後始末屋の特異点   作:緋寺

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さらなる交戦

 海の上、海の中での戦いが続く中、うみどり内部でも準備が整った者達が次々と出撃をしていく。

 海の上は勿論のこと、海の中の状況もいち早く伝えられ、そこに黒深雪と雷がいること、サポーターとして伊36がいること、そしてその伊36が海中で特四式内火艇を使い出したことも報告された。

 

「やっぱり海の中の方が戦力が強ぇ。電、あたし達も行くぞ」

「なのです。丹陽ちゃん、よろしくお願いするのです」

「はい、接続します。重さに耐えてくださいね」

 

 準備万端整った電が深海棲艦化。本来なら重くて持てない兵装も、当たり前のように持ち上げた。深雪も共に深海棲艦化し、より強い自分を作り上げた。

 

 巡洋艦の中口径主砲に、空母の扱う艦載機、そして潜水艦用の高性能な魚雷。そこに今回はさらに潜水艦用の電探を装備することで、少しだけ海中での戦いを意識している。潜水艦同士の戦いは結果的に何をしたところで見てから避けられるため、撃ち合いは無くなり取っ組み合いになるのだが、それを上手く進めるための兵装に。

 深雪はいつもと変わらず、消し飛ばす砲撃を放つための主砲を2つ、そこに電探を合わせている。さらに深雪には許された追加スロットには魚雷。潜水艦用ではないにしても、それがあるのとないのとでは話が大きく変わる。そこにサポート妖精さんが見張員の役割に落ち着くことで、高精度を目指した超火力編成となる。

 

「よし、行けるぜ。もう出るぞ!」

「電も行けるのです! 海中へ出ます!」

 

 特異点が外に出れば、うみどり狙いの攻撃も少しは緩まるかもしれない。しかし、特異点がいないならばと手薄なうみどりを狙うという可能性もあるため、誰もが常に全ての場所を警戒する。

 今はとにかく、海中の戦力を抑え込みたい。そこに可能な限り戦力を割く。深雪も電も、そのために海中での戦い方を学んできたのだ。一朝一夕と言われればそれまでだが、やっていないよりはマシに動ける。

 

「ミユキ、イナヅマ!」

「お姉様方、我々も参ります。海の上から、確実な援護をさせていただきます故」

「爆雷とかも投げちゃうからさ、何かあったら任せてよね」

 

 グレカーレと白雲も、今は特異点のサポートとして海上から海中の敵に対しての牽制に出る。勿論、海上に厳しい相手が出てきたのならばそちらを優先するのだが、今の状態ならばむしろ海中に専念した方がいい。

 海中への戦力が少ないことは元より把握していたこと。対潜兵器もそこそこに、何が来てもいいように心構えだけは完璧に。その力は海中には使えないが、無いよりある方がイイ。

 

「おう、頼むぜ。あたし達を巻き込むなよ」

「わかってるって。というか、それはムツキに言ってよ」

「ありゃあ……おう、まぁ、どうにかあたし達も避ける」

 

 名前を挙げられた睦月も、今は出撃準備の最終調整中である。突発的に作り上げられた新型兵装がてんこ盛りの大装甲艇に乗り込んだ睦月が、一つ息を吐く。

 

「やれるにゃし、睦月なら、やれるにゃし……」

 

 これまでとは大きく違う大役。この決戦に一石を投じるだけの力を与えられたことで、緊張感はMAX。

 そんな睦月に、深雪と電は笑顔で近付き、拳を突きつける。

 

「大丈夫だ。睦月ならやってくれるだろ。あたし達にも出来ないこと、上からやってくれよな」

「睦月ちゃん、よろしくお願いするのです。きっと何とかなるのです」

 

 聞く者が聞けば、余計に緊張感が高まるのではと思うような言葉だが、特異点からの激励は自然と呼吸を落ち着かせた。

 睦月はもう一度深呼吸をして、胸に手をやる。まだドキドキしているし、自信だってそこまで大きくない。だが、この戦いを終わらせたいという気持ちは、うみどりの者としてちゃんと持っている。

 

「うん、睦月やるぞよ。深雪ちゃん、電ちゃん、2人も慣れない海の中、頑張るのね」

「ああ、あたし達も因縁の相手だ。ぶちかましてくる」

「絶対に勝つのです」

 

 拳を突き合わせ、互いに互いを激励。気持ちが落ち着くような感覚。

 

「よし、睦月も行くのね! 誰か護衛お願いしていいにゃし?」

「それなら、酒匂達が一緒に行くよ。大装甲艇護衛だね」

「は、はい、緊急事態が起きたとしても、乗り越えましょう」

 

 睦月の大装甲艇につき、護衛艦隊として進むのは、酒匂と梅。その特殊兵装の存在があちらにバレたら、うみどりと同様に集中砲火を受けてしまいかねないが、睦月1人で出撃するより間違いなく安全である。

 海中からの攻撃を危惧して、酒匂は基本的には対潜装備。梅は対潜ではなく機動力を重視している。いざという時の『解体』の力を十全に発揮するためには、自分が素早く動けることが大前提。近付かれたならば、その者の艤装をどうにかしてバラす。

