後始末屋の特異点   作:緋寺

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攻略法を見つけよ

 深雪と電が寄ってたかってくる敵をどうにかしている間、先んじて向かってきていた深海棲艦に改造されている秘書艦達との戦いもヒートアップしていた。

 

 4人が4人、うみどりの強者達への対策が万全であり、向かう相手を切り替えることによってどうにか対処しようとしている。

 その中でも特に厄介なのが、『発電』の鈴谷。一撃一撃が致命的を超えており、掠るだけでも相当に厳しい。それを最初は子日とフレッチャーで相手取ろうとしたものの、2人の持つ力では手が足りないということがわかった時点でスイッチ。『凍結』の連携を持つ白雲と磯風、そこに援護のために加わる叢雲と梅で押し勝とうと考える。

 

「なんて厄介な力なの!? バチバチバチバチ鬱陶しいわね!」

 

 叢雲が愚痴るのも仕方がない。近付いても離れても放電による感電を狙い、そこに砲撃まで重ねてくるのだから、回避するだけでも一苦労。

 一応相対している間に一つだけその攻撃の特徴というものが見えてきており、深雪が戦っている軽巡棲姫のように、手を掲げた方にしか放電が飛んでこないことだけはわかっている。また、ほんの一瞬ではあるが充電をしているような()()()()が存在しているため、その瞬間を見極めて回避すればギリギリ避けることが出来る、

 

 しかし、どうしてもそれは紙一重になってしまい、4人の制服はところどころが焦げてしまっていた。放電が掠めているようで、身体にモロに当たっているわけではないからその程度で済んでいるのだが、少しでもタイミングが遅れていたら感電は必至。

 直撃でなくても心臓が止まってしまいかねないのが感電の恐ろしいところである。いくら自己修復を備えたカテゴリーWであっても、これだけは避けねばならない。

 

「この白雲の『凍結』も、直接は不可能……っ」

「鎖なんて電気を通してくれと言っているようなものだ。絶対に巻きつけようとするなよ」

「理解しております。いくらなんでも、そこまで愚かな真似は出来ませぬ」

 

 鈴谷相手に『凍結』を仕掛けようとしても、その鎖を掴まれたらそこから放電され、白雲が感電することが確定する。そのせいで、迂闊に鎖も使えない。

 そのため、今は移動を制限するため足下を優先的に凍らせていた。いくら深海棲艦化により凶悪な力を手に入れているとしても、人のカタチをしているのならば、凍った地面に足を滑らせることもあるだろう。スパイクを履いているわけでもないし。

 

 だが、そこで厄介なのが熊野の『電探』である。周囲に探知網を張り巡らせ、『迷彩』すら効かず、挟み撃ちなども先んじて察知して援護砲撃。白雲と磯風が作り出す足下の凍結も、おそらく『電探』を使用して場所を把握させ、絶対に踏み入らないように伝えている。

 

「こっちはこっちでしんどいね! 子日の場所もバレてるし!」

「撃ったとしても、紙一重で避けられる上に、自己修復も使ってきていますね。砲撃もやたらと熱いです」

 

 対して、『燃焼』の比叡と戦う子日と白雪は、その力を分析しつつも、まだ互角にまで持っていけていなかった。砲撃はなかなか当たらず、掠めたとしても自己修復で即座に回復。そして白雪が話している通り、比叡の砲撃は『燃焼』が込められているせいで熱いという特性を持っていた。当然掠めるのもよろしくないのだが、その熱量のせいで、紙一重の回避をするとそのまま焼けるという大惨事。そのせいで子日は腕に小さな火傷を負っていた。

 

「白雲さんの氷も、すぐに溶かされてしまっています。足下のトラップはもうただの水ですよ。滑らせるなんてこともないですし」

 

 フレッチャーも周囲に目を向けながら戦っているが、比叡の動きはやはり白雲と磯風を意識しているように見えるようである。設置した氷もすぐさま溶かしにいく辺り、『凍結』に対して余程強く脅威と思っているようである。

 

「神風さん! そちらは!」

「なかなか苦しい状況ね、私の刀も通らないんだもの」

 

 フレッチャーが声をかける神風は、グレカーレと響と共に、『ダメコン』の金剛を相手取っている。

 傷が付かないという特性上、神風の神業的な斬撃を以てしても、切り傷の一つもつかないという非常に厄介な敵。

 

 現れた4人の改造された秘書艦は、全員が全員、うみどりを対策している。おそらくこの金剛は、神風対策であろう。どれほどの達人も、傷をつけられないのならば意味がない。

 同様に、比叡は言わずもがな白雲と磯風、熊野は子日、そして鈴谷は近接戦闘を仕掛ける全般。それがガッチリと噛み合ってしまっており、相対する敵を入れ替えようとしてもなかなか上手く行かない。

 

 結局のところ、金剛以外の3人を纏めて相手にすることになってしまっていた。

 

「これだけはそちらに合流させないようにするわ。だから、どうにかしてもらえると助かる」

「……はい、任せてください。ちょっと攻略法見つけました」

 

 そんな言葉を返したのは白雪である。調査隊ならではの凄まじい観察力により、少なくとも1人はすぐにどうにか出来るとフレッチャーに伝える。その手段を軽く教えてもらうだけで、なるほどと納得。

