装置をつけずに楽しいエネルギーを溜め込んだことで生まれたであろう新たな妖精さん、民間企業妖精さんは、明石とダウナー飛行場姫が食事を摂ろうとしたものの、妖精さん分が足りないために、うみどりに向かったことで、その存在が公となった。
午前中は生まれてすぐに手伝ってもらっていたのだが、これには伊豆提督も驚きを隠せない。
「……妖精さんも生まれるのね、ここ」
「はい、発生抑制装置の副産物みたいなモノですね。置換するエネルギーの余剰分で生まれています」
「なるほどね。この子達は新たな島民ということでいいのかしら」
「王様はそれで受け入れてくれていますね。こちらも増え過ぎないように制御は必要かと思います」
妖精さんの寿命なども謎とされている。少なくともうみどりの主任は10年は生きているし、艦娘のサポート妖精さんも艦娘が引退するまではずっと側に居続ける。実は知らない間に代替わりしていると言われてもわからないこと。
穏やかに過ごしていれば、妖精さんはかなり長く生きるのかもしれない。となると、増えれば増えるほど、島を圧迫する可能性もある。
大きさは艦娘や深海棲艦と比べれば非常に小さいため、コストもそこまでかからないだろうが、それでも数多く集まれば、それ相応に必要なモノは多くなってくるわけで、それを維持するのにも負担はかかる。
「余剰エネルギーをどうにかする手段とかがあればいいんだけれど、そこはおいおいとなるかしらね」
「はい、急務ではありません。そもそも、妖精さんがどこまで増えるかも見当がつきませんしね。それに、これだけ広い島ですから、多ければそれだけサポートがしやすくなります」
妖精さんの管理に関しても、基本は島民に一任する。問題点はおそらく食糧だけとなるだろう。その辺りもこれからは考慮しなくてはならない。
「今は手伝ってもらえるだけありがたいですね。インフラ整備にはどうしても人員が必要ですから」
「そうね。それじゃあ……これからもよろしくお願いね」
伊豆提督に言われると、民間企業妖精さんは任せろと言わんばかりに敬礼していた。うみどりで分け与えられたおにぎりを頬張りながら。
午後の作業も進んでいき、もう夕暮れ時。そろそろ島全体が暗くなってくるという段階で、休暇中のうみどり一同、そして少し作業を早めに切り上げた島民一同が港に集合させられる。
深雪達も今日という1日をゆっくりと過ごしており、昼寝をしたり、本を読んだりと、心身共に休むことが出来ていた。
そんな中での呼び出し。何があるのか、まだ誰も知らない。
「みんなに見せたいモノがあるってことだよな、こうやって集めたんだから」
「なのです。いろいろ整備が出来たってことですかね?」
「だよな。でも、何見せてくれるんだろうな」
そんなことを話していると、休暇中だというのに作業をし続けていた明石が、ダウナー飛行場姫と民間企業妖精さんを連れて一同の前に現れる。
「集まっていただいて感謝です。今回のこの日は、皆さんと一緒に迎えたいなと思って、この場を設けていただきました。この度、この妖精さん達と共に作業をしたことで、地下だけでなく地上にも電力の供給が出来るようになりました!」
この発表は、後始末を始めて約2週間、外は暗いモノとして進めていた作業が終わりを迎えるということに他ならない。この日、この島は夜の闇を克服する。
それだけでは無い。商店などにあった冷蔵庫が復旧されるということで、集落がさらに生活しやすくなるのだ。
「それに伴い、それが成功したことを、この港にある家屋の電気で見ていただきたいなと。これが出来れば、この島全体に電力が行き届いたと言っても過言ではありませんから」
言いながら、ダウナー飛行場姫が港にある家屋、戦闘に巻き込まれることが無かった建物の中へと入っていく。簡易的な詰め所であり、ここで暮らすことを考えている者もいるような場所だ。ちなみにそれはあのヌ級だったりするのだが。
「では、点灯、お願いします!」
その合図と同時にスイッチが入れられる。すると、これまでうんともすんとも言わなかった建物の電気がパチリと点灯し、室内がパッと明るくなった。
現代を生きる者ならば当たり前の光景。しかし、この島を後始末していた者ならば、ついにこの時が来たのだと、歓声が上がるほど。
焚き火をしなければ灯りすら無かった昨日までとは違う、電気による光が生活に戻ってきたのだ。それが喜ばしくないわけがない。
夜を集落の家で過ごしている島民達には、これは大きすぎる復興の一歩目。電気が使えるというだけでも、出来ることが一気に増える。
