どうも、兄と姉を別世界に転移させた弟です 作:謎の人でなしZ
大事だから、助けたかった
こんな自分でも、ようやく手に入れた安らぎを守りたかった
あの人達の恩に、報いたかった
………だから、世界の命運よりも、あの人達の幸せを願った。この世界を、終わらせた
―――これは、僕の選択。僕の罪咎
僕が地獄に落ちるまでの、物語だ
冬木市
???SIDE
「………この感じは……柳洞寺?」
いつも通り周囲の警戒をしていたら、山の方から大きな魔力の波動を感じた。この方角からして、あの場所で何か起こってる?
「一体何が……って、不味いッ!? 奴等が動きだした!」
波動の発生源に向かう反応が二つ。くそっ、最近動きがないと油断した。アイツらが出てきたということは、絶対に碌なことがおきない!
「間に合えッ!!」
美遊SIDE
「イリヤ! 皆!?」
目の前で地面に倒れ伏す私の大事な親友と仲間達
元々、あり得ない話だとは思っていた。クラスカードの回収、その中で異常事態の八枚目のカード
聖杯が取り込んだ英雄王との戦いで、イリヤは自分自身の命を懸けて私を救ってくれた。けど、その戦いの余波は凄まじく、戦闘の痕跡がなくなっている、なんてことは絶対にあり得ない。少なからず、影響はあったはず
でも……でも、まさかこの人達が来るなんて!?
「はんっ! 弱ッちいなぁ、オイ!!」
「あまり遊び過ぎるなベアトリス、最優先人物の確保が先だ」
英雄王のクラスカードを夢幻召喚した金髪の女性――アンジェリカが私を鎖で縛ったまま見下ろす
「お迎えに上がりました、美遊さま。邪魔者はすべて片づけましたので、帰りましょう」
そう言い放ったアンジェリカの背後には、鎖や槍、剣で四肢を地面に拘束された、大切な人――
「お兄ちゃんッッ!!」
「……ァ……ぃ、ぅ………」
衛宮士郎が、そこに居た。でも、全身から血がとめどなく流れ続け、虚ろな目で手を伸ばしていた
私は必死にお兄ちゃんに手を伸ばす―――けど、届かない
「……ッ、美……遊……」
イリヤがルビーを杖にしながら立ち上がるも、赤毛の少女――ベアトリスがイリヤに武器を向ける
「邪魔するってんならさぁ………覚悟できてんだよな?」
「よせ、そこまでだ。それより、
アンジェリカの言葉に舌打ちしながらも武器を下げるベアトリス。それと同時に、天が割れ、目をつむりたくなる程の光が降り注いだ
あぁ、この光はダメだ。あの場所に、戻ってしまう
本能的にそれを悟ってしまった私は、ただ、願望を零すことしかできなかった
「イリヤ…お兄ちゃん……」
絶対に叶わないと思いながらも、願ってしまった
「助けて……」
「人の姉に何してる。離せよ、人形風情が」
懐かしい、でも二度と聞くことができないはずの声が、私の耳を揺らした
瞬間、目の前で何かが高速で通り過ぎると同時に、私を拘束していた鎖が解け、温かいものに包みこまれる感覚に陥る。それが声の主に抱きかかえられていると気づくのに、そこまで時間はかからなかった
「………ぇ………?」
状況がうまく呑み込めず、横を見ると、少し離れた位置にアンジェリカとベアトリスがいた。けど、二人共装備の端が傷ついていた
「……いい加減にしろよ、エインズワース。何度、この人達の幸せを踏みにじれば気がすむ?」
また、声が聞こえた。私が知っているものよりも少し低くなっている、その声
「確かにお前達は正義の味方だよ。世界を救おうとしてる。きっと正しいんだろう」
あぁ、間違いない。そう確信するとともに、身体の奥から抑えきれないほどの感情が溢れだした
その人物はイリヤと士郎達が倒れている場所に降り立ち、二人を睨み上げる
「――でも、それでも僕は、お前達を否定する。どんな大儀があろうと、犠牲が必要な世界なんて間違ってる。僕が絶対に認めない」
記憶にある思い出よりも大きく成長した姿。あの頃と変わらない純白の髪
「……ならば、世界が滅びてもいいというのか? やはり、貴様は狂っている」
「狂っていて結構。そもそも、お前らのご主人様に比べたらマシだって思ってるけど?」
「!? テメェ! ジュリアン様を侮辱しやがったな!? ブッ殺してやるッ!!!」
「少なくとも、今のままだとやっぱり兄さん達は幸せになれないみたいだ」
敵を馬鹿にするその姿も、昔と全然変わっていない
「まぁ、だからこそ……聖杯にまで願って兄さんと姉さんを違う世界に転移させたんだけど……」
『どうか、お兄ちゃんとお姉ちゃんがもう苦しまなくていい世界になりますように』
「ッッ」
その言葉が過去のものと重なる
全く一体何があったんだ、そう言いながら私を見て苦笑している
――あぁ、その瞳も変わってない……お兄ちゃんにそっくり……
兄と似た優しい夕日のような紅眼を見て、視界が段々と滲んで見えなくなる
「あくまでも、私達の前に立ちはだかるというのか?」
「あぁ、何度でも立つさ。だから、ここにいる」
私を地面に下ろし、不敵な笑みを浮かべて二人を指さす
「お前達のご主人様に伝えとけ。僕がいる限り、好きなようにはさせない。今回は、僕の勝ちだ」
よく見ると、イリヤや士郎、クロエ達の周囲に薄緑色の結界が張られていた
アンジェリカは無言で此方を睨み歯噛みしている。ベアトリスに至っては血管が浮き出て今にも発狂寸前、襲いかかりそうである
だが、周囲の光が強くなり、今度こそ何も見えなくなる
私が最後に見たのは、白髪の少年の顔だった
そこが、限界だった
――あぁ、本当に……本当に……
流れる涙そのままに、今の状況には場違いかもしれないけど
「
「衛宮……鈴ッッ!!」
――本当に、大きくなったね
弟の成長した姿に、私は笑みを零した
そして、光が消えた時、その場には誰も存在していなかった
主人公の名前 衛宮 鈴(えみや れい)
誰か、文才をください………本当に、切実に………