ブルーアーカイブalternativetype   作:Ringseiran

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メインストーリー最高でしたね・・・
自分も頑張ります。


四話 後輩のバイト姿が可愛い今日この頃

 翌日の自由登校日。いつも通り書類の整理をしていると、腹の虫が鳴った。時計を見てみれば時刻は昼時。思えば朝学校に来てから、ずっと休まずに作業をしていた。

 

 自由登校日なので家でのんびりしていてもいいのだが、副委員長としてそういう訳にもいかない。

 

 やるべき事は山ほどあるし、それが片付いたならバイトで少しでも返済金を稼ぎたい。ヘルメット団の問題を解決して多少余裕が出来たものの、依然として借金の返済目処は立っていないのだから、油断はできない。

 

 今月分の利子はどうにか返済できそうだが、早めに準備しておくに越したことはないだろう。千里の道も一歩からとはよく言ったもので、俺は今日夕方からコンビニのシフトを入れているし、セリカも柴関でバイトをしてくれている。来月の返済もどうにかなりそうだ。

 

 しかし、このままではいけないのもまた事実。現状では利子を返済出来ても、本命の借金には手が届いていない。このままでは、一生アビドスは復興出来ないだろう。何処かで一獲千金のチャンスが来ないものかと思いを馳せるが、そうはいかないのが現実である。

 

 また皆で話し合おう、そう思いながら席を立つ。すると同時に、ホシノ先輩が入室してきた。

 

「スグル君お疲れ様~」

「お疲れ様です、ホシノ先輩」

 

 つい先程まで寝ていたのか、目を越すりながら労ってくれるホシノ先輩。

 

「お疲れ様って、おじさんずっとお昼寝してただけだよ~」

 

 大きな欠伸をしながらそんなことを言う先輩。

 確かに考えてみれば、ただ寝ていた人にお疲れ様というのは少しおかしいのかもしれない。しかし相手はホシノ先輩。俺が彼女を尊敬している以上、先輩が何をしていようが俺は労う。

 

「ホシノ先輩はいざと言う時にめちゃくちゃ頼りになるので、英気を養って昼寝するが仕事ですから」

「え~そう~? じゃあお言葉に甘えて……」

 

 そう言って机に突っ伏し昼寝を再開するホシノ先輩は、10秒もしない間に寝息を立て始めた。その寝顔はとても可愛らしく、見ていて飽きない。

 

 そんな先輩を眺めてほのぼのしていると、一部始終を廊下から聞いていたアヤネが、大きなため息をつきながら入室してきた。

 

「またスグル先輩は、ホシノ先輩を甘やかす……」

 

 俺を見るアヤネの瞳は、何処か呆れを含んでいる。

 甘やかすと言われると、否定は出来ない。でも、別にホシノ先輩を積極的にサボらせようとしている訳ではない。アヤネが昼寝したいと言えばさせてあげるし、他の皆でも同じだ。こう見えても俺は仲間に甘いのだ。

 

「アヤネも寝る?」

「そういう事を言ってるんじゃありません!」

 

 冗談めかして昼寝を促してみると、アヤネに頬を膨らまして怒られてしまった。

 

 暫くアヤネをからかっていると、教室の扉が開かれた。誰かと思って見てみると、入ってきたのは先生だった。

 

「こんにちは~。今、大丈夫?」

「大丈夫です。何かありましたか?」

 

 昨日の今日でまたやってくるとは、シャーレは意外と暇なのだろうか。

 いや、そんなはずは無いだろう。いくら一緒に借金問題に向き合ってくれると言っても、シャーレは連邦生徒会の組織。多くの学校に訪問したり、色んな生徒の悩みを聞いているだろうから、多忙に違いない。そんな中でまたやってきたとなると、何か重要な要件だろう。例えば借金を返す宛が出来たとか。上手い儲け話が入ったきたとか。

 

 期待を抱きながら、固唾を呑んで先生の返答を待つが、

 

「良かったら、皆で昼食とかどう?」

「暇なんですか?」

 

 どうやらシャーレは暇らしい。俺達と昼食を食べる為にわざわざアビドスまで足を運ぶとは、それでいいのかシャーレの先生。

 

「はぁ……別にいいですけど。何処で食べたいとかあります?」

「それなんだけど……セリカのバイト先に行きたいんだ」

「なんでそれを……」

 

 先生の口から出たワードは予想しなかったもの。というかなぜこの人はセリカがバイトしている事を知っているのか、それも飲食店だと。その事を知っているのは俺とホシノ先輩だけのはずだ。

 

 ちょうど一週間前からバイトを始めたセリカは、俺と先輩には業務連絡的にバイトについて話していたが、他の皆には伝えていなかった気がする。彼女が自分から先生に話すとも思えない。

 

