後始末屋の特異点   作:緋寺

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仲間により開く道

 深雪と電が煙幕により自己強化を始めると、敵は『舵』をばら撒くことで行動を阻害する。仲間達が明確に狙われ始め、重巡新棲姫と飛行場棲姫による妨害も苛烈になっていった。

 重巡新棲姫の『磁力』は『舵』にも有効であり、引き付けと引き離しによって戦場を縦横無尽に飛び回らせ、それを破壊しようにも『装甲』を持つ艦載機によって阻まれ、白雲と磯風が連携して『凍結』させようにも、『燃焼』まで持っているために止められず、ことごとく邪魔をする。

 

 そこで、叢雲が決断した。阿手に使おうと考えていた『標準型』の曲解を、飛行場棲姫に使おうと。

 艦載機の『装甲』と『燃焼』、さらには『ジャム』も消すことが出来るため、邪魔が一気に無くなる。それを狙うため、フレッチャーと共に飛行場棲姫攻略に挑んだ。

 

「私はアレ以外は普通の艦娘よ。これを乗り越えるのも結構難しいわ」

「奇遇ですね。私も丹陽お姉様を模倣しているだけで、割と普通な艦娘です」

「ふふ、確かにそっか。お互い、戦いでは普通な艦娘ってことね」

「はい、ですが……これくらいで心が折れることはありません。やれることは普通でも」

「ええ、その通りよ。あちらは厄介なことばかりをしてくるけど、それをぶち抜いてやるわよ」

 

 叢雲とフレッチャーが拳を突き合わせると、真正面から飛行場棲姫へと向かい始める。艦載機による邪魔が入るのは百も承知。それをどうにか回避しながら、無理矢理にでも前に進む。

 艦載機の数は増え、射撃を行いながらも密集し、叢雲とフレッチャーを近付かせまいと邪魔をし続ける。叢雲は舌打ちをするものの、これならこれでいいと小さく笑みを浮かべた。

 

「ほらほらぁ! あっちにばっかり目ェ向けてていいのかな!?」

 

 叢雲の思惑を知ってか知らずか、同じように艦載機を退かしながら進もうと、グレカーレが行動を起こしていたのだ。勿論、そうしながらも重巡新棲姫の『磁力』や、飛び回る『舵』に注意を払いながら。

 

 今この戦場にいる中では、砲撃を使用しないでの攻撃で上位の力を持っているのは間違いない。神風がトップであるのはわかるが、その次と言われればグレカーレの剛腕だ。

 飛行場棲姫の壊れない艦載機であろうが、それが『燃焼』を持ってこちらを燃やしてこようがお構い無し。相当な力業で艦載機を殴りつけ、そこに止まっていられないくらいの衝撃を与えながら突き進んでいた。

 当然、そんなことをしていたら射撃だって当たる。だが、直撃までは行かず、全てを掠める程度に抑え込んでいた。グレカーレの身体は傷だらけではあるが、しかしそれでは止まらない。自己修復まで考慮して、痛みも全て我慢して、グレカーレは突き進む。

 

「グレ様、援護いたします。『舵』は我々が、グレ様に絶対近付かさせませぬ」

「任せろ。奴の風で軌道を変えるのなら、私の風でも変えられる!」

 

 その後押しをしているのが、白雲と磯風。特に磯風の『空冷』は、重巡新棲姫の扱う『空冷』と同じモノ。艦載機に阻まれようが関係ない。ただ、風を起こすのみ。

 そして、それで軌道が変わるのならば、いくら『磁力』が強かろうが関係ない。グレカーレに向かう『舵』は、全て磯風が吹き飛ばしている。

 

 一方白雲もただ見ているだけではない。『凍結』が通用しなくても、鎖を使わない理由がないのだ。艦載機に対して勢いよくぶつけることで、磯風の『空冷』をより通しやすくするために、艦載機を退かす。

