後始末屋の特異点   作:緋寺

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手土産の処遇

 瀬石元帥も含む、様々な組織のトップが集まった簡単な情報共有。阿手の本拠地である島への襲撃をするにあたり、すぐには決められないということがわかったことで、一度纏まる。敵の能力が未だ未知数なところもあり、まずは敵味方問わずに曲解がどのようなモノを新参である有栖提督に提供することで、策を練る人数を増やすことで落ち着いた。

 

 しかしここで一波乱。ここで昼目提督の取り出した手土産。どう見ても()()()()()()()()()()()()()()()をしていた。

 

「……一応聞いておくが、それ、何じゃ?」

 

 元帥すらもそれについて恐る恐る聞く。対する昼目提督は、悪びれもせずに言い放った。

 

「そりゃあ勿論、()()()()でさぁ」

 

 前回は前振りもなく生首の入ったケースを画面に出したことで伊豆提督から苦言を呈されたこともあったため、今回はまず見せるのではなく隠して箱の状態から出したらしい。

 そういう問題じゃあないと呆れる伊豆提督。元帥もまさかここに持ってくるとは思っていなかったため、驚きを隠せていない。丹陽は表情を変えていないが、若干空気が冷たくなったような気がした。

 

 保前提督はそういうモノがあることは知っているし、実際に声も聞いているため、これがそのと関心を示していた。まだ顔を見ているわけではないため、余裕はある。

 そして有栖提督はというと。

 

「生首……以前話には聞いたが……」

 

 元帥から原元元帥が生きており、敵の組織の一員になっていたこと。それがうみどりに襲撃を仕掛け、そして返り討ちにしたこと。その際に()()()()()()()生首になって調査隊が保管していること。そこまでは有栖提督も聞いていた。現物を見たわけではなく、かつ元帥からただ聞いただけ。いくら元帥の言葉であっても、半信半疑なところはあった。

 

「コイツ、前のココでの戦いから何も話さなくなっちまいまして。あん時にオレに出し抜かれたのが余程ショックだったみたいでしてね。プライドをズタズタにしてやったとはいえ、何も話さないならもう要らないんですわ」

「で、手土産としてここに持ってきたと? 誰への土産にするつもりだったんじゃ」

「土産ってのは言葉のアヤで、正直、コレをどうするか決めたいんスよ。オレとしちゃあ、もう廃棄でいいんスけど」

 

 昼目提督に対しては、おそらく何があっても話はしない。誰よりも敵対心が強く出ており、二度とあんなことにはならないと苛立ちも強く出ている。何をどうされても表情すら変えないところまで来てしまっているため、調査隊としてももう不要なモノとなっていた。

 

「こんな姿とはいえ、一応は第二次深海戦争の時の元帥よ……?」

 

 伊豆提督はそういうところは変に律儀である。今は敵であっても、元人間であり、瀬石元帥の上司という立場にいた者だ。それを廃棄するしないと扱うのは如何なものかと。

 だが、そこに口を挟んだのは、それの詳細をまだ知らない保前提督だった。

 

「元帥かもしれないが、今はどう足掻いても敵だ。しかも、人類の敵レベルだ。情報を持っていそうだから生かしてやっていたけど、忠犬でももう聞き出せないんだろ?」

「うす。()()()から一度も口を開いてないんスよ」

「だったらもう取っておく必要もない」

 

 軍港都市を混乱に導いた者の仲間なのだから、保前提督からしてみれば迷わずに極刑宣告をする相手。処遇を決めろと言われたら、ノータイムで捨てるを選択する。

 今でこそ復興はしているが、軍港都市を傷つけた者に対する恨みは相当根深い。当事者でなくても、その組織に属しているどころか、かなり上の方の立場の者だと言うのならば、同罪どころか責任を取ってもらわないと気に入らない。

 

「最終的には極刑じゃな。じゃが、何も話さんかもしれんが、まだまだこちらも知りたいことが山ほどある。すぐに始末をつけるのはやめておこうかの」

 

 情とかではなく、単純にまだ情報源になるのではということで、元帥は今すぐ終わらせるのではなく、もう少し生かしておいてから、聞けることは全て聞いて終わらせる方針。

 元帥がそう言うのならばと、保前提督は一歩下がる。確かに今は少しでも情報が手に入ることが重要。口を封じるのはその後でもいいと思い直した。

 

