「はい、5千円」
ボーダーの支部こと玉狛支部ではクリスマスパーティが行われる。
迅が親睦を深め合うのを名目に誘ってきた。遊真達は断る理由が特に無いので参加する事にした。
「5千円……なにが買えるんだ?」
「マニアックな物じゃなきゃなんでも買える筈だ」
「マニアックな物って?」
「……専用工具とかかな」
ショッピングモールに足を運んだ修と千佳と遊真。
親睦を深める為のクリスマスパーティーなのでクリスマスプレゼントを経費で落とす事に。1人5千円だと5千円札を3人に配る。
5千円札だなと中身を確認をした遊真は金銭感覚がおかしいので、なにが買えるのかがイマイチ理解していない。修が大体の物が買えることを教えるが、逆に買えないものがなんなのか聞かれて答えるに答えられない。
「まぁ、しいて言うならばテレビゲームの新品のソフトと本体とか高級な衣服とかだな…………一応の為に言っておくが変なの、激辛カレーとかの罰ゲームみてえなのは買うなよ?」
「そんなの買う人がいるの?」
「ウケとかボケて買う奴は居る………後、相談はするなよ?こういうのってなにか分からないから楽しいんだ」
「ほぅほぅ……」
「オレの名前で領収書は取っといてくれよ、経費で落とすから……お前等ならくだらねえ物は買わねえよな」
ふざけてボケに走ったり全力で嫌がらせをするタイプじゃねえからちゃんとした物を買うだろう。
嫌がらせの道具とかを買う奴は普通にいるからな。何処の誰とは言わねえけども。
「青峰さんは買わないんですか?」
「そもそもでオレはクリスマスパーティーに参加しねえよ」
「なんでですか?」
「お前等は見習い候補生的な立ち位置だが、オレは幹部でボーダーに助力する仕事についている。休みを取ろうと思えば取れるけども……色々と忙しいんだよ。今年から税金の申請とか色々とやらなきゃならねえ。来年はふるさと納税とかやらねえといけねえんだ」
オレも買い物をするのかと千佳が聞いてくる。
社会人が、国家公務員が早々に休みを取れると思ったら大間違いだ……まぁ、現場に出て相手と戦ったりするのがオレの主な仕事だ。今のところはその仕事をしなくてもいいから休暇を取ろうと思えば取れる。ただ、ボーダーと仲良し小好しはなぁ……裏がなくて純粋に親睦を深めようって事だろうが、そういうのはな。
「お前等はまだ候補生で色々と足りない部分があるからやらせてねえ仕事もあるが結構忙しいんだ」
「そっか……残念だな」
「なに、暇よりはマシだ……楽しめるようにちゃんとしたプレゼントを買えよ……迎えが欲しいなら有里彩を呼べ。オレは今からボーダー本部に向かうから」
修はオレが参加しねえ事に少しだけ残念そうにする。
オレは別にいいから修達に楽しんでこいと言えば修達はプレゼントを買いに行った。オレは言った通りボーダー本部に向かう……向かうのだが……
「迷子だな」
ボーダー本部が広すぎて普通に迷子になった。
何時もとは異なる場所で訓練を行うと言っているからその場に向かおうとしたが、彼奴等はオレをボーダー隊員と勘違いしてるのか場所しか言わなかった。ボーダー隊員には専用の情報端末を渡されるらしいが、オレはそいつを持ってねえんだよ。
「あ〜……何処だ?」
何処になんの部屋があるのかの案内図的なのが無い。
何処かに地図が無いのかを探してみるが通路なので特に見つかるわけもなく、来た道を戻るってのもありだがどうしたものかと思っていると通行人を発見する。
「!?」
「ちょっと道を聞きたいんだが、この」
「……あんた、何者だ?」
「あ?ああ、オレは青峰大樹だ……ちょっと迷子になったから道を聞きてえんだ」
「青峰?………………聞いたこと無いな」
たまたま声をかけた男は……確かボーダーのS級の天羽だった。