 当然ながら、こちらも射撃を正面から受けることになるが、当たり前のように回避しながらの行動。白雲は神風から学んだ基礎が完璧に身体に馴染んでおり、紙一重で避けながらも鎖の勢いは全く衰えさせていない。

 

「テメェ、あいつらの邪魔するつもりか」

 

 それを重巡新棲姫が黙ってみていることはないのだが、今、その前には『磁力』も『空冷』も『ジャム』すら通用しない特異点が2人もいる。意識がグレカーレ達の方に向いたならば、それを隙と見做して攻撃を仕掛けるのみ。

 

 それに、電の目には1つ、見えていることがある。

 

「本当にその持っているモノを中心にしか『磁力』は出せないのですね。引き付けるのも、引き離すのも、全部それが真ん中にあるのです。なら、風で舞い散っても軌道はある程度読めるのです」

 

 艤装をも引き寄せる程の『磁力』を発生させている以上、風で飛ばされるような『舵』はその『磁力』にすぐさま反応して急激に軌道を変える。それこそ、直線的に。

 また、電は重巡新棲姫の『磁力』がON/OFFでのみ管理されている事も看破した。引き寄せるのも引き離すのも、力加減がない。毎回最大出力。対象を選んでスイッチ、というだけである。

 頻繁にスイッチを入れたり切ったりしていることでランダム性を持たせているように見せかけているが、その実、その挙動は読もうと思えば読めるモノだった。

 

 結果、舞い散る『舵』は、電がそのことごとくを撃ち落としていった。挙動が読める、そして()()()()()()()()()、それくらいは可能だった。引き寄せられず引き離されないのならば、電には余裕がある。

 一つだけ恐れたのは、砲撃の衝撃ですら挙動を変えるかもしれないということなのだが、そこは電のテクニックが光る。逸れないように、毎回ど真ん中を撃ち抜くような砲撃で、確実に破壊していった。

 強いて言えば、その砲撃の先に仲間が引き寄せられないかという心配があった。だが、そこをカバーするのが深雪である。自分が強く目立ち、消し飛ばす砲撃で牽制を仕掛けることで、電の邪魔はさせない。飛行場棲姫には仲間が向かっているため、艦載機による邪魔も大幅に減っている。

 

「手近な『舵』はっ、全部解体、しましたぁ!」

「流石だぜ梅!」

 

 そして、狙われていた梅も、何とか舞い散る『舵』を確実に着実に減らし続け、『解体』を完了させている。払い落とし、時には直接手に取り、機能させることなく破壊を続けて、脅威を取り払った。

 だが、ここまでさんざん『解体』をし続けているため、梅自身も消耗している。顔色が悪いというわけではないのだが、大分汗をかいていた。

 集中狙いなんていうのも経験は無かっただろう。何とか潜り抜けたが、精神的な消耗はかなり激しい。

 

「でも、まだまだ『解体』しないといけないモノは、ありますよねぇ」

「無理すんなよ!」

「そうよ、無理する必要はないわ! だって、まずは片方を、止めてやるから!」

 

 艦載機の群れを強引に突破しながら、叢雲が叫ぶ。梅が狙われていた()()()で、『舵』の脅威は叢雲にもフレッチャーにも殆ど届いていない。ただただ飛行場棲姫の力が厄介なだけ。

 それも越えてしまえば、ここからは実力勝負。叢雲には槍があり、フレッチャーには丹陽から引き継いだ技がある。艦載機によって身体はボロボロにされているが、紙一重を続けてきただけ。致命傷は一つもない。

 

「それに、いるでしょ!?」

「にゃっほーい!」

 

 さらには、『迷彩』によって姿を消していた子日も参戦していた。阿手には『電探』か何かで姿を見破られ、すぐさま対策を取られていたが、飛行場棲姫には見えていない。

 

 これは、阿手は『電探』で得た情報を仲間に展開していないということにもなる。つまり──

 

「あの人、君に情報くれないんだね。本当に自分勝手だよ、ねっ!」

 

