後始末屋の特異点   作:緋寺

1057 / 1167
復興から発展へ

 次々と決まっていく慰霊碑の話。何処に建てるか、どんな感じに建てるか、そして、そこまでをどう繋ぐかというところが話されていた。

 慰霊碑は石造りとなるだろうが、造ってから持っていくのは、いくら艦娘や深海棲艦の手があってもなかなかに難しい。やるにしても、慰霊碑を建立する場所に向けて、舗装された道が必要になるだろう。

 

「後始末モ大分終ワッテイル。掃除ヲセネバナラナイ所モアルガ、原点ヲ作ルダケデナク、先ヲ見据エタ作業ヲシテイキタイ」

 

 テミスが、配下である深海棲艦とカテゴリーY達を集めて説明を始めた。雨の中ではあるのだが、皆後始末はやる気十分。一部は与えられた家で休息を取っているものの、特に深海棲艦達は、雨などを気にすることはなかった。

 

「コノ島デハ、数々ノ犠牲ガ出テイル。ソノ者達ニヨッテ我々ガ今ヲ生キルコトガ出来テイルヨウナモノナノダカラ、ソノ無念ヲ、魂ヲ、弔ワネバナラン。ソノタメノ慰霊碑ヲ建テルコトトナッタ。ダガ、コノ集落カラハ少シ離レテイルノダ。ソコデ、歩キヤスイ道ヲ造ッテイキタイ」

 

 道を造ると王に言われ、集まった者達はおおと声を上げる。片付けではなく発展。自分達の作業が、次のステージに上がったことを如実に現れていたからだ。

 この島で生活するために必要なことをずっとやってきたが、新たな道を造ることというのは、生活に直接関与しない部分である。だが、それをやっていくということは、これを娯楽のためと考え、楽しむために作業を進めることになる。

 

「ヌキューヨ、コノ島ヲ特ニ歩キ回ッテイルノハ貴様ダロウ。ドノヨウナ道ガアルトイイト思ウ」

 

 ここでテミス、こうなった島を最も歩いているであろうヌ級に、どんな道だと歩いていて楽しいかを問うた。元々の島民ではなく、感性が違う者に聞いている。

 今の島になってから、島全体を趣味で歩き回っているのは、おそらくヌ級くらいだ。テミスやテイアも視察として確認はしているが、ヌ級は明らかに娯楽としての散歩をしているのだから、暮らしている者達とはまた違った考え方になっているだろう。

 

「ンー、滑ラナイ方ガイイカナー。山道ハドウシテモ泥ダラケニナッチャウシネー。慰霊碑ノ場所ッテ、アノチョット開ケタ高台ノトコロデショー? アソコ、ソレナリニ整備サレテルケド、草トカ多イシ、道モトコロドコロ古クナッテルカラ、綺麗ニシタイネー」

 

 実際、役所に行くまでの道は、アスファルトも使ってある程度は舗装された道ではある。しかし、その道はボロボロになってしまっており、歩くことは出来るものの、何度も行き来するのは少々面倒と思えるような状態だった。

 テミスも役所跡地に向かうまでにその道を通っているが、歩きやすいとは言いにくいと感じている。戦闘がそこであったわけではないが、雨によって流入した少しの土砂などが掃除もされておらず、さらには経年劣化でアスファルトにもヒビが入っている。そして、雑草は伸び放題という更なる難点も。今のような雨の日だと、歩く際に不快な気持ちになるところも多い。

 

 阿手がこの島に来るまでは、島民がその辺りの整備もしていたのだろう。草むしりや、土砂の片付け、そうならないように工事をしたりなども。

 だが、自分のことを重点的において、民の命も蔑ろ、島も管理するつもりのない、守り神と言いながらも破滅を呼び込んだ支配者が来てからは、洗脳処置も相まって、島の整備は二の次にされていたと考えられる。

 島がどうなっても別に構わない、自分のやりたいことが出来ていればいいという阿手の性根が、これでもかとわかる事実である。

 

「ウム、ヨカロウ。ナラバ、道ニツイテハヌキューニ決メテモラオウ。好キニシテヨイ」

「イイノ? ワーイ」

 

 歩くことが趣味であり好きなことであるヌ級は、道のデザインを任されたことに喜んだ。自分が歩きやすい道、歩いていて楽しい道を、自分で設計出来る。それを楽しいと感じられるため、ヌ級はとても前向きで、労働を苦と思わないタイプである。趣味が実益になっている典型的な例と言えよう。

 

「他ニモ手伝イタイ者ガイレバ、ヌキュート共ニ作業ヲシテクレ。余ハアノ広場ヲ美シイモノニ変エル作業ニ入ル」

「慰霊碑ヲ広場ノ中心ニ置イテ、ソコハ憩イノ場ニナルヨウニ整エテイクヨ。姉サント私ハ、ソチラヲメインニ作業ヲシテイクカラネ」

 

 テミスに続き、テイアも慰霊碑広場の建設に従事すると宣言。時には見回りもするだろうが、鎮魂の場はいち早く作っておきたいという気持ちの現れでもある。

 隣に立つクロトもうんうんと頷き、慰霊碑の建立を進めるために力を注ぐことを決意している。

 

「他ニモ何カ欲シイモノガアレバ言ウガヨイ。極力、ソノ願イヲ叶エヨウ」

 

