「ただいま」
「おかえりなさい。あら見ない顔も居るのね」
迅を引き連れてやってきたのは青峰達が住んでいるアパート……ではなく、修の家だった。
千佳は見慣れたものだが見たことのない顔ぶれも居るのだと母である香澄は少しだけ驚いた様に見せる。
「どうもはじめまして、メガネくんのお姉さん」
「母です」
「え?」
「迅さん、その人は僕の母です。若く見えますが三十は当の昔に過ぎています」
「そんなに若く見えるのかしら?」
やっぱりというか初見の人が引っかかるであろう香澄を姉と勘違いするトラップ。
迅の隣にいる遊真も香澄とは初対面なので修の母ことを姉だと思ってしまっていたのか驚いている。
「そこの子は学校の子だけど……貴方は?」
「オレは迅、迅悠一。ボーダーの誇る実力派エリートです」
「……そう」
ボーダーの人間だと分かると表情や声にこそ出していないが母である香澄の何かが変わったのだと修は気付く。
コレは後で色々と言われるなととりあえずは自分の部屋に向かってくれと自分の部屋を知っている千佳先導の元に3人は修の部屋に入った。
「どうして今更ボーダーが出てきたの?」
「えっと……」
ボーダーの入隊試験にホントは受けて欲しくなかったけども渋々折れて泣きの1回だとボーダーの入隊試験に受ける事を認めた。
その結果は不合格、付き添いで来ていた青峰は合格したのだがボーダーに興味は無いのだと結局入隊する事は無かった。ここ最近、ボーダーが総出で近界民を倒した事は知っているのでもしかしてそれ関係かと香澄は探りを入れる。
「……終わったら全部正直に話すよ」
色々と適当な嘘をついて誤魔化す事は出来たのだが何れは真実に辿り着いてしまう。
青峰から叔母さんに知られると色々と厄介だから言うんじゃないと釘を刺されている修だがここは正直に全てを話すべきだと判断した。
「大樹くんが関係しているの?」
「青兄が誘ってくれて……選んだのは僕だから青兄は悪くないんだ」
「……そう。今はとにかく、やるべき事をしなさい。私になにか言いたいことがあるみたいだけど、後回しでも構わないわ。はい、ジュースとお菓子」
色々と察した上で不覚は追求していない。修も年頃なんだから親にすら正直に言えない事の1つや2つあってもおかしくはないのだと見守り待つ姿勢に入った。相変わらずというべきか母は達観しているなと修はジュースとお菓子が乗ったお盆を手にして部屋に向かった。
「ほら、言った通りだろ?」
「……偶然、じゃないみたいだな」
「なんの話をしているんですか?」
修が部屋に入った途端に驚く遊真と言ったとおりだと自慢げな迅。
「オレは目の前にいる人の少し先の未来を予知するサイドエフェクトを持ってるんだよ」
「なっ!?……そんなサイドエフェクトもあるんですか」
「うん……超技能で重宝されるサイドエフェクトさ。今回謎の近界民を追う事が出来たのもメガネくんがオレから記憶を消したのに遊真を近界民だと分かったのも全部このサイドエフェクトのおかげなんだ」
なんて便利であろうサイドエフェクト。
そんなサイドエフェクトがあったら目立たない様にしていても正体を知られてしまう。ゴセイジャーの天装術で記憶を消去しても無駄だったのだからチートにも程がある。
「ああ、メガネくんがやろうとしていた事から先にやってくれて構わないよ」
「じゃあ遠慮無く……空閑、千佳は
千佳を引き連れてきた修は早速本題に入る。
千佳は近界民を引き寄せやすい。最早体質と言ってもいいぐらいであり、その原因が修には分からなかった。
「近界民てか、トリオン兵を引き寄せやすいって事は……トリオンじゃないのか?」
「トリオン……トリオンが関係あるのか?」
「大有りだ、大抵の人を拐うタイプのトリオン兵は出来るだけ優秀なトリオン能力を持った人を攫えって命じられてるんだよ」
「トリオン?」
まだ若干だが話についていく事が出来ていない千佳
どういう事なのかと聞きたくはなるのだが、遊真の事を迅が近界民と言ったり迅がボーダーの人間だったりと色々と不可解な事が多く聞いていいものなのかと不安を抱いている。
「レプリカ」
『了解した』
「わっ!?」
