「成程。特級相当を難なくか……」
「えぇ、然も彼女はあの
「そうか。ようやく見つけたか。ならば早急に本家に戻る様に……」
「いいえ。彼女は………
呪術高専へ編入させます」
────
「で、なんなのよ此の部屋‼︎札がいっぱい貼ってあるし! 早く出しなさいよ!」
「おかか! 明太子!」
「だからなんて!?」
私は今、とある部屋に閉じ込められている。そこは札が壁一面に貼られており、なんかもう、まさに呪われた部屋だった。
最悪だ。
これから新曲のイラストも描かなきゃいけないのに。いや、着いて来ると言ったのは私だが。だからと言ってこんな所に閉じ込めなくても良いじゃないか。
横には狗巻君が座っており、此方をじっと見て来る。
はぁ。どうしよう。このまま「やっぱ見られたから口封じに殺すね」と言われたら。もう私は抵抗するしかない。恐らく此の座っている椅子を持ち上げて奇声を上げながら暴れ回るだろう。そうなれば私は此の呪術高専で突然奇声を出して暴れた挙句無様な死に方をした女子高生として語り継がれていくのだろうか。それは嫌だな。
「昆布」
「……何よ」
狗巻君はスマホを取り出し、ある画面を見せてきた。私はそれを見てまたもや心臓が飛び跳ねる。
「な、なんで私の自撮り垢知ってんのよぉ!!」
そこには私の自撮り用アカウントが写っていた。しかもちゃっかりフォローしているし!
うわぁァァァァァ! 消えたい消えたい消えたい消えたい消えたい消えたい消えたい消えたい消えたい消えたい消えたい消えたい消えたい消えたい!
恥ずかしい!
私が羞恥で悶えていると、狗巻君はまた何かを取り出した。
「……何コレ。色紙?」
しゃけ」
「いや、しゃけじゃなくて。もしかしてサイン求めてんの?」
「しゃけ」
「あ、あぁそう」
成程。此の人にとって『しゃけ』というのは謂わば肯定の様なものなのだろう。私は狗巻君から色紙とペンを受け取り、そこに名前を書く。
(と言うか、私はただの一般人なんだけどな)
「はいどーぞ」
私が手渡すと、狗巻君は目をキラキラさせて色紙を見た。
まぁ、悪い気はしない。
然し、それと同時にチクリと胸が痛んだ。
絵の方では認められないのに。顔は、こんなにも簡単に認めてくれる。
そう考える度に、じわじわと心が汚れていくのがわかる。
「高菜?」
「え? ううん。なんでもない。喜んでもらえて何よりだよ」
「ツナマヨ」
私の不安が感じられたのか、心配そうに此方を見つめる。
此の数時間で分かったことがある。
狗巻君は優しいんだ。誰かが不安な時は元気つけてくれる。さっきだって私からあのバケモノ……呪霊を遠ざけてくれようとした。凄く、泣きそうなほど優しい人物。
何処となく奏と似ている。そう思った。
然しそれだけではない。
私はある違和感を持った。
——前にもこんな事があった?
「あ、そうだ。狗巻君。スマホ貸してくれない?」
「? しゃけ」
私は狗巻君からスマホを借りて、狗巻君とツーショットを撮る。普通のカメラだったが、うん。よく撮れてるんじゃない?まぁ、場所が場所だから少し不気味だけど。
「はい、コレ。大切に保存しときなさいよ」
「! しゃけ!」
再度狗巻君は目を輝かせてコクコク頷いた。そこまで嬉しいのか。
「やぁ、絵名ちゃん。待たせたね」
「あ、五条さん。」
ようやく五条さんがやってきた。そして私と狗巻君を交互に見て何やらニヤニヤし出して「何かあった?」と言ってきた。
いや、何もないけど。
……少し五条さんの右頬が赤い様な気がするが、気の所為だろうか。髪も少しボロボロだし。
「てゆーか遅いのよ! 何時間待たせるつもり?」
「はは。ごめんごめん。ちょっと手続きに手こずっちゃって」
「手続き?」
「高菜?」
私と狗巻君は五条さんの言葉に同時に首を傾げた。手続き? 何を手続きするものがあるのだろうか。いや、若しかしたら私には関係無い事なのかもしれない。こうやってすぐ自分に直結しようとするのは、とても好ましくない。まぁ、話ぶりからして、そんな深刻なことでも無いだろう。
「東雲絵名。君を呪術高専に歓迎しよう!」
前言撤回。私の人生史上最大の深刻問題が今ここにあった。