うみどり休暇中に続くインフラ整備は、楽しいエネルギーによって増えた妖精さん達の尽力によって、想定よりも早く進んでいくことになる。
真っ先に手を入れたのは、前々から言われていた集落の電力。島での戦いでは完全に落とされていたそれは、地下施設側で管理されていたであろうという憶測は大正解。地下施設の最下層、最後に阿手が潜んでいた隠し部屋のさらに奥である。
戦いの時には即座に戦闘になったため、砲撃によって設備が破壊されてしまっている。しかも、深雪の消し飛ばす砲撃を受けているため、割と致命傷を受けていた。いたのだが──
「妖精さんの力の恐ろしさはココですよね。資材さえあれば、しっかり修復してくれます」
粉々になった部屋の瓦礫やら何やらを掻き集めて、それこそ『工廠』の力のように練り上げ、そして必要なパーツを作り上げて行ってしまう。
調査隊も調査には来ているが、修復までは出来ない。これが電力を管理している機材であるとわかっていても触ることは出来ず、また本当にそうであるかの確証は破壊されているために断定出来なかった。片付けだけはしても、それをどうこうすることも出来ない。
だが、妖精さんならそれが出来てしまう。知識なのか、
これが妖精さんの不思議なところであり、明石の言う通り恐ろしいところでもある。妖精さんには破壊工作による隠し事が出来ない。
「私達もお手伝いしましょう。まだ残っている瓦礫などは加工して、後から使いやすいカタチにしておくのが良さそうです」
「はいはい、ここは妖精さんに一任ってわけね」
「今は時間をかけないことが第一ですからね」
本来ならば頼らず自分達でやっていただろうが、妖精さんが生まれており、かつ、人数も揃い、やる気満々だというのならば、任せることも協力プレイとして問題はない。
言い方は悪いが、使えるモノは使う。
「それに、妖精さんでも出来ないことはあります。大きすぎるモノの移動は、私達の仕事です」
「あー、そうかそうか。そりゃあ身体が小さいんだから、そうもなるよね。主任だって専用の重機みたいなの使ってるくらいだしね」
「そういうことです。身体の小ささだけはどうにもなりませんから」
そういうカタチで工廠班も協力することで、電力を管理する設備が作られていく。内部で壊れた配線などは、一時的に壁を崩して表に出して、管理しやすいように加工してから再配線。戦闘に巻き込まれた部分が綺麗になってさえしまえば、あとは割とお手軽と言える。
「とはいえ、妖精さんがいなければここまでテンポ良くは終わらなかったでしょう。2人だけでやってたら、今日中に終わったかどうかもわかりません」
「だねぇ……妖精さんがいるから細かいところもすごい早く終わったし。それに、最初から設計がわかってたくらいの動きしてたよね」
「この島で生まれた妖精さんだからでしょうか。その辺りは本当にわかりませんね。工廠妖精さんも、生まれた時点で即座に作業が可能ですし」
「環境によって知識が違う、みたいな?」
「そう考えるのが妥当かと。仮にここで生まれた人達のことを、『民間企業妖精さん』と名付けるとして、島の整備のプロフェッショナルだということです」
明石の憶測は大体正解だったりする。この島で生まれた妖精さんだからこそ、この島に対してのことは大体やれる。この島で発生した楽しいエネルギーと、島そのものの知識の集合体である。
だとするなら、この妖精さんに阿手の意思まで含まれてしまっているのではと考えてしまうが、そこは大丈夫である。生まれるきっかけがアイドル達のライブだったこともあり、意思はうみどり、そしてテミス率いる現在の島民と同じである。
「今後、この妖精さんは貴女が管理してくださいね。私も最終的にはこの島に移住するかと思いますが、戦いが終わるまではボスと一緒にうみどりです。貴女はこの島に残るのでしょう?」
「まぁ、そうなるね。この島にエンジニアが私しかいないし。妖精さんだけでどうにか出来ないところがあるってわかったなら、私が管理しないとダメか……うわぁ、だるぅ」
だるいと言いながらも満更ではないダウナー飛行場姫。この後始末の日々で、『工廠』の力を人々のために使うことに楽しさが芽生えてきているようで、エンジニアとしての在り方を良しとしている。
この島で民間企業妖精さん達を束ねるとなった途端、周囲で作業していた妖精さん達は、ダウナー飛行場姫に向けてサムズアップや敬礼を始めた。既にリーダーとして認識を始めているようだ。
「リーダーって器じゃあ無いんだけどなぁ」
「そんなことありませんよ。ここ数日での頑張りは私が認めます。島の記憶を持った妖精さんが貴女を認めてるようなモノですし、誇ってください、現場リーダー」
