後始末屋の特異点   作:緋寺

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鬼神の進軍

 軍港鎮守府の艦娘達が先行して襲撃を仕掛けている、うみどりにとっては2つ目の裏切り者鎮守府。うみどりも到着次第、援軍としての襲撃を仕掛ける。

 部隊は1つ目の鎮守府襲撃と比べると人数は少なめ。まだ力が有り余っている夕立と子日に、イリスの目をコピーしたフレッチャー、そして忌雷キラーであるムーサである。

 

「ウワ、チョットイッパイイスギジャナイ?」

「うみどりが埋まってしまいかねませんね……ただでさえ先の鎮守府の艦娘も捕らえているのに」

 

 其処彼処で倒れている敵艦娘を見て苦笑するムーサ。フレッチャーも少し心配そうな表情を見せる。それを拾い集めるのは、襲撃を仕掛けないうみどりの艦娘達。後始末屋として海を綺麗にするため、また、捕虜とするため、早急に回収していく。

 幸い、まだうみどりにはそれをするだけの戦力は残っているし、場所も一応はある。捕虜がぎゅうぎゅう詰めになりかねない状況ではあるのだが。

 

「これ、全部綾波がやったっぽい?」

「可能性は高いよね。ほら、艤装の壊し方がすんごいよ。確実に一撃で全部終わらせてるもん」

「綾波は器用だよね。しかもまだまだ強くなってるっぽい。また戦いたいよ」

 

 話しながらも、敵艦娘に構っている時間はない。それが攻撃してくるならまだしも、何もせずにそこにいるなら、わざわざ触れる必要も無い。回収は仲間に任せて、今は先を走る仲間達に追いつくことを最優先とする。

 

 うみどりで『増産』した特機達は、フレッチャーが何体かは連れてきている。ムーサが食べたそうにしていたものの、コレはダメだからということで我慢してもらっている状態であり、1体も渡すことはしていない。

 本来なら倒れている敵艦娘にも念のため忌雷の引き抜きをしておきたいところなのだが、1人1人構っているとそれだけでも時間がかかってしまう。

 そのため、やはり放置が現状の最適解。そうせざるを得ないことにフレッチャーは小さく謝りつつ、しかしその目はそちらではなく進むべき方向を見据えていた。

 

「数が増えてきています。近付いていますね」

「ぽい。やっぱり鎮守府は守ろうとしてるみたいだね」

「前のところもそうだったけど、工廠とか集まってどうにかしやすいところだもんね」

 

 あちらの戦術は、既に夕立達が体験しているモノ。補給線がすぐそこにあることを活かして、艦娘達が工廠から海に向けて弾幕を張る。陸には上がらせないと、人数を使っての一斉射をひっきりなしに放つ。

 前回の時は、白雲が氷の礫を放ちながら拮抗し、その隙をついて夕立が単独で工廠に突入。そして敵のど真ん中で全員を相手に無双を繰り広げた。結果的にそれで敵の懐は崩れ、全員上陸の一手目になっている。

 

「陸ニハ忌雷ガイッパイアルノ?」

「んー、そこの鎮守府のやり方次第っぽい。前のところはドックにいっぱいいたってだけ。でも、罠みたいにいろんなところに置かれてる可能性もあるっぽい」

「ジャア、ソレヲ見ツケタラ食ベチャウネ」

「綾波や暁なら、先に荒らしまわってそうだけど」

 

 見つけた先から破壊しているのではと予想する夕立。子日もそれには一切否定する要素が無かった。

 綾波もそうだが、今回は忌雷を破壊出来る電磁波が放てるようになっている暁もいる。冷静沈着な暁ならば、動揺すらせずに片っ端から破壊し尽くしていそうだと予想していた。

 

「見えました。工廠……ですが」

「うわぁ、これはまたすごいことになってるっぽい」

 

 遠目に鎮守府、そして工廠が見え始めたので、気を引き締めようとしたが、そこは既に()()()()()()()()()()()()有様だった。

 

