同じくカテゴリーKである五十鈴を援軍として呼んだ瑞鶴が海中へと潜ったが、それを見越したようにやってきたうみどりの援軍は時雨。海中の敵を殲滅するため、オーバークロックによって爆雷を絨毯爆撃のように散布。一気に決着をつけに行く。
数で押し込む爆雷が全て爆発すると、半端ではない火力が生まれ、大きな水柱が立つ。しかし、時雨はそれで終わりだとは思っていない。今回はソナーも使い、海中の動きを把握しながら、この攻撃の後の反応を確認。おそらく回避しているため、追撃の爆雷を何処に放るかを考える。
「長門、ここは私と時雨でやるわ。貴女と清霜は戦艦の砲撃を直接止めに行ってちょうだい」
「心得た。そろそろうみどりに向けた攻撃をやめてもらいたいからな」
潜水艦相手では手も足も出ない長門は、加賀の策に乗り、清霜と共により鎮守府に近付くことを選択。霧島との戦いに挑む。
加賀と時雨はまだまだ警戒。カテゴリーK2人を相手にすることになるため、これまで以上に集中する。
加賀はここで艦載機を追加で発艦。改二護だからこそ可能な対潜攻撃のために艦攻を繰り出した。先に発艦させた艦載機が、瑞鶴の艦載機とまだ拮抗している今、この状況でも斃し切れていないことは明白。
「時雨、2人とも残ってる?」
「ああ、残念ながらね。どうやって回避したか……は、急速潜航で爆発の範囲外に逃げたみたいだ。五十鈴が手を引いてね」
「なるほど。あちらの方が小回りが利くから、瑞鶴の面倒を見ているのね」
「面倒って、子供じゃあるまいし」
「……おそらく子供よ、あの瑞鶴は」
加賀も長門と同じ考えに辿り着いていた。瑞鶴の言動の幼さ、何処かポンコツじみているが、敵の発言すら素直に鵜呑みにして、癇癪を起こしてもすぐに冷静になり、そして妙に成長が早い。実戦を介して、この場で育っている。その伸び代からも、子供ではないかと考えている。
見た目と中身が釣り合わないことはよくあるし、黒深雪や雷の境遇と近しいと考えれば、何らかの事件に幼い頃巻き込まれて命を落とし、それを出洲が可哀想だと思って蘇生したとなれば、今の
逆に、五十鈴の方が歳上というのもそこそこわかりやすかった。タンコブの出来た瑞鶴を心配している姿は、見た目とは違う歳下をあやすようなモノ。とはいえ、経産婦であるとかではなく、例えば幼稚園児の面倒を見る女子高生くらいの感覚。
「まったく、出洲は相変わらず趣味が悪い。でも、相手がどうであれ手を止めるつもりはない、よっ」
話しながらも爆雷を投射。最初の爆雷を回避した後、海上に向けて攻撃してくるだろうと行動に移した五十鈴に向けて、直撃狙いで放る。
海中を揺らす爆雷の爆発。だが、簡単には当たらない。潜水艦とは違う泳法を使っているのか、やたらと速い。伊203を相手取っているとまでは言わないが、回避に特化しているとまで思えるくらいの素早さ。
だが、あちらからの攻撃はどちらかといえば甘い。海中から魚雷が向かってくることはあるのだが、それはあくまでも一般的、
「結局、海の中は出来るというだけで、得意なわけじゃあなさそうだね。上に引き摺り出そうか」
時雨はまたもやオーバークロック。面の攻撃を繰り出し、海中の2人を追い詰めていく。さっさと上に出てこいと。そうしないと、確実に始末するぞと。
爆雷で加減は出来ない。当たれば高確率で重傷を負わせることが出来る。時雨が装備している爆雷は、最も性能が高いモノでもあるため、海中への火力としては最高である。
時雨自身、命の取り合いに対して抵抗が無い。他の者のように、救いたいという気持ちが希薄である。カテゴリーMの呪いによって、人間は別に死んでくれても構わないという考え。
さらに言えば、カテゴリーKは一度死んでいるのだ。
「さらに潜った。爆雷が当たりにくいところに行こうとしたね」
「でも、それだとこちらに攻撃は来ない。ひたすら睨み合いになるだけ」
「瑞鶴が子供だっていうなら、痺れを切らして浮上してきそうなモノだけど」
「制御役がいるのなら、しっかりと待つんじゃないかしらね」
だからと言って、海上の2人が苛立つこともない。時間をかけるのなら別にそれでいいと、警戒をただ続けるだけ。
「それに、戦力は
そう、援軍は時雨だけではないのだ。こうしてここまでわかりやすく素早く来たのは時雨だが、海の上から見えていないだけ。海中にいるのならば、その援軍がそろそろやってくる。
「ああもう、鬱陶しい! 上に上がれないじゃないの!」
「落ち着きなさいな。確かにあといきなり滅茶苦茶爆雷が投げられるのは鬱陶しいけれど、向こうの爆雷は無限じゃないわ」
