後始末屋の特異点   作:緋寺

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三隈の分析

 戦艦棲姫の案内で役所までやってきた三隈一行。そこに待ち受けていたのは、出来損ない。そして、その奥から現れた哨戒機配備型の飛行場姫。

 あちらにとっては裏切り者になる戦艦棲姫を罵り、三隈達を見て臨戦態勢を敷く。だが、そんな飛行場姫に那珂はまず話し合いを申し込む、答えは即却下だったが。

 

「お前達は、ここで始末させてもらう!」

 

 先制したのは飛行場姫。正面に手を翳すと、何処から現れたのか艦載機が一気に飛び立った。

 陸戦、さらには至近距離での発艦は、それそのものが質量兵器になる。直撃を受けたら堪ったモノではない。

 

 とはいえ、今は確実に数的優位を持っている状態。その攻撃を確実に避け、取り囲んでしまえば容易に撃破は可能であろう。

 しかし、ただ一人でここに立っているのだから、何か仕掛けてくるとも考えられる。そうでなければ、よほど自信があるか、ただの愚か者。対策も無しに1人でこれだけの人数を相手出来るとは思えない。これまでの敵のことを考えたら尚更である。

 身近にいる達人レベルなら話は変わるだろうが、敵として現れる者の中で、()()レベルはどうにも考えられない。

 

「もう、こういうプレゼントはお断りでーす。投げるのは声援と拍手だけにしてね☆」

 

 那珂の態度は常に変わらない。飛行場姫に最も近い位置にいたのだが、艦載機の発艦は華麗に踊りながら避け、投げかける言葉のノリも変わらない。まずは話し合おう、降参してほしいと、歌うように紡ぐ。

 飛行場姫の視線は、那珂に引き寄せられる。近くでパフォーマンスをしながら、発艦する艦載機は全て軽々回避して、徐々に近付いてくる様は、如何に高次と謳っている飛行場姫であっても、脅威としか思えなかった。

 

 そして、視線誘導をしているということは、他の者から視線が外れるということ。飛行場姫の隙を突くように、那珂とは違う場所から攻めようと向かったのは舞風である。

 アイドル那珂のバックダンサーとして、息のあった戦いを実現させられるのが舞風の力。那珂がしてほしいと思うことをすぐさま察して行動に移す。

 

「見えていないと思っているのか!」

「こっちは1人じゃないからさ!」

 

 だが、飛行場姫はその舞風の動きも完全に把握していた。那珂を相手にしながらも、艦載機は舞風の妨害を始めている。自分も巻き込まれるために空爆をすることはないが、そのものが突撃しつつ、射撃を欠かさない。

 舞風の俊敏性ならばそれを避けることは容易であるが、どうしても前進が難しくなる。

 

「艦載機は私が引き受けるわ。パフォーマンスの邪魔はさせない」

 

 艦載機には艦載機を。動き出したのは加賀である。先程出来損ないの頭を射抜いたように、飛行場姫が発艦する艦載機に向けて矢を射った。放った直後はまだ矢のまま、単に艦載機を射抜くための強烈な一射。

 しかし、一点を狙うような射撃は自由に動くことが出来る深海の艦載機には若干不利。真っ直ぐ進むだけの矢とは違い、急ブレーキも当たり前のようにし、かつ急旋回も出来るのだから、矢を放たれた後に当たらないように軽々と回避。

 

「わかっているわよ。だから、私が引き受けたのだから」

 

 瞬間、矢は艦載機へと変化。深海の艦載機ほど小回りが利くわけではないが、超低空飛行で戦場を飛び回り、敵艦載機を追うように攻撃を仕掛ける。

 これもまたアイドルを盛り立てる演出だと、加賀は次の矢を番える。1機や2機でどうにかなるモノとは最初から思っていないのだ。ここで全てを使い切るわけにはいかないのだが、脅威を脱するためならば惜しまない。

 

「邪魔な連中だ。群れなければ戦えないのか」

「真っ先に出来損ない嗾けておいてよく言うよ。最初の数だけならそっちの方が多かったくせにー」

 

 舞風の痛烈なツッコミ。相変わらずブーメラン発言が激しい。ダブルスタンダードが当たり前なところが、余計に腹立たしいところである。わざとやっているのではないかと思えるほどなのだが、敵はいたって真面目に、本心からこちらを批判してくるからタチが悪い。

 自分が破壊すれば正義、敵が破壊すれば侵略。自分がやれば戦術、敵がやれば卑怯。何処まで行ってもそれは変わらない。

 

「それじゃあ、ちょっと痛いけどゴメンネ☆」

 

 加賀のおかげで艦載機が少しだけ減ったため、那珂がその隙に一気に近付いた。ダンスステップでどんな攻撃でも避け、そして今この瞬間は誰よりも速い動きで、飛行場姫に肉薄。

 目で追っていたのに、突如目で追えない程のステップで主砲を飛行場姫の腹に突きつけていた。

 

 そして、放つ。一切の容赦がない、無慈悲な一撃。それが島民であることはわかっていても、痛みを知ってもらわねば反省もないと判断した。命は奪わない。だが致命傷に近いギリギリを狙った、非常に器用な一撃。

 

「はっ……効かん!」

 

 だが、那珂の砲撃は飛行場姫を傷つけることはなかった。腹に直撃したはずなのだが、まるで弾き飛ばしたかのように砲撃が逸れた。

 

「『装甲』か『ダメコン』ですね。砲撃では傷が付かないようです」

 