「まずは見せてもらってもいいだろうか。どういう状態なのか知っておきたい」

 

 ここで最も知らない有栖提督が生首の状態を見たいと発言する。他の者は多かれ少なかれ原の生首について理解があるが、有栖提督は自分でも言うようにこの戦いには新参。又聞きの情報では足りず、見られるなら直に見ておきたい。

 特異点を信用するために直に見に来たくらいなのだから、こういったココにしか無い情報は余すところ無く取り入れていきたいというのもわかる話である。

 

「ああ、そうっスね。見たことないのもいるんで、一度生で見てもらいましょうか」

「儂も生では見たことがないからのう……心の準備だけはしておこうかの」

「うす。じゃあ開けますぜ」

 

 まだ何も見えていない箱を開け、中からケースが取り出される。小型の培養槽のようになっているそれの中には、深海鶴棲姫──原元元帥の頭だけが鎮座していた。

 

 画面越しで見たことのある瀬石元帥が息を呑み、声しか知らない保前提督は目を見開いた。そして、有栖提督はというと──

 

「……これが先代の元帥」

 

 汚物を見るような目でそれを眺めていた。明確な敵であり、自分達が正義であると言いながらも、やっていることが正気ではない、()()()()集団の1人。第二次深海戦争での所業により、この世界を歪めた張本人の1人でもある。結果的に第二次深海戦争に勝利したのは功績かもしれないが。

 有栖提督の中では、敵の組織の一員という時点で嫌悪感が凄まじく、しかしそれを表に出していては事が進まないため、合理的に考えて感情を徹底的に抑えている。

 

「お久しぶりですな、原さん。その姿で直に相見えるのは初めてですかな」

 

 至って冷静に言葉を紡ぐ瀬石元帥。対する原は目を瞑ったまま反応無し。一度いいように使われたことが余程気に入らないのか、何を言われようと、何をされようと、もう口は開くつもりはないと噤んだまま。

 

「まぁ、儂が何を話したところで、貴女は何も話してはくれないでしょう。自分より下だと思っていた者に出し抜かれたことが、余程堪えたようですな」

 

 当てつけのように話す元帥にも、原元元帥は無反応。流石にもう感情で少しでもブレるようなことは無さそうだと、瀬石元帥は苦笑した。

 

「どうせ話してくれないとは思いますけど、二、三聞かせてもらいますよ。貴女は、出洲派なのか阿手派なのか」

 

 派閥があることは知っているため、ど直球にそれをぶつける。原がどちらに属しているかはまだわからないが、あの海賊船に乗っており、かつそこには阿手のいた痕跡もあるため、どちらかといえば阿手派であろうという憶測はある。出洲よりも私利私欲を優先しているところが見えているため、そういう点からも。

 とはいえ、本人の口からちゃんと聞いた方がいいということ、そしてその辺りもわかっているぞと伝えるために、あえてその質問をした。

 

 原元元帥は派閥の話題が出たところで、表情ひとつ変えない。まるで聞こえていないかのような素振りである。実際は普通に聞こえているだけであり、徹底的に無視しているだけなのだが。

 

「元帥閣下、この生首に対して、どのようなことまでしていいのでしょうか」

 

 ここで有栖提督がそんなことを口にした。この言い分からして、ただ話を聞くだけでは終わらないぞと宣言したようなモノである。

 

「ふぅむ……これがまともに人型ならば、尋問も拷問も人道的に抵抗があるが……」

()()は既に人ではありません。戻せる要素も無いのならば、もう人間としてカウントしなくてもいいのでは?」

 

 うみどりに救われたカテゴリーY達は、まだ人のカタチをしている上に、被害者でもあり、ここに来るまでにうみどりの活動を手伝っていることもあるため、何とか人間に戻す手段はないかと研究されているのだが、今の原元元帥はどう見ても人間に戻す云々の問題では無くなっている。身体を返したら何をしてくるかわからない。しかしこのままにしていても埒が明かない。

 強制的に人間に戻せるならやっているが、コレに関しては特異点の力であっても今のところは不可能。挟んでひっくり返したら、その記憶を受け継いだ純粋種の艦娘が生まれ、これまでの悪行に苦しめられるという大惨事。その手段では人間には戻れないことが確定している。

 

