後始末屋の特異点   作:緋寺

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異常な拡張

 ケッコンカッコカリが完了した深雪と電は、艤装との接続の確認も終わり、何事もないことが確定。カテゴリーWであることが悪い方向への影響を与えていないことがわかったことで、まずは一安心となった。

 

「一応だが、その状態で艤装の確認もしておく。接続してから何か変わったなんて言われても困るからな」

「そんなことあるのか?」

「基本的にはない。だが、カテゴリーWとなったら話は別だ」

 

 何処まで行っても謎の存在なのがカテゴリーWである。そもそも調査の結果として、適合率が普通とは違う200%を見せているくらいなのだ。このケッコンカッコカリによって艤装との結びつきが強くなったことで、その適合率が悪い影響を与えている可能性だってある。

 

「明日には試運転出来るようにしておく。妖精さんは涼が調査をしておくから安心してくれ」

「そうか、一応妖精さんにも何か影響があるかもしれないのか」

「練度の上昇と、艤装の力の向上ですから、妖精さんに何かあってもおかしくはないですね」

 

 艦娘本人は全て終わったことかもしれないが、艤装も妖精さんもそれに()()()()()()ことになるのだから、しっかり見ておく必要はあるだろう。

 それこそ、改二へと改装されたときにも妖精さんに影響があったくらいなのだ。ケッコンカッコカリも、何かしらの影響があってもおかしくない。

 これが悪影響だった場合は対策を考えなければならないし、良い影響だったとしても、それを活用する手段を考えたくなる。

 

「あたし達はそういうのわからねぇからな。2人に任せるよ」

「なのです。でも、もう夜ですよね。今からやるのです?」

「無論だ。こんな珍しい艤装を明日まで待っていられるか」

 

 時間としては、もうそろそろ寝るような時間。だというのに、冬月も涼月も寝る気配など全く無い。今すぐやらねば時間を損すると言わんばかりにやる気満々である。

 それもこれも、カテゴリーWという前例のない存在の艤装に触れているからである。艤装そのものはどう見ても艦娘と同じではあるのだが、冬月にとっては()()()()()。そもそも純粋種の艤装自体、触れられる機会が少ないくらいなのだから、余すところなく全てを見たいというのが本人の希望。

 

「いや、まぁ、そっちの司令がいいって言うならいいんだけど」

 

 深雪はその勢いに何も言えない。ここの鎮守府の方針には、うみどりの自分は口出しは出来ないのだから。

 

 

 

 

 翌朝。ケッコンカッコカリを終えた後、体調にも何もないことが確認された。むしろ少し夢見がいいくらいだったようで、深雪も電も爽快な朝を迎えている。

 白雲とグレカーレから見ても、心身共に癒されたとわかるほどである。メンタルは確実にリセットされた。昨日の軍港都市散策でやりたいことをやりたいようにやったことはやはり大きい。

 

「今日は艤装の試運転をするつもりなんだ」

「なのです。どんなカタチでやるかはわかりませんが」

 

 深雪と電は休暇2日目を最初ケッコンカッコカリ後の試運転から開始する。休みだってのに真面目だねぇとグレカーレは苦笑するものの、深雪はここに入る前から身体を鈍らせたくないと演習のことを考えていたくらいなので、これはこれで有言実行かと納得する。電もそれに引っ張られているようだが、当人達はやる気満々なので否定する必要もない。

 

「日程もどうなるかわからないから、今日は散策には行かないつもりでいる。早く終わったら午後からでも出て行ってもいいけどな」

「そっか。じゃあ、あたしもここに残ろっかなー。明日もあるし、なーんか嫌な予感がするんだよね」

「嫌な予感?」

「うん。その工作艦みたいなことしてるフユツキって子、夜中なのにミユキの艤装を調査するって躍起になってたんでしょ? そうなるとさ……次の()()ってあたしになる気がするんだよね」

 

 グレカーレの予感は、物珍しい艤装があったら睡眠時間を削ってでも調査するような艦娘が、後天的に深海棲艦に改造された挙句、艤装までガッツリ新規で発生してしまったグレカーレに照準を定めないわけがないということ。

 ある程度は自制心が利いているとは思われるものの、深雪とこうして触れ合うことが出来たことで、その自制心が少しずつ解かれていき、()()()()()のではないか。

 

「それこそ、夜のうちに調査したから動いてるところを見せてくれーなんて言ってきたりして」

「どうなんだろうな……やる気はすげぇってのはヒシヒシと伝わってきたけど」

「あたしも顔を見たわけじゃないから何とも言えないけどね。なんかそんな予感がするってだけ」

 

 取り越し苦労かもというグレカーレだが、まだ冬月がどういう艦娘かをちゃんと知らないため、そうなってもおかしくはないかと考えた。

 

 そして、それがわかるのが朝食の際。軍港鎮守府の食堂で食べている最中、冬月と涼月が入ってくるや否や、深雪の姿を見つけて近付いた。

 

「調査結果を伝えたい。この後、すぐに工廠に来てもらえるか」

「ああ、わかった。試運転もあるもんな」

「それもあるが、話しておきたいこともあるのでな。あと、グレカーレ……だったか、君も来てほしい」

 

 ほらやっぱりとグレカーレはドヤ顔交じりの苦笑。

 

「話は聞いている。君の身体を調査すれば、敵のやり方への対抗策が見つけられるかもしれない。協力してもらえるか」

「そう来るだろうと思ってた。でも、その分ちゃんと謝礼を貰えないとやる気が出ないなー。あたしの身体、そんなに安くないよぉ?」

 

