後始末屋の特異点   作:緋寺

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効率よく無くすには

 学校の後始末は続く。教室や各種特別な部屋の掃除は、地下施設の時よりも部屋そのものがそこまで大きくないため、的確に淡々と続けられる。余計なモノは外に出す。移動させられないモノは、必要そうならそのままで、そうでないなら解体。各教室にある黒板などは、生活するにはあまり必要としないのだが、壁に完全に張り付いているようなものだったため、そのままとしつつ、何か書かれているような痕跡は徹底した水拭きで消し去る。

 これまでの島の思想は、カケラも残さない。阿手のいたことを思い出せないくらいに無くし、これからの島に必要なモノだけをそこに置いていく。

 

「教室は何処も同じ造りになっててありがたいな。一回掃除出来ちまえば、同じ要領でどんどん進められるぜ」

「なのです。穢れも何もない、ピカピカな部屋になったのです」

 

 1部屋終える毎に、おおと上手く出来たことを自画自賛するように頷く深雪達。眼鏡を使っても穢れ1つ無い部屋となったことで、後始末がしっかり出来たとわかる。

 

「前にやった部屋、やっぱり天井とか抜けてたから、やり直す羽目になったけどさぁ、手慣れちゃえばこっちのモンだよねー」

「はい、我々も成長するのです。同じことをすれば、時間は短縮されますね」

 

 グレカーレと白雲も満足げ。綺麗になった部屋というのは、心も洗われるような気持ちになる。

 

 後始末屋は、その仕事のこともあってか、なんだかんだ綺麗好きになることが多い。大雑把な性格でも、部屋は几帳面に綺麗だったりする。深雪もそのうちの1人であり、それなりに長く後始末屋を続けてきたのだから、その性質はしっかりと持っていた。

 自分の部屋だけでなく、何処も綺麗になっているのが喜ばしい。逆に、少し汚れているのが見えると気になってしまうところもあるのだが。余程酷いことになっていない限りは許容範囲内なので、潔癖というわけでも無い。

 

「よーし、じゃあ次の部屋行こうぜ」

 

 と皆を促そうとしたところで、学校であることもあり、突如チャイムが鳴り響く。

 

『お昼休みの時間でーす♪ みんな、作業の手を止めるか、キリのいいところまでやって、お昼ご飯を食べよー♪』

 

 那珂の放送が響き渡ったことで、今がお昼であることがわかる。地下施設で作業をしているときよりは時間の感覚がわかるモノだが、それでも外が明るいということ以外はわからない。

 教室には元々時計があったのだが、今は壊れているのか動いていなかったため、変に時間を意識するくらいならと取り外している。

 

「お、飯だ飯だ。弁当食おうぜ」

「なのです。お外で食べるのも慣れてきましたね」

「だな。昼飯は外って感じになってきちまった。普通の後始末屋じゃあないのにな」

 

 置いておいた弁当を見ると、おっと深雪がにんまり笑う。

 

「今日は稲荷寿司かー。ついに寿司作り出したぞ厨房組」

「ラ級さん達も作ったんですかね?」

「かもな。ちょっと前までおにぎりを頑張ってたくらいなのに、腕上がりすぎだろ」

 

 用意された弁当をモフモフと食べながら、学校内を軽く見て回ると、何処も彼処も綺麗になっている。うみどりの人海戦術は功を奏しており、そこに今回はこだかの面々も加わっているため、作業がかなり早い。

 1階の教室はこの半日であっという間に終了。職員室や配膳室、保健室、その他諸々の部屋も、廊下もキッチリ綺麗にされていた。

 本来ならば上の階からやった方が良かったのだろうが、そちらは現在少し立て込んでいるというのもあって、出来るところから進めている。何をしているかというと──

 

「お、終わりましたぁ……音楽室の解体と、理科準備室にもいろいろ必要のない装置が沢山あったので、調査隊の皆さんと解析した後、バラしましたぁ」

「思った以上に学校に似つかわしくないモノが多くありましたね……なんとか全て壊せてよかったです」

 

 梅と、今回は梅の『解体』を『量産』したフレッチャーによる解体作業である。音楽室を改造されて作られた培養管や、理科準備室に作られていた艤装の点検装置など、学校ではなく研究施設のようなモノが多種存在していたため、それを学校の外に出そうということで、調査隊も協力して作業を進めていたのだ。

 調査隊は勿論、完全にバラしていいモノか、ある程度カタチを残してバラしてもらいたいモノかを判別する役回り。それがなければ、今後のために解析をすることが出来そうな機材もバラバラの修復不能になってしまう。

 

 その残骸を持ち出すため、上の階は未だ手が付けられていない場所が多数。特に階段のあたりは酷いモノ。

 上の階の窓から外に投げ捨てることも出来ないため、人数を使って丁寧に残骸を外に持ち出しているためこうなっている。

 

「うわ、すっげぇことになってんな」

「埃もすごいのです。わ、昇降口のところ、穢れがまだまだいっぱいなのです」

 

