後始末屋の特異点   作:緋寺

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保健室の謎

 護送チームを見送った後、早速行動を開始する調査チーム。情報共有の際に手に入れた保健室と配膳室の情報から、まずはそちらの調査から始める。

 保健室は簡易拠点にしていた教室からは少し離れた場所に、配膳室はそこからさらに離れた場所にあるため、道順からしてまずは保健室の調査にあたる。

 

 現在総勢12名。調査という名目があるため、先陣を切るのは調査隊である響と白雪。だがそれでは危険なこともあるので、学校の廊下という狭い空間でも対処出来るよう、神風や白雲、磯風が護衛のように付き従っていた。特に神風は最前列。先頭に立ち、刀に手をかけた状態で歩いている。

 

「学校の中に敵はいないのかしらね。そうであってくれるとありがたいけど」

「警戒は怠らないよ。索敵は強めにしておかないとね」

 

 神風と響が話している隣では、白雪は無言でタブレットを操作し、周囲の警戒と、何処か潜り込めるシステムが無いかを探している。

 明確な場所を提示されたモノの、それ以外にも手掛かりがありそうならば、それを調べておくことも必要だ。白雪のハッキングは、その痕跡をどうにかして見つけ出そうとしていた。

 

「……ここはかなり強固ですね。入り込めるシステムが全然見つかりません。最初に電源を落とそうとしましたが、殆どがスタンドアローンになっています。独自の電力でコレだけの設備を動かそうと思うと、相当の施設が地下か何処かにありますよ」

「なら、そこに直接触れられれば良いわけだ」

「はい、それなら直にアクセスして破壊出来ます。むしろそこまで近付けるなら物理的に行ってもいいとは思いますが」

 

 深雪達には全くわからない話。そもそもステージが違うのだろうと納得し、素直についていく。

 

 ゾロゾロとついていく面々は、警戒を厳に。廊下は狭いため、こんなところで襲い掛かられたらひとたまりもない。前方を神風達が警戒してくれているのだから、特に後ろに目を向ける。

 室内であるため、電の艦載機(ドローン)を飛ばすのは難しい。そのため、今は廊下の窓から外に出して外の様子を確認している。校内の探索中に外から丸ごと破壊されるだなんてことがあったら目も当てられない。

 

「学校そのものは罠を仕掛けられてるって感じがあんまりないね。あたし達が行った音楽室? はなんか培養管とかあったからおかしなことになってたけど」

「そうなのか。じゃあ、ここはもう捨てる気でいたとかか?」

「かもしれないね。あたし達が勝手に警戒して、慎重に動いているうちに早々に逃げ出そうって魂胆かもしれないし」

 

 グレカーレは話しながらも道々見ることが出来そうな場所を探っていた。前方をスルーしても後ろ側を引っ掛けようとする罠が無いとは限らない。

 それに、あちらの狙いは未だ特異点であることは変わらないだろう。特異点を精神的に追い詰めるために、その周囲を狙うことは非常に多いが、直接狙えるなら直接狙ってくるはず。

 

「でもまぁ、何か仕掛けるならもう少し奥に誘い込んでからかなぁ。突破されるとわかってるならだけど」

「誘い込んでから、か」

「あたしならそうするかなって。この島を爆発させるつもりでいるなら尚更ね。逃げられないくらいに奥まで誘き寄せてさ、で、自分はもう島にはいません残念でしたーってドヤ顔しながら自爆ボタンをポチーだよ」

 

 なんて性格が悪いと思いながらも、やりそうだと何故か納得出来てしまった。

 

「とはいえ、これまで押せるタイミングはいくらでもあったからね。やっぱりまだこの島から離れられてないんじゃないかなぁ。だから出入り口になりそうなところはちゃんとロックしてるんじゃない? そうじゃ無かったらここまでしっかり戸締りもしてないかも」

 

 だとすると、何が理由でここに留まっているのかという話になるが、それは直接聞くのがいいだろうということで話を終わらせた。

 

 

 

 

 保健室。ここは教室よりも狭い空間であるため、調査をする数人だけを入れて、他は廊下で警戒態勢。

 

「中に罠は無かった。あと、少し前に見た職員室よりも埃が溜まっていない。さっきまで使っていたような痕跡もある。情報通りだね」

 

 先陣を切るのは響。脇目も振らずにベッドの方へと向かっていく。

 

 学校の保健室ということで、そのベッドは簡易的なモノ。しかし、それにおかしなところを見つける。

 

「このベッド、()()()()()()()()()()。普通ならあり得ない。動かせないベッドとか、不便すぎるだろうに」

 

 足が床に接合されている。この場所から動かそうとしても、完全に固定されていて動かすことも出来ない。

 そこからその床を調査していくと、それはすぐに見つかった。

 

「うん、やっぱりここが施設への出入り口だ。というか、一方的に施設に入れるための場所、かな」

 

 三隈達が考えていたことが、そこにそのまま存在していたということになる。

 ここに寝かされた島民は、このベッドごと地下に連れて行かれて、そして改造を受けて表にまた出されるのだろう。その時にはまだ艤装は無いから、港の役所で装備させられて出撃というのが今回の戦いの流れ。

 ならば次は、このベッドを地下に運ぶのは何処でやっているのかになる。役所ガレージのように外からは何も出来ず、地下からしか操作出来ないようにされている可能性は充分にあるのだが、一応何か無いかを調査。

 

「普通なら設備点検用に表にも裏にも何かしら動かせるように装置が作られているはずなんだ。表側に無いってなると、余程自信があるのか、警戒しすぎて愚かになっているかくらいしかないかな。あとはまぁ、本当に逃げ道だけは封じてるくらいか」

