メガネがガオーン   作:アルピ交通事務局

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メガネがガオーン 29

 

「フー…………染みる」

 

 忘れてはならない、現在が1月の真冬であることを。ボーダーの本部にやって来たオレは自販機でホットのコーヒーを飲む。

 1月だからかなり寒い。ホットのコーヒーが染みる……ただなぁ

 

「なぁ、アレって」

 

「この前風間さんと」

 

「勝ったって噂だぞ」

 

「カメレオンを見抜くサイドエフェクトとか持ってるらしい」

 

 周りが鬱陶しい。風間さんと1本だけの勝負をした結果が色々と尾鰭がついて広まっている。

 C級の訓練生がオレが風間さんを倒した奴だと視線を向けてくる。向けてくるだけで特になにかを言ってくるわけでなくヒソヒソ話をしている。

 いっそのこと挑んで来いとは言わない、厄介なのは相手にしたくねえからな。オレはめんどうな事はやらねえ……有能な怠け者なんだよ。

 

「っ、お前は……」

 

 コーヒーを啜っていると三輪隊の三輪が自販機に近づいて来てオレに気付く。

 特になにかをしたわけじゃないのに三輪は敵意を剥き出しにしてくる…………

 

「怒りの矛先だけは間違えるなよ」

 

 三輪隊の三輪は姉が近界民に殺されている。その件で近界民に対して激しい憎悪を抱いている。

 それに関してはああだこうだ言うつもりはないのだが、その怒りの矛先をオレ達に向けている。特になにかをしたわけじゃねえのに。

 

近界民(ネイバー)を匿っている連中には言われたくない」

 

「…………その理論でいけばボーダーも近界民を匿ってるだろ?」

 

 遊真を保護している事に関して怒っている三輪だが、その理論でいけばボーダーにも何名か近界民がいる。

 そいつ等の事を無視して遊真は敵扱いは少しだけお門が違うんじゃねえかと聞けば三輪はなにも言い返せなかった。

 

「ホントに近界民を敵だと言うならば林藤陽太郎、忍田瑠花、ミカエル・クローニンとかを殺してこい。彼奴等は近界民だ……殺人罪云々が嫌だったらプロの殺し屋を紹介してやろうか?高遠のおっさんなら完全犯罪を教える事が出来るだろう……迅をどうやって回避するかが重要だが、あのおっさんなら状況的証拠が存在していても物的証拠が存在しねえでお前を無罪に導いてくれるだろう」

 

「……居るのか、ボーダーに近界民が……」

 

「逆に聞くけどよ、スタートはどうなってんだ?」

 

「スタート?」

 

「トリガー文明は電気でなく生体エネルギーであるトリオンを動力源にしてる。こっちの世界の人間はその事を知らなくて、ボーダーは何故かトリガー技術を有していた。考えられるケースの1つとして自力でトリオンと言う生体エネルギーに気付いた……もしくは近界民側から何かしらのコンタクトがあった。そこから何時の間にか秘密の組織、ボーダーが誕生し4年半前の大規模侵攻に繋がる」

 

「……じゃあ、ボーダーは」

 

「旧ボーダーの人間にしか知らない極秘事項は多数存在してんだろう……まぁ、だからどうしたって話だがな」

 

「……………お前は近界民をどう思っているんだ?」

 

「ん〜…………上はそもそもで今のこの状況を幕末の再来だと思ってるぞ?」

 

「幕末?」

 

 オレ個人の意見を求めるが、オレは割とどうでもいいと思っている。

 オレは仕事だから、赤司とアカレッドに誘われたからやっててそれはそれこれはこれで割り切っている。オレ個人の意見を聞いても大してタメにもならないので上はどういう風に認識しているのかだけを教える。

 

「ペリーがなんで黒船で日本に来たかぐらいは知ってるだろ?」

 

「鎖国をしていた日本に開国を迫った……かなり強硬な手段でだ」

 

「そう……その後は外国人が色々と好き勝手やりつつも日本はデモクラシーの制度を導入したり蒸気機関なんかの海外の技術を導入したりして大きく進歩した。無論、その過程は激しかった。坂本龍馬の暗殺、薩長同盟、徳川幕府の終わり、天皇を日本の皇帝じゃない様に日本の王になろうとした馬鹿も居て戦争も起きて多くの血を流した。開国するかしないかで大きく揉めた今もそれと似たような状況だ」

 

 近界(ネイバーフッド)という未知の大陸の未知の文明を築き上げた国に対してどうするか?