 ここで人間としてカウントしないとなれば、人道が通用しなくなる。つまり、この生首に対してやりたい放題出来るようになる。

 それに対してあちらが文句を言ったとしても、こちらの命を脅かす存在に対しての研究に何の文句があるのかと突っぱねることも可能だろう。深海棲艦の研究をし、いち早く戦争を終わらせることは人類の急務なのだなら。原元元帥は、元々人間かもしれない。だが、誰がどう見ても深海棲艦であり、かつ生首でも生きているバケモノに、どうすれば人間という証明が出来るのだ。あちらがどう答えてこようが、論破が出来そうな状況である。

 

「お、そこの枷が外せるなら、良い案がある。うちにはちょうどそういうのを調査したがってる工作艦がいてな。好きにやっていいと命じると、本当に好きにしてくれるぞ。頭を掻っ捌きながら、内容を読み取ろうともしたりするだろうな。人間相手だったら残酷すぎてやらせるわけがないが、それは人間じゃない。許可を貰えれば、いくらでもやるぜ」

 

 そこに保前提督の追い討ち。有栖提督は今後のことを考えて合理的に人外として扱った方がいいと意見を出したが、保前提督は私怨もある。

 

「オレも賛成っスね。何ももう言わないなら、そうでもしないと先に進めねぇ。どうせ始末するんだ。だったら情報は引き出したいところだと思いますがね」

 

 昼目提督もそれに乗る。長くおおわしに置いていたことで、原元元帥のことを特に終わらせたいと思っているのは昼目提督だ。救えないカテゴリーYはコレまでも始末していたのだから、コレも別に命を奪うことに躊躇いなんてない。

 

「残酷なことを言えば、いくらでも手段はありますよ」

 

 さらに丹陽まで口を挟んだ。

 

「原さんに身体を返した後、深雪さん達にひっくり返してもらって純粋種にしてもらえば、こちら側に戦力として加えた挙句、その記憶を洗いざらい話してもらうことも可能ですからねぇ」

 

 とても残酷な手段。ひっくり返されて生まれた艦娘には、この記憶を抱えたまま生きてもらわねばならなくなるのだ。フレッチャーが今でもまだ引っ張ることがあることを考えると、ここまでのことをしていた原元元帥の記憶を持つだなんて、それだけでも精神的な負担が大きすぎる。壊れるだけでは済まないだろう。

 

「ですが、私達は案だけは出しますが、それを実行に移すことはしません。()()()()()()、私達には理性がありますから。やりたいから他人を犠牲にしてまでやるだなんて考えません。それが例え敵だとしてもです。組織の上に立ったから何をやってもいいだなんて、普通なら絶対に考えないんですよ。貴女にはそういう考えがなかったようですけどね」

 

 丹陽には珍しい、激しい煽り。笑顔ではあるが、目は全く笑っていない。見る者が見たら心臓が縮み上がりそうな程の恐ろしい表情。

 

 だが、そんな言葉も原元元帥の心を動かすには至らない。何故なら、ここまでされても、ここまで言われても、自分が正しいと信じて疑わない人格破綻者だからである。

 

「もう何も聞けないと思います。それに、コレを助けに来る者もいない。完全に捨てられたと思った方がいいでしょう。だったら、このまま置いておくのは色んな意味で損をするんじゃないですかね。私は、処分をオススメしておきます」

 

 これで丹陽は意見を終える。

 

「……もう少し考えておこうかの。今すぐに答えは出せんよ」

「ですね……アタシもコレばっかりは」

「2択ではあるんじゃよ。そのまま消すか、弄くり回して消すか」

「まぁ……そうですね。人道として見るか否かが最大の問題ですね」

 

 瀬石元帥も伊豆提督も、この生首に対しての結論は出せず。今ここで終わらせることは断念し、ひとまずこの場はお開きとした。

 原の生首はまた箱の中にしまわれ、何も出来ないようにロックされる。休暇の間は、大本営にお持ち帰りが出来るように、瀬石元帥がここまでやってきた車に積み込まれることとなった。

 

 

 

 

 ここからようやくトップ陣も休息に入る。それが本題であったところもあるので、若干心労が増えつつも、今からは消耗しきった身体を癒すために時間を使うことになる。

 




結局すぐに結論は出せず。とはいえ、戦犯も戦犯なので、イカれコンビに引き渡してもいい気がしますけどね。
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