「フィールドとか弄らなくていいのか?」
「問題は無い」
外からも見える仮想訓練室に青峰と風間は入った。
青峰はフィールドとか弄らなくて大丈夫なのか聞けば風間は問題は無いと言い切り、戦闘開始のブザーが鳴り響くと風間は消えた
「消えた……」
「確か、カメレオンとか言うトリガーか」
風間が消えた事に驚く修。
玉狛支部経由でボーダーのトリガーがなんなのかを知っているので遊真はこのトリガーは姿を透明にするカメレオンだと判断する。
「貴方のトリガー、スコーピオンよね?」
「スコーピオンだけどどうかしたか?」
「じゃあ、終わりね……風間さんはボーダー屈指のスコーピオンの使い手でカメレオンを用いた特殊な戦闘に長けているわ」
青峰が借りたのは遊真の訓練用のC級のトリガーであり、スコーピオンだ。
脆いが軽くて切れ味抜群で体の何処からでも出すことが出来る自由度が高い武器だ。しかし残念な事に風間との相性は悪い。
そもそもで風間が何処に居るのかを認識する事が出来ないならば、ブレードタイプのトリガーは殆ど使える手が無いに等しい。木虎は青峰の負けだと判断する。
「いや、関係無いと思います」
しかし有里彩は木虎の意見を否定する。
確かに風間はボーダー屈指のスコーピオンの使い手でありカメレオンを用いた特殊戦術にも長けている。近界民の世界基準でも相当な手練である事には変わりはないだろう。だが、有里彩からすればそれがどうした?である。
青峰は透明になった風間を探すような素振りは特にせず、驚きもしない。原作知識があって風間のトリガー構成を知っているから?違う。
「っ!」
「はい、先ずは1発」
透明になっていた風間は青峰の背後に回り込んでいた。
姿を現してスコーピオンを出現させて青峰を斬りかかろうとすれば青峰は来ることが分かっていたかの様に対応した。
風間が姿を現すよりもほんの少しだけ前に体を捻って風間の顔目掛けて拳を叩き込む。武器術メインで体術特化のトリオン体でないので風間のトリオン体にヒビが入るだけだが、仮想訓練室なので直ぐにダメージが回復して元に戻る。
「……」
「芸が無いな」
1本を取ったわけじゃないので、試合は続く。
風間は再びカメレオンを起動して透明になるのだが青峰は今のでカメレオンが通じないのが分からないのか?と退屈そうにする。
完全に姿を消した風間は今度は背後ではなく堂々と真正面から近付いてくるのだが青峰は何事もなく透明になっている風間を殴り飛ばした。
「はい、次」
殴り飛ばされた風間は姿を現した。カメレオンによる背後からの奇襲、真正面からの攻撃が全くと言って通じてない。
なにかタネがあるのだと三度カメレオンを用いて分析をしようとする。出方を伺っている、同じトリガーを用いている相手を分析しながら戦うのかと思いながらも青峰は奇襲を仕掛けてくる風間の攻撃を回避する。
真正面から堂々と斬ってくる。寸でのところで回避する。
体からスコーピオンを出して地面を経由して突き刺す
流石にここまでくれば青峰にカメレオンは使えないと判断するだろう。
風間は二刀流のスコーピオンで戦いにいくのだが、青峰は軽々と回避するかの様に見せかけてスコーピオンの側面を殴打して叩き折る。
トリオンが無限に使える仮想訓練室なのでスコーピオンを叩き折ったとしても直ぐに新しく作ることが出来るのだが風間は驚いてしまい思考が一瞬だけ停止したのでその隙を狙って青峰はお腹に拳を入れた
「完全に遊んでますね」
遊真から借りたのはスコーピオンのC級のトリガーだ。
スコーピオンは体の何処からでも出し入れが出来る自由度の高い武器なのだが、やろうと思えば殴る時に拳や足から出すことが出来る。
青峰はスコーピオンの性能はちゃんと知っている。しかしそれでもやらない。ただただ風間のプライドを、青峰が調子に乗ってるから鼻っ柱を叩き折ってやるという思いを無駄にするためだけに嫌がらせの為に手を抜いている。
「遊真くん、分かってると思いますけど風間さんは強いですから青峰さんの真似はしたらダメですからね。あの人は異常なまでに強いからあんな事が出来てますので」
「……どうせだったら何時も真面目にやってくれたらいいのに」
「青峰さんにそういうの求めても意味無いですよ」
「なんなの……なんなの、あの人は……風間さんを手玉にとってる?遊んでる?」