 日本は嘗て鎖国という事をして立地条件的にも色々と独自の文化を築き上げる事に成功していたが、鎖国をしていた結果外国に科学技術で大きく追い抜かれてしまった。

 

「年々、光熱費が上がってて一般人が悲鳴を上げてるだろう……向こうの世界のエアコンはトリオンを動力としている。トリオンは電気と違って大量生産が出来ない安定しねえエネルギーだが、こっちの世界はとにもかくにも人間が多い。例えばそう、市民の人数が100万人を超えている神戸や名古屋に触れるだけでトリオンを回収する装置を作り上げてみろ。皆が困っている悲鳴を上げている光熱費の費用の問題が解決するんだぞ?政治に興味がねえ、どうでもいいと思ってる連中だって光熱費が減ると聞けば大喜びだ…………そんな夢の様な技術を何処の国よりも真っ先に手に入れる事が出来るのに鎖国をするか?」

 

「…………近界民は敵だ」

 

「別に近界民は敵で殺すって事に関してああだこうだ言わねえよ、オレは話し合いが通じねえ敵だと断定した近界民を殺すのが仕事だから……でも、怒りの矛先間違えるな。お前が殺さなきゃいけないのは、復讐しなきゃならねえのはあの時襲ってきた近界民であって遊真じゃねえ……大体、お前は最終的にはどうしてえんだ?こっちは向こうの世界に日本と言う国を認めさせて貿易をして日本を豊かにしたいって方針だが、お前は襲撃してくる近界民皆殺ししたいのか?」

 

「………………」

 

「……高遠のおっさんが帰って来たらお前に紹介してやるよ……あのおっさんは殺人教唆のプロでもある」

 

 オレに色々と言われて、言い返すことが出来ない三輪。

 三輪が間違っているとは一言も言っていない……ただ、子どもの憎悪を扱っているのならばもう少しちゃんとしとかなきゃならねえ。憎悪を抱くなじゃない、憎悪を向ける方向を決めておかなきゃならねえんだ。

 

「昔、弟を殺された女が居た……弟の為だと憎悪の念を燃やしていたが……いや、コレは違うか」

 

 昔話をして三輪の心を揺さぶろうとするのだが、この話をしたところで三輪は揺るがない。

 三輪の憎悪の念は正当なもの……戦争が起きたことだから受け入れろと言って受け入れさせるのは酷だ……そもそもでどれだけ高尚な理由を付けて異世界のガチの戦争なんだ。戦争を起こしてきた奴等を憎むなと言うのが無茶だ。

 

「青峰、ここに居たチュンね」

 

「セッちゃんか」

 

 三輪が色々と悩んでいるとセッちゃんが修と千佳を連れてやって来た。

 スマホを見ればそこそこいい感じの時間になっているので残っているコーヒーを飲み干す。熱くて胃が一気に温まるが染みる。

 

「んじゃ、また後で」

 

 コーヒーカップをゴミ箱に捨ててランク戦が行われているブースに向かった。

 相変わらず視線は鬱陶しいものの、オレはランク戦をしない立場なので無視して遊真に近付けば草壁隊の緑川と一緒に居た。

 

「空閑、そろそろ」

 

「もうそんな時間か?」

 

「時間を忘れちゃダメだよ」

 

「遊真先輩、この人達は?」

 

 そろそろ重大な会議の時間なので会議室に向かおうとするのだが、初対面の緑川は首を傾げる。

 遊真は修達の事をどういう風に説明しようと考える。何時もみたいに警察手帳の1つでも出せばそれで終わりだろうが、イチイチリアクションに構ってる場合じゃねえ。

 

「おれの友達だな」

 

「……まぁ、その認識が一番か……仲良くなってるけど、なんかあったのか?」

 

「軽く揉んでやりました」

 

「ちょっとそれ言わないでって……あぁ!あんたもしかして風間さんを倒したって噂の人!」

 

「あ〜…………そういうことか」

 

 遊真は一応は玉狛支部の隊員としてボーダーに在籍している。

 緑川はコネ的なので遊真が玉狛支部の隊員になったのを嫉妬して遊真に絡んできて遊真にボコボコにされた。後ですみませんでした的なので終わらせたとか言うオチだろう。

 

「ねぇねぇ!オレと勝負しようよ!」

 

「今から会議があるから無理で会議が終わったとしてもめんどくせえからしねえ」

 

「え〜!」

 

「そもそもでオレはボーダーの人間じゃねえよ」

 

 バトルしてえと燃える緑川だが、オレは相手にするつもりは一切無い。

 そもそもでそういうのに全く興味がねえんだとオレは遊真を回収すれば指定された会議室に向かった。

 

「え〜では、これより会議を行います。今回の議題は今度起きると予知されている大規模侵攻について」

 