 姿が見えていなくても『ジャム』は効いてしまう辺り、一定の範囲に入れば知覚出来ていなくても効果は発揮してしまうらしく、子日の主砲は使えない。ならばどうするかと言われれば、やることは単純明快。見えない状態で飛行場棲姫を蹴り飛ばすのみ。

 ただし、艦載機に『装甲』が使えるならば、自分にも使えると考えていい。見えないところからの不意な一撃であっても、それによって傷付くことはなかった。とはいえ、蹴られたという事実はあるため、飛行場棲姫は体勢を崩す。

 

「自分だけわかってればそれでいいってことでしょ。そんな人の言うこと聞いてて楽しい?」

 

 そして、見えないことをいいことに、手を包む主砲を取り外し、内部のワイヤーを使って飛行場棲姫を縛り付ける。あちらには『燃焼』の力もあるため、ワイヤーは焼き切られてしまうかもしれないが、子日のワイヤーも特殊なモノ。簡単に千切れることはない。それこそ、やろうと思えば敵の首を捩じ切ることだって可能である。今は胴体に巻き付いているだけのため、そこまでの惨事にはならないが。

 

「ナイスぅネノヒ! 絞めあげちゃえ!」

「多分無理! 『装甲』のせいで食い込まないから、動き止めるだけで精一杯だし、そもそもめっちゃくちゃ熱い!」

 

 やはり『燃焼』の力は使われている。熱伝導で子日自身が燃やされているようだった。見えていないが、腕には既に火傷が出来始めている程である。

 

「でも、それだけしてくれたのなら、道は開いたわ」

 

 縛られたことによって、艦載機のコントロールに穴が出来た。それを見逃す仲間達ではない。

 真っ先に気付いたのはフレッチャーであり、叢雲の道を開くため、殴り、蹴り、妨害をこじ開ける。丹陽の力を使い、最高峰の技術を駆使して、射撃も紙一重で避け続けて、それを成功させる。

 そして叢雲も、槍を振り回しながらその道を突き進んだ。今の叢雲は集中力も凄まじく、まるで通るべき道が見えているかのように足取りが軽い。二の腕や腿を射撃で撃ち抜かれかけているが、表情一つ変えなかった。

 

「ようやく触れたわね、まずはアンタよ」

 

 そして、拘束された飛行場棲姫の胸元に拳を叩きつける。『装甲』により槍では刺せないぞと油断していた部分はあるだろう。だが、ここにいる敵は、叢雲のその力を知らない。

 

「熱いわね、でも知らない。どうせそれも無くなるわ」

 

 叢雲の腕が焼ける。だが、関係ない。『装甲』で傷つくこともない。だが、関係ない。その手で触れることが出来ているのならば、それ以上何をされても、何も関係ない。

 

「アンタに子日の場所を教えない、こうなっても助けてすらくれないご主人様を呪いなさい。いい加減に、アンタの力を全部、否定する! ()()()()()!」

 

 発動する『標準型』の曲解。ありとあらゆる力を、全て無効化する力。叢雲の脚がふらついたが、つまりはそれが上手くいったということに他ならない。

 

「かっ……!?」

 

 飛行場棲姫が途端に苦しみ出す。叢雲の拳が効いたわけではない。現在進行形で身体に食い込む子日のワイヤーが、『装甲』が失われたことにより肌に傷をつけ始めたのだ。『燃焼』も失われているため、子日へのダメージは失われた。

 

「艦載機壊せるようになったよ!」

「凍らせることも可能に!」

「……よし、アンタはこれで終わり……そのまま子日に締め付けられてなさい。子日に慈悲があれば、死なずに済むかも、ね……」

 

 ニヤリと笑って叢雲はその場に膝をついた。

 

 

 

 

 これにより飛行場棲姫は何の力も持たない深海棲艦と化した。そうなって仕舞えば、もう敵ではない。

 

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