「思った」47 / 94%
「思ってない」3 / 6
⇒「思った」
「思った。そういう時間があればボブヘアちゃんや猫目ちゃんやキングちゃんの三人で仲良く出来るかと思って」
自分さえ居なくなればいいと考えたかどうかについて。素直に答えるべきだと思い、そう言葉にした。
ため息か叱りの言葉が聞こえてくるかと、キングちゃんに背を向けたまま身構えていたが、数秒の沈黙を経ても何もなかったので、また他の人のように失望させたのかと心配になって、慌てて振り返り謝ろうとする。
「ごめ――」
謝ろうと思った。しかし、それは叶わなかった。
――ぶに。
振り返ろうとしたら、肩越しに"置きエイム"されていたキングちゃんの人差し指で頬をつっつかれた。
「キングちゃん?」
彼女らしからぬイタズラに、虚をつかれる。キングちゃんはそんな私の様子を見て、満足そうに指を離した。
「そんなことだろうと思ったわ」
キングちゃんはそう言って、私に対して呆れた目を向ける。けれどそれはどこか優しかった。
猫目ちゃんとのやり取りを思い返し罪悪感に身を強ばらせていると、横に並ぶように歩を進めてきた。
「堂々巡りよね。落ち込んでる時期って」
まるでキングちゃんにもそんな時期があったように語る。……彼女の場合は、周囲が自分を見てくれてないと思い込んでいた幼稚園時代の事を言っているのだろうか?
「経験論からの助言だけれど、落ち込んでいるのだったら。他人に余すことなく相談した方がいいわ。貴女の悩み事なら前世に関することだって聞いてあげる。私に相談し辛い事なら、貴女のお母様や弟さんならきっと貴女の力になってくれる。それ以外の人だって――」
キングちゃんはそこで言葉を区切る。
「そして、その中の誰か一人が欠けてもいいなんて到底考えつかないでしょう? 他人を気遣うのは殊勝だけど。そんな配慮、いちいち考えるだけ疲れるわよ」
諭すような眼差しを向けるキングちゃんは、話を続ける。
「貴女が気に掛けている後輩は、このキングと"もう一人の信頼出来る後輩"が、折り合いのつく形で必ず支えてみせる。今の貴女は、貴女自身に関わる身の回りの事を第一に考えていればいいの」
――全くの正論だ。ボブヘアちゃんの心の傷のケアも、私が下手に出しゃばるより彼女と猫目ちゃん達に任せるのが良いだろう。だけどその意見には、思うところがないでもなかった。
反論口上を考えていると、キングちゃんは少しジトっと半目で告げた。
「前々から思っていたのだけれど、貴女はネガティブな事や難しい事を考えずに"お姉さんぶってる"のがお似合いなのではないかしら」
素っ頓狂な提案に、反論口上を潰される。……確かに、幼稚園時代を中心にそんな風に振る舞っていた記憶はあるが。
「いや、でも、こんな私が……」
四年生の秋頃からの、自身の不甲斐なさに指をまごつかせると、キングちゃんはそのまごつきに両手を重ねてきた。
反射的に振り払おうとしてしまうが、そうさせないほどぎゅっと私の手は握られていた。彼女は夕日のように煌めく赤茶色の瞳で、私を真っ直ぐ捉えてくる。
「もう一度言うけど、一人で塞ぎ込むのはあなたの一番悪いクセ。ネガティブな事で思い悩み続けるディオスさんは、ディオスさんらしくないわ」
キングちゃんの手のひらから、じんわりと体温が伝わってくる。その熱は血液を通して心臓へと伝わり、鼓動を速めていく。
……心臓の拍動音を意識し始めると、なんだか、えっと……その……一年前に見た、すごくカッコよかったキングちゃんを思い返して――真面目な話をしてくれてるのに、顔が、熱い。
キングちゃんは私のそんな顔を、「大変な悩み事がある」とでも受け取ったのか。大真面目な顔で、私に言った。
「心に伏せている事があるなら、いついかなる時もこの一流のキングを頼ってくれて構わないわ。このキングの度量の大きさは、貴女も分かっているでしょう?」
今すぐにでも高笑いしそうなキングちゃんの顔を見つめながら、なんとか正気に戻る。
「――いや、えっと」
この後も散々思い悩むくらいなら、先と同様に素直に言ってみるかと思い至った。
「キングちゃんを、他の人みたいに大きく傷つけた時に、立ち直れないくらい負担になってしまわないか、心配で」
「キングを過小評価しすぎよ」
即答された。ムッとした顔で。
「だって……前に私が勝手に疎遠になろうとした時も含めて、キングちゃんは、その……寛大というか、ジュニア大会のアレも、なんで許してくれてるのか理由がわからなくて……」
私が躊躇うようにそう答えると、キングちゃんは――盛大にため息を吐いた。
しばらくして、それから片頬をムニッと引っ張られた。
「……ねぇ、なんかのバラエティ番組で流行ってるのコレ?」
「なにが?」
首を傾げられた。猫目ちゃんといいキングちゃんといい。揃いも揃って頬を柔くつねってくるのは何故だ。
キングちゃんは私の頬をムニムニとひとしきり軽く揉んで満足がいった御様子で、手を離した。
「そうね、ディオスさんからしたら。確かに不思議なのかもしれないわね」
そう言って、彼女は帰り路の方に向き直りゆっくりとした速度で歩き始める。
「じゃあ、逆に聞くけれど。私ではなくディオスさんがやられた側だと仮定して」
キングちゃんはどこか物憂げな流し目でこちらを見つつ、言葉を紡ぐ。
「それで貴女は私を見捨てたりしてる?」
考えるまでもなかった。
「しない」
私は当然のように断言した。
「そういう事よ」
キングちゃんは、落ち着いた表情を装いながら、そっぽを向いた。
……少しこそばゆいと思いながら……しばらく彼女の指摘通りネガティブにならないように頑張ろうと思います。神様。
「えぇ、そんな卑屈な事思ってないよ~――」
【挿絵表示】
キングすら怒らせかけるかと思って絵用意してたら不発したから後書きで供養。
これからやって欲しい小説の方向性(感想アンケート。世界観に影響なし)4番補足「イケメンショタムーブかますウマ娘達にメス心がドキドキして「そんな趣味は私(オレ)にはない!」と繰り返すバカノリのディオスちゃん」
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