東雲の空に鳴り響く聲は   作:亥露

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譲りたくない想い。


※GL表現があります。


どちらにとってもポッとで

 青い海。青い空。白い砂浜。静かな波音。そのどれもが私の心を豊かに……。

 

 

 

 「めんそーれぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 する訳が無かった。

 沖縄県の海水浴場。私達は其処にきていた。五条先生が私の退院祝いをしようと言ってくれたのが発端だった。みんなは五条先生の実費ならと乗っていたが、今思うとイベントに乗っかって遊びたいだけだな、この人達。

 まぁそんな事もあり、私の暴走戦に関わった人たちで今沖縄に来ているのだった。

 私はパラソルの中でみんなを眺める。主役が何をやってんだって話だが、如何も私は泳ぎが苦手なのである。確かに海に入らなくてもビーチバレーやらスイカ割りやらがあるが、大体呪術師の遊びなんて碌でもないものが大半である。ビーチバレーも、本物のバレーボールは多分絶対破裂するからヤシの実でやろうとか、スイカ割りは誰か二人くらいが埋まって、その間にスイカを置き、どれか当てようとか、そんなイカれた提案しか出てこなかった。私はなんとか提案をし、バレーボールは私の呪力を流して頑丈に、スイカ割りは私が術式で操作をして、その呪力を辿り割るという結論に至った。意外にみんなそれに乗り気だった様で、今はみんなビーチバレーをしている。

 「疲れた……熱い……。」

 項垂れた体制で此方へきたのは、上下が繋がった可愛らしい水着を着ている奏だった。

 五条先生が、「どうせならニーゴのみんなも誘いなよ。」と言ってくれたので、奏、まふゆ、瑞希もこの場には居る。それより私が気になったのは、五条先生がに『ニーゴ』の存在がバレていた事だ。なんなら此処に来るまでニーゴの曲をバスで流していた。当然私達ニーゴは(まふゆ以外)羞恥で死にそうになったのは言うまでもない。然し矢張り曲調的にドライブには向かないのでもう後半らへんはお通夜状態になり、愛梨には悪いが、私は MOREMORE JUMPの曲を流してどうにかその場を潜り抜けた。

 「あはは、お疲れ奏。」

 「絵名はビーチバレーしないの?」

 「うん、私は良いかな?体まだ万全じゃないし。」

 嘘である。

 本当は体はもう何処も痛くないし、傷跡も一切残ってはいない。然し彼処の空間に入るのは如何しても気が引けた。だって絶対奏みたいになるからである。あと日焼けしたくないし。

 「………絵を描いてるの?」

 「そう、みんなを見てたら描きたくなっちゃって。」

 「そっか。」

 奏はジッと私のスケッチブックを見る。奏は私が描いているところをジッと見る癖があるのだ。別に私は気にしないので放っておいているのだが、偶に奏はこれを見て楽しいのか?と疑問に思う時がある。

 「あ、絵名あぶねーぞ。」

 「え?」

 真希の気だるげな声に顔を上げると、バレーボールがすぐ目の前に迫り、見事に私の顔面に当たった。然も真希が投げたものらしく、私は吹っ飛び砂浜に後ろからダイブする形になってしまった。

 「ちょっと!こっちに投げないでよ!」

 「わざとじゃねぇって。それに言ったろ。危ねぇって。」

 「もっと声を張って言ってくんない!?伝わんないから!全然危険性伝わらないから!」

 私はバレーボールを渡しながら言う。鼻血は出てはいなかったが鼻は少々赤くなっていた。

 「絵名もしよーぜ。」

 パンダ君が真希の後ろからひょっこり顔を出しながら言う。

 「いや、私は良いわよ。」

 「やめとけパンダ。絵名はバレーなんて出来ねぇんだから可哀想だろ。」

 「は?」

 真希はニヤリと笑って後ろを向く。いやバレーが出来ないとは一言も言ってないけど。ただ面倒臭いだけでだけど。

 「しょーがねーもんなぁ。たがだが数ヶ月で運動神経がよくなる訳ねぇもんなぁ。ごめんなー。酷な事言って。」

 「………馬鹿にしやがって。」

 「は?」

 「良いじゃないの!やってやろうじゃん!後で泣いてごめんなさいって言ったって許してやらないから!狗巻君!こうたいして!」

 私がそう叫ぶと、真希はニヤリと笑い「そうこなくっちゃな。」と言った。確信犯だとしても売られた喧嘩は買うのが私の主義だ。絶対に泣かせてやる。

 

 

 

 

 

 

 ————

 「あーあ。行っちゃった。」

 私は退屈そうに言う。さっきはまふゆ達に無理矢理手を引かれてバレーをしていたが、やっとこさ休憩出来ている。

 そして絵名と喋っているというのに絵名は真希さんの挑発にテンプレの如く乗っかり今はバレーをしている。私は絵名が楽しそうにしているのは凄く嬉しいが、寂しい気持ちも否めない。