 

「このまま乱戦の方が戦いやすいですね。どうにかしましょう。白雲さんと磯風さんには苦労をかけますが」

「ですね。でも、あの人達がいなければ詰んでいた可能性もありますから」

 

 そう話している間も敵の猛攻は止まらない。比叡を狙っていたのに今では鈴谷のターゲットになっており、放電の予備動作に入っていた。その挙動は、一瞬全身にパリッと電気が走ったような光と音が鳴ること。光っている時点で外に電気が走っているのだろうと勘付く。全身で放電して、それを1箇所に集めて放っていると考えられる。

 何を隠そう、溜め時間について発見したのも白雪である。光ると言っても、この広い空間は地下施設であっても自家発電か何かでやたらと明るいため、それが非常な目立ちづらい。目敏く観察しないと、その瞬間がわかりにくいまである。ただし、わかってしまえば本当だと納得出来るくらいにはわかる。

 

「また比叡さんがあちらに向いてしまいました。振り切ることも難しいですね」

 

 元々は比叡の『燃焼』に白雲の『凍結』が不利なため、戦う相手をスイッチしようと考えたのだが、それでもなかなか抑えきれずに『凍結』を邪魔されている。

 だが、今ならばそれを逆に利用してやろうと画策した。この場は地下、海の上ではないが、地面に『凍結』を使えばそこは凍り付き、比叡がそこに近付けば、『燃焼』により水溜まりになる。流石にそこに踏み入れられれば、その水溜まりすら蒸発してしまうようだが、この場には()()()()()()()()()()()()ということがわかった。

 

「白雲ちゃんの『凍結』は、空気中の水分も凍らせてしまうようですね。だから、何もないところからでも少しは氷を作ることが出来る。そのものずばりは作り出せなそうですが、表面を濡らすくらいなら余裕、と」

「はい、磯風さんのサポートのおかげかと」

 

 鈴谷に注意を払いながら、周囲の動きを見続ける2人。比叡と鈴谷は比較的近い位置で戦っており、それを囲むように仲間達が奮戦するものの、有効打がどうしても出せないでいる。『凍結』が封じられているだけでは終わらず、子日のようにすばしっこくても近付くことが出来ないし、梅の『解体』はそもそもするモノが無い。磯風の『空冷』を直接ぶつけて動きを鈍くしようともしているが、比叡が近くにいるだけでその冷気すら中和されてしまっていた。

 砲撃を処理されるような力では無いため、力を温存せざるを得ない叢雲が砲撃を放っているが、それは全て紙一重で避けられている。位置取りなどは全て熊野が管轄していると考えられるため、あちらを先に始末したいところだが、鈴谷が放電により徹底的に守っているため、前に進む自体が不可能。

 

「あの放電に限界は無さそうですね。何度か使えば打ち止めとなってくれればよかったんですが、艤装から電力を賄っていそうです。それ自体も自己修復されますから、ほぼ無尽蔵みたいなモノですか」

 

 比叡の『燃焼』もそうだが、それを繰り出すための力はほとんど無尽蔵であると考えた。故に、避け続けて燃料を空にするは不可能であると。むしろそこまで待っている余裕もない。

 

「少しだけでも鈴谷さんを凍らせたいところですが……出来るか聞いてみましょうか」

 

 回避しながら移動を開始する白雪。知りたいのは、白雲の力の範囲。

 

「余裕はありませんが、少し教えてください、白雲ちゃん」

「はっ、はい、なんでしょう白雪様」

「『凍結』の力、鎖を握りしめたままでなければ使えませんか。例えば、その力が篭った鎖の先端を投げつけるだけでも凍らせるなんてことは」

 

 回避しながらの会話なのでかなり忙しいことになっているのだが、白雲はその質問に対して少しだけ考えた。

 

「白雲は我が力をこの鎖を伝わせて流し込むことで凍らせております故、手放したところを凍らせるのは厳しいかと」

「それがどれだけの長さでも、ですか」

「おそらくは」

「では、()()()()()()()()()()()

「それは問題なく可能です。それを投げれば氷の礫にはなりましょう」

 

 それも比叡に溶かされて届かないというのがオチだろうがと歯軋りを見せる。

 

 徹底的な対抗策を用意され、時間を稼がれ続けることに、そろそろわかりやすく苛立ちを見せていた。

 水のない場での戦いは、直接相手を凍らせることが勝利の道となるのだが、それを封じられているために白雲は力を持たない者に近い。磯風による『空冷』も、この場が冷えてくれないこともあって非常に不利である。

 磯風もひたすらに砲撃を繰り出して牽制をしているが、位置関係が把握されているせいで掠りすらしないため、徐々に苦しい戦いに持っていかれている。

 

 だが、白雪はそれでも充分だと笑顔を見せた。

 

「やっぱり、白雲ちゃんが一番相性がいいですよ。鎖というところも込みで」

「一体、何を」

「斃せる、ということですよ。アレを」

 

 自信ありげな白雪に、白雲は疑問が尽きなかった。だが、その手段を聞いたことで、やってみましょうと乗る。

 

 

 

 

「やりましょうか。行けるかはわかりませんが」

「確証は無いのですか!?」

「調査隊はトライアンドエラーを繰り返すタイプですから」

 

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