敵秘書艦4人との戦い。『ダメコン』の金剛を神風達が引きつけている間に、残りの3人を斃そうと、白雪が1つの策を立てた。
白雪が考えた策のキーパーソンは白雲。武器として扱う鎖と、『凍結』の力を使って、何か出来るということらしい。その話を聞いたことで、白雲もやってみましょうと乗る。
「他にもやらなければならないことは沢山あります。全員に話をしてきますので、抑えておいてくださいね」
「簡単に仰る。ですが、その策に乗るのもまた事実。早急にお願いいたします」
白雪はこの策を伝えるために戦場を駆け回る。白雲だけが知っていても意味がない。全員の力を合わせることで、初めてこの難敵達を乗り越えることが可能になる。
だが、それを簡単に許してくれるほど甘くはない。白雪の急な行動を見逃さず、鈴谷がすぐさまそちらの方に手を向ける。放電の構え、溜め時間があるとはいえ、それは一瞬のこと。そちらを注視しておかなければ避けるのも難しい一撃。
「させるか!」
そこに割り込んだのは叢雲である。白雪が動き出したのと同時に、鈴谷に対して砲撃を放っていたのだ。
鈴谷の放電は放たれると回避が非常に難しく、注視し続ける必要がある。その上で、そもそも使わせないようにするために砲撃を重ね続けることで、行動を阻害することが一番手っ取り早い対策。
「放電はさせませぇん!」
叢雲と同じく、梅も鈴谷に対して砲撃を重ねていた。少しタイミングがズレているのは偶然ではあるが、そのおかげで、回避しつつの放電ということも出来ない状況を作り出している。
「ありがとうございます。では、策を伝えます」
ボソリと叢雲に話し、その後は梅や磯風、子日やフレッチャーにも思いついた策を伝えていく。
策を聞くことで一瞬それで大丈夫かという顔をし、多分大丈夫と少々曖昧な物言いを返されて余計に不安になりつつも、あの白雲がその策に乗ったということもあり、それくらいやらなければ勝てないかと、全員が乗ることにした。
「危険ではありますが、よろしくお願いします。タイミングは各々で!」
「最後は人任せなわけ!?」
「私は調査隊ですけど皆さんの一番いいタイミングはわかりませんから!」
開き直る白雪に呆れる叢雲だが、それくらい軽い方がやりやすいだろうと、他の者達は
「白雲は確実に決めるために準備を致しましょうか」
「私も冷やすか?」
「お願いいたします。なるべく早く凍らせておきたいので」
白雲はまず、鎖に自らの力を流し込み始める。迅速に『凍結』させるため、磯風の『空冷』も添えて周囲の温度を急激に下げた。
すると、白雲の持つ鎖に霜が降り始めた。確実に冷たくなっている証拠。空気中の水分すらも凍らせて、水のないところから氷を作り出すかのように。
事実、この場には水気はどこにもないのに、空気中の水分を凍らせることで水溜まりが出来る程の『凍結』が可能なのは、普通なら無理だ。それでもそこまで出来るのは、本来の力を特機によって底上げしているからこそ。
白雲の願いは、ただ深雪達と同じカテゴリーWになりたいという本人曰く俗っぽいモノ。その願いを叶えることは容易だが、ここで特機が気を利かせて大きな
「近付かせないよ! 足止め足止め!」
「あわよくば始末も辞さない覚悟で!」
白雲と磯風が良からぬことをしていると勘付いたか、比叡が途端に動き出す。しかし、そちらには子日とフレッチャーが先んじて動いている。戦艦の砲撃は厳しく、『燃焼』により放たれればそのまま炎上までしてくるのだが、直撃さえしなければまだ耐えられるくらいのダメージでしかない。
直接向かわれなければ、大振りなおかげで回避もしやすい。紙一重だと服が燃やされるが、少し大きめに動けば熱いだけで済む。
とにかく近付けさせない。白雲と磯風の邪魔はさせない。それが2人のやるべき道。
足下を狙えば回避しながら突っ込んでくるようなこともせず、素直に足を止めた。それを連続でやれば、ある程度
「放電来ます!」
白雪の観察はさらに1段階向こう側へ。溜め時間について気付いていたところから、放電前のルーティンも勘付いていた。
全身が光る前に、バチバチと紫電が走る。握り拳を一旦自分の胸に当てる。放電のための電気が溜まるからか、少しだけ髪が散る。放つ方向に身体を向け、腕を対象に向ける。砲撃を織り交ぜながらも、ここまでの一連の流れが毎回行われているのだから、もうこれは撃つぞという合図だと判断していい。
白雪が合図をしたのは、胸に拳を当てた時。そこから放つまでに1秒あるかないかだが、叢雲と梅は鈴谷の動きに集中していたおかげで、白雪の気付きを間接的に知ることになる。
「知っちゃえばわかりやすいじゃないの。ああしたら撃ってくれってことね!」
「これでキャンセルになりますかね!?」
「なるわよ。少なくとも、白雲は狙われない」