ボーダーのS級ならば道の1つや2つぐらい知っているだろうと思いつつも道を尋ねるが天羽は目を見開いている。
簡単な自己紹介をして道を聞くけど、天羽はじっとオレを見つめている。道を教えろや。
「あら、天羽くんダメじゃない。道を尋ねられたら答えないと」
「加古さん…………ん……………ありえない……」
他の奴に道を聞こうかと思ったらA級6位加古隊の加古さんが現れた。
天羽は加古さんとオレを見比べれば嘘だろうと言いたげな顔をしていると加古さんはなにかに気付いた。
「彼の色がどうしたの?」
「忍田さん達より色が濃い人、はじめて見た……何者なんだ?」
「オレはオレでそれ以上でもそれ以下でもねえ……相手の能力を可視化するサイドエフェクトか?」
「まぁ、そんなところ…………滅茶苦茶強いだろ?」
「強さにも色々とあるだろう……後、道を聞きてえんだが。この部屋って」
「ああ、それなら反対側よ」
指定された部屋を聞いてみれば加古さんが教えてくれる。
逆の方向に来ちまってたみてえで、道を教えてもらったのでその通りに行くのだが何故か天羽もついてきて指定された部屋に向かえば弓場隊と柿崎隊と諏訪隊と那須隊の面々と東さんが居た。
「悪い、迷子になってた」
「本部は広いからな」
「しかし……この人数を見るのか……まぁ、いいけども…………え〜っと……なにを聞いている?」
柿崎隊と弓場隊は相手にしているが那須隊と諏訪隊の面々は初合わせだ。
上から具体的にどんな事を聞いているのか……場合によっては言ったらいけねえ事もあるから慎重になっとかなきゃならねえ。
「上から特殊な訓練を行うって聞いてるけど……お前は誰なんだ?見たことねえけど」
「ん」
「警察!?なんで警察が……」
諏訪さんが具体的になにを聞いてるかどうか教えてくれたが、オレが何者なのかを聞いてくる。
説明すれば色々とめんどくせえから警察手帳を開けば那須が極々自然の反応をする。
「オレは紅き界賊団……まぁ、スゴくザックリと言えばボーダー以外でトリガーを扱っている人間だ。ジャンル的に言えばメン・イン・ブラックとかエリア51とかだな……上から年明けぐらいに通達があるから、詳しい事はその時に説明を受けとけ。毎回毎回説明するのもめんどうだから」
「……東さん、知ってたんですか?」
「上からそれとなく聞いている……ところでなんで天羽が居るんだ?」
「道を聞いたら勝手についてきた……で、事前に言ってたように出来てるのか?」
「元々あるのを弄ってるだけだから直ぐに出来たぞ」
天羽がついてきている事に関して疑問を抱く東さん。
勝手についてきた事を言えば藤丸に今回の特訓に必要な事は出来ているかどうかを聞いてみればなにもなかった真っ白な部屋は一転し、風情溢れる滝が出現する。
「トリオン能力云々があるし、戦術関係は基本的には自力で気付け……考える事こそ、修行の1つだ」
「じゃあ、なにをやるんですか?」
「滝行」
「……え?」
なにをするのかが分からない熊谷に今回なにをするのかを答える。
今回やるのは滝行だ。その為に複数の滝があるフィールドを用意してもらっている。滝行を行う事を聞かされればどうしてと言う顔をしている。
「なんで滝行なんか」
「逆に聞くけどよ、無意味や無駄じゃない修行をしているならば出題者はなにを求めている?」
滝行をすると言われてなんで?となるのは極々普通だろう。熊谷が答えを求めているので逆に答えを聞き返す。
悪ふざけとかボケとかじゃなくて何かしらの意図があって出題されている答えがあったりなかったりする問題だとすればなんだ?熊谷だけでなく他の面々も考える。
「精神統一、ですか?」
「ああ、そうだ」
笹森が代表で答えた。滝行をするのは至ってシンプルで、精神を統一する。それ以外の理由で滝行するならば暑いのを回避するためぐらいか?