「たまには休ませてよ。私はぐーたらするのが好きなんだから」
「それは妖精さんと上手いこと相談してください」
そんなことを話していても、空気は和やかなモノである。島の復興がどんどん進んでいることが、気持ちを前に向かせた。
地上の電力問題は解消出来るようになった。続いては排水問題。もしくは、通信設備。
地下だけ完全に通信不能は、これまでもそうだが、今後の作業にも支障をきたすだろう。
「そもそも、ここに潜んでいた阿手は、外部と連携を取っていたと思います。なら、阿手だけが使える通信設備があったとしてもおかしくありません」
「そうだねぇ。それこそ、その電力供給の設備みたいに、この辺りにあったとかかな。この部屋から出ないなら、この部屋に全部取り揃えていてもおかしくないし。寝泊まり出来るような設備まであったりして」
と言っていたら、民間企業妖精さんが何かを見つける。それは、この部屋からさらに地下に降りる階段。
調査隊も隈なく探したはずなのだが、ここは片付けのこともあったこともあり、それが完全に隠れてしまっていたようである。このことを後に調査隊に伝えたら、地下広場の地下階段の件と同様にすごく悔しがりそうである。
「……周到すぎません?」
「私も思った。そんなに見られたくないもんかね」
「見られたくないのでしょう。そもそも自分が小鬼群の姿になっていることを恥じてそうですし」
「だよなぁ……ホントだるい奴だよ」
しかし、その地下に降りる階段は、明石もダウナー飛行場姫も降りることが出来そうにない小さなモノだった。小鬼群の身体を最大限に活かした、自分にしか使えない秘密基地みたいなモノ。
なので、そこには妖精さんだけで行ってもらう。通路の入り口は明石が『工廠』の力で歪ませ閉じないようにしておいた。
少し行って、帰ってきた妖精さんは、ジェスチャーで中にあるモノがなんだったかを伝える。
「……通信設備……やっぱりあったんですね。外部のスパコンとの接続は……あ、していない、完全に独立した設備と。調査隊が見つけられなかったのはそれがあるからですかね。ハッキングも対策しているようですし」
「この部屋だけ電波とか遮断してる?」
「それもありそうですけど、それにしては本当に周到ですね。もしかして、ここから出洲とも連絡を取り合ってたんでしょうか」
通信設備については謎が深まるモノの、今は外部に通信が出来るモノがあったというだけでも良しとした。
これを島内に使えるようにすれば、屋内外での通信が出来るようになるだろう。民間企業妖精さんにシステムをコピーしてもらい、地下施設に基地局を作り上げるカタチになるか。
「島の全部をここで手中に収めていたわけです。島民からは全部奪って」
「そういうことだね……はぁ、まったく、私も島民なわけだけど、ここまでされてるのは流石に腹が立つな」
「自分以外には滅茶苦茶ですもんね。妖精さんの成分を食べさせたり」
「思い出させないでよ。鳥肌立ってくるんだからそれ」
民間企業妖精さんが通信設備の造りを理解してから地下から出てくると、ダウナー飛行場姫に敬礼。
そういうところからも、ダウナー飛行場姫には妖精さんの要素が含まれており、ここで生まれた妖精さん達は彼女のことを同胞かつ先輩と思っているような感じもしている。
「もうすっかりリーダー扱いですね。良かったじゃないですか」
「今後のことを考えると、従ってくれるのはいいんだけど、私が忙しくなるじゃんかよー」
「まぁ頑張ってください」
「今のうちはこき使ってやるからなー」
リーダーとなったダウナー飛行場姫は、溜息を吐きながらも作業を続ける。やはり、満更でも無さそうだった。
昼ほどになって、那珂による全体放送がされる。地下のこの部屋にもそれが届くようにはなっており、昼休みだとわかった途端、民間企業妖精さんはゾロゾロと明石とダウナー飛行場姫のところにやってきて、昼食をせびり始める。
持ってきているのはおにぎりなのだが、妖精さん10人分を賄えるほどの量ではない。そのため、一度地下施設から出ることにする。
「そりゃあ維持費もかかるよね。私達が割りを食うことになるのもわかる」
「その分、仕事は早く終わってますし、等価交換みたいなモノですよ」
「そうなんのかねぇ。ひとまず、ご飯追加で貰ってこよう。私達が食いっぱぐれる」
「ですね。ついでに、屋外に電力が通っているかも確認しに行きましょう」
民間企業妖精さんの追加により、工廠班の作業は格段に進んでいる。島のインフラが整うのも、時間の問題かもしれない。
私事ですが、今回の秋イベ、ALL甲で突破出来ました。あとアイツヴォルと樫を掘りにいくだけです。