 残骸自体も穢れが凄まじいため、持ち運んで一箇所に固め、そこで一旦残骸の洗浄も必要そうと考えている。

 しかし、洗浄したらしたで、そこから流れ落ちた水は地面に染み込み、ただでさえ酷いことになっている地面が余計に穢れまみれになるという大惨事。

 

「持っていくのならグラウンドにお願いします。せっかくですので、グラウンドを水浸しにしたいです」

 

 そこで案を出したのが妙高。この洗浄によってグラウンドを濡らし、耕しやすくしようという算段だ。雨の日の後にやれればよかったのだが、思い立った時にはもうグラウンドが乾いてしまっていたので、水もやり直し。

 

「残骸が土まみれになりませんかぁ?」

「そこは少し妥協しましょう。むしろ、穢れがついたまま持ち運べば、集落にまた穢れを持っていくことになります。テミス王を含めて、深海棲艦の方々が掃除した場所を汚すのは忍びないです。どうせ汚れるなら、穢れよりも泥汚れの方がいいでしょう」

 

 梅から泥はいいのかなと疑問が出るが、穢れよりはマシということで解決。そりゃそうだと誰もが納得する。

 

「空母隊の皆さん、薬剤の雨の散布、よろしくお願いします」

「ええ、そういう時は任せてちょうだい」

 

 ここからは加賀を筆頭とした空母隊の出番。艦載機を使って薬剤をグラウンド中に撒き散らすことで、残骸をしっかり濡らしながら穢れを取り、グラウンドもしっとりと湿らせることで、今後の土壌改善に一役買ってくれる。

 

「あちらの森の方はどうしましょうか……薬剤の散布だけでどうにか出来るとは思えませんが」

「木は切り倒すしかないかもしれないわね。焼いたら山火事になるだろうし。穢れまみれの木材が使えるかと言われれば何とも言えないわ」

 

 この島は木にもしっかり穢れが浸透してしまっているのが問題。今あるモノは全て撤去するくらいでないと、新たな自然を育ませることが出来ない。

 一番手っ取り早く木々を無くすなら、爆撃なり砲撃なりで全て薙ぎ倒し、火災を起こして焼き尽くすのが妥当だろう。だが、それだと集落の方にも被害が出かねないし、何よりそこから先の対処も大変だ。ならば、地道に切り倒していくことが必要になりそうである。

 その後、新たに陸から木を持ってくるというのも考えられる。土壌が改善されれば、植林で自然をよりよく取り戻すこともできるだろう。

 

 そうなると今度は切り倒した木材の使用方法になる。洗浄剤に漬け込むなりすれば穢れは取れるかもしれないが、木材として使えるかは何とも言えない。それに、木材がどれだけの時間を費やせば穢れが取れるかもやってみなければわからない。

 穢れによる土壌汚染なんて初めての事象、全てがわからないことだらけであり、実践以外に判断の手段がない。

 

「今度は森の木の伐採が仕事になりそうだな。どんどん海から離れていきやがる」

「仕方ないよ。こんな島でやられるのなんて初めてなんでしょ?」

「知ってる限りじゃあな」

 

 光景を見ながら話す深雪達。この島にあるモノ全てをどうにかしなくてはならないのだから、考えなくてはならないところはとても多い。

 

「テミス王、お話がありますがよろしいですか?」

「ウム、島ノコトカ」

「ええ、島の今後に関わります」

 

 グラウンドで残骸の洗浄を見ていた妙高が、この件について早速テミスに相談を持ちかけた。そこにメッセンジャーがいても、まるで目に入っていないかのように。

 

「この島の森のことです。木々にも穢れが浸透してしまい、存在そのものがこの島の穢れを無くすことを邪魔してしまっています。一度全てを切り倒すことも考えていますが、王としてはどうお考えですか?」

「フム……木々ガ邪魔ヲスルカ。アノ中カラ同胞ガ生マレルコトハ、余モ理解シテイル。余自身モソノ類ダカラナ」

「ああ、そうですか、貴女の生まれもそうですね。今でこそ装置が稼働していますが、穢れそのものが消えるわけではありませんから、作物なども難しいかもしれません」

「ソレハヨクナイ。ダガ、木々ガ無クナルコトハ、コノ島ノ自然ニ影響ガアルノダロウ。ソレモヨクナイナ。スマナイガ、余ニソノ辺リハヨクワカラナイノダ。コレハハルカト話セバイイノカ?」

「はい、そうしていただけると。島の今後に関わることですので、我々が独断で出来ることではありません。片付けとは違いますので」

「ウム、説明感謝スル」

 

 妙高とテミスの話は、伊豆提督に報告し、今後の後始末の方法を決めていくという内容。間近で聞いていたメッセンジャー2人は、それに対して何も言わない。おそらく、今度こそ、メッセンジャー1はテミスの拳あたりが飛んでくる。

 

 

 

 

 

「何やら複雑そうな顔をしていそうだね」

 

 そのメッセンジャー1の真後ろ。残骸選定をして昼休みに入っていた響が音も立てずに立っていた。




響がおもちゃを見つけた
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