精神統一と言われてもイマイチ理解していない。東さんは言いたいことがなんとなくで読めているが、答えを言ってしまえば血にも肉にもならねえ。
「まぁ、言うよりも実際にやった方が早え……隊長らしく先陣を切れ」
「こう、体を動かす系はやった事があるけども……」
各隊の隊長に滝行をやらせる事にした。オペレーターに頼んでとりあえず水を止めてくれと言えば水がピタリと止んだ。
那須隊の那須、柿崎隊の柿崎、諏訪隊の諏訪さん、弓場隊の弓場が滝の前に立ったので滝が流れる
「冷たぃ!?」
滝が流れて真っ先に反応したのは那須だった。
生身の肉体ではなくトリオン体だが冷たいと感じるように設定されているので声を上げた。声が裏返ってるが気にしねえ。
生身の肉体に一切の影響を及ぼさないから風邪はひかねえ。ただ単純に冷たい水を浴びるのだが……
「心拍数とかどんな感じだ?」
「滅茶苦茶不安定だよ」
精神を安定させる事が出来るかどうか、そこが気になったので別の部屋に居る諏訪隊のオペレーターの小佐野に聞く。
心拍数とか意識がどんな感じなのか、滝に打たれているだけだが大きく精神を乱している。
「ボーダーの隊員はトリオン能力の都合上、学生が多い……感情的にならない、動じない、安定している……大人になれとは言わないがを強靭なメンタルは大事な筈だ」
「だから滝行を…………あの、やってみていいですか?」
「自分の隊長に交代してくれって言ってこい」
動じない心は割と大事だと言われれば納得をする笹森。
自分もやってみたいと言うので絶賛滝に打たれている諏訪さんと交代できるかどうかを言ってこいと言えば笹森は交渉しに行き、諏訪さんはあっさりと変わった。
「キツい、コレ、めっちゃ、キツい……シンプルに滝の水が痛えよ!」
滝から脱出した諏訪さんは感想を述べる。
至ってシンプル、滝から流れてくる水の威力が強くて痛い。ボーダーのトリガーなので痛覚遮断はされているが、一瞬だけの痛みは感じる物なので無数に流れてくる滝の水から痛みを感じる。痛覚神経を完全に遮断しとかないといけねえ。
「おぉ、ぉ、お、おおお!」
「日佐人、喘ぎ声みたいになってる!口を閉じるんだ!」
諏訪さんの次に入った笹森は滝に打たれて声を荒げる。滝の威力と冷たさに出る声が色々と酷くて堤さんがヤバいと慌てている。
口を閉じる様に言われた笹森がは口を閉じるのだが目も閉じており完全に意識を反らそうとしている。それはいけねえ事だがあえて言わない。
「おぉ……流石は
他の面々と交代したりして、外岡と日浦が滝行を行う。
今までが色々と声を上げていたりしていたのだが、流石は狙撃手だと諏訪さんは関心を示していれば東さんが滝の中に入って滝行を行う。
「成る程、コレは確かにいい訓練になるな」
東さん、見た目的にも完全に修行している人に見えるな。
なにを目的としてるのかを薄々と察している東さんは滝に打たれながら笑う。マジかよと驚く人と流石は東さんだと頷く人に分かれる。
「コレは結局のところ、なにを目標としているのですか?」
「誰か、トリガーを貸せ」
全員が滝行を終えれば照屋が質問をしてくる。
精神統一を目的としているのは分かっているが目標が見えていない。口で説明をするのはスゴく簡単だが実際にやってみせた方が早いからとトリガーを貸せと言えば柿崎が自分のトリガーをオフにし貸してくれる。トリガー起動と言いトリオン体に換装する。
「最終目的はコレだ……もし合わないって思ったら、潔く諦めた方がいいが」
「えっと……なにが変わってるんですか?」
トリオン体に換装してから滝に打たれる。最終目的はコレだと言ったのだが、照屋達はイマイチピンと来ていない。
滝に打たれても動じないメンタルか?となるので説明をしようとすれば東さんが口を先に開いた。
「頭の中でトランス状態をオン・オフ出来るようになれ、だろ?」
「トランス状態……って、なんですか?」
「変性意識の事だ……余計な雑念や感情、データを取り払ったりする事で至れる意識の1つで時と場合によっちゃゾーンと呼ばれる……トランス状態になった時のメリットとして集中力が以上なまでに上がって余計な情報を取り込もうとしねえ。そうすることで最高の動きが出来るようになる。スゴくザックリと言えば頭の中で戦闘モードとそうじゃない時を切り替えるスイッチを作れと言いたかった」
「それって狙撃手の集中とは違うんですか?」
トランス状態になれるかどうかの修行だが、狙撃手の集中とは違うのか?という素朴な疑問をぶつける小太郎。
「カラオケで自分が歌を歌っている時は狙撃手の様に◯◯をしよう!と集中しているか?」
「……いえ……」