「いやぁ~たまたまバイトに行く途中のセリカに会ってね。どんな所か顔を出そうと思ったんだけど。走ってまかれちゃったんだ。飲食店が多そうな場所に向かってたから、皆なら知ってると思って」

「まぁ、知ってますけども……」

 

 それはつまりセリカをストーカーしたと自白するという事でいいのだろうか。信用云々の話をしたのはつい昨日の事だと言うのに、この人はもう俺にアビドスを追い出されたいのか。先生の表情からして悪意はないだろうが、セリカからしたらたまったものでは無いだろう。

 

「先生……自覚のない悪行は、時に悪意あるものよりも悪質なものになりますよ……」

「へ?」

 

 ポカンとしている先生。これは重症だ。そんな様子の彼に頭を抱えていると、さっきから蚊帳の外だったアヤネが話に割り込んできた。

 

「スグル先輩!! セリカちゃんバイトしてたんですか!?」

「あー……やっぱりあの子言ってなかったか」

 

 一応他の皆にも報告しておいた方がいいとはセリカに伝えていたのだが、どうやら予想通り言っていなかったらしい。彼女の性なのか、どうもそういった事を恥ずかしがる傾向にある。俺としては何も隠す必要は無いと思うのだが、セリカ自身がそうしておきたいと言うなら、それ以上は俺から何も言うつもりはなかった。

 

 しかしここまで聞かれておいて答えないのも、同じ委員会のメンバーとしてどうかと思う。セリカには悪いが、アヤネに伝えてしまおう。

 

「つい一週間前からね。借金返済に少しでも尽力したいって事だったから、俺からしても有難い話だし、断る理由も無かったから。バイト先も信用出来るところだったしな」

「そうだったんですね…………セリカちゃん、言ってくれれば良かったのに……」

 

 少し驚いた様子のアヤネ。教えてくれなかったセリカに少し不満を抱いている様子だが、直ぐに気を取り直して質問してきた。

 

「それで、どこでバイトしてるんですか?」

 

 アヤネの質問に先生も同調してこちらを見る。

 本音を言えばあまりセリカのバイト先については喋りたくない。昨日俺とホシノ先輩は柴関ラーメンに行った時に、わざわざ来るなと怒られてしまったのだ。それが二日連続になるとすれば、セリカにどれだけ怒られるのか想像もしたくない。しかしここまできて答えないと言うのも無いだろう。一体どうしたものかと苦悩していると、

 

「セリカちゃんはね、柴関ラーメンでバイトしてるんだよ~」

 

 何処から話を聞いていたのか、いつの間にか起きていたホシノ先輩が、俺の苦悩を知らんとばかりにあっさりと答えた。

 

「ちょっ……! ホシノ先輩! またセリカに怒られちゃいますよ」

「大丈夫大丈夫~先生もいるしー」

 

 その先生にバイト先を見つかりたくないからセリカは逃げたんでしょうが! 

 でも、こうなったらもう後戻り出来ない。先生は行く気満々だし、シロコとノノミも誘って6人で行こうとか言っている。心の中のセリカに内心謝罪しながら、俺達は教室を出た。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 柴関ラーメンはアビドス自治区に残る数少ない飲食店だ。同時に名物でもある。その味は正真正銘の一級品で、わざわざアビドスの外から食べに来る生徒も時々いる程だ。俺はこの店をとても気に入っている。アビドスに来てからは何度も利用していて、今は常連と名乗ってもいいだろう。ちなみに俺のお気に入りは特性味噌ラーメンだ。

 

 そしてこの店が人気の理由は味だけでは無い。店長の人柄もよく、店内も綺麗。そして極めつけは、

 

「店員が……可愛いよな……」

「そうですね☆」

 

 柴関ラーメンの店内。美味しそうなラーメンの匂いが漂うその空間に、俺達は来ていた。いや、来てしまった。対面にいるのは驚いた表情を浮かべているセリカ。それに申し訳なさを感じるが、怒られたくないから褒めて誤魔化す。

 

「み、みんな……どうしてここを…………!?」

「うへぇ~やっぱりいた~」

「どうも」

「すまん……セリカ」

 

 放心状態のセリカに謝る。後輩の秘密を守れなかった事に罪悪感を感じつつ、改めて彼女のユニフォーム姿を見た。

 

 うむ、いつ見ても可愛い。黒を基調としたシャツに青のリボン。シンプルなデザインだがそれが逆にセリカの可憐さを引き立てている。店長はホントに良いセンスをしていると思う。厨房で麺をきっている店長に小さくガッツポーズを送ると、心なしかドヤ顔が帰ってきた気がした。

 

「せっ、先生まで……やっぱストーカー……!?」

「うへ、先生は悪くないよー。セリカちゃんのバイト先といえばやっぱりここでじゃん? ……」

 

 先生の姿を確認し少し青ざめるセリカに、ホシノ先輩が誤解を解く。あっ俺の名前出さないで……

 

「ホシノ先輩とスグル先輩かっ…………!! ううっ…………!」

「いやホントごめん」

 

 怒られると思っていたのに普通に嫌そうなセリカを見ていて、また申し訳なくなってくる。

 

 そんなやり取りを続けていると、セリカは店長から俺達に注文を取るように言われた。

 

 セリカの先導で席へ向かうが、彼女の背中は憂鬱そうだ。

 先生と俺以外が座ったところで、ノノミとシロコが声を上げた。

 

「はい、先生はこちらへ! 私の隣、空いてます!」

「ん、私の隣の席も空いてる」

 

 おい、なんだその感じ、そんな事言われたことないんだが? 