 

 自分達は逃げるのにねと苦笑しながら語る響。島民は自分達が逃げるための捨て駒であり、撤退は許さない。怖気付いても戦闘を強要し、自分だけは逃げ果せる。相変わらず身勝手なやり方である。

 

「響ちゃん、見つけましたよ。こちらからでも動かせそうなところ」

「流石だね白雪。うん、ちゃんと離したところにある辺り、用意周到というか」

 

 ベッドとは反対側の壁。そこに偽装するように配置された電源盤。掲示板のコルクボードの裏側なんていう非常にわかりやすい場所ではあったが、白雪の目は誤魔化せない。その裏はただの壁に見えるが、そこにさらに蓋が付けられているようである。

 だが、すぐにそれを開くようなことはしなかった。何故なら、今ここにいる者達には『舵』の知識がある。それこそ、この蓋にそれが仕掛けられていた場合、大変なことになりかねない。

 首筋に張り付けなければ洗脳効果は出ないというルールがあるとは限らない。腕でも脚でも、張り付いた時点で終わりかもしれない。指先を傷つけられるだけでもダメかもしれない。

 

「梅、お願いしたいんだけどいいかい?」

「はぁい。少し規模を小さくして『解体』……出来るかな」

「梅、あたしと電がサポートする。やってみてくれ」

 

 正攻法でそれを開けてもいいが、それでは危険かもしれないということで、蓋だけを『解体』することで開こうという寸法。

 だが、梅の『解体』はそこまで器用に出来るかがわからない。これまでは、そこにあるモノを完全に破壊するために使ってきた力だ。一部だけを『解体』することが可能なのか。

 

 だが、ここに特異点の力が加われば話が変わる。かつて出力を上げるために力を託したということはあるが、それとは逆、自在にコントロール出来るように力を託すことも出来るはずだと深雪は考えていた。

 

「じゃ、じゃあ、やってみましょお」

 

 梅がその壁に近付いて、慎重に壁に触れる。壁そのものが罠になっているなんてことがないことは響と白雪が先に調べたため、触れることくらいは可能である。

 

「電、いいか」

「なのです。梅ちゃん、電達の力、持っていってほしいのです」

「お前なら出来るぜ。あたし達が保証する」

 

 その背を深雪と電が支えるように触れた。煙幕が流れ込んでくるような感覚に梅は少しだけ驚いたが、すぐに自分の力がなんだか増したのを感じる。

 

「な、なんか思い通りに『解体』出来そうですよぉ」

「よし、じゃあ頼むぜ」

「はぁい!」

 

 梅がそこから力を発揮。繊細に、しかし大胆に『解体』を始めた瞬間、まずは触れている壁がジワジワと崩れてくる。()()()()『解体』の効果が適用されたことによる劣化である。

 すると、白雪が当たりをつけていた壁の部分に、明確な空間が現れた。表面が剥がれ落ちたことで、その境目の部分が露わになったようである。

 

 しかも、危険な予想は当たっていた。不意にそこに手を突っ込んでいたら、確実に『舵』にやられていた。そのように配置されているのが確認出来てしまったのだ。

 

「うわ、本当に仕掛けてやがる」

「特機に持ってきてもらおう。まだコレだけとは限らないけれど、見つけたモノから処理していかないとね」

 

 蓋に仕掛けられていた『舵』はすぐさま『解体』。こんなモノここにあっても困ると、梅はそれを壊すのには全力を使った。

 コレで安全とは言い切れないが、ここから改めて『解体』開始。蓋の部分が崩れ落ち、その裏側に隠されていた電源盤が現れる。

 

「流石にコレくらいは作ってありますよね。これを『解体』してしまったら、多分ここからは入らなくなってしまいます。なので、ここからは私の出番です」

 

 梅の出番は一旦ここまで。壁を綺麗に『解体』出来たことでホッと安心した後、どうぞどうぞと下がった。

 

「外部接続は……うん、可能ですね。コンソールを外付けにしているのでしょう。ありきたりといえばありきたり。なら、侵入出来ない理由はありません」

 

 タブレットからケーブルを伸ばし、電源盤に接続。そこから軽やかな指先で淡々と操作していくと、急に保健室に異様な音が鳴り響き始める。

 

「な、なんだなんだ?」

「ベッドが……」

 

 驚くのも束の間、床に固定されていたというベッドが徐々に沈んでいくのが見えた。床ごと地下に向かおうとしているのが、誰が見ても明らか。

 

「あとはどれくらい深いかだね」

 

 そんな様子を見ても表情一つ変えない響。それなりに深いかもしれないし、飛び降りることが出来るくらい浅いかもしれない。

 

「……これ、ベッドの床から梅に『解体』してもらってもよかったんじゃねぇか?」

 

 そんな深雪の発言に対し、響は簡単に説明。

 

「保健室ごと地下に落ちてもいいならそれでもよかったかな。忘れちゃいけないけど、私達は艤装を装備してるんだ。いくら基地にされているとしても、自分から脆くしてるんだから、そのまま私達の重さで床が抜けることだってあり得る。それなら、少し時間をかけてでも仕掛けを解いた方が安全だよ。むしろ、その方が早いまである」

 

 そう言われると、深雪はなるほどと素直に納得した。どうしても強行突破しなくてはならないというのなら、全て『解体』が一番手っ取り早い。しかしそれでは危険であることも考えられるため、このように慎重に進んでいるのだ。

 

 

 

 

 沈んでいったベッドの場所は、まるで落とし穴のように床にポッカリ空いた穴となる。そこから下の方は、少し遠いかと思えるくらいには深かった。

 

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