 まふゆはみんなに混じってバレーをしていて、絵名を虐めていた。然も優等生顔で。その度に絵名は怒鳴っているが、まふゆは心なしか楽しそうにしている。瑞希はというと、伏黒君と一緒に飲み物を買いに行ったらしく此処にはいない。

 「高菜ー。」

 「あ、お疲れ様。」

 絵名と交代した狗巻君は横にどすんと座る。少し疲れているらしく息を切らしていた。

 多分絵名は高専の中では一番仲が良いんだと思う。行きのバスでも隣に座っていたし、距離も近いし。

 今だって狗巻君はずっと絵名の方を見ている。

 それはちょっと……。

 「————妬けちゃうなぁ。」

 「すじこ?」

 「ううん。何も。」

 私は絵名が好きだ。それは友情とかでは無く、恋愛的な意味で。いつから好きになったとかは覚えていない。

 あぐらを打ってたんだと思う。絵名は私には甘いからいつかは振り向いてくれるだろうと。然しその結果がこれだ。絵名は優しいから直ぐ相手は絵名の事を好きになる。それは男女共に。考えれば分かる事なのに。

 だからもう気は抜かない。

 「……絵名って可愛いよね。」

 「ブッ!……高菜?」

 狗巻君は突然何を言い出すんだという顔でお茶を吹きながら此方を見る。

 「あれ?肯定しないの?」

 「………しゃけ。」

 「それどっち?肯定しない方?それとも可愛い方かな?」

 「こんぶ。」

 ジトーっとした目で見られる。少しカマをかけただけなのだが、思ったより分かりやすい人だ。表情こそは動かないが、行動の一つ一つが非常に分かりやすい。

 この人も絵名に惚れたんだろうな。そして絵名は此の人の事を恋愛対象としては見ていないが、多分絵名の心の一番近くにいる。

 それが如何しても腹立たしかった。

 「特に私が絵を褒めたらすっごい喜んでくれるんだよ。それがすっごい可愛くってね。」

 「………明太子。」

 「あれ?絵名が絵を描いてる事知らなかった?すっごく上手いんだよ。此処にスケッチブックあるけど見る?」

 「おかか。」

 そう言ってそっぽを向く。

 勝手に見る事はしない………か。思ったより絵名を大切にしているんだなぁ。まぁ見せてと言われても私も見せる気はさらさら無かったが。

 「私ね。絵名の事すっごく大切なの。だから泣かせたら絶対許さない。」

 私は狗巻君の目を見て正直に言った。私のこの気持ちはよくラブコメである様なキラキラしたものでは無く、ドロドロしてて気色悪い黒い物なのだ。それを私は自覚している。

 いつも思うのだ。私では絵名を幸せには出来ないのではないかと。私は絵名一人では無くいろんな人を救わないといけない。まふゆだって救えてはいない。だけど絵名には私が一番でいてほしい。それはあまりに身勝手ではないか。

 だが絵名が居なくなってから何も手につかなかった。四六時中絵名の事をが気掛かりで。情けない話。寂しかったのだ。いや、寂しいよりもっと酷い。

 だからこそもう手放さない。もう一度繋げた手を二度と離さない。依存と言われそうだがもはやそれでも構わない。

 絵名と一緒に居られるのだったらどんな感情でも良い。

 私と狗巻君の間に微妙な空気が流れる。お互い見つめあってはいるがその視線はまるで氷の様に冷ややかだ。

 

 「………あのぉ、仲良くしない?」

 頭上から突如声がして振り返ってみると、其処には飲み物を買った後の瑞希と伏黒君が此方を困った表情で見つめていた。

 「喧嘩はしてないよ。」

 「あれが喧嘩じゃなければなんなのさ。」

 「うーん。話し合い?」

 「おかか。」

 「ほら狗巻君も否定してんじゃん!」

 瑞希は私に詰め寄るが私はなんとかそれを交わす。人が聞いて気分のいい話ではないからね。

 これは所謂宣戦布告というやつだ。若し絵名を泣かす事をしたのなら私はきっとセカイに絵名を閉じ込めてしまうだろう。それは私も嫌だ。出来れば絵名の嫌がる事をしたくはない。

 だからどうか、絵名を私たちの分まで守って。

 

 

 

 

 ————

 「………あの人達、なんの話してんだ?」

 「わかってないねぇ。恵君。あの二人の会話なんて絵名の話に決まってるじゃないか。」

 「決まってる?如何してだ。」

 「二人にとって絵名はね〜。うん。そういう事だよ。」

 「………そういう事か!」

 数分に恋バナが好きな瑞希と普通にそういう話に興味がある伏黒が遠目でそういう会話をしていたのはお互いしか知らなかったのである。

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