 正直めちゃくちゃ羨ましい。やはり俺には無い大人の男性の魅力があるのか、それともこの人が特殊なのか、何はともあれそこ変われ先生。

 

「スグル君は、おじさんの隣に来る~?」

「ホ、ホシノ先輩……」

 

 嫉妬心を抑えきれていなかった俺を気にしてか、ホシノ先輩が手招きしてくれた。やっぱり先輩しか勝たん。

 スキップで向こう側に回り込んで先輩の隣に座ろうとするが、なんぜだろう、めちゃくちゃ狭い。俺がホシノ先輩の横に座って、シロコ側のスペースが小さくなったことにより、先生はノノミ側に座ったようだが、あっちはあっちで窮屈そうだ。

 

「先生、窮屈ですか? それなら、私の膝の上にでもどうぞ?」

 

 は! その手があったか! 

 

「では、先輩は俺の膝へ」

「うへーいいの~?」

「ちょっと! 何してるのよ人の店で!」

 

 チッ、流石に駄目か……。どさくさに紛れてホシノ先輩を膝に乗せるという悲願を叶えようと思ったのだが、セリカに止められてしまった。

 

「あはは、冗談ですよ、セリカちゃん☆」

「もうひとりが冗談じゃなさそうだったんだけど……ていうか! 他にも空いてる席たくさんあるじゃん! みんなちゃんと座って!」

「あはは……はあい」「しょうがない」

 

 このままホシノ先輩の横にいたい衝動を押え、大人しく空いている席へ移動した。

 

 さて、何を頼もうか。皆がセリカにあれやこれやと言っている間に何を頼むか考える。ここのメニューはだいたい暗記しているから、メニュー表を見る必要はない。昨日特製味噌ラーメンは食べたばかりなので、たまには他のものを頼むのもいいかもしれない。

 

「私は塩で」

「あ、じゃあ俺も塩で……」

 

 シロコが塩ラーメンを頼んだから、俺もそれを食べることにした。実は結構空腹だったから、大盛りにしよう。

 

「大盛りを」

「お、スグル君流石だね~」

 

 そりゃまぁ育ち盛りなもんで。俺的には身長をこのまま終わらせるつもりは無い。目指せ夢の180センチ代、正義実現委員会の副委員長を抜かすのだ! いや、まずは目先の先生だ。俺より少し身長の高い先生は目測でだいたい176といったところだろう。残り2センチ、抜かす日も近いな。

 

「…………ところで、みんなお金は大丈夫なの? もしかして、またノノミ先輩に奢ってもらうつもり?」

「あ、そ、そういう訳では……」

「私はそれでも大丈夫ですよ☆このカードなら限度までまだ余裕ありますし」

 

 余計なことを考えていたら、セリカに痛い所をつかれてしまった。俺の所持金は現在数百円。ギリギリラーメン代を払えないことも無いが、出来れば使いたくない。すっかり先生が奢ってくれると思っていたが、そういえば一言も奢るなんて言ってなかった。

 

 かといってまたノノミに払ってもらうのもどうだろうか。同級生の女子にご飯を奢ってもらってばかりの男子。少しダサいどころかかなりダサいのでは……。

 

「いやいや、またご馳走になるわけにはいかないよー。きっと先生が払ってくれるはず。だよね? 先生」

「え? 初耳だけど……」

「あ、やっぱりそういうことでしたか、良かったです! ちょうど金欠で、ご馳走になります! 先生!」

「初耳だよ!?」

「あはは、今聞いたからいいでしょ!」

 

 先生が逃げ出しそうになるのを、ホシノ先輩と二人で抑える。流石先輩、自然に先生が払ってくれるように誘導した。おかげでノノミに奢ってもらわずに済みそうだ。

 

 逃げようとしても、そこまで嫌そうでもない先生を見て安心しつつ、運ばれてきたラーメンを食べる。

 

「やっぱり、人のお金で食べるラーメンがいちばん美味しいな」

「スグル先輩……思っても口に出さないでください……」

 

 

 

 

 

 

 To be continued……




スグルの先生への信用point
±0

マイナス・・・セリカをストーカーした事
プラス・・・ラーメンを奢ってくれた事


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