それから悩みに悩み、最後の戦いに出向く者を選定する。伊豆提督達は、最後まで納得行くカタチにすることは出来なかったが、今考えられる限りの最善を選択した。
「みんな、集まってくれたわね。入渠が間に合わなかった子達もいるけれど、それは仕方ないこと。怪我をしたまま出撃してくれという方が間違っているもの」
揃った者達は、今はほぼ無傷。工廠厨房で腹を満たし、癒しの『排煙』で心も万全にして、最後の戦いに誰が挑むことになるかを、ここで決める。
「時間をかけてしまってごめんなさい。あちらにも回復の時間を与えてしまったけれど、その分、こちらも万全を期すことが出来るようになったわ。それじゃあ、これから最後の戦いに出向いてもらうメンバーを発表するわね」
おおよそ決まっている者達であっても、緊張感はあるというもの。深雪や電も、自分が呼ばれることは確実であるにもかかわらず、この瞬間をドキドキしながら待っていた。
「まず、確実に出洲の島に向かうことが出来る海中の戦力。それは、うちにいる子全員を、残すことなく全て投入するわ。主戦場にもなりかねない場所だけれど、そこに全力をかけてもらう」
「自分でもわかっているだろうけれど、難なく海中に潜れる子達は全員が採用よ。潜水艦からは傷も治っているからフーミィにも出てもらうわ。スキャンプも勿論よ」
伊豆提督とイリスが読み上げていく。名前を呼ばれた者は、この時が来たのだと強く前に出る。
「深雪ちゃん、電ちゃん、黒ちゃん、雷ちゃん。特異点の力を、存分に使ってきてちょうだい。アナタ達に頼らなくちゃいけないのは、申し訳ないと思っているけれど、この戦力の差はどうしてもこういうカタチでしか埋められないわ」
「わかってる。あたし達、必ず勝ってくるからさ」
「なのです。特異点の力で、みんなの優しい願いを叶えるのです」
頼ることが堕落への道だと説いていた出洲だが、この頼り方は仕方ないモノ、そうせざるを得ないモノとして割り切る他なかった。
そこを出洲に突かれるだろうが、深雪はきちんと言い返すつもりだ。適材適所だし、頼られる以前に自分から来るつもりだったと。むしろ、特異点くらいしかまともに来れない場所に拠点を作るお前らが悪いと、あてつけのように言ってしまうかもしれない。
「現状海中を行けるのはこの6人。潜水部隊として、潜水艇の随伴をしてもらうわ。敵拠点に入ってしまえばそのまま戦力として乗り込んでもらうことになるけれど、それは大丈夫かしら」
「スキャンプは厳しくないか?」
「悔しいけどな。この中じゃあ、あたいが一番陸戦が出来ねぇ。拠点に辿り着いたら、潜水艇を見張っておいてやる。一度戻るってなら、それの随伴やってやるよ」
「ごめんなさいね、スキャンプちゃん。頼りにしてるわ」
スキャンプも喧嘩はやる方だが、主砲などを装備出来る特異点組、あらゆる方面で異常な強さを誇る伊203と比べると、どうしても見劣りしてしまう。本業ではないのだから当然といえば当然なのだが、今の戦いでは本人も残念だと思っていた。
だが、それもまた適材適所。艦娘達を送り届けた潜水艇をそこに置いておくにしても、一旦鎮守府に戻るにしても、単独で行動させるのは厳しい。そのため、スキャンプにはその随伴を常々やってもらうということになる。海中でなら十全の力を発揮出来るし、スキャンプの持つ『スクリュー』の曲解は、海中でなければ効果を発揮しない。拠点に入るより、自分を一番上手く使える海中に身を置く方がいいだろう。
「念の為最後にもう一度だけ聞いておきたいんだが……あたし達は一緒に出撃していいんだよ、な?」
「ええ、勿論。今のアナタ達がアタシ達に協力したいと思ってくれているのはわかっているんだもの。大丈夫よ」
「悪いな……でも、やっぱり不安でさ」
少し不安そうだった黒深雪が、改めてこの場で言ってもらい、うみどりの面々が誰もそれを否定しなかったことで、その気持ちを落ち着けた。雷も良かったと黒深雪の手を握って互いに安心する。
「スキャンプにも何か裏切るような行為をしたら後ろから撃つって言ってもらってるからな。あたし達は、それくらいでいいんだ。そうされても仕方ないことをしてきたんだから」
