後始末屋の特異点   作:緋寺

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襲撃に向けて

 有道鎮守府に赴いた伊豆提督達、そして通信で話をすることになった瀬石元帥達により、阿手の島襲撃の方針が3つの部隊による同時攻撃ということに決まる。

 

 島に向けて真正面から突撃をする強行部隊。火力を高め、どのような敵が現れても正面突破が出来る程の力で押し潰す。

 その強行部隊の陰から島へと奇襲を仕掛ける陸戦部隊。小回りが利く者達で島内に侵入し、殲滅を仕掛ける。

 そして、海中からの侵入を図る潜水部隊。裏切り者の潜水艇の存在から、海中に経路があると考えた更なる奇襲。

 

 ここからは、何処に誰を配置するかを考える時間となる。しかし、ここにいる艦娘達を全て出撃させるようなことは出来ない。当然ながら、有道鎮守府自体も危険に晒されるし、それ以上に前線に出るうみどり含めた移動鎮守府はより危険である。そのため、出撃も必要だが防衛も必要。部隊はどうしても人員を半々に分ける必要が出てくる。

 

「有道ちゃんのところからは、1部隊出してくれれば大丈夫。それ以外は鎮守府防衛を厳にしてちょうだい」

「わかりました。すぐに選出します」

 

 そこはやはり敵との戦いにはあまり慣れていないところから、アウェーとなる島襲撃よりは鎮守府防衛をメインにしてもらった方がいいだろうと考える。一部の艦娘は借り受け、戦力として使わせてもらうが、それで自己防衛出来なくなっては意味がない。

 

「マークちゃん、そちらはどれだけ出す?」

「いつもの連中は奇襲に入れた方がいいでしょうな。丁型海防艦のガキ共も、潜水部隊に入るのは確実っス」

「残りはおおわしの防衛ってことになるかしらね」

「もしくは正面突破組ッスね。そこに戦力を割いた方がいいと思いますね」

 

 海賊船でも潜入に参加したいつもの3人、神通、響、白雪は奇襲側に加え、残りは防衛と正面突破に振り分けることになると話す昼目提督。伊豆提督としてもそれがいいだろうと同意。

 

「ハルカちゃん、あたし達こだかは、基本防衛に入るよ。代わりに、うみどりも纏めてのつもりで。最後はみんなの意思を聞くけどさ」

 

 タシュケントはボス代理兼艦長として、その方針で仲間と話そうと考えていた。その理由は、うみどりの方が今回の敵に対して臨機応変に対応出来るからというのもあるが、今のうみどりの実情から来るモノ。

 

「ボスがうみどりに残るんだろう? なら、あたし達的にはボスを守るためにも、うみどりを守りたいんだよ」

「丹陽ちゃんを、か。なるほど、そういう理由なら、防衛を任せてもいいかもしれないわ。代わりにうみどりからは少し強めに部隊を選出出来るもの」

 

 うみどりの艦娘達は、何処の誰よりも今回の敵に慣れていると言っても過言ではない。それに、他にはないカテゴリーWという強みもある。その力を多用することはよろしくないのだが、あればあっただけ戦いを優位に持っていくことは可能だ。

 敵と同じ力、むしろ敵がその力を使ってきたから、特異点によってそれを自分達の戦力として迎え入れることが出来ているのが、何とも複雑な気分になるのだが、今は四の五の言っていられない状態。使えるモノはとことん使う。

 

「奇襲部隊には、全員特機を持たせることにするわ。何をしてくるかわからないことを考えると、あって損はないもの」

「『増産』で増えたのは結構あるし、まだそうじゃないのも残ってたはずだよな。トーチカから3つ抜いてるし」

「ええ。それを使いましょ」

 

 特機の説明はまだ有道提督にはしていないため、それを掻い摘んで話す。すると、どうしても表情はいいものにはならない。それもそのはず、特機はそう呼ばれているだけで、実際は忌雷。特異点の煙幕に燻されたことによって変質したモノ。色が違うだけで姿形は完全に忌雷。

 有道鎮守府には、徹底的な忌雷アンチである浜風の存在がある。これは味方だと伝えても、関係なしに破壊してしまう可能性を加味すると、浜風には見せられないか。しかし、最前線には忌雷の製作者、つまりは浜風が始末するべき相手がいるということも忘れてはならない。元凶を根から断つと考えるタイプならば、最前線に行きたがるとも考えられる。

 

「あー……うちの浜風はこれはちょっとNGかもですね」

「やっぱり?」

「あの一件から、忌雷に対して憎しみみたいなモノまで持ってますから。味方だと言われても納得出来ないかも」

 

 深雪的には納得してもらわないと困る部分がある。何せ、今の深雪の両腕は特機に動かしてもらっているようなモノ。気持ちはわかるが、お構いなく電磁波を照射されると、掠めただけで深雪は両腕がダメになる可能性あり。

 要は使い方なのだと教えても、おそらく納得しないだろう。目の敵とかそういう次元を超えてしまっている。

 

 忌雷に寄生されたことで嫌な思いをした者はうみどりにもいるが、ここまでのアンチになる者がいなかったのは幸いだっただろう。むしろ、数人は再寄生までしてしまっている。それどころか、ムーサのために自ら特機ではなく忌雷を生産し続ける高波という存在すらある。

 浜風はその事実を耳にしたらどんな反応をするのだろうか。出来る限り関わらせない方がいいのではないだろうか。その辺りは難しい話である。

 