『はじめましてチカ。私はレプリカ、ユーマのお目付け役兼相棒だ。早速だが君のトリオン能力を計測させてもらいたい』
遊真の指輪から現れたレプリカ。
ニュインと管の様な物を出すのだが千佳はレプリカとレプリカの出した管に怯えている。
「僕が先に測るよ」
レプリカは危険な存在じゃない。そう証明する為に修はレプリカの管を握った。
『解析完了だ……ふむ、少ないトリオン量だな。トリオン兵に狙われるならばこれの3倍は欲しい」
トリオン能力を可視化させたトリオンキューブの映像を見せる。
修のトリオンキューブは小さかった。手のひらに納まるぐらいの大きさで前々から言われていたトリオン能力の低さを改めて実感する。
修のトリオンの低さはさておいて、千佳はレプリカは危険な存在じゃないと認識してくれたのでレプリカからニュインと伸びている管を握った。
『む、解析に少々時間がかかる』
「え、そうなのか?」
修は僕の時は一瞬だったのにと意外そうにする。
「ねぇ、ジンさん」
「どうした遊真?」
「ジンさんってボーダーの人なんだよね」
「ああ、そうとも。ボーダーが誇るS級隊員の実力派エリート」
「だったらさ、モガミソウイチって人を知らない?親父の知り合いで親父がなにかあったら頼れって言われてここまで来たんだけど」
「そうか……最上さんはここにいるよ」
そう言うと迅は1つのトリガーを遊真に見せる。
それを見た遊真は1人で納得する。モガミソウイチという人物は既に黒トリガーになっていてこの世にはいない、青峰達からの情報は確かであった。
「そっか……ありがとう、教えてくれて」
「いやいや、これぐらいどうって事ないよ」
『計測が完了した。彼女のトリオン能力を可視化したものがコレだ』
「うぉおお、でっけえ!?」
下手したら小柄な遊真よりも大きいんじゃないかと思えるぐらいに大きなトリオンキューブが出てきた。
「オサムの何倍だこれ?」
『量、質、ともに最高とも言っていいトリオンだ。ここまで素晴らしいトリオン器官を見るのははじめてだ。向こうの世界の住人ですらこれほどのトリオン器官を有していない。素晴らしいぞ、千佳』
「うわぁ……うん」
通常のボーダー隊員、というかボーダーでも指折りのトリオン能力を有している人に心当たりがある迅だがそれをも遥かに上回る大きさのトリオンキューブを見せつけられて言葉を失う。自分達が戦場にしている三門市にこんな規格外なトリオン能力を有している子が居るとは夢にも思わなかった。
「こ、コレが私の中にあるんですか!?」
トリオンがなんなのかまだイマイチ理解は出来ていないがとんでもないものをとんでもないぐらいに有しているとは自覚する事が出来る。
千佳はありえないと言いたげな顔だが、トリオン器官はどう発達するのか分かったもんじゃない、親から子に遺伝するなどもないもので千佳はとにかく驚くことしかない。
「こんだけトリオンがありゃ無理してでも追いかけるわな」
こんなトリオン能力見たことはないと遊真は頷いた。
「……どうにかして、千佳が近界民から狙われなくする方法を見つけないと」
「ボーダーに頼るんじゃダメなのか?」
「……ボーダーには頼らない」
目の前にボーダーのトップに近い人が居るが修はハッキリと言い切った。
千佳は近界民の存在が表立てする前から近界民に狙われ、当時その話を信じてくれた友達が近界民に攫われ、今年の5月には兄までが行方不明となった。他人を傷つけるぐらいならば自分が傷ついた方がいい。本当は自分が傷付く事をなにより恐れているのだが千佳は誰かに頼るという選択肢は存在していない。
「じゃあ、どうすんだ?修、まだ弱っちいから守り抜く事が出来ないぞ」
「それは……」
「そこは実力派エリートに任せてくれよ」
「あの、結構です」
「ええっ!?」
迅が出番だと動こうとしたのだが修にしなくていいと断られる。
「この街を拠点にしているのに未だに千佳の存在を見つけ出す事が出来なかった組織に信頼して千佳を預ける事は出来ません」
「……それは……」
「もしかしたら僕達が気付いていないだけでこの街に第2第3の千佳が居るかもしれないです。ボーダーは一刻も早く、第2第3の千佳を見つけ出せるようにお願いします」