「そんなことはしないわ。でも、そう考えておいてもらえれば、私達もやりやすいの。他のみんなも、それくらいでいいから。私達がおかしな動きをしたら、容赦なく撃って」
「撃てと言われてやれるような子がここには」
「任せて。その方が速いから」
「いたわ」
伊203が無表情でサムズアップしたことで、少しだけ場が和んだ。そして、誰もが同じことを思っただろう。伊203なら躊躇なくやるだろうと。
「海中はこれで決定ね。じゃあここからは、潜水艇で突入する子の選定になるわ。今までで一番の激戦区になると思うわ。くれぐれも気をつけてちょうだいね」
ここからが重要。海中よりも難しい突入組である。
「真っ先に決まったのは、神風ちゃんと夕立ちゃん。狭い空間でも戦えること、砲撃が無くてもどうにか出来ること。そして、生存能力が高いこと。ここを第一に考えさせてもらったわ」
夕立は『ダメコン』、神風は超人としての技術。それから考えても、優先順位が非常に高い。ここに時雨が復帰してきていたら、スピードによる回避性能の高さがあって選ばれていただろうが、こればかりは無いものねだり。
「助かったわ。選ばれなかったらどうしようかと思っていたもの」
「神風は因縁があるからな……そりゃあ行きたいよな」
「あっちも私との決着を望んでると思うわよ」
神風は中柄との因縁が強い。そこを考慮しているかと言われたら、あまり考えられていないのだが、しかし、その決着がつけられそうなので安心している。
「次、3人目は子日ちゃん。狭い空間での戦いが得意で、『迷彩』で先んじて動くことが出来るから。ただ、姿を隠していても察されたと聞いているから、油断は禁物よ」
「はーい! いざって時は隠密行動するよ!」
子日も確定。狭い空間での戦いに長けている時点で採用はほぼ確実だったが、『迷彩』により忍び寄り、非戦闘員を先んじて排除出来るという強みもある。
「4人目は白雲ちゃん。残ったカテゴリーKの子を『凍結』で拘束してくれることを期待しているわ」
「かしこまりました。お任せくださいまし。罪ある者であれ、彼奴等は償うことが出来るやもしれませぬ。しかし、出洲は心の臓まで凍らせてもよろしいですね?」
「ええ、出洲は改心しないわ。残念だけれど、命を奪わないと話にならない」
白雲の『凍結』も頼りになる力だ。動きを止めることが出来るのは、どのようなモノであっても重宝する。誤爆が怖いところだが、そこは白雲の腕を信じているので問題なし。
「5人目はフレッチャーちゃん。あとから少しだけ時間をちょうだい。どの力を持っていってもらうかの選定だけしたいから」
「了解いたしました。お任せください。どのような力であっても、お役に立てるでしょう」
フレッチャーはその万能性での出撃となる。『量産』でコピーするのは、丹陽の持つ第一世代の力が、神風の『改装』による超絶パワーアップか。そこは最後の悩みになるだろう。
「そして最後、6人目。グレカーレちゃん」
「えっ、あたし!? てっきり選ばれないものかと思ってた!」
そして最後。6人目として選ばれたのは、他者に何か出来るわけではない力『羅針盤』を持つグレカーレである。本人が一番驚いていた。
「第二世代としての知見、経験、あとアナタの頭の回転の速さを買わせてもらったの」
「そこまで言われると照れるよ?」
「実力を発揮出来ると思っているのよ。それに、この部隊、アナタはモチベーションが上がるでしょ」
「それはそう」
グレカーレは高いモチベーションが高いスペックに繋がる。それも込みにして、ムードメーカーとして、そして誰よりも回る口を出洲にぶつけるために、残る者達が持つ恨み辛みを、全力で解き放つ。
グレカーレはその平和がどう間違っているかをノリノリで言い続けるだろう。出洲はどうせ理解出来ないだろうが。
「以上、6人にお願いするわ。残りはうみどり、並びに襟帆鎮守府の防衛に努めてもらうわね。逃げたかもしれないけれど、また攻めてこないとは限らないからね」
これにより部隊編成は完了。潜水6人、駆逐艦6人という非常に変則的な連合艦隊が完成した。
もうまもなく、戦いが始まる。大詰め、最後の戦いへ。
2026夏イベお疲れ様でした。自分は今回もALL甲、全艦娘ゲットで終わりました。E4-5で沼り、ヴィスビィ掘りで燃料12万持っていかれましたが、私は元気です。