後始末屋の特異点   作:緋寺

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わからぬ内情

 有道提督に連れられて、部屋に通された一同は、用意された席に着き、今後の話をしていくことになる。

 全員で押しかけてくることはないと踏み、ある程度あれば大丈夫だろうと考えた有道提督、うみどりからやってきたのが6人ということで、割とギリギリだった模様。全員座れて一安心。

 

 その部屋には通信用の機器も用意されており、大きなスクリーンも完備。コレを使えば、いつでも元帥達と連絡が取れるようになっている。作戦会議をするにはもってこいな場所。

 

「粗茶ですが」

「あら、これはどうもご丁寧に」

 

 着席したところで、鳳翔が全員にお茶を淹れて配っていく。こういう時こそ、落ち着いて話が出来るようにと気遣い。

 全員に配り終えた後、伊豆提督が軽く啜って喉を潤し、鳳翔が着席したところですぐさま本題に入る。

 

「早速だけれど作戦会議よ。やるべきことはみんなわかっていると思うけれど、阿手の本拠地である島への襲撃。最終目的は、阿手の()()よ。この辺りは全員の頭に入ってると思うわ」

 

 今回は生かして捕えるなどという余裕のあることは言わない。最初から、その命を奪っても構わないという覚悟で進めている。

 ここまで好き勝手されたのだから、一切容赦はしない。というよりは、加減なんてしていたら足を掬われることになると最初からわかった上で、話すら聞く理由もないと断じて、()()()()()()()

 

「それを踏まえて、有道ちゃん、連絡を取ってもらえるかしら」

「はい、すぐに。事前に話はしておいたので、ここから通信かけますね」

 

 さらっと機材を操作すると、すぐに通信が始まる。先にアポを取っているだけあり、瀬石元帥も有栖提督もかなり早いタイミングでその通信を受けた。

 スクリーン上に顔が映し出されると、深雪は以前にあった鎮守府全体のオンライン会議を思い出す。だが、あの時とは心持ちが大きく違っていた。

 

「……ついに、だな」

「なのです」

 

 この作戦会議が終われば、阿手との戦いが本格的に始まる。そう思うと、どうしても緊張が走るというもの。

 

『全員揃っておるようじゃの。ふむ、艦娘達もおるならそれでよい。そのまま進めていこうか』

「はい、よろしくお願いします」

 

 こうして、最後の作戦会議は始まった。

 

 

 

 

 ある意味、作戦なんてあって無いようなモノだったりするのだが、段取りを考えることは大切。

 

「島の中を細かく見ることは出来ちゃいねぇんですが、言っちまえば、見た目は普通の島っス。軍港みたいな都会じみた感じはしねぇ、なんつーか、素朴な感じって言やぁいいんですかね。漁港があって、村みてぇな街並みがあって、島の中心には山があるっつー感じです。漁業で食っていってんのか、あの海賊船みたいな漁船もまだありましたぜ。流石に武装してるようなこたぁありませんでしたけど」

 

 調査隊が見てきた島の実態は、あくまでも外観上のモノ。見た目だけでいえば、割と何処にでもある有人島であり、その中には普通に街があるというイメージ。ぱっと見では、そこで何かが行なわれているようには見えず、何気ない毎日を何気なく過ごしている、素朴な田舎という感じ。

 しかし、実際に白雲は呪いによる本能でその島を襲撃しようとし、返り討ちに遭っている。それが艦娘なのかもよくわからないと深雪は聞いている。当時には忌雷は無かったはずだが、それがどのようにされたのか何者なのかは、今では見当がつかない。

 

「オレ達ゃ、近付きすぎないように遠目から見ていただけなんで、出せる情報はコレくらいっスね。とはいえ、中で何かしてるのは確実ですぜ。見えないように偽装してる感もバリバリにあった。疑って見りゃ、全部がそれらしくなるってのはありますがね」

 

 調査隊の調査はそれくらいしか出来ない。無闇に近付くと、これまでとは比べ物にならないくらいに危険な場所である。

 

『それについては、こちらでも少し調べさせてもらった。調査隊もおそらく調査済みだとは思うが、素人が見ても疑問に思えるところを共有しておきたい』

「いや、そりゃやってもらえるのは助かる。こっちだけでやるよか、他の組織の考え方も知っておきてぇ」

 

 ここで、通信の向こう側から有栖提督が口を挟む。調査隊ほど活動的に調査をすることは出来ないが、過去の文献を漁るなどは出来るため、その島がどういうモノなのかはある程度確認は可能。

 勿論、その辺りは調査隊だって確認はしている。島の内情を歴史から紐解くことも調査のうち。外交記録だって当然見ているが、有栖提督の調べたことというのは、少し違ったところ。

 

『その島は()()()()()()()()()()()()()()。有道提督、近海警備をしているそちらも、思い返せばそうであると思わないだろうか』

「確かに……方角的なモノですけど、そちらの方面で深海棲艦の発生は少ない感じがします。無いとは言わないですけど、出てきても駆逐艦がちょろっととかです」

『ならば、近海に発生した深海棲艦を()()していたと考えるのも妥当だろう。秘密裏に、情報も残さず。では、それをどのようにしていたかになるが』

「島ン中に戦力を隠し持ってるってのが妥当だろう。オレ達がいる間に深海棲艦が出てくれりゃ話は変わったかもしれねぇけど、流石にそれらしいモンを表にゃ出しちゃくれねぇわな」

 

