空母棲姫IIとの戦いに、三隈、那珂、舞風の3人が参戦。遊撃部隊の一員として、空母棲姫IIの攻略に挑む。
彼女の持つ『搭載』の曲解によって、無限に発艦し続ける艦載機は、戦艦主砲による砲撃すらも跳ね除けてしまう。また、雷撃に対しては射撃によって迎撃することで対処。徹底した攻防一体の手段として扱っている。
だが、三隈はその中でも1つ隙を見つけた。攻撃する時には防御が薄くなっていること、また防御に回している時には攻撃をしてこないこと。攻防一体に見せて、実際は同時に行えない。
「さて、どうやりましょうか」
ここで三隈は頭を捻る。空母棲姫IIの能力に、一応の隙があることは確認出来た。だが、それにどう付け入るか。
攻撃をさせてカウンターを決めるというのが一番通用しそうな手段ではあるが、空母棲姫IIは攻撃より防御を固めるタイプ。自分の艦載機が無限に発艦出来ることを理解し、艦娘達の弾切れを狙うような戦いを目指しているようにも見えた。
事実、それは非常に有効的。弾切れを恐れると攻撃の頻度がどうしても少なくなり、そうすれば結果として大体の攻撃が艦載機にシャットアウトされて弾切れに近付く。そして状況はより悪化していくという嫌な悪循環に繋がってしまう。
「弾切れを気にしないならば……ふむ」
小さく妙高にアイコンタクト。清霜の戦装大発に乗り込んでいる妙高は、その視線を感じ取り、ちらりと三隈の方に目を向ける。
三隈はこの場で全てを掌の上に置けるほど優れてはいないと自覚している。何でもかんでも思い通りになる戦場なんて何処にもない。だから、頼れる者にはいくらでも頼る。
その筆頭が、同じ巡洋艦である妙高だ。今でこそ三隈は巡洋艦ではなく水上機母艦だが、その繋がりは非常に強く、うみどり内では特に仲がいいと言えるほど。
「三隈さん、何か気付きましたね」
ボソリと呟いたのを、相乗りしている清霜が気付いた。
「なになに、この状況どうにか出来そう?」
「おそらくは。ですが、すぐにはわかりません。清霜さん、なるべく弾を抑えつつ、牽制は続けましょう。突破口は必ずあります」
「りょーかい! 戦艦は、こういう時に余裕を持つべし! 負けなど悟らず、常に前を向け!」
自分に言い聞かせているのは、かつて憧れていた武蔵の言葉。戦艦となるべく学びを得ていた時から、大戦艦から精神的な教えを常に受けていた。その時の言葉を、清霜はずっと心に刻んでいる。
敗色濃厚であっても余裕を持ち、前を向き続ける。高潔な戦艦としての心意気を、今こそ見せつける時。
そうしている間にも、三隈はそれを示し続ける。砲撃を放ちつつ魚雷を同時に放ち、攻撃と防御が同時に必要な場合の動きを観察。
魚雷は勿論広範囲に、砲撃は魚雷を破壊しようと動き出した艦載機に狙いを定めて。
「魚雷を押し通そうとしてるのが見え見えだ。その程度で、私の艦載機はやられやしない」
すると空母棲姫IIは、魚雷1つに2つ3つと艦載機を使う。射撃を妨害されたとしても、その後ろの、そのまた後ろの艦載機が確実に破壊をしようと数多くを消費。
実際、3機のうち、先頭の1機目が三隈の砲撃を受け止め爆発。2機目が射撃をすることで魚雷を破壊。そして3機目は──何もせずにまた空母棲姫IIの近くまで戻った。
三隈の本当の狙いは、魚雷を無理矢理にでも通すことではない。同時に攻撃した際の空母棲姫IIの挙動。どのような反応をするかによって、今後の戦い方が変わる。
魚雷のみならば射撃のみ、砲撃と同時なら保険をかける。そして、そうしたからといって他の艦載機を三隈に嗾けるようなことはしない。あくまでも慎重に事を運ぼうとしている。
艦載機1機1機を攻撃担当防御担当にすることは可能。攻撃担当は脆くなるが射撃も爆撃も可能になり、防御担当は攻撃が出来なくなる代わりに強固になる。この一手でそれは読んだ。