 パソコンを取り出してモニターに接続をする。

 今回ここにやってきたのは今度起きると迅が予知している大規模な侵攻をどうやって乗り切るかだ。

 忍田本部長、沢村さん、林藤支部長、迅、鬼怒田のおっさん、城戸司令、三輪、そしてオレ達でありオレが仕切る。

 

「迅悠一のサイドエフェクトの読み逃しが無ければ、今月の終盤辺りに大規模な侵攻が発生します。それもボーダーが表に出る前以上の大規模な侵攻で最初から無かった事に誤魔化しや隠蔽工作が出来ないレベルの侵攻です。それらについて対応策を取っていきます。はい、迅」

 

「はいはいっと……先ず、最初から無かったり市民に隠す事が出来ないレベルなのは確定です。その辺の隠蔽工作なんかは唐沢さんと根付さんに任せるとして……………う〜ん……………」

 

「どうした?」

 

「規模がとにかく大きい」

 

 どうしたものかと悩んでいる迅。

 なにに対して悩んでいるのかと城戸司令が聞けば規模がとにかく大きい事を言う。規模が大きいから大規模な侵攻じゃないのか?となるのだが、迅は直ぐに口を開く。

 

「ボーダー以外立入禁止の防衛ラインを越えてきますね」

 

「そうか……」

 

「そうなると一般市民の避難誘導、いざという時の戦闘とかをしないといけないんですけどもA級でも手こずる相手が出てきます……ですのでC級の訓練生を避難誘導等をさせる方向で、ボーダーの規約上有事の際でもC級はトリガー使っちゃダメって決まりですけどもこの規模じゃC級にも動いてもらわないと」

 

「分かった、緊急時にC級のトリガー使用の許可を許そう」

 

「待て、それなら臨時の隊長を用意しろ」

 

 C級の隊員を避難誘導に使おうとする事に関しては文句は言わない。

 それほどまでに規模が大きいのだと城戸司令も迅の言葉を信じてボーダーの規約を弄る事を認める。しかしオレはそこに待ったをかける。

 

「B級の下位は単体でトリオン兵を倒す事が出来ねえレベルと聞いてる。だから、ある程度の実力者が現場で指揮出来るようにしてくれ。避難誘導だけならC級で構わねえかもしれねえが、A級が苦戦するレベルの相手が出てくるならある程度の実力者を現場に配置させろ」

 

「確かに、A級でも苦戦するレベルの相手やトリオン兵との戦闘を想定するならば1人ぐらいは……迅、上手く分けれるか?」

 

「結構厳しいですね……何処もかしこも手一杯で……やっぱり数が……」

 

「お前達から戦力を出すことは出来んのか!」

 

 上手い具合にC級を現場で指揮することが出来る隊員を選別出来ないのかと迅に頼る忍田本部長。

 残念ながら何処も手一杯であり、数も質も相手の方が上である……それ以前に十数名の団体を引き連れて避難誘導なんかの行動をしたりする訓練をしていねえ、小南レベルの実力者はトリオン兵を倒すのに使いたい、しかし一般市民に被害を及ぼせばボーダーの存続が危ぶまれる。

 鬼怒田のおっさんがこっちからの戦力提供を求めてくる。

 

「現場に出てトリオン兵とかトリガー使いを倒す連中は現在向こうの世界の何処かに居る……なにしてるかは不明だけども、現場に出てトリオン兵とかトリガー使いを倒すのはオレの仕事だ。今回、こっちが出せる戦力はオレ、有里彩、修、千佳、遊真の5人だけ……言っとくがコレはボーダーの為でもあるんだぞ?」

 

「ボーダーの為だと?」

 

「今、トリガー関係の開発部門が複数人のトリオンを混ぜ合わせたトリオンで出来たトリオン体の研究を進めててこの前成功した一例が出た」

 

「……っ…………」

 

「千佳の様に戦闘が不得意だがトリオン豊富な人間からトリオンを搾取し、運動神経抜群だがトリオン能力がカスの奴にトリオン能力10のトリオン体を与える……そうすればわざわざ子供にトリガー持たせて戦わなくて済むだろ?そうなりゃ地下深くに眠ってる物を含めてボーダーの価値無くなるぞ?」

 

 あんまりオレ達が活躍したら活躍したで、ボーダーの存在意義というものに関わる。

 少なくともトリオン能力10のトリオン体を大量生産出来ないかと色々と試みている。小林さんが居ねえから若干だが研究成果は乏しいが、一応の成功はしている。

 