スコーピオンを手に斬りかかる風間の動きを先読みして手を肘にぶつけて攻撃の軌道をそらす。
風間も段々と焦りだしてきたのか色々な手を使ってくるのだが、青峰はそれら全てを対応する。スコーピオンを使わなくてだ。
既に嵐山隊の時枝に連れられてC級の訓練生は居なくなっていたが、その場に居た嵐山、木虎、仮想訓練室のシステム云々を操作していた諏訪、堤、風間の圧勝だろうと思っていた歌川、菊地原はありえないと言った顔をしている。
「プレシャスと呼ばれるお宝を回収する部署、妖怪等はトリオン兵ではなかったのかと考古学関係を調べる部署、トリオンと電気を用いたハイブリットな道具を開発する部署、自然災害をトリガーで乗り切る部署……そして向こうの世界から友好でなく侵略目的でやって来た近界民を倒す仕事もあります。青峰さんの仕事はボーダーがダメだった時に近界民を殺す仕事……青峰さんは勝つことが仕事なんですよ」
紅き界賊団には風間以上の実力者は普通に居る。
そんな実力者達は主に向こうの世界で活動をしており、向こうの世界と日本と言う国で和平や友好を結べないのかを試みている。
紅き界賊団がちゃんとこちらの世界に残ればボーダーの代わりを殆ど出来るだろう。だが、紅き界賊団はそれを選ばずに
ボーダーと言う組織が信用出来ないからではない。世の中、上には上が存在している。
例えば風刃を持った迅がワールドトリガー最強キャラことヴィザに勝てるかどうか?と聞かれれば答えるのは難しい。自分達の介入によってイレギュラーなバタフライエフェクト的なのが発生しないのか?等の心配はある。
紅き界賊団が無ければ今頃はボーダーが色々と情報を独占しているのを船長である安室は知っている……ならば、万が一、億が一を想定しておいて最強の人間兵器を用意している。それが青峰である。
「サイドエフェクトかなにかで」
「青峰はサイドエフェクト持ってないチュン!」
「じゃあ、どうして風間さんの動きを先読み出来ているの?」
青峰の強さの秘訣はサイドエフェクトかなにかかと考える木虎だがセッちゃんは青峰はサイドエフェクトを持っていないと断言する。
しかしサイドエフェクトを持っていなければ理解出来ないレベルの先読みをしている。何かしらのタネがあるのだと木虎は考えて青峰と風間の戦いを見るのだが、あまりにも青峰が圧倒している。トリオン能力に物を言わせているんじゃない、純粋な戦闘能力に差がありすぎている。
「多分、口で言っても納得はしないでしょう……原理は至ってシンプルです……青峰さん、もう充分にしごいたんですからそろそろトドメ刺して楽にしてください」
聞こえているかどうかは分からないが、風間の使える手を潰したのでそろそろ終わりにしろと言う。
青峰は風間が苦しそうにしている事を察すればやっとスコーピオンを取り出した。風間との戦いを終わりにするつもりだなと一同は見守り、青峰はスコーピオンを風間に向かって投げれば風間は反応して小さなシールドを展開するのだがその前に青峰は空中にあるスコーピオンを消して再びスコーピオンを作り出して投げて風間がシールドでカバーしていない部分を貫いた。
『トリオン供給器官損傷』
風間の負けだアナウンスが鳴り響いた。青峰はそのアナウンスを聞き終えれば仮想訓練室のドアを開いて出て行く。
遊真の使っている訓練生用のC級のトリガーをオフにして生身の肉体に戻り遊真に返した。
「まぁ……こんなもんか……どうだ?たまには真面目にやってみたぞ」
「スゴいね……全くと言って相手になってなかった」
「まぁ、格下だからな」
オレは勝ったぞとアピールしてくる青峰。修はスゴいなと感心するので青峰は若干だが調子に乗るのだが、誰もなにも言い返せない。
青峰は風間を相手に完封して完勝した、この事実だけは誰がなんと言おうが塗り替える事が出来ない事実だから。
「次、やろうよ。随分と調子に乗ってるみたいだから」
「やめておけ、菊地原……お前じゃまともに相手にならない」
「言い方違うんじゃないんですかね?お前じゃじゃなくてお前も相手にならないが正しいと思いますよ?」
風間が馬鹿にされるのは許せないと菊地原がトリオン体に換装する。
しかし風間は今ので分かった。青峰と自身の間に絶対的なまでの実力差が存在している事を。強化聴覚の便利なサイドエフェクトを持っているとはいえ自分よりも実力が劣る菊地原が戦えば結果が目に見えているのだが、有里彩が煽りを入れてくる。