ならば半々にして一気に襲いかかることも出来るのではと考える。100機も周囲に置いておけば、それくらいは可能ではないのか。自分がそういう力を持っているのならば、間違いなくそうすると、三隈は考える。
「……そこまで器用ではない? 見えている範囲でしかコントロール出来ない? 意識出来る範囲が決まっている?」
あらゆる可能性を、道を見定めていく。出来るのにしないのではなく、出来ないのだと決めつけているようだが、少なからず敵6人に囲まれているのならば、全方位に向けての攻撃をしないのはおかしい。そんなに余裕を持って戦う相手には見えない。
「艦載機が全てを自動的に対処しているわけではありませんね。自衛のみは自動、射撃は自分でコントロールが妥当。だからすぐには攻撃してこない。なるほど、だから攻撃が消極的なんですね。守りは勝手にやってくれるけど、攻めは自分で考えなくてはいけないから……いや、空襲もオートですか。眼前を攻撃するのは自分の意思と」
三隈が考えるように、妙高も考える。先程のアイコンタクトで、三隈の思いがしっかりと伝わっていた。『一緒に突破方法を考えてほしい。そのヒントはこちらで出す』と。
長門と同じだけの火力を持ちつつも、試作兵装で出撃している清霜を守ることを優先はしているが、ジャミングを意識しつつも、敵の行動を三隈と同じように観察。先読みの精度を上げていった。
「常人が何十何百の艦載機を同時に動かすことなんて意識出来ない。妖精さんの助けがある艦娘とは違う。深海棲艦の生体艤装とも違う。高次の存在と言いながらも、そこは人力なんですね」
艦載機全てが生きているとなれば、それを全て読むことは不可能だ。それぞれの意思を汲み取り、その時々の動きを考えねばならないと言われたら、いくら視野が広くても限界がある。
だが、艦載機は何をするかをインプットされているAIみたいなもの。妙高が察するに、出せる自動命令は『行け』『戻れ』『守れ』の3つ。その内容を幅広く再現はするが、あくまでもそれは
そもそも艦載機に身を守らせること自体が、深海棲艦の空母もやらないようなこと。それをやっている時点で、本来の深海棲艦からは逸脱しているため、艦載機と言えど容量オーバーしていると考えられる。
つまり、なんだかんだで眼前への攻撃
「ならば、
徐に、妙高は戦装大発から降りた。清霜がギョッとしたものの、笑顔の妙高が戦艦ならば自衛くらい出来ますよね? と言うものだから、清霜は胸を張って任せてと宣言。
イロハ級がかなり減ったということもあり、今ならば動きやすいと行動に出た。
「清霜さん、攻撃はなるべく続けること。弾切れは意識するべきですが、あちらに
「通らなくてもいいの?」
「はい、守っている間は攻撃してきませんから」
「りょーかい! なら、守らせ続ける!」
清霜に指示を出しつつ、今度は長門にアイコンタクト。清霜の指示をそのまま乗せて、戦艦主砲での砲撃はなるべく途切れさせない方向で進める。長門と清霜が交互に撃てば、弾を節約しつつも防御を崩れさせないように出来る。しかも方向が違うので、盾にする艦載機も忙しなく動くことになるだろう。全面を包囲するように守っているが、それだけでは足りないように。
「那珂ちゃん、舞風さん、少し勇気のいる作戦があるのですが」
そして妙高は那珂と舞風の方へ。軽巡洋艦や駆逐艦の主砲ではどうしても艦載機を突破出来ず、魚雷も即座に艦載機による射撃で対処されるため、どうしたものかと悩んでいるところに妙高の助言。
ここにいる者の中ではこの2人にしか出来ないこと。むしろ、この2人がいるからこそ出来る策を、今ここで思いついたと語る。