「確かに。なら、使わせて弾切れを狙えばいいのね!」
相変わらずの瑞鶴だが、五十鈴も使い方が上手い。瑞鶴の特性をよく理解している。
海中に潜む瑞鶴と五十鈴は、海上の時雨からの攻撃を忌々しそうに睨め付けながらも、爆雷を使わせて限界を狙う。あちらも弾切れが近付けば焦り始めるだろうし、これだけ一気に投げるならすぐにでも切れるだろうとタカを括っていた。
「時間をかけてもいいのよ。こちらは鎮守府が近いんだから、最悪一度戻ればいいんだもの」
「いいの?」
「補給しながら戦うことは反則じゃないわ。むしろ、地の利を活かした立派な戦術」
「確かに! 使えるモノは使わないとよね!」
鎮守府近海で戦っているのだから、それを利用しない手は無い。うみどりだって、この近くに工廠を構えているようなモノなのだから、同じことは可能。どちらも出来ることなのだから、使わないのはむしろハンデを勝手に背負っているだけである。
緊急時の補給手段だってあるのだから、そうでなくても鎮守府に戻ることは一つの手段として使える。
しかし、それを簡単にやらせるわけがない。海中の2人が爆雷ばかりを意識していることから生まれる、
「えっ……!?」
「誰!」
海中だというのに砲撃を放つことによって魚雷が届く前に爆破するが、瑞鶴も五十鈴もそれは予想外だった。特に五十鈴は、今の戦況を把握した上でここにいることもあり、ここで海中の戦力が来るとは思っていなかった。
うみどりの海中戦力は、伊203、伊26、スキャンプの3人。そこに潜水が可能になっている特異点、深雪と電が含まれて、全部で5人である。
そのうちの4人には、カテゴリーKを4人投入することで抑え込んでいる。特にまずい伊203も、漣と伊36によって足止めは出来ている。特異点は特異点同士で競り合っているため、そこも考える必要がない。
となると残すは伊26。潜水艦としての戦力としては、2人よりは心許ないはずである。しかも、一度に大量の魚雷を放つなんて出来やしない。カテゴリーKですらそれが無理なのに、うみどりの艦娘がそんなこと出来るのかと。
だが、ここで考えを強制的に改めさせるモノが、目の前に現れる。そう、うみどりだけでなく、
「な、何アレ! 知らないんだけど!?」
「潜水艇……!?」
魚雷の爆発によって発生した泡が薄れたところで見えたのは、伊26の姿。だが、それだけではない。3艇の潜水艇がその後ろに陣取り、まるで潜水艦部隊のように2人をじっと見つめていた。
「ニムには少し荷が重いかもしれないけれど、でも、やらなくちゃいけないからね。即席潜水部隊、リーダー務めさせてもらうよ。みんな、いい?」
『だいじょーぶでっすー!』
『やってやるぞー!』
『が、頑張ります!』
その潜水艇は、おおわしの海防艦達。海底調査のために使われる潜水艇を、戦闘仕様に改装し、この場に出撃してきていたのだ。
昼目提督は正直、海防艦の参戦に及び腰であった。伊豆提督はもっとである。だが、海防艦達がそれを望んだ。それは、黒深雪と雷の境遇を聞き、他のカテゴリーKも同じような境遇であると知ったから。
その熱意に昼目提督は負けた。いや、そもそもが海防艦だって戦力として投入しなければ、海中での戦いは圧倒的に不利だった。そして、この3人は数合わせではない。間違いなく、おおわしが誇る戦力である。
「何よそれ、ズルくない!?」
「何とも言えないわね……アレをズルだって言ったら、空母や巡洋艦が潜ってるのもズルになっちゃうわよ」
「確か……に……?」
「あっちも使えるモノを使ってきたってことでしょ。でも、普通なら海の中にはいられない連中よ。潜水艦よりも素人だと思ってもいいんじゃないかしらね」
「そうかな、そうかも! わざわざあんなのに乗ってきてるんだし、割と無理のある戦力よね、アレは!」
瑞鶴はまだわかっているかわからないが、ともかくここにいる潜水艇という戦力も始末する対象として認識は出来たようである。
『あーゆーのは、見てて辛いので、ここで終わりにしまっす』
『うんうん、いいモノ見てる気にはならないしね』
『可哀想だとは思いますけど、やるしかないです』
逆に海防艦達は、何かを悟ったような物言い。これまでに何があったのかは語らないため、誰も追及はしないが、見た目に反して達観しているようにも思えた。
『ニムのあねご、一緒に、頑張りましょー!』
「うん、行こう!」
海中は更なる混戦模様。潜水艦やカテゴリーKだけでなく、調査隊の潜水艇すらこの戦いに自ら巻き込まれていく。