うみどりとは違う同業者、みずなぎとうみねこが島で合流。みずなぎの梨田提督と秘書艦玉波、うみねこの艦娘提督である多摩は、挨拶を済ませるとすぐに作業のために自分の艦へと戻っていった。
このためにわざわざうみどりまで来てくれたのかと少し驚きつつも、こういった交流が出来ること自体がレアなため、少し時間を使ってでも面と向かって会っておきたいと考えたようである。
「さぁ、それじゃあみんな、作業に取り掛かってちょうだいね。みずなぎとうみねこの艦娘達に、作業方針を教えながらになると思うけど、大丈夫よね?」
伊豆提督の問いに、勿論だと返すうみどりの仲間達。ここまで後始末作業としては素人同然である者達にもいろいろと話をしてきたのだから、玄人に教えられない理由がない。ただし、この海域は普通の後始末とは違うところも多々あるため、そこを伝えながら作業をしていくことになるだろう。
基本的にはやり方は同じ。しかし、本来よりも慎重に行かねばならないところは多くある。
「当たり前だけれど、誰も傷つかないように進めていきましょう。今回ばかりは常に気を抜かないようにね」
同業者に被害が出るなんてあってはならないこと。ましてや、手伝ってもらっているのだから、より確実に、より安全に進めていきたい。
深雪と電は昨日と同じように海中へ。まずは港近海に向かい、他のチームの海中チームと合流することになる。
おおわしからはいつもの丁型海防艦と、潜水鮫水鬼。しかし、昨日とは確実に違うところがあった。
「お、No.4のペットじゃ無くなってんじゃねぇか」
スキャンプが言う通り、今の潜水鮫水鬼には、第四号海防艦の潜水艇に繋がれた
「……あたいも自分のバカを理解すること出来たんで」
まだ昨日のトラウマからは立ち直れていないか、伊203の方には目を向けることが出来ていないが、一晩経っても考え方が変わっていないということは、本当に改心することが出来たということ。やっぱり特異点が悪い、なんて考え方にはならず、今ここでも深雪に対して頭を下げるほど。
「改めて考えても、やっぱ特異点が悪なんて考え方おかしいと思いました。あたい、他の連中とも話したんですけど、誰も認めちゃくれなくて……でも、あたいだけはまず理解して進みます」
「それだけでも嬉しいぜ。あたし達は、今は出来ることをやっていくしかないからさ、それを見てもらって、わかってもらえるならそれでいい」
「……もう少し頑張ってみます」
かなり難しいことだろうが、他の『舵』無しカテゴリーYの説得を引き続き進めてくれると語る。そのおかげで昼目提督からの信頼も得ることが出来たらしい。
「ああ、あたいのことは、これからも鮫って呼んでくれればいいんで」
「人間としての名前もあるだろ」
「一度自分をリセットしたいんで。それに、ほら、そいつがそうやって呼んでくるんで、定着しちゃってるんですよ。あっちの強面の提督からも鮫って呼ばれてます」
それとは勿論、第四号海防艦である。あくまでも鮫としか呼ばない。そこから、名前に拘りが無くなっている。おおわしでも鮫と呼ばれているとのこと。
当人としては、過去の自分の愚かさから決別したくて、あえて鮫呼ばわりを受け入れ、むしろその方が新しい自分になれていると実感出来ているらしい。むしろ改心する前から鮫だったのだから、鮫も払拭したいと思う気がするが、と深雪は思ったが、鮫の考え方を尊重する。
「わかった。じゃあ、この作業中は鮫って呼ぶぜ」
「はい、よろしくお願いします。……コードネームっぽくてかっこいいし」
「あれ、お前思ったより余裕ある?」
ひとまず鮫も戦力としてカウント出来るようになったことを喜ぶと、今度は全く別方向から潜水艦がやってくる。集合場所はこの港近海と伝えていたからだろう、最初から10人ほどが纏まっており、こちらが用意出来る潜水艦よりも多いというありがたい話。
「わ、本当に