……ウマ娘とかいうのに転生した件について。   作:稗田之蛙

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クリスマス・アフターデイ(前編)【読者参加型】

 クリスマスケーキを母ちゃんに食べてもらって、弟と父ちゃんと一緒にクリスマスディナーを楽しみ、サンタさんからプレゼントを受け貰う為の寝支度。

「おねえちゃん。サンタさんくるよね?」

 今日の朝にサンタからのプレゼントが来なかった事から不安そうにしている愛くるしい弟へ、「きっと私達がホテルに泊まってたから受取人不在でプレゼント届かなかったんだよ」と慰める。

「そっか。だったらきょうのよるくるのかな?」

「良い子にしてたらサンタさんがきっときてくれるよ」

 そう言うと弟は安心したように頷いて、キラキラとした笑顔でお風呂に向かっていった。

 ……良い子にしてたらサンタさんが来るなんてのは嘘だが、そう嘘を吐く事で弟の不安を取り除いてやるのも姉の務めである。

 

 オレは『サンタクロース』とやらの正体を知ってるんだぜ。5歳の時に寝たフリして、枕元にプレゼント置いていったヤツに襲い掛かったら父ちゃんだった。プレゼント全部奪おうとした結果、オレの大事な夢を根こそぎ奪われた。

 

 まぁそんな思い出話はともかく。

 今日は、12月25日。聖なる夜にして、クリスマスだ。

「……オレも風呂入る準備しとくか」

 そう呟いてから、自室に着替えを取りに行って。ふと、何気なくクラスメイト達に渡す土産物から一つ手に取った。掌に乗るサイズの小箱だ。中を開けると、太陽の形をあしらった綺麗な髪飾りが姿を現す。

 それを見ながら、脳裏に浮かぶのは"彼女"の姿。

「……」

 しばらく眺めた後、再び箱を閉じた。

 なんとなく、今日中に渡しておきたい気もする。

「とはいうても、午後8時かぁ……」

 10歳児が出歩いたら怒られる時間帯。冬だから外はとっくに真っ暗だ。

 明日にでも渡せばいいという考えはあるが、なんというか、せっかく渡すならクリスマスに渡したい気持ちもある。

 

『だいじょーぶ? 怪我はない?』

 

「…………」

 トラックに轢かれそうになったところを助けてもらって、初めて目にした彼女の姿を思い返して、何故か頬が熱くなった。

 

 二階にある自室の窓からこっそりと飛び降りて、冬の夜風に当たりに行く。

 今はただ単に頭と頬を冷やしたい。

 その一心だった。

「……はぁ」

 まだ火照っているほっぺたに手をあてながらため息を吐く。

 理由は分かっている。

 

 少し散歩をしながら天を見上げれば、そこには満天の星空が広がっていた。

 綺麗な星空を眺めているとなんだか落ち着くし、嫌なことがあっても大概の事はすぐに忘れられる。だからこの季節の夜空は好き。前世でも、ウマ娘に生まれ変わってもそれは変わらない。

「……忘れられたらいいのに」

 そんなことを考えながら夜の空気を吸う。

 寒い。けど火照った体にしみわたって気持ちがいい。

 頬の熱も冷めてきたし、もうちょっとしたら帰ろうかな。

「何を忘れたいの~?」

 空を見ていると、ふいに声をかけられた。

 後ろを振り返ると、そこにはよく知っている女の子がいた。

「セイちゃん……」

 トラックに轢かれそうになったところを助けてくれた彼女──もとい、セイウンスカイ。

 彼女の銀髪は夏空に浮かぶ白雲のような清涼さを感じるとは思うていたが、夜外に立っている彼女の髪も星空雲のように映ってまた違った魅力があった。

「どうしたの? こんなところで。もう遅い時間帯だし、危ないよ……?」

「二人っきりの時は男言葉使うって約束でしょ~」

 オレの行儀のよい言葉遣いに、彼女は笑いながらそう言った。オレも鼻で笑い返す。

「相変わらず、オレが女の子らしいと自信無くすか?」

 先ほどまでの考えを悟られないようにあえて強気で言い返すと、彼女はニコニコと笑いながら答えた。

「そりゃあね、ディオスちゃんだって。最初は私のコト男の子だって勘違いしてたでしょ」

 ……やっぱバレてた。

 彼女と出会った当初、自分は彼女を男だと勘違いしていた。

 自我が芽生え始めた小学生4年生。まだまだおこちゃまとはいえ、それでも異性に対して恋愛感情の一つぐらいは抱いてもいい時期。

 そんな中、自分にとって命の危機を救ってくれたセイウンスカイという存在は初恋だった。もっとも、『男』だと勘違いした上での事だけど。

 