 近付くにつれて増えていった敵艦娘だが、やはり工廠は待ち構える艦娘の数が段違い。艦種もバラバラで、カテゴリーもCや擬似Kが混在。

 だが、そのどれもが全員敗北し、その場に気を失って倒れていた。積み重なっている者や、壁に叩きつけられている者、勿論海に落とされている者もいる。その全員が息はあるものの、起き上がることは出来ないくらいには消耗させられていた。

 

「……凄まじいですね。少数精鋭でここまで出来るとは正直思えないほどですが……」

「綾波ならやるっぽい。敵の真ん中行ってボッコボコ」

「それだけの実力があるんだもんなぁ」

 

 足の踏み場も無いというわけではないのだが、上陸がかなり困難なくらいに艦娘が倒れており、どうするかと悩んだところで先陣を切るのはムーサ。

 

「何人カ、()()()()ガイルネ。中身食ベチャッテ、艤装ハ剥ガシテオクヨ」

「お願いします。私達ではそれも難しいですので」

 

 この倒れている艦娘の中には、『増産』持ちの擬似カテゴリーKも少なからずいる。それについては、ムーサが忌雷の匂いで感知し、発見次第艤装を強引に引っ剥がした挙句、中に入っている忌雷を根こそぎ回収する。

 気を失っていたら増産は働かないが、それまでに増やされた忌雷はそこにいるまま。綾波が艤装をしっかり壊しているものの、それから逃れることが出来た忌雷というのも存在する。その場では誰かに寄生するなんてことは出来なかったが、自身を罠だとして、気が抜けたところで外に出てやろうと考えていた個体もありそうだった。

 だが、ムーサにはそういう搦手は通用しない。匂いで探し当てられて、蠢く間もなく捕まり、そしてそのまま口の中へ。存在そのものが忌雷に対しての抑止力となっていることがよくわかる。

 

「ンー♪ 変ワラズ美味シー♪」

「いつ見てもコレだけは慣れないっぽい」

「子日も。忌雷はあんまりいい思い出ないし」

「あ、あはは……」

 

 この場でも忌雷を食い散らかすムーサに呆れつつも、本題のために動き出す。

 

 ムーサのおかげで上陸しやすくなってきているため、早速陸に上がる。邪魔な艦娘は端に寄せておいて、比較的歩きやすいように整備。事が済めば、ここで倒れている者達もうみどりが回収するため、今は多少雑でも気にしないことにした。むしろ敵なのだから気にする必要もないと夕立は断言。

 あとは先行している部隊が何処にいるかになるわけだが、やはりそこは前回の戦いのことを思い出せばいそうな場所は見当がつく。

 

「いるなら地下っぽい。さっきのとことはちょっと違うけど、ここも多分執務室から地下にいけるところがあるっぽ……っ!?」

 

 そう話した時には大きな爆音が鎮守府内に響き渡った。確実に戦闘音。これ以上無いくらいに激しい音は、戦艦の主砲辺りが放たれたような音である。

 地上の何処かが破壊されたようには聞こえなかった辺り、既に地下にまで潜入出来ていると考えられる。

 

「多分コッチ。忌雷ノ匂イガ強イヨ」

 

 ある程度敵の艤装を剥がしたムーサがここからはまた先陣を切る。爆発に対しては全く気にすることなく、ただ忌雷が多くいる方というのを気にしているだけ。戦闘に参加することになるかもというのも、そこまで気になっていない様子。

 

 ムーサがこっちだと言う方には、艦娘だけでなく出来損ないも倒れていた。こちらは、うみどりでの戦い方とは違う対処をされている。白雲の凍結も無ければ、深雪の消し飛ばす砲撃も無い部隊が、出来損ないにやれる手段はたった一つ。

 

「仕方がないことではありますが……これもまた電磁波照射による終わらせ方なのでしょう」

 

 暁の持つ電磁波照射装置によって忌雷が破壊されたことで、出来損ないも機能を停止していると見ていい。体液を撒き散らすことになってしまうのは仕方なく、しかし内部を破壊されるように処理されているため、カタチは比較的残っていた。