「大体よ、戦力云々言うならなんで草壁隊とか片桐隊を呼び寄せねえんだ?迅のサイドエフェクトで近界民が来るって事だけは確定している。仮に80%ぐらいで可能性が無くなるとしても準備しまくってたけども近界民来なくて良かったねぐらいの事は出来ねえのか?」

 

 もっともらしい疑問を投げかけてみる。

 何時なのか正確な日取りが分からないとしても来るって事だけは確定しているならば、もっと色々と出来た筈だ。

 

「草壁隊と片桐隊が居れば色々とな」

 

「修、ギアトリンガー貸せ」

 

「あ、うん」

 

 呼び寄せたいのは山々だけども色々と理由があると渋い顔をする迅。

 嘘は言ってないみたいだが、色々と曖昧にしている部分があるので修からギアトリンガーを借りて仮面ライダージオウのライダーギアを入れた

 

『ババン!ババン!ババン!ババン!ババババーン!ライダー!』

 

「…………………居た方が少しだけ効率が上がる?」

 

「誤差程度だよ」

 

「おい、ちょっと待て!なんでそんな事が分かる!」

 

「未来を視てるだけだ」

 

「なにぃ!?」

 

 ジオウの力を使ってほんの少し先の未来を視た。草壁隊と片桐隊の面々が加わっても大して変わらない。

 鬼怒田のおっさんがなんでそんな事が分かると聞いてくるので未来を視た事を言えば忍田本部長や沢村さん達は驚いている。

 

「仮面ライダージオウは未来を予知し並行世界を破壊する事が出来る仮面ライダーチュン!ライダーギアを用いればほんの少し先の未来を視る事が出来る!」

 

「つまり、その気になれば迅は不要なんだ」

 

 何処までもボーダーいらず、それこそが紅き界賊団である。

 見た感じ、居ても居なくても大して変わらない。迅という予知すら不要な存在だときっぱりと言い切れば話を進める。

 

「向こうは話し合いじゃなくて、完全な略奪を目的としてやって来る……故に注目の的を作り上げる」

 

「ああ……千佳ちゃんに撒き餌になってもらう」

 

「はい……」

 

「それしか……道は無いんですか?」

 

「襲ってくる敵を全滅させればいいだけだが、ボーダー全員が迅レベルの実力者じゃねえから無理」

 

 千佳を撒き餌にして近界民の意識を向ける。

 その事に関して千佳は少しだけ怖いと思いつつも頷くのだが、修は千佳が怖いと思っているのだと他を模索しようとする。そもそもでボーダー隊員が全員迅レベルの実力者だったら最初からこんなに頭を悩ませねえ。

 

「修くん、大丈夫だよ……絶対に生き残るから」

 

 おい、フラグを建てるんじゃねえよ。

 

「その子には正隊員のトリガーを」

 

「ギアダリンガーで充分だ」

 

「緊急脱出機能が搭載されとらんトリガーなど」

 

「本部が襲撃されたらどうするんだ?」

 

 千佳に正隊員のトリガーを渡そうと視野に入れる鬼怒田のおっさん。

 ギアダリンガーがあればそれで充分だ。しかし緊急脱出機能が搭載されていないギアダリンガーは信頼出来ねえと主張するが本部の襲撃について聞けば言い返せない。

 

「ゴセイジャーの戦隊ギアを使えばレオンヘッダーになれる。そうすりゃ地球の何処にでも逃げることが出来る……それでもなんかあるなら、何処かの部隊をつけろ。修と千佳はトリオン兵やトリガー使いの討伐じゃなくて避難誘導がメインだ。遊真、オレ、有里彩が戦いを請け負う」

 

 あくまでも戦うのはオレであり、修達には戦わせない。

 修達には事前にその事を言っている。余程の事じゃなければ戦うなとも念には念を入れて釘を刺していて双方納得が行っている。

 

「千佳を狙うのは高確率でトリガー使いだ、オレはそいつの討伐がメインでトリオン兵退治は遊真や有里彩がする」

 

「…………お前がか?」

 

「それが1番効率良いし確実に守り切る事が出来る保証がある……オレがここに残ってるのは、居るのはボーダーが対応しきれねえヤベえ奴をぶった斬れってアカレッドから、船長から頼まれてんだ…………安心しろ、仕事だけはちゃんとする」

 

 オレが千佳を守ると言い切れば疑いの眼差しを向ける。

 迅や太刀川の様に確かな実績を持っているわけではないので疑われて当然の事だろう。だが、それでもオレは動く。信頼も信用もねえって言うならば、何処かの部隊をつければいいだけだ。絶対の自信がある。慢心じゃねえ、自信だ。自信と慢心の違いがあるとするならば勝ってるか負けてるかのどちらかだろう。

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