 このやり方が、作業員となる民のモチベーションを上げる。欲しいモノはみんなの手で作り上げる。出来上がれば自由に使える。そして、欲は生まれても、そこまで酷いモノはない。深海棲艦達の知る文化で出来ることの域は越えていないからだ。

 学校までの道もしっかり整備した方がいいのでは、とか、電気が戻ってきたのだから街灯があった方がいいのでは、とか。うみどりで広い風呂を経験したことからか大衆浴場なども提案され、その全てを叶えるために奔走することになるだろう。

 

 

 

 

 後始末は後始末屋に任せて、島民達は早速、慰霊碑までの道の整備などに取り掛かり始めた。思い立ったが吉日、やろうと決めたなら、雨の中でも進めようと躍起である。

 まず必要なのは草むしり。ある程度適当であっても、今は見栄えだけで作業を進めた。最終的には舗装もあるため、今はイメージを作るための行動。

 

「ヌキューガ歩イテル時ハ、コノ辺トカチョット滑ッタネー」

「ウワ、泥ダラケジャン。ジャア、コノ辺ハ土ガ来ナイヨウニ、排水溝トカイル?」

「ソレダト詰マッテ意味ガナイ。堰キ止メツツ、定期的ニ掃除ヲスルトイウノガイイノデハナイカ?」

「ソレガイイネー。アト、コノ凸凹モチャント埋マッテルト、蹴躓カナクテイイヨネー」

 

 道造りの中心となるヌ級、共に行動しながら話をするリ級、案を出すクロトと、深海棲艦による事業が次々と進んでいく。

 その様子を見ているのは、慰霊碑の規模を考え、キチンと測定に来た明石とダウナー飛行場姫である。広場で機材をいろいろと使いながら、平坦な場所を造り、彼岸花の花壇まで考慮して面積を計算して、どれくらいにするかの案をいくつも出していく。

 

「……この島にしかない光景ですよねぇ。深海棲艦が率先して島の拡張事業に首を突っ込んで、しかも割と適切なことを話してます。思いつきで言ってると思うんですけど、良くしたいという気持ちがあるから、いい方向に向かってますね」

「ホント、すごいねぇ。私達より詳しいように聞こえるもんねぇ。やり方教えれば、全部自分でやっちゃうんじゃない?」

「おそらく。私は後始末さえ終わればここから去りますが、貴女は今後、ここで民間企業の社長なんですから、頑張って引っ張ってあげてくださいね」

「うえ、だる。技術者育てよ。子供達育成したろ」

 

 うみどりがここから立ち去った場合は、もう島民だけで維持するしかなくなる。それも加味して、維持しやすい方式を採用し、育成することで誰でもやれるようにしていく。

 今後島民が増えるかはわからないが、次の世代でも島を維持、そして発展させられるようにしていくのは、最終的にはこのダウナー飛行場姫になっていくだろう。島の技術者は、今は彼女しかいないのだから。

 

「短い間でしたが、私も貴女にしっかり叩き込みましたからね」

「ホントだよ。やれたからよかったけどさ」

「やれるということは、才能ありましたよ。あとは、教える才能ですね」

「だるぅ……でも、楽するために頑張ろ」

 

 今後の島のために、楽するために、今を頑張る。そこには、特異点と関わっていたとしても、堕落なんてモノは何処にもない。これに難癖をつけられるわけがない。

 

「明石、社長、少シイイカ」

「え、ちょっと待って、私もう社長扱いなの?」

「妖精サンガ従ッテイルダロウ。民間企業ノ。ナラ、社長デイイダロウ。道ノ整地ニツイテ話シテオキタイ」

 

 クロトに社長と呼ばれて驚くダウナー飛行場姫。何処からその呼び名が広まったのだと苦い顔をしつつも、呼ばれたのだからそちらに向かう。明石も楽しそうである。

 

「ア、シャチョー、ココッテ何カ上手イ感ジニ平ニ出来ナイカナー」

「……ヌキューも私のことを社長と呼ぶのかよぉ。ああもう、わかったわかった。えぇと、平坦にしたいってなら、ここのアスファルト一回引っ剥がして、敷き直した方がいいんじゃないの? 明石、『工廠』でこれ弄れる?」

「貴女がやってみては? 私はそのうちいなくなるんですから」

「ちくしょー、だよなーっ。やってみるよもう」

 

 ヒビ割れた道に手を当てて力を込めてみると、道に対しての『改造』が働くようである。しかし、上手く平坦を造るのはダウナー飛行場姫の感性によるモノ。それに、手を当てたところだけを直したところで、全体的にはどうかが何とも言えない。

 

「あー、やっぱり地道にやった方がいいよこれ。頃合いが来たら、全部引っ剥がす。アスファルトって簡単に作れたっけ?」

「そこは道そのモノを『改造』して、加工し直せばいいのでは?」

「それしかないかぁ……まぁ、上手いことやってくしかないね」

 

 言葉とは裏腹に、ここにいる者達は皆、楽しそうである。やはり、自分が住む島を自分の望み通りにしていくのは、悪い気分ではないようだった。

 

 

 

 

 復興から発展へ。島民の意志を汲み取り、進めていくのは、非常に明るく前向きだった。

 




明石と社長が持つ『工廠』の力、アスファルトに有用ということが判明。発展に大きく貢献することになるでしょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。