「いやぁ、ようやくインフラ整備の第一段階が完了しました。これで集落全てで電気が使えるようになったかと思います。もし不具合があったらすぐに言ってください。そもそもの電気のシステムが故障しているなどがあり得ます。それは、我々が修理に行きますので」
少し長い時間使っていなかったこともあり、故障している家屋もあるかもしれない。そこは民間企業妖精さんがすぐに直しに行くと約束もしてくれている。
生活の基盤がついに戻ってきたのだから、ここからは続々と進められることだろう。
「次は水道関係を進めていきたいと思います。今、集落の水道から出る水はかなり汚い可能性がありますから、絶対に飲まないでくださいね。電力が戻ったことでようやく浄水システムも使えるようになったので。いくら深海棲艦の身体を持っていても、中毒症状はよろしくありません」
これに関しては、実は片付けている間にテミスにも言ってあることだったりする。電気が復旧する前から水道自体は使えたかもしれないが、放置されている上に浄水システムが機能していない場合、水は毒になっている可能性もあると。
事実、一部の家の水道から赤茶けた水が出てきたりしたので、それ以降は誰も水道には手をつけていない。浄化槽から錆び取りまで、水道関係はやらねばならないことが結構多い。
「ですが、それの整備が出来てしまえば、家でお風呂に入ることも可能になるでしょう。わざわざうみどりにお風呂を借りに来る必要も無くなります。自宅風呂でまったり、ということも可能になりますね」
これには歓喜の声も上がる。うみどりの大浴場を借りることが嫌というわけでは無いのだが、集落からここまで来て、身体を清めて温まったところを、また集落まで戻るというのも億劫な時はある。それが解消されるのだ。
特に喜んだのは、ここで女性の身体に改造されてしまっているカテゴリーY。春星を筆頭とした、
「それに、電力と水道が戻れば、後始末もしやすくなるでしょうね。掃除機も使えるようになりますし、水をわざわざ持っていく必要も無くなる。何もかもが楽になります。楽出来るところは楽をする。これが文明で文化です。テミス王、構いませんよね?」
不意にテミスに話を振ると、勿論ダと大きく頷いた。
「皆ガ楽シク生キルタメニハ、当然一部ハ楽ヲセネバナラン。苦行バカリダトツマランカラナ。特ニ、今貴様ノ話シテイタコトハ、生活ノ基盤ナノダロウ。ナラバ、ソコニ意識ヲ持ッテイカレテハ楽シクハナラン。アッテ当タリ前ノモノニアリガタミヲ覚エツツ、楽ヲスレバイイ」
全てにおいて楽をしろとは言わないが、そういうところで楽をするのは間違っていないと、テミスも明石達の仕事に感謝しつつ肯定する。
「それでは皆さん、明るくなった家で夜を過ごしてください。あ、でも夜更かしは厳禁ですよ。明日の仕事に差し支えますからね」
電気が復旧したことの弊害、夜を克服したことで、夜更かしをしてしまうこと。これだけは注意して、この電力復興の発表を終えた。
島の明日はさらに明るくなったと言えよう。
さらに日が落ちて、夜。深雪は寝る前に少しだけ散歩と称して、うみどりから出て港にいた。
それに便乗したのはいつもの面々。というのも、休みすぎたことで今日眠れるかわからなかったので、少しだけ歩いて身体を疲れさせようという魂胆もあったりする。
夕涼みみたいなモノだが、見たいモノがあったから。
「おー……すげぇ、つい昨日までは無かった光景だ」
集落の方、島の表側に、点々と電気がついているのがよくわかる。昨日までは、夜といえば真っ暗闇。もしくは、一部の場所で焚き火が行われており、その灯りがポツンとある程度だったが、今や生活の痕跡どころか現在進行形で生活をしている光が灯っている。
「後始末始めて、明日でピッタリ2週間だよな。それでここまで元に戻ったって、結構すごいことだよな」
「なのです。もうこの島で生活することに不自由なこと、あんまり無いのです」
「だよな。あとは明石さんが言ってた通り、水くらいか」
「これならそれも時間の問題ですね」
島だけでの生活が可能になるのも時間の問題。復興は、素晴らしいスピードで進んでいる。
それもこれも、手伝ってくれている仲間達のおかげだ。うみどりだけでは絶対に無理だった。
生活の灯りは、地上に降りた星のように点々と輝いている。これは、後始末が進んだ証として、深雪達の目にもしっかり入る。
「まだまだやることは多いだろうけど、ここまで来たら終わりも近いな」
「長かったねぇ。海賊船の時の倍やってんだもんねぇ」
「達成感はありますね。皆々様の努力の結晶でございます」
見えてきた後始末の終わり。この島の未来は明るいと確信が持てる程になった。
電力も復旧完了。水道関係を復旧出来れば、あとは自然と生活水準が上がることでしょう。