0で終わりだ」

 

 キッパリと言い切った弓場は男前だなと思う。

 

「訓練してるって、どういう意味だ?」

 

「む?近い内にこっちの世界に大規模な侵攻があるから備えてるって聞いてないの?」

 

「っ!?」

 

「あ〜……まだ上から完全に情報が流れてねえ感じか」

 

 柿崎は理解していなかった。遊真が訓練の意味を教えれば驚くが柿崎は直ぐに冷静になる。

 近界民も手口を変えてきた、今の今までとは比じゃない規模の侵攻があってその内情報開示の時が来るだろうと言っておく……いきなり段階をすっ飛ばして言っちまったが、流石は苦労人か割と直ぐに受け入れる。手口を変えてきたと言われて納得する面があるんだろうな。

 

「迅のサイドエフェクトで敵が来るって分かるだけで儲け物だ、備える事が出来るんだから」

 

「そっか……そうだよな……備えれるんだ、オレ達は…………」

 

「青峰、お前は備えなくていいのか?三雲達がボーダーのシステムで何度も繰り返して経験値を得てるってのに、お前は訓練してる素振りを見せてねえが」

 

「オレは……まぁ、色々とあるんだよ……最悪オレに丸投げしておけばある程度は片付くからオレがここに居るみたいだし」

 

「……そういうならよ、訓練してくれねえか」

 

 オレがここに残ってるのは万が一の事を想定しての事だ。最悪暴力で問題を解決する事で終わらせれば、それでいい。ただそれだけの事だ。

 そう思っているとなにを思ったのか弓場は訓練してくれねえかと言ってくる。

 

「お前に迷惑掛けたから別にいいけどよ……お前もう充分に強えだろ?」

 

「俺じゃねえよ…………帯島ァ!今すぐに隊室に来い!」

 

 圧倒的なまでに体育会系だな。弓場はボーダー支給の端末で帯島を呼び出す。大声でだ。

 弓場からの呼び出しだったので帯島は割と早くに現れる。

 

「帯島、青峰に訓練」

 

「ストップ」

 

「なんだ?」

 

「訓練はするけどよ、戦う術だけを教えるとは一言も言ってねえぞ?」

 

「どういう意味だ?帯島に稽古つけてくれるんじゃねえのか?」

 

「稽古はつける……ただし、その前に見ておきたい物がある頭と心の面だ」

 

「帯島は雨取と違って人は撃てるぞ?」

 

「その手の問題じゃねえよ……優秀な怠け者か、無能な怠け者か、優秀な働き者か、無能な働き者か……一応はどういう感じの人間力を持っているのかを見させてもらう」

 

「人間力って、お前帯島の人間性を疑ってるのか!?」

 

 いくらオレが秩序を持った悪人でもそんな事はしねえよ。

 弓場が藤丸が滅茶苦茶睨んで来ており、柿崎が間に割って入ってくれたおかげで喧嘩には勃発しなかった。オレが言いてえのはそういうことじゃねえ。いや、人間性を見たいって言えばそうなるけども。

 

「人間力を見たいって、なにを見るつもりなんだ?」

 

「オレが見てみたいって言えばそうなるように綺麗な答えを用意するから教えねえよ……別に難しい事をしろってわけじゃねえ。心理テストみたいな事をするだけだ」

 

「心理テストって……よく分からない質問するのか……」

 

「いや、質問はしねえ……ちらし寿司じゃないお寿司を1人前作るだけの簡単な事だ」

 

 オレは寿司が嫌いだけども、このテストは割と重要だ。

 寿司を作るだけで色々と見えてくるものがある。最初の世界でも同じことをした。柿崎も寿司を1人前作るだけの簡単な事だと言われれば、余計に理由が分からなくなった。

 

「そんなので人間力が、人間性が分かるものなのか?」

 

「寿司から色々とロジハラに繋げる事は出来るし、こういう感じのオリエンテーションって割と大事だ……ついでだから柿崎も参加するか?危険だとか危ないとかそっち系の判断オレには出来ねえし、やってることは割とマジで寿司を作るだけの簡単な事だ。そこから色々と見えるものがある」

 

「…………嘘、じゃないよな?」

 

「こんなしょうもねえ嘘をついてどうなんだよ…………弓場も藤丸も疑心暗鬼なら参加しろ」

 

「……わかった。ただし、なんでこんな回りくどいやり方をするのかは納得と理解が行くように聞かせろよ」

 

「つまんねえ理由なら覚悟しとけよ」

 

 軽く怖い事を言うんじゃねえよ。柿崎も参加するのかどうかを聞いてみるのだが柿崎は少しだけ考える素振りを見せる。

 

「それ、うちの隊の奴等にもやらせていいか?」

 

「別に、割とマジで寿司1人前作るだけの簡単な事だからな……そこから色々と言うけど……呼び出すならば呼び出せ」

 

 きっとなにか裏があるのだと思っている柿崎は自分の隊の3人を呼び出す。人望がある男なので直ぐに現れる。

 

「さて……お前達には今から寿司を1人前作ってもらう。ただし、どんな寿司を握るかはお前達個人で決めろ。誰かに相談するのは禁止だ」

 

「それはつまり」

 

「はい、言うな」

 

 頭の良い照屋はなにかに気付きかけるが、そこを言ってしまえば元も子もなくなる。

 相談しなくても答えを出すことが出来るかどうか、そこも見る基準に加わる。

 

「出来る限り美味しい寿司を作れ……材料被ってたりするなら、使います申告しろよ。3万円ありゃなんとかなるか……じゃ、スーパーにでも行って来い」

 

 弓場達に3万円を渡した。流石に3万円あればお寿司1人前の材料はちゃんと揃うだろう。

 なにを作るのかの相談は一切禁止、ちらし寿司はダメ、既に出来てる出来合いの寿司を買うのもダメ。ちゃんと寿司を作らなきゃアウト。

 柿崎達は決して馬鹿じゃないので考える。出題者の意図を感じ取って綺麗に纏まった答えを求めているのかと考えているだろうが……綺麗に纏まった答えを出すのか…………。

 

「アオミネさん……寿司ってなに?」

 

「酢で味付けした白米の上に生魚を乗せた日本の伝統的な料理だ……オレは酢飯と生魚は苦手だから好まないがこの国を代表する伝統的な料理」

 

「そこから人間性が見えるものなのか……」

 

「昔同じことをやった時は色々と見えたな」

 

 柿崎達はどうするのか……照屋はどうするのか……他の奴等もどうするのか……謎だが、ここで色々と分かるものだからな。

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