「お前等ならば1度は行ったことがあるカラオケだが、歌っている時は意識をトランス状態にする良い一例だ……時間を忘れる、夢中になる、無になる……アレと意識して集中するのは異なる」
「意識して集中するんじゃなくて無意識で集中しろって事だな…………出来るのかそんな事が」
「できるできないじゃねえ、やるかやらねえかだ」
弓場は疑いを持つのだが、コレは出来る出来ないの問題じゃないやるかやらねえかだ。
少なくとも紅き界賊団の面々は、転生者達は当然の如く使いこなしている。流石にゾーンと呼ばれる領域をオン・オフ出来るのはオレだけだが。
オレの心拍数等はどうなっているのかコレを管制してもらっているオペレーターに聞けば今までの人達と違ってスゴく安定しているとの返事が帰って来る。
「この状態を意識してオン・オフ出来るようになれば強敵や未知の敵相手に自分の能力を正しく出すことが出来る……ただし、物凄く難しい技術だ」
「……青峰さんはそれが出来るから、あんなに強いんですね」
「いや……お前等相手にこの技術はまだ使ってねえぞ?」
「え?」
オレが強い理由に納得する帯島だが、お前等相手にまだこの技術は使ってねえ。使わなくても勝てる相手だから。
強いと言ってもボーダーの内部だけで世界は理不尽なくらいに広い、ただしオレは理不尽なくらいに強いからな。その辺は勘違いするなよ。
「オペレーターもやっとけよ、精神を無にして安定させて常に行動しておかなきゃならねえのはオペレーターだからな」
オペレーターもやれと参戦させる。
各部隊のオペレーターが部屋に入ってきたので那須以外の隊長は自分のトリガーを、那須の代わりに熊谷がトリガーを貸した。
滝行はキツいと言い出すが、揺るがない動じない精神力は割とマジで使える。この技術は学んでおいて一切の損はねえ。
「なんだ、戦わないのか」
「今回はな」
オレがトリガーを用いて戦うことを期待していた天羽は落胆する。今回は戦う以外の特訓をしているからオレは戦わねえよ。
「天羽、青峰はどれくらいの色なんだ?」
「今まで見たことがない色だよ、忍田さん以上に濃くて…………太刀川さんや二宮さんよりも強い事だけは確かだと思う」
「…………そうか……」
東さんは上からなにを聞いてんだ?
オレの強さが具体的にどれぐらいなのかを試しに聞いてみればできます太刀川や二宮以上の強さを持っていると言われて薄い反応をする。
いざとなれば力で抑えるとか考えてる……いや、それは無いな。暴力で物事を解決するような組織じゃなさそうだし。
「そういやお前、ここのところ毎日来てるけど仕事とか大丈夫なのか?」
「オレの仕事は有事の時に動くのが主で、上とかにこの事を報告したりしてるがオレの独断で大丈夫だって言われてる」
オペレーターを含めて全員が1度は滝行を行った。
トリガーを用いた戦闘は基本的にはトリオン体になる。なので筋トレは不必要で如何に効率良く体を動かす事が出来るかどうかだ。余計な雑念で動きを乱していいのか?と聞けばこのトランス状態になる訓練に励むのだが藤丸がここ最近、ボーダー本部に足を運んでいる事を気にする。
オレの仕事は有事の際に現場に出て敵をぶっ殺す事だ。事務処理とかもあるにはあるが現時点ではなんとか上手く回ってる。
「仕事は大丈夫だけど、仕事以外がな……公安警察に近い仕事だから、基本的には自分がなにしてるかって言えねえんだ。近所や町内会じゃアパートの大家さんで通ってるし、従兄弟に今まで言わなかったし」
「意外と苦勞してるんだな」
「どんなに綺麗な言葉で取り見繕っても異世界との戦争の最前線に立ってるからな……だから、彼女もな……」
「モテねえのか?」
「オレはコレでも中学バスケでMVP、高校バスケは無敗で全国制覇しててモテるにはモテるけどもこんな仕事をしてるんだ。理解してくれって言う方が無茶だ……そういうお前はどうなんだ?スタイルもいいし真面目だし顔もいいしモテねえの?」
「な、なに言ってんだよ!?」
オレはモテるモテない以前に仕事柄、彼女を作りにくい。
この仕事を辞めるっていう考えには至らねえ……オレの天職とは言わねえけども、合ってる気もする。藤丸の方はどうなのかと聞いてみると藤丸は慌てる。
「私はモテねえよ……こんな性格だからな、ダチの方が言い寄られるのが多い」
「そう、なのか?オレからみればお前もいい女だ……仕事云々の壁が無かったら、デートの1つでもしたいって言うな」
「…………する、か?」
「え……いいのか?」
藤丸とデートするのは無理だろうと殆ど冗談に近い形で口説いてみた。
恐る恐るの藤丸はデートをするか?と少しだけ恥ずかしそうに聞いてくるのでオレは頷いた。
次回はデート回です