「そこは私から話をしておきます。うまく納得してくれればいいんですけど……」

「特機無しで奇襲部隊に入るのは危険すぎるわ。常に深雪ちゃんの近くにいるくらいでないと、万が一の時に治療も出来ないし。特機すら拒まれたら、もう何も出来なくなっちゃうもの」

 

 今回の戦いも、ネックになってくるのはやはり忌雷。もう長いこと使われ続けてきて、対策も万全になりつつあるが、それでもまだまだ奇襲性は高く、囚われれば味方が減り敵が増える厄介な代物。今回も多用してくることは予想される。それこそ、島民全員が何かしらのカタチで使ってくるくらいに。

 ただ斃すならば、まだそこまで不安は無い。加減をしなければ、おそらく一方的な殲滅は可能。だが、相手は支配されている島民だと考えると、それは途端によろしくなくなる。

 敵は敵でありながら()()にもなっているようなもの。優しさに付け込んだ、非常に厄介なやり方。

 

「よし、ならアタシは一度うみどりに戻って部隊の選出をするわ。おおかた決まっているようなモノではあるんだけれど、ちゃんと本人にも話しておかなくちゃいけないから」

「ならば我々もついていかせてもらおう。奇襲部隊に参加する者と先に顔を合わせておきたい」

「ええ、お願い。ウォースパイトちゃん、ヴァリアントちゃん、アナタ達も一緒にうみどりに来てもらえるかしら」

「Okay. Meetingは大切だものね。行かせてもらいます」

 

 ここで一度、各々の拠点に戻って最後の部隊の選出に入る。攻めも守りも慎重に考えねばならない段階。既に決まっている者も多数いるものの、そこは相性などもあるため、本人の意思も尊重する。

 

 

 

 

 有道鎮守府から戻った伊豆提督は、早速全員を工廠に集め、大まかに今回の作戦、三方向からの同時攻撃についてを説明した。それには反発する者はおらず、強いて言うなら奇襲を二手に分けた方がいいのではないかとか、正面突破も全部纏めてではなく二段階にした方がいいかもとか、バリエーションを増やすタイプの意見が飛び交う。

 そこは選出される人数次第ではある。奇襲部隊はそれなりに選ばれることもあるため、そちらを二手に分けることはアリだと伊豆提督もその意見をしっかり聞き入れて考える。

 

「全てがキモになるけれど、必要なスキルが少し違うわ。正面突破は火力、奇襲は応用力、潜水部隊は……言うまでもないわね。それに加えて、少しは防衛部隊も残すわ」

 

 タシュケント率いるこだかが基本防衛に努めてくれる点を考慮しても、うみどりの全員が襲撃に参加は少々危険。数人は残り、最終防衛ラインとして力を尽くすことになる。

 

「あちらの航空戦力がわからない以上、防空隊を何処まで攻撃に出すかは考えものね。でも、陸上施設型がいることは間違いないから、航空戦も仕掛けてくるでしょう」

「モノに寄るけれど、私達空母隊だけで拮抗まで持っていけるかどうかにかかっているかと思います。飛行場姫のようなモノが何体も居られると、流石に厳しいかと」

「そうよね……ならやっぱり、防空は二分したい。半分は襲撃に、もう半分は防衛ね。タシュケントちゃんも防空隊を置くとは思うけれど」

「なら、舞亞さんと恵理さんはうみどり防衛がいいでしょう。フルオートの『防空』は、うみどり防衛にはきっと役に立ちます」

 

 秋月の提案で、居相姉妹は防衛に。2人も仲間の居場所を守るための戦いだと言われれば納得も出来るというもの。

 島について詳しい者ではあるが、だからといって最前線に出すには少々怖いというところもある。もう素人という段階ではないにしても、秋月と比べればまだまだ甘いところはある。艦娘としての訓練をしてきた者と、力を与えられただけの一般人の差は歴然。

 とはいえ『防空』はこと護るということに徹するのならば非常に有用。攻めに転じることは難しくとも、うみどりを護るならば、下手したら秋月よりも適しているまである。

 

「逆にトラちゃんは」

「私は前線に出させてもらう。長門と組むなら私と清霜だからね」

「そう! 私は戦艦扱いでよろしくー!」

 

 戦艦は100%最前線の正面突破組。清霜は駆逐艦ではあるが、戦艦と同等の力を発揮する戦装大発がある。その火力は長門とほぼ同等であり、清霜のコントロールは完璧。ほぼ戦艦としての扱いで運用出来るようになるのは非常に有用で、小回りの利く戦艦は他にはない要素。

 トラはやはり『ダメコン』が強い。その能力を消すような敵が現れない限りは、鉄壁を誇る盾となる。トラが前に立ち、長門と清霜を守りながら一斉射をサポート出来る。今ならばウォースパイトとヴァリアントのサポートも可能だ。

 

「それじゃあ、どんどん決めさせてもらうわね」

 

 ここからは順々に任命していく。全員が納得する配備になることになるだろう。

 

 

 

 

 襲撃が始まるのも時間の問題。全員気合が入っているが、不安がないわけではない。戦いが始まってから臨機応変に動ける部隊を構築し、最善の戦術を叩き付けるしかない。

 




現在は部隊構築段階。3つと言いつつ防衛部隊も必要なので4つの部隊でしたね。
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