「お隣、いいかしら?」
「……まぁ、前みたいに露骨に距離取ったりしないのは殊勝な事だと思うけど」
「冬休み明けで学校が終わったからって、一人でファーストフード店に直行する事ないんじゃない?」
「ほら、拭いてあげるからこっち向いて」
「泣くくらいなら、誰かに相談しなさい。前から言ってるでしょう。そうやって抱え込んで、限界に達したら内心をひた隠して一人で塞ぎ込むのはあなたの一番悪いクセよ」
「…………そう言われても」
「なによ、その顔」
「……キングちゃんにも、絶交されたかと」
「……まぁ、大方予想はつくわ。あの試合の件、まだ引きずってるんでしょう?」
「……うん」
「そんな叱られた大型犬のような上目遣いで見なくたっていいわよ」
「……キングちゃんが他人に手をあげたの、初めて見た」
「そうでしょうね。初めてよ。あんなの」
「……幼稚園の頃、男の子にスカートめくりみたいにラップタオルまくられても手を出さなかったのにね。それ以上に、私は酷い事した」
「……変な事よく覚えてるわね」
「うん」
「もう一度言うわよ。貴女の言いたい事は、私はよく分かっているつもり」
「……うん」
「試合直後のセイウンスカイさんへの物言いは、とても看過する事が出来ないものだった。けれどね、私は1から10までディオスさんの自己中心だ。ワガママだ。とは思ってない」
「……いや、盤外戦術や大逃げのフリするのも、全部引っくるめてウマ娘のレースの戦略。ルール違反じゃないから、セイちゃんは間違ってないよ」
「そう。確かにルール違反ではないわ。でも、それだけじゃないのはあなた自身が一番よくわかっているはずよ?」
「でも、それは私のワガママで……」
「今は何を言っても軽蔑も失望もしないわ。だから、あなたの本音を言ってみなさい」
「……………………セイちゃんが、自分の勝率をあげる為にあぁいう立ち回りを取ったっていうのも、キングちゃんがそれを見抜いて、対抗してみせたってのも。全部理解してる」
「えぇ、そうね。私は看破出来た」
「それも、キングちゃんがセイちゃんを、ちゃんとライバルとして見てたから。親友として見てたから。性格も、戦術も、ちゃんと分かってあげられた」
「そうね」
「私は、それに自ら気づけるまでちゃんと彼女を見てあげられてなかった。それは私の落ち度で、看破出来なくとも今より実力や知恵があれば。六年生の子達みたいに対抗出来たかもしれない」
「それもあるわね」
「ただ、それらを全部理解してても、私は……」
「今更、私相手に遠慮する必要はないわ」
「ずっとずっと、それこそ産まれる前から。キングちゃんと公の場で戦う事を楽しみにしてて。そこに、セイちゃんも加わって」
「それ以外の選手も手強いわ」
「うん、正式なメイクデビューじゃなくても。ジュニア大会なのにみんなすごかった」
「きっと、あの中の何人かは中央トレセン学園に入学してくるでしょうね」
「……すごく、いい試合だった。セイちゃんも、キングちゃんも居た。二人とも、前からずっと、戦いたかった相手。だから、私は、ちゃんと、全力で戦いたかった……」
「……自分だけが蚊帳の外に追いやられたように感じた?」
「……うん…………」
「試合直後にあぁいう言い方ではなく、その事をちゃんと言えればよかったわね」
「うん……」
「それはあなたの過失で、反省すべき点よ。機会があったら謝罪をしておく事ね」
「…………セイちゃんを傷つけたのは二度目で……キングちゃんを含めれば三度目で…………ボブヘアちゃんも含めれば四回……ホント、最低すぎる……」
「あなた、自分を恋愛小説の主人公か、あるいは完璧超人か何かと誤解してる?」
「……そんなわけない。そうだったらもっと皆を楽しませられるだろうけど」
「そうよね。あなたは違うわ」
「……」
「あなたは、まだ11歳の子供。お友達と腹の底から大喧嘩して、どうしようもなく落ち込んで。ティーンの子供らしいじゃない」
「……前世含めればたぶん年上だよ。皆より」
「あら、そう。じゃあお姉さん扱いした方がいい? それともお兄さん?」
「……わかんない」
「まぁ、それは置いておきましょう。……ディオスさん。あなたは、漫画のヒーローではないのだから」
「……うん」
「もうこれ以上自分を責めない事。いい?」
「……」
……出来れば、そうでありたかった。
神様に誇れて、楽しめさせられて。皆を助けられるような主人公で、ヒーローでありたかった。
みじめな登場人物なんて、描写されるだけで、みんなにとって不愉快だ。
こんな卑屈な内心さえ、正直神様にもキングちゃんにも明かしたくない。
少し日数が経って。一人で町に出かけた。
今度は塞ぎ込んでるわけじゃなくて、単純に自分一人でも衣服を選べるようにならないといけないと思い立ったからだ。
さすがにいつまでもキングちゃんにおんぶに抱っことはいかないだろうし。
「ディオスさん? ディオスさんだよね!」
……久々に聞いた気がする。我が前世の親戚。マルゼンスキーの血を継ぐ同胞の声。
私は笑顔で彼女に――ライスシャワーの方へ振り返った。
誰ぇ……?
『ライスシャワー
森ガール甘やかし系お姉ちゃん28 / 37%
雑穀ソウルインストール38 / 51%
アニメ・アプリ準拠9 / 12%
作者は意見を求め その意見は読者が支払った
そのツケを払う方法は一つしか無い ここで初めてアンケートを採った日から その採決が反映する日まで進み続けるんだ
休載しても 再開した後も
これは、お前が始めた物語だろ。
【挿絵表示】
ライスシャワーお姉ちゃん
-
既読済み
-
未読