 邪魔な体液は砲撃で噴き飛ばしたのだろう。廊下のところどころは酷く抉れ、無理矢理道を作っているような体裁。これなら前に進めると、その作られた道を進む一行。

 

「やっぱり執務室だ。扉もしっかり壊されてる……うわっ!?」

 

 執務室に辿り着いた瞬間に、再び大きな爆発音。鎮守府全体が揺れているため、やはり地下で戦闘が繰り広げられているのが嫌でもわかる。

 

「匂イ、ココガ一番強イヨ。ソッチニ繋ガッテル」

 

 ムーサが匂いを辿った先には、案の定地下に続く梯子が。この辺りは陸の鎮守府なら作られているモノなのだろうかと首を傾げる。裏切り者の鎮守府には基本存在すると結論づけて、今はここから降りるしかない。

 ここもやはりムーサが先頭。忌雷があるにしてもないにしても、ムーサがいれば確実に安全である。

 

「ワ、壊レタ忌雷ガ沢山。勿体無イ」

 

 地下に降りると、既に破壊された忌雷がいくつか落ちていた。やはりここに罠を仕掛けられていたと考えられる。ここまで追ってきた者に寄生し、ミイラ取りがミイラになるような罠。

 しかしそれも暁の手にかかればあってないようなモノ。絶対そうされているからと電磁波を先に照射し、しっかり破壊してから行動していたようだ。残存する忌雷すら1体もいないことから、かなり念入りに照射したと考えられる。

 

 全員が地下に降り立ったところでまた爆発音。今度は近付いているために衝撃も少し感じ、肌がビリビリと震えるようにも思える。

 

「近いっぽい。きっと綾波達が戦ってるっぽい!」

「助けに行かなくちゃね!」

 

 通路の造りは前の鎮守府とほぼ同じ。真っ直ぐ行けば広間に出る。そこで大掛かりな戦闘が繰り広げられているのはすぐにわかった。

 

「いた! うみどりからの援軍っぽい!」

 

 ここまで来たらムーサよりも夕立が先頭に立つ。緊急事態に陥らぬように、緊張感を持って、慎重だが大胆に広間に飛び込んだ。

 

「あらぁ、こんないいタイミングで増援なんて、助かりますね〜」

「ええ、ホント。少数精鋭だったから斃し切れるか不安だったけど、これなら行けるわ」

 

 夕立の登場に綾波と暁が反応。よく来てくれたと笑みを浮かべる。

 少数精鋭というだけあり、今ここにいるのは綾波と暁、そしてお馴染み夜戦忍者こと川内。たった3人で鎮守府をここまで荒らしたらしい。

 実際、うみどりは人数を揃えたことによって敵をほぼ傷付けずに救っていたが、ここの敵はかなり怪我をしていた。鎮守府そのものも大分傷ついていたので、後のことを考えなければコレだけの人数でも圧倒出来るということが証明される。

 

 しかし、ここにいる敵は3人では荷が重すぎたのだろう。増援を素直に喜ぶくらいである。

 

「……え、なにこれ」

 

 そこにいた敵が目に入り、夕立は唖然とした。

 

 それはおそらく出来損ない。そうとしか見えないのだが、明らかにおかしいところがあった。()()()()()()()()

 出来損ないなら、本来の艦娘の大きさを維持しつつ、艦娘らしさ深海棲艦らしさを取っ払ったただのバケモノになるのがコレまでの通説。むしろそれ以外見たことがなく、艦種が変わるようなこともなかった。

 しかし、それは明らかにおかしい。元が何だったかもわからない。戦艦の主砲らしきものは放ってきていたが、それが戦艦とは一言では言い表せない異形。

 

「戦闘力が出鱈目なの。気をつけて」

 

 暁が冷静に伝えるが、砲撃の音で掻き消されそうになった。

 

「そんなの見ればわかるっぽいー!」

「な、なんなのアレ!?」

 

 そんな子日の叫びに、綾波は苦笑しながら答えた。

 

 

 

 

「アレがここの裏切り者の()()()()()ですよぉ」

 

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