 なんだかんだ近接戦闘をしなくてはならなくなる梅は、それだけでも緊張感が半端ない。しかし、阿手との戦いの際にも、その力によって反撃の一手を作り出したという実績もある。それが僅かにでも自信に繋がり、梅は後ろを向かなくなっていた。

 睦月も同じだ。トーチカ攻略の際に最前線の部隊に入り、その力を存分に使うことで勝利に大きく貢献した。それが自信に繋がる。

 

「よっしゃ、ならみんなで行こうぜ。なんだかんだ、酒匂さんが旗艦の水雷戦隊みたいだな」

「なのです。戦う場所は違っても、戦い方が違っても、みんなで力を合わせて立ち向かうのです」

「ふふ、そうだね。それじゃあ、せっかくだから酒匂が号令しちゃおっかな」

 

 気持ちを落ち着け、いつものように。後始末に出向くような心持ちで、敵へと立ち向かう。

 

「水雷戦隊旗艦、酒匂、出撃するよ!」

「おう! 特異点、出るぜ!」

「出るのです!」

 

 一斉にうみどりから出撃。海中の敵への強気な部隊が今、戦いを終わらせるために向かった。

 

 

 

 

 一方、戦闘海域の中央に近い場所。お互いに出撃した部隊が相対することになる。

 本拠地狙いの戦艦主砲の撃ち合いが行われている中、こちらはこちらでその攻撃を気にすることなく向かい合う。

 

「……足柄、その艤装がカテゴリーKのモノですか」

「うみどりに姉さんがいることは知っていたけれど、ここでこうして戦うことになるだなんてね。ふふ、いいじゃない、漲ってきたわ!」

 

 足柄という艦娘は、基本このように好戦的な性格をしている。何よりも戦いを好み、勝利することを至上の喜びとする。しかし、狡いことはしない。正々堂々真正面から立ち向かい、自らの力で相手を捩じ伏せる。そして、相手のこともリスペクトする。それが足柄である。

 

 その後ろ、報告通り、駆逐艦が2人。陽炎型の萩風と嵐である。改二改装も無いが、この場に連れてこられたのだから、足柄からの信頼は厚く、連携なども上手く出来るから採用されているのだろうと考えられる。

 その2人は、足柄に気付かれないように、第二世代のハンドサインをさりげなく出してきた。それを読み取れるのは、Z1。

 

『ごめんなさい』

『本気で戦わせてもらう』

 

 カテゴリーKにはまだバレていないはずの、襟帆鎮守府内の内部分裂。従わされているだけで、このような戦いはしたくはない。しかし、今は本気でやらないとその目論見も破綻してしまう。

 Z1は2人に小さく頷く。足柄を援護するように立ち回ることになるのも、うみどりの面々に本気でぶつかり合うのも、今は仕方がない。

 

「相変わらずですね。足柄という個体は、戦いを好みすぎる。それで本当に平和を勝ち取れると?」

「勿論! 私はこうして戦って戦って戦い続けて、彼の目指す平和を必ず成し遂げてあげるのよ! 海は静かになる、人々は争わない、私には少し物足りなくなるかもしれないけれど、無駄な争いが無くなるのは素晴らしいことよ!」

 

 テンション高く、出洲の目指す平和を良しとする言葉を紡ぐ足柄。それを何故目指しているか、何があってそうなってしまったかはわからない。しかし、黒深雪や雷のように、この足柄も非業の死を遂げて蘇ったことは間違いないのだ。

 争いを無くすために争うという矛盾に気付いているのかいないのか。どちらにせよ、やはり少し壊れていることが目に見えてわかる。

 

「そうですか。うみどりの存在が、その無駄な争いを生み出していると」

「うみどりが、じゃなくて、特異点が、よね。ダメよ勘違いしちゃ。私達だってね、姉さんと戦わなくていいなら戦わない道を考えているの。でも、そんな道はないのよね。無いから、もうやるしかないのよね!」

 

 興奮を隠さず、両手をバッと拡げる。すると、その周囲に深海棲艦の艦載機、いわゆる『タコヤキ』が1つ2つと出現する。最大いくつ出るかは今のところ不明。

 前情報通り、この足柄は重巡洋艦であるにもかかわらず、艦種関係なしに艦載機を扱える。攻撃のレンジが本来とはまるで違うことが目に見えて明らか。

 

「いいでしょう。そのために私がここに出向いたのです。貴女を力尽くでも止めるために」

「平和を目指している私達を止めようとするなんて、姉さんも悪役みたいになっちゃったのね。特異点と仲良くしているからかしら。残念、とっても残念。でも、漲るわよ。本当に、すごく」

 

 発艦している艦載機の銃口が、全て妙高を向いた。

 

「これで終わるわけないわよね。だって、あの妙高なんですもの。簡単に終わるわけがない。だから、最後まで私を楽しませてちょうだい!」

 

 好戦的な性格も、歪まなければ頼もしいのだが、こうなってしまうと悲しいかな、ただの狂人である。それでも平和を願い、自らが受けた仕打ちが他者に起きないように、本当に善意を持っているのだから、非常にタチが悪かった。

 

 

 

 

 何処も戦いは進んでいく。まだまだ最序盤だが、勝ちの目をその手にするために、その力は惜しまない。

 

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