千佳は自分達の方でなんとかすると迅に今後のこととして頼み込む。
ボーダーに頼ろうという意思は見られないので無理に連れて行く訳にはいかない。どうしたものかと迅は未来を視つつ色々と考える。今のところ修がゼンカイガオーンに変身してる未来は見える。木の上を飛び交っているかパルクールの練習なのかと見ている。
「……メガネくん、そのトリガー何処から手に入れたの?協力者が居るよね」
誰かは分からないのだが修に稽古を着けている未来が見える。
遊真が向こうの世界の人間だから色々と見えたのだが修の未来は中々に不安定で見辛い。
「……迅さん、紅き界賊団って知ってますか?」
「いや……聞いたことはないな……メガネくんにトリガーを渡したのってその紅き界賊団って団体?」
「はい、そうです」
「う〜ん………3人共とりあえずさ、ボーダーの本部に来てくれないか?ボーダーの偉い人と色々と話をしたいんだ」
紅き界賊団は向こうの世界では有名だがこちらの世界では無名らしい。
色々と聞きたいこととか遊真の事とかもあるのでボーダーの偉い人に会うことを決める。
「千佳、色々と話が向かっていってるが大丈夫か?」
「うん。なんとかついてこれてる……私が狙われる原因も分かったし、色々と気になる事もあるし」
ボーダーの偉い人に会える機会なんて早々にない。
急な話で申し訳無いと思いつつも修はついて来てくれる事にホッとする。まさかボーダーの入隊試験で落とされた自分がボーダーのトップに会うなんて夢にまで思わなかった。
「出てきましたか」
「えっと……有里彩さん?」
今日は遅くなるかもと思いつつ家を出ればそこには認識阻害機能が搭載された黄色のマスクをつけた女性が、有里彩がいた。
何時もながら神出鬼没な人だと思いつつも修は有里彩かどうか聞くので頷いた。
「ボーダーの本部に丸腰の状態で行くなんてドン引きです!幾らなんでも警戒心が薄すぎます!」
「えっと……」
「もしかしたらギアトリンガーとセンタイギアが取り上げられる可能性もあるのですよ!ピンチはチャンスと言いますが逆を言えばチャンスはピンチでもあるんですよ!!」
ボーダーの偉い人と話し合いになるのだがそこでギアトリンガーを奪われる可能性を考えていなかった事に注意する。
無用心だったと修は反省するのだが有里彩は分かってくれればそれでいいのだとそれ以上は修を責めたりはしなかった。
「君は?」
「紅き界賊団序列最下位、
「う〜ん……だったらその仮面を外してほしいんだけど」
「……後悔しませんか?」
「え?」
「後悔しないかと聞いているんですよ」
認識阻害機能搭載の仮面を着けている有里彩。認識阻害機能のお陰で迅は有里彩の顔を見ることが出来ずにいる。
どこからともなくいきなり現れた存在に迅は怪しむのだが、未来視のサイドエフェクトがうんともすんとも言っていないので取ってもらう様に言うのだが有里彩は後悔しないかと聞き……外した。
「!?」
「便利なサイドエフェクトをお持ちの様ですが私の様な人物を相手にするのははじめての様ですね」
「おいおい、嘘だろ……なにも見えないとか、なんかのサイドエフェクトなのか?」
「さて、どうでしょうね……私も貴方達が探している
「……ああ、分かった」
なにも見ることが出来ない今までに会ったことがない女性である有里彩に迅は警戒心を強める。
どうやら自分が思っているよりも事が裏で大きく運んでいる。暗躍を趣味とする彼だが、そんな彼すら知らない出来事がこの街で行われている。どうやら下手すりゃバチバチとやり合う可能性が待ち構えているかもしれない。
運動能力値999 あおみね
転生する度に諏訪部キャラになる男。
高校時代にバスケのインターハイ、ウィンターカップ、天皇杯で三冠を取り日本代表に選ばれて19歳以下の世界大会で日本を優勝に導いた立役者。1年だけでバスケを止めたと思えば陸上で100m9秒で走ったりと運動能力に割り切った極端な性能を誇る化け物
サイドエフェクトは持っていないのだがサイドエフェクト持ちを多く撃ち破った実績を持っている。
転生特典は勇者で災禍の顕主の配下でありながら姫を救おうとした嘗ての自分らしいものを貰っている。