それを聞いた2人は、驚きつつも自分のアイデンティティが活かされる策であるため、ほとんど二つ返事で承諾。策を提案しておいてかなり危険だなと妙高は本当にいいのかを聞くものの、大丈夫だと自信満々に答えた。
これは慢心でも何でもない。まず那珂はそういったことで慢心などせず、実力に見合った行動をする。無茶もしない。それに加えて、舞風も那珂と同様の考えを持つに至っているため、自分のことを理解してその策に参加する。
「私の力の範囲はおおよそ20mです」
「数字で言われてもここだとわかりにくいかなぁ。なので、那珂ちゃんはみょこさんにバックダンサーをやってもらいます!」
「ば、バックダンサー、ですか」
言葉はこれだが、やることはつまり援護である。妙高自身が距離を把握してくれればそれでいいと、完全に背中を任せると言い切った。
なるほどと納得して、妙高もそれを引き受ける。勇気のある策の発案者として、近くで見届けるだけの責任があるのだから。
「あとは、三隈さんですが……彼女なら察してくれるでしょう」
そしてここの信頼度は段違い。チラリと目を向けるだけで、三隈は小さく頷いた。その作戦を望んでいたモノであると確信して。
「では、すみませんが身体を張ってください。そうでもしないと、アレを止めることは出来ませんから」
「了解! それじゃあ、那珂ちゃんと舞風ちゃんのショー、始まるよー☆」
「音響効果も抜群! 眩しいステージで、みんなで踊ろう!」
海面を蹴って、この状況から一気に突撃の選択を取った2人。流石にここからこの動きを見せたら、空母棲姫IIも不審に思う。
破壊されない、破壊されても補充される艦載機の壁を見て、あえて突っ込んでくるとは意味がわからない。
自分が常識外にいるのに、常識から外れたことをされると思考が狂う。冷静であればあるほど、その停止時間はながくなる。
「なにを、するつもり!」
故に、空母棲姫IIが出来ることは壁の層を厚くすること。そして、意識出来る範囲で迎撃をすること。壁そのものが攻撃するわけではないが、最前面に敷き詰められた艦載機が一斉に射撃を放つ。そうしている間にも、清霜と長門の砲撃は止まっておらず、那珂と舞風に向かう艦載機はおおよそ3分の1。それでも面での射撃と思えるほどの圧力。
だが、その全ての射撃は、同時に動いている妙高の視界に入っている。そして、那珂も舞風もジャミング範囲内。
するとどうなるか。面の攻撃であるはずなのに、まるで道を開くように攻撃が2人から遠ざかる。嘘のような光景に、空母棲姫IIも目を見開いた。
「これは貴女方が私に寄越した力ですよ。何も文句は言わせません」
那珂と舞風がジャミングの盾となっているため、その後ろを陣取る妙高にも射撃は当たらない。距離だけを完璧に把握していれば、確実にその力を2人に影響させ続けることが出来る。
勇気がいるというのはここだ。敵が撃ってきても避けるな。弾が勝手に避けてくれるから。それを徹底してほしい。ただそれだけの、度胸が無いと不可能な策。
「うわぁ、本当に当たらないね♪ それじゃあ、那珂ちゃんのファンサービス!」
「舞風のファンサービスも一緒に!」
射撃は止めない。だが、どれだけ近付いても当たらない。強引にその向きを変えられているかのように、そして艦載機そのものがジャミングの影響で那珂と舞風に道を開く。
攻撃が攻撃にならない。ジャミングの力は、敵意を持てば持つほど強く作用する。
そして、
「持ってけーっ!」
2人同時に、踊るように繰り出された蹴り。それは、艦娘とはいえ生身であるにもかかわらず、艦載機を粉砕した。攻撃途中の艦載機であるため、防御力が失われていたのだ。
道は開いた。あとは、それを正しく踏破するのみ。