 寒空の下、街灯と月明りくらいしか光源がない暗い夜道を二人で歩きながら話を交わす。

「あの時の事で自伝を一本書けるんじゃないかな。セイウンスカイ、男だと間違われた件について~~……なんて」

 彼女がそう冗談っぽく言うので、オレもそれに合わせて答える。

「いっそ宝塚みたいに男性役でもやってみたらどうだ。似合うかもしれないぞ」

「なにそれ。褒めてるの? けなしてるの?」

 セイウンスカイはすねたように唇を尖らせ、ジト目でこちらを見つめる。

「『男女』と言いたいわけでなく。『見た目が良い』と言いたいのだ」

 おおげさに偉ぶった男言葉に、少し不機嫌そうだった彼女はまんざらでもないというような表情になる。

「そっ。まあそういうことなら、喜んで受け取っておくけど……」

 そう言いながら、指先でくるくると髪を弄っていた。自分より少し短いくらいのセミロングの長さで、女の子らしいといえば女の子らしい印象が……。

「…………夏の頃より伸ばしてる?」

 セイウンスカイの髪を眺めながらそう質問した。

「え、やっと気づいたんだ」

 どうやらオレの推測は間違っていなかったらしい。夏に出会った頃からの印象と比べると、少し女の子っぽい印象を受けた。

「ちょっと伸ばしたくなったんだよね。女の子らしいかな? ……なーんか、セイちゃん自分で聞いてて微妙な気分だなぁ……」

 そう言って苦笑していた。その反応を見る限り、あんまり自信はないようだ。

「なんだ、男にでも惚れたか」

 少し意地悪そうに、そして面白半分に聞いてみる。

「あはは、違う違う。そんな相手まだ居ないって」

 いつかそういう相手を見つけたいとでも言いたげなのはコイバナとして興味はあるが、それを聞く前にセイウンスカイは少しだけ間をあけて、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「……ただ、男の子に見間違われないようにしたいかな、って」

 意外な答えが返ってきた。しかし、考えてみればそれもそうか。彼女も多感な時期の女の子だ。同年代相手に、悪気なしに男扱いされたら普通は傷つくし気にする。

「……すまんかった」

 そう考えると自分が"からかわれてる"だの"いつか逆襲してやる"だの怒っていたのが申し訳なくなり、謝罪する。

 オレに男言葉使ってほしいだのと言っていたのも、そこに一因はあるだろう。

「ううん、だいじょーぶだいじょーぶ。前々からオシャレはしたいな、とは思ってたし。ほら、ウイニングライブって取ったら大勢の前で踊るでしょ?」

 その言葉に頷く。自分も身だしなみに気を遣う理由はそこを目指している事も大きい気がする。キングに身だしなみを指摘される前は服装と体つきがチグハグだったが。

 ウマ娘の多くは容姿端麗であると聞き及ぶが、それにかまけて当人達がただ胡坐を掻いていられないわけだ。

「……まぁ、経緯どうであろうとお前さんを男だと誤解して惚れたのは本当に悪かったと思ってる」

 何にしても女の子相手に無礼が過ぎるとオレは思い、改めてその件を謝る。

 

【挿絵表示】

 

「へ?」

 

 しかしセイウンスカイはオレの言葉を聞いて、猫が真顔になった時のような表情でこちらの顔を見つめてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の無し」

 とんでもない失言に気づいて、そっぽを向いた。頬が風邪ひいた時のように熱い。

 だが時すでに遅し。気まずい空気が漂う。

 それはすぐに破られた。真顔だったセイウンスカイが噴き出すようにして、笑い始める。

「笑うな」

「ごめんごめん」

 ひとしきり笑い終えた後、目尻にたまった涙をぬぐいながら彼女は口を開いた。

「宝塚の"ヅカ役"勧めてきたのもそういう意味?」

 そう聞いてくる彼女に対し、オレは何も答えなかった。だがそれで十分にウィークポイントである事は伝わったらしく、彼女は何が嬉しいのかニコニコと笑っている。

 穴があったら入りたいという慣用句とはこの状態の事をさすのか。よかったな。一つ賢くなったぞオレ。

「あ~ぁ……ディオスちゃんってば本当に素直じゃないよねぇ……」

 セイウンスカイは手のひらでニヤけた口を覆い隠しながら、しみじみとした様子で、呆れた風にそう言ってのける。

 彼女の指摘通り、素直でない自覚はある。女児アニメよろしく「いつもありがとう」とでも可愛らしく言って、彼女に髪飾りを渡そうかと思ってたが、その気も失せた。

「やる」

 顔を向けずに、髪飾りが入った小箱を押し付ける。

「え、なにこれ?」

 戸惑い気味にそれを受け取る彼女を尻目に、ぶっきらぼうに続ける。

「髪飾り。気に入らんなら捨てていい。こういうセンスは門外漢だ」

 つい言葉がきつくなってしまう。それがかえって滑稽さを引き立てていると、理解していてもやめられない。

 本当は面と向かって、友人として日頃の感謝を伝えたかったけど、今更恥ずかしいから背を向けてしまう。

 セイウンスカイの方から返事はないが、きっと大いに呆れてるのだろう。そんな自分がつくづく嫌になる。

 箱を開けて、品定めしているのだろう。しばし沈黙で時間が経った。

「あのさ」

 彼女の声が背中越しから聞こえてきた。

 その声はいつになく真剣で、不覚にも心臓が縮み上がるように締め付けられた。普段の飄々とした態度とのギャップもあるせいか。

「なんだ」

 振り返りもせずそう答える。彼女がどんな表情でそれを言っているのか見れない分、表情だけはニヨニヨとしているセイちゃんの表情がありありと想像出来て乾いた笑いが出そうになった。

 

「さっきディオスちゃんが言ってた忘れたい事って、『私を男だと勘違いして惚れてた事』について?」

 

 その問いに、オレはどう答えたものか少し迷った。

 セイちゃんとは友人として付き合いがあるし、イタズラをしてない女子供を傷つける事はしたくないのが前世からのモットーだ。

 肯定しても言い方次第でまた傷つけるだろうし、否定しても嘘をつく事になる。誠実ではない。

 

 神様。アンタならどうする。

 こういう日くらい、『天啓』をくれたっていいんじゃないか。なぁ?




アンケート締め切り⇒
5月4日の午後11時くらい

ディオスはセイウンスカイに対して

  • 彼女に抱いた初恋が忘れたい事だと肯定する
  • 彼女を傷つけない為に事実を否定する。
  • どちらとも取れない曖昧な答え方をする。
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