「……何故カメレオンからの奇襲が分かった?事前にトリガー構成を熟知してデータ対策していても初見で行動するのは難しい。なにかサイドエフェクトを持っているのか?」
「オレはサイドエフェクトを持ってねえよ」
「…………俺に落ち度があったのか?」
「バトルフィールドを設定する事が出来るならば水溜りや雨、鉄筋コンクリートじゃなくて土や砂、草むらのフィールドを選んで足跡から行方を辿って対策するのがベタだろう。だが今回はなにも無い真っ白な部屋、遮蔽物は一切無い、フィールドを生かす戦法も出来ないしオレのトリガーは遊真から借りたC級のスコーピオン1本のみ…………じゃあ、なにをしたと思う?」
「……」
「答えを聞くのはいいが、仮説を立てるのも大事だ……例えそれが自分で納得も理解も出来ない事だとしてもな」
「つまり何かしらの仕掛けがあるのか」
なにかの仕組みがあるのだと考える風間。
サイドエフェクトは持っていない、使っているのは訓練生用のスコーピオン、バトルフィールドは真っ白な空間、それなのに青峰は自分を圧倒した。最後にスコーピオンを使ったがそれ以外では使わずに素手でスコーピオンの側面を殴ったりして破壊した。
なにか無いのかと風間は考えるが浮かばない。サイドエフェクトのおかげで分かっていると言われなければ納得しないぐらいだろう。
「どうやったの?」
「別に口で説明するのは簡単だ……野生の勘的なので動いてるだけだ」
「野生の勘、だと……サイドエフェクトじゃないのか?」
「船長代理はあらゆる事をなんとなくで見抜く超直感っていうサイドエフェクトがあるが、オレのは鍛えて手に入れた物だ……人間は動物か?それとも人間は動物よりも上位に君臨する種族のどっちだと思う?」
「…………どっちだろう……人間も動物って言う人も居るし、人間は特別って言う人も居るし…………」
青峰の出した質問の答えに修は悩む。
人間が動物から逸脱した特別な存在と言われればその通りなのかもしれない。しかしだ
「人間は脳が劣ったり発達した動物だ……科学と言う力を得て発展していった哺乳類だ。だが、その発展こそがダメなんだ」
「どういう意味?」
「人間以外の動物は危機察知能力に長けている、しかし人間は文明の利器や温い環境下の中でその危機察知能力等が大きく衰えていく。だが、頑張ればその能力は、野性的な部分は鍛え直す事が出来る……そしてそこから直観力が生まれる。相手と対峙した際に最善手が自然と閃いて体が勝手に動く……遊真も修も千佳も、勿論風間さんも直観力を持っている……まぁ、人間として成長すれば逆に劣ってしまうが」
青峰が風間の動きを先読み出来たのは、対処する事が出来たのは驚異的な野生の勘、直観力だ。
難しい事でもなんでもない、ただ物凄い勘で動いているだけでありそれが最善手になっているだけに過ぎない。
「それはサイドエフェクトとは違うのか?」
「サイドエフェクトは優れたトリオン能力が人体に影響を及ぼした能力のことだ、オレのは鍛えた結果だ……修の様にトリオン能力に優れていない人間でも後天的に鍛え上げる事が出来る能力」
「それはどうやれば鍛える事が出来る?」
「同格や格上を喰らう、絶対に勝たなければならない状況下で勝ち続ける、重たいプレッシャーを背負う……例えば、太刀川を相手に7−3で勝つことが出来たとして、それを上出来か?まぁ、こんなもんだろと思うのか?屈辱的だと悔やむのか、この時点で大分変わる……少なくとも屈辱的だと悔やまねえのはな……野性的なカンは、直観力は膨大で濃密な経験が物を言う。経験則の法則とも言えるか……」
青峰、いや、転生する度に諏訪部キャラになる男は戦闘関係は天才とか言うレベルじゃない。
天性の才能と弛まぬ努力を積んでおり、その結果が圧倒的なまでの強さなのだがなにがスゴいって過酷な環境下に居る事が結構多い。
このワールドトリガーの世界でもそうだ。中学では県のMVPを取り、全国ベスト5に選ばれ高校ではバスケが強い兵庫県の高校に進学し、1年生でレギュラー、常にスタメンで全国どころかプロバスケの猛者と戦っていた。
1度でも負ければ全てが終わると言う危機的な試合は何度も何度も重ねてきた。無論、風間達もそれ相応の経験は積んでいるだろうが青峰の比ではない。