 弄るようにニヤつきながらグレカーレが言い放つが、冬月は何も気にしないように返す。

 

「私の身体は涼のモノだから、別のカタチでならいくらでも払おう。新規の兵装がいいか? それならば、深海棲艦の艤装にも接続出来るように改良を加えねばならないな。艤装もある程度調査はさせてもらったが、艦娘とは接続が少々違う。特に君の艤装は主砲や魚雷の接続が艦娘と変化してしまっているから、独自のシステムを」

「はいストップ、わかった。謝礼とかはジョーダンだから。あと聞き捨てならない言葉が聞こえたけど、それもスルーしたげるから」

 

 グレカーレが少々焦るような物言いをするのは珍しい。戦場で振り回されることはあっても、私生活はむしろ振り回す側。それなのに、冬月のこの勢いにはタジタジである。

 おちょくって困る顔を見たいと思ったが、自分が困らされるとは思わなかった。グレカーレは大きく溜息を吐く。

 

「元に戻せる方法とか、調べられそう?」

「勿論、やることはやるさ。それを知るためには、隅から隅まで調べなくてはならない。協力してくれ」

「ん、わかった。あたしを調べれば、もう同じ被害者が出なくなるかもしれないしね。協力したげる」

「すまない。恩に着る」

 

 一礼してから、食堂で簡易的な朝食を貰ってすぐに出て行った。涼月も同じようについていく。

 これが冬月の平常運転らしく、軍港鎮守府の面々はいつものことだと何も言わない。詰め寄られた側としては驚きと呆れで声も出なかったが。

 

 

 

 

 朝食後の工廠。呼び出された深雪達の他には、既に待機していた伊豆提督とイリス、昼目提督、そして少し困った顔の保前提督がそこにいた。

 

「冬月、徹夜をするなと言ったよな」

「仕方なかろう。今回は迅速に事を為さねばならない。今ももしかしたら我々の街に敵が潜伏しているのかもしれないのだろう」

「それはそうだが、それでお前が倒れたらどうするつもりだ」

「大丈夫です。お冬さんはこの程度で倒れるほど軟弱ではありませんから。ですよね、お冬さん」

「ああ、涼の言う通りだ。私はまだまだやれる。それに、これが終わったら休むさ。その頃合いくらい自分が一番わかっている」

 

 上司の指示を当たり前のように聞かない問題児。しかし、それで成果を出し続けているのだから強く言えない。これがまた困ったモノ。

 事実、冬月が倒れたことは鎮守府に所属してから一度も無い。涼月による完璧な、そして()()()()()管理によって、限界を迎えることなく休むことは出来ていた。

 

「あんまり俺の胃を痛めつけないでくれ。ただでさえこの前の事件のせいで胃に穴が開きそうだってのに」

「艦娘用の人工臓器というのも計画している。戦場で致命傷を受けたとしても、すぐさま移植して代用品として扱える優れものだ。艤装と接続する必要はあるが、ドックでうまく取り払えば命を繋ぐことが出来る」

「俺は人間なんだよ。まったく……」

 

 伊豆提督と昼目提督はここで、保前提督が冬月も涼月も()()()()()()と称した理由がよくわかった。この2人は、研究のためなら自分の体調などは度外視する。そして、倫理観をたまに無視する発言も堂々としていた。

 朝から少し疲れた顔をする保前提督の肩をポンと叩く伊豆提督。その表情は、同情で満たされていた。

 

 そこから少し遅れて丹陽と明石が到着。トップが勢揃いしたことで、冬月が今回呼び出した件を話し始める。

 

「まずだが、昨晩ケッコンカッコカリをした深雪と電の艤装と妖精さんを再度調査させてもらった。そこで、面白いことがわかった」

「面白いこと?」

「カテゴリーWの特性なのかわからないが、思った以上に特殊であること。ケッコンカッコカリをしたことによって結びつきが強くなったからだろうが、その性能が()()()()()()()

 

 性能の拡張。これは流石にどの艦娘にも起きたことのない事象。

 

 ケッコンカッコカリを実施することで起きることは、これまで限界だった練度の上限が取り除かれ、より強くなれることの他に、艤装の燃費や取り回しが良くなることくらいである。基礎能力の底上げ、というイメージが強い。ケッコンカッコカリをしたから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 しかし、深雪と電はこの艤装との結びつきを強くしたことによって、艤装の性能が違う方向に拡張されていた。

 

「深雪、君の艤装は……恐ろしいことに、()()()()()()()1()()()()()

「……んん!?」

「電、君の艤装はさらに恐ろしいぞ。()()()()()()()()()()()()()()ようだ」

「どういうことなのです!?」

「知らん。事実を言っているだけだ」

 

 そのどちらも、深海棲艦の姫によくある特性だったりする。

 深雪の持つに至った装備スロットの増加は、艦娘ならばタシュケントにのみ許されている拡張性の増加。しかし、深海棲艦の姫には、駆逐艦であっても艦娘の限界以上に装備出来る者が数多く存在する。

 電の持つに至った艦種を超えた兵装も、深海棲艦の姫に稀にある機能。甲標的という限られた者しか装備出来ないモノであっても装備出来てしまう異常な性能。

 

 ケッコンカッコカリによって深海棲艦の要素が表に出てきていた。

 

 

 

 

 2人のカテゴリーWのケッコンカッコカリは、普通では無い方に向かっていた。

 




深海棲艦要素発現。
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