胸に拳を当てたところで、叢雲と梅の集中砲火。タイミングが少しズレることで、放電の瞬間をキャンセルさせる。充分すぎるほど白雲と磯風を守れている。
「これで如何でしょうか」
「充分すぎるだろう。この場所でよくもまぁそこまで育てられたモノだ」
「皆様の尽力のおかげでしょう」
こうして時間を作ったことで、白雲の鎖には霜どころか確実に氷と言えるほどの結晶が出来上がっていた。おおよそ1mほどの氷の塊。鎖が氷の刃に見える程の、この空間にはある意味似つかわしくない武器。
「次、梅様!」
「はぁい! すぐに行きまぁす!」
ここまでの準備が出来たことで、次へ。梅を呼びつけ、白雲は鎖で出来た氷の刃を長く伸びる鎖から外してもらう。
本来ならば、白雲の鎖は相当に長い。氷の刃はその中でも先端の1mを使っただけ。残りの部分は以降も武器として使うため、鎖のリングの1つだけを『解体』してもらって解き放つ。
「出来ました。白雪様の望む氷の剣でございます」
鎖から外された氷の刃を握り締める白雲。それを鈴谷に向ける。
「参りましょう。これがあれば、彼奴を始末出来る」
「ああ、手を貸そう。邪魔をされるだろうからな」
鈴谷の放電を止めるため、白雲と磯風は、氷の刃を手に突撃を開始する。近付けば近付くほど放電を避けるタイミングがよりシビアになるが、ルーティンがわかっているおかげでタイミングを測ることがしやすくなっている。故に、接近戦もある程度ならば可能になった。
しかし、白雲を注視していた比叡が動かない理由がない。氷が見えたならば尚更である。『燃焼』の力を最大限に活かし、その刃を台無しにするために、自らの身に傷がついてもいいと強引な突撃を開始した。
猪突猛進なその勢いは、子日とフレッチャーでは止めきれない。今の比叡は近付かれるだけでも身体が焼かれる。自己修復が間に合うかもわからない。
「っ、そっち行った!」
子日が叫ぶ。白雲狙いのその突撃は、ある意味鈴谷に向かって走るようなもの。途端に2人を相手にすることになった白雲と磯風だが、比叡の突撃を見て──
「よろしい。これが最後です」
関係なしに氷の刃を鈴谷に振るった。鈴谷も回避しようとステップを踏むが、そこには磯風の他に叢雲もいる。移動先に槍を振るって、移動させないように心がけた。
「動くんじゃないわよ!」
「ああ、そこから動くな!」
砲撃と槍、これによって鈴谷のステップはくじかれ、回避行動がまともに出来なくなる。こうなっては熊野の『電探』によるサポートも役に立たない。叢雲を退かそうと砲撃を放っていたようだが、それすらも見越してきっちり回避。こちらならば紙一重で問題ない。
「行ける……!」
これが刺されば鈴谷は確実に止まる。絶命まで行けるかはわからずとも、再起不能までは確実に行ける。
しかし──
「近いか!?」
比叡の突撃が辛うじて間に合ってしまった。鈴谷に振るった氷の刃が途端に溶け始め、刺さることも斬ることも出来ずに鎖にほとんど戻ってしまい、鈴谷の胴に巻き付くのみとなってしまった。
致命的なダメージを与えられるチャンスを不意にした。白雲も磯風もギリッと歯軋りをする。
そして、逆に与えられたチャンスを逃すことはなく、接近してきた白雲に対して放電の構えをする鈴谷。胸に拳を当てて、白雲の方に向き、その手を上げた。
「でしょうね。そう来ると、白雪様は既に読んでいた。だからこそ、我々はここまでやったのです」
歯軋りはしていたが、しかし白雲は
「回避!」
「おう!」
鈴谷からの放電。バチンと激しい音を立てたその一撃を、白雲も磯風も紙一重で回避した。ほぼ稲光とも言えるそれは、ギリギリで回避しても肌を掠め、感電を誘発するが、ダメージは身体の中までは通らない。
「ぐっ!?」
「この程度ならまだ行ける!」
腕をギリギリで掠めてしまったことで、白雲も磯風も腕が痺れ、大きく焦げ痕が出来てしまう程だった。
それでも攻撃が出来ないわけではない。動けないわけでもないし、自己修復で治る範囲。だからこそ、今回はこれでいい。これくらいのダメージは、白雲も磯風も覚悟の上。
何せ、
「白雪様の策、完了でございます」
砲撃を放った鈴谷は、その一撃によって煙を上げていた。艤装がバチバチと音を立てたかと思えば、小さく爆発まで起こして、そのまま倒れる。
「濡れた機械に電気を流せば、ショートくらいします。白雲ちゃんが水を作ることが出来たから、ここまで出来ましたよ」
氷の刃が溶けるところも想定内。真の目的は、
ショートを起こしてしまえば、そのまま艤装は故障する。『発電』を扱うのならば電気には強い艤装になっていたことだろうが、ショートは電気と共に熱も生む。特に巻き付いた白雲の鎖は強く発熱しただろう。それも込みで、大ダメージを与えることに成功したのだ。
これによって鈴谷の『発電』の脅威は去った。ここからは力業でも勝利に持っていけるだろう。