 すぐさま三隈が分析。砲撃を喰らって無傷でいられるのは、挙げた2つの曲解くらいしか考えられない。修復の痕跡が見えないところ、また本人が痛みを殆ど感じていないような素振りから、それは『装甲』であろうとおおよその予想はついた。

 

「加えて、『操縦』を持っているでしょう。那珂ちゃん、触れられないように気をつけてください」

「はーい☆」

 

 すかさず触れてこようとした飛行場姫にいち早く反応したことで、那珂はすぐにバックステップ。舞風も触られたらダメだと突撃を一旦キャンセルした。

 

 飛行場姫が持つ曲解は、三隈が予想した通り『装甲』と『操縦』。それと本人の固有の力として、哨戒機を常に飛ばしている。

 高高度からの監視をしている艦載機は、この飛行場姫が扱っているモノが含まれている。そのため、今この戦場を上から常に監視していることになる。那珂に視線誘導をされながらも、上からの目で回り込んでくる者を察知することが出来ていた。

 

「それだけでは少し説明がつかないところはありますがね。では、炙り出してみましょうか」

 

 那珂と舞風が飛行場姫を止めてくれている内に、三隈が疑問に思ったことの解明に入る。

 

 その疑問とは、戦艦棲姫の証言から。この飛行場姫に艤装を装備させてもらい、ここに出撃をしたと話していたこと。

 今戦っている飛行場姫は、明らかに敵味方問わず『操縦』することに特化したような曲解の選択である。高高度での監視を含めたとしても、この工廠で艤装を弄るようなことをしていそうには見えなかった。

 故に、三隈は()()()()()()()()()()と判断した。

 

「ウォースパイトさん、ヴァリアントさん、ガレージに攻撃を。おそらく、()()()()()()()

 

 まだ見えていないだけで、敵は他にいる。しかも、哨戒型の飛行場姫が。追加で何人いるかはわからないが、間違いなくいると言い切れた。

 

 戦艦棲姫は今でこそこの姿ではあるが、あくまで島民、一般人だ。全く同一の個体がそこにいたとしても、それが人違いかどうかなんてわからない。艦娘ですら入れ替わっていたらさっきと違うとは言えないだろう。僅かにでも傷をつけることが出来ていたら話は別だが。

 

「Okay. 撃ってしまってもいいかしら」

「調査すべき場所が失われるのは残念ですが、危険を排除するためには致し方ありません。どうぞ」

「それを待っていた! 撃たせてもらうぞ!」

 

 三隈の許可が下りたことで、まず主砲を構えたのはヴァリアントだ。火力を誇る戦艦が、今はそれを抑えて戦わねばならないという状況には少なからずストレスに思っていたことだろう。だが、破壊してもいいから撃てと言われてしまえば容赦など無くなる。

 

「ヴァリアント、破壊していいとはいえ、あまりやりすぎると戦いに支障が出るわ」

「わかっているさ。だから姉貴は見ていてくれ。僕の一撃だけでいいさ!」

 

 本来ならば建物を壊すことは禁じ手に近いだろう。だがあえて、それを選択したのには意味がある。三隈の予想では、そもそもこの役所そのものが──

 

「Shoot!」

 

 轟音と共に放たれるヴァリアントの砲撃。それは真っ直ぐガレージへと向かっていき、直撃する。

 本来ならばこれで役所ごと木っ端微塵になるだろう。戦艦の火力は並ではない。ただ建っているだけの建物ならば簡単に破壊出来る。

 

 だが、役所はおろか、工廠(ガレージ)そのものが全くの無傷だった。

 

「……なるほど、これは僕でも察することが出来る。別人がそこを守っているな!」

「出てきなさい」

 

 それがわかればウォースパイトも黙ってはいない。ヴァリアントと同じように、ガレージに向けて砲撃を放つ。

 しかし、今度はそうはいかなかった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。壁だと思っていたところから主砲が生えるように現れ、お返しと言わんばかりに砲撃を放ってきたのだ。

 

「What's!?」

「おいおい、そんなのありかい!?」

 

 ウォースパイトとヴァリアントも、流石にガレージが攻撃を仕掛けてくるだなんて思っていなかった。驚きつつもしっかりと回避。とはいえいきなりのことだったため、擦り傷を負うことになってしまう。

 

「ガレージでもなければ、工廠でもない。コレはトーチカ、ですか」

 

 それそのものが攻撃を仕掛けてくるという点から、三隈はこの役所自体がトーチカへと改造されてしまっているのだと判断。しかし、ここにはトーチカ要塞棲姫はいない。

 ならば、ガレージを工廠に、そしてトーチカに『改造』した者がいるということ。そういうことが出来る者がうみどりにいるからこそ、ここだピンと来た。

 

「2人目の力は『工廠』。うちの明石さんに近い能力を持つ飛行場姫がいます。開発よりも改造に特化しているのでしょう。明石さんほど汎用性は高くないかもしれませんが」

 

 うみどりの明石は、工廠内ならばある程度好きなように改造出来てしまうことが特徴である。床を壁にしたり、無理矢理拘束したりと、まるで何処ぞの錬金術をしているかの如く、物質を自由自在に変形改造する。

 こちらの2人目の飛行場姫(仮)は、そこまでの自由度は無さそうだが、改造して兵装を開発するなどのことはしていそうだった。ガレージを工廠に改造してしまうのも、ある意味兵器の開発に等しい。トーチカも同じこと。

 

「……だる、なんでわかるかな……」

 

 そして現れる第二の飛行場姫。姿形は先に出てきたモノと全く同じだが、テンションは少々違う。よく見れば表情からして別個体とわかるほど。

 

 

 

 

 2人の飛行場姫。どちらも難敵であることは間違いない。

 

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