 それに近いところは調査隊も確認はしていた。有道提督に()()()()、交戦記録も漁られている。それを聞いた時、いつの間にと驚愕していた。

 確かに深海棲艦の発生の記録はかなり少ない。有道鎮守府からも、島方面に艦娘が向かったことはあまり無かった。領海哨戒をしていても、島までは近付いていない。

 

 だが、深海棲艦があまり出ていないという記録が30年近くとなれば話が変わる。本来ならばそこまで注視しない情報でも、現状と突き合わせると疑問しか浮かばない内容になる。運がいいでは納得出来ないモノに。

 

「タシュケントちゃん、潜水艦時代にあの島の近くを潜航したことってあるかしら」

「そうだねぇ、あたしもあの頃は拗らせていたからアレだけど、多分近くは通ってるよ。正直、あの頃は恨み辛みに任せて当てもなく彷徨って奴らを探していたようなものだし」

 

 過去30年で海中を動き回っていた第二世代の潜水艦も、その島の近くを通過はしている。しかし、やはりと言っていいか、深海棲艦と交戦するようなことはほぼ無かったと言えるようだ。海中から何処で交戦したかを判断するのは難しいことではあるが。

 

「白雲が呪いに任せて襲撃を仕掛けた際も、やはり深海棲艦などは見えておりませぬ。島に戦力があることは確実なのですが、それが何モノであったかは、とんと見当がつきませぬ」

「つーことは、艦娘らしきも無かったってことだ。つーか、そんな島に艦娘がいるっつーなら、大本営に確実に登録されてる。それが無ぇんだから、いたとしても違法だな。閉じられた島とはいえ、深海棲艦被害が殆どなく、カテゴリーMに襲われても返り討ちに出来るってのは確実におかしい」

 

 結局話は堂々巡りになってしまうのだが、島の内情は簡単にはわからない。わかるのは外見上のみ。

 ただ、裏切り者達がちょくちょくとその島に向かっていたということはわかっている。外交記録にも残さない、密約じみたやり口が。裏切り者鎮守府に潜水艇があったことからも、見るべきは海上ではなく海中ではというのもある。

 

『そんな島に襲撃を仕掛けるわけじゃが、部隊は三方面に分けた方がいいじゃろう』

 

 瀬石元帥の提案は、3つの部隊に分けての襲撃。

 

 1つ目は、港にダイレクトに向かう強行軍。正々堂々、正面からぶつかる、最も危険ではあるが最も確実な部隊。ここには強力な戦力を投入し、何が来ても返り討ちに出来るくらいにしておく。

 有栖提督が遣わしたウォースパイトとヴァリアントは、この部隊に入るために来ているようなモノ。戦艦の火力を存分に見せつけ、正面突破を目指す。

 

「この部隊には、アタシのところからも戦艦を出しましょう。長門ちゃんとトラちゃんがメインになるわね」

「正面突破なら空母も欲しいですよね。ホッショさん、そこに入ってもらうね」

「はい、私は対地攻撃も可能ではありますが、そこは専門の方々に任せた方がよろしいでしょう。ならば、正面突破に力を入れます」

 

 火力が高い者から順に投入するようなモノであるため、配分は考えやすい。

 

 2つ目は、港ではなく裏側から回り込む奇襲部隊。最終的には強行軍と合流することになるかもしれないが、内部に入り込むのはこちらが先。

 瀬石元帥が遣わした熊野丸と山汐丸は、こちら側の戦力。陸戦が基本となるであろう戦いであるため、そもそも海戦とは勝手が違うため、それこそ慣れた者がそこに入るべき。

 

「こちらには小柄な戦力が必要ね。深雪ちゃん、わかっていると思うけど」

「ああ、あたし達はこっちだ。多分、島の中でも手分けする可能性あるよな」

「ええ、だから陸戦部隊も戦力はそれなりに投入するわ。そのための特訓でもあったしね」

 

 小回りの利く戦力は優先的にこちら。深雪達カテゴリーWチームは、基本的にはこちら側になるだろう。強行軍が派手に暴れて、裏側からの潜入を図る。

 とはいえ、あちらもそうされることは予想済みと考えるのが妥当。どちらから向かうにしても、激戦が予想される。

 

 そして3つ目は、潜水艦部隊である。裏切り者の潜水艇があったことから、海中から島内に入るルートが確実にある。それを調査しつつ、より内側から破壊工作に出る。

 ここにはうみどりから伊203達が、そして調査隊からはなんと、丁型海防艦の3人が選出される。危険な任務ではあるが、乗り込むまでは行かないにしろ、子供達でも出来る海底調査などが主になる。

 

「総力戦っスからね、全員に役割があります。うちのガキ共も、調査隊としての意地があります。危険なことには首突っ込ませないんで、安心してくだせぇ。アイツらが一番わかってます」

「特異点Wでの調査もやってくれたものね。乗り込むようなことはしないと思うけど、くれぐれも気を付けさせてちょうだいね」

「うす。誰も欠けずに終わらせてこその勝利なんでね」

 

 昼目提督の言う通り、誰も犠牲を出さずに勝利してこそ、今回の戦いは大団円で終われる。どんなことがあっても、命を落としてはいけない。そう、それが老朽化を押してでも出撃しようとする者であっても。

 

 

 

 

 単純明快ではあるが、作戦はほぼ纏まったようなモノ。あとは、何処に誰が出るか。

 




作戦は凝ったモノより単純なモノの方がやりやすいでしょう。今回は、そもそもが手加減しなくてはならない可能性もあるのだから、そこで頭を使っていたら効率悪くなっちゃう。
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