「後は信じる事だ、誰だってなんとなくの直観力や野性的な勘は持っている。でも様々な理屈をつけて上から抑えつけていたり妥協したりして甘えているから鈍っていく。よく言うだろ、考えるんじゃない感じるんだって」
「ジャッキー言ってましたね……風間さん、無理に真似しなくてもいいですよ。この人は普通に化け物じみた天才なんで」
青峰が攻撃を見抜いていた仕組みを言うのだが、イマイチ納得も理解も出来ない。
ただの直観で自身の攻撃を全て見抜いて対処していた。まだ視覚関係のサイドエフェクトを持っていると言われる方がまだ幾ばくか納得がいく。
しかしホントに青峰は優れた思考能力と膨大な戦闘経験と野性的な勘と最後に物を言う才能を合わせた直観力だけで風間の動きを対応していただけに過ぎない。
「木虎、遊真達を連れてけよ……オレ達がどれくらいやるかどうかで推し量ろうとするのは傲慢だからな」
若造だからとか頭に乗っているとか調子に乗ってるからとか言う言葉は割と嫌いな青峰である。
遊真がC級のトリガーを再起動すると木虎が嵐山達の元へと案内していった。
「…………失礼な態度を取ってしまってすまなかった」
「戦闘能力で推し量ろうとするのは完全に戦闘民族の考えです…………そんなのですからボーダーの女性隊員は可憐な容姿とは裏腹にアマゾネスの巣窟と言われるんですよ」
風間が青峰がどれくらいの実力者なのか試してやろうと言う感覚はあった。
蓋を開ければ風間は徹底的にボコボコにされると言う予想外な出来事だった。まぁ、挑んだ相手があまりにも悪かったとしか言いようがない。
有里彩は反省している風間を見ていて呆れる。ボーダーがアマゾネスの巣窟だと頷く。風間隊は否定しない。加古とか見た目は可憐とか妖艶だけどもその実態はバイオレンスなアマゾネスだと実感しているから。
「いや〜ボロ負けだったな」
「諏訪か……笑いたければ笑え」
遊真達が他の訓練とかに行っていると諏訪と堤が現れる。
先程まで青峰に風間が徹底的にボコボコにされる姿を見てゲラゲラ笑っている。ぐうの音も出ない負けなので風間は笑われる事に関しては深くは言わない。
「マジの青峰は洒落にならないからコレでよかったチュン」
「……実力を推し量る云々でなく、純粋に戦ってほしい」
「じゃあ、上にボーダーのトリガーをレンタルさせていいのかを申請してきてくれよ」
「違う、お前の持っている自前のトリガーを使ってくれ……トリガーの性能で負けただなんだ言い訳はしない」
「嫌だよ」
青峰の実力を素直に認めて頭を下げる風間だが青峰は勝負をするつもりは無かった。
なんでって?シンプルにめんどくさいから。青峰は試合とかはちゃんとするけども決して戦闘狂じゃない。
「真面目な状態のオレと戦いたいって言うのはアレだぞ、忍田本部長に勝負してくださいって言ってるも同然だぞ」
「いや、それはちょっと違う気がしますよ……青峰さんと真剣勝負したいのならば高遠さん、小林さん、藤林さん、次元さん、ヒナコさん、高倉さんとかと戦って勝たないとダメですね」
「有里彩、サラリと自分は省くチュンね」
「痛いのは嫌ですからね!」
紅き界賊団の他の面々を倒してからじゃないと真面目な青峰と戦う事が出来ないと言い切る。
それでいいのかと思うのだが、それでいいのが有里彩である。
「…………他の奴はどうしているんだ?」
上から紅き界賊団というか政府が色々とやっていると話は聞いている風間は素朴な疑問をぶつける。
青峰と有里彩以外にも政府の役人は普通に居るのだが今の今まで姿を見た覚えがない。サラリと有里彩が他の面々の名前を出したのでこの際だから聞いてみる。すると渋い顔をする青峰と有里彩
「年内までに帰って来るって言ってたけど、なんか帰って来てねえんだよ……高遠のおっさん辺りが余計な事を言ってる可能性が高い」
「高遠さんならやりかねませんね……おかげで他の皆の税金の確定申告とか色々とやらないといけなくて……最終的に税理士丸投げにして……」
「こういうときに
意外と苦労している青峰と有里彩である。
この時は特に深くは気にしていなかったが、赤司が船長代理を務めている向こうの世界に遠征している紅き界賊団の面々は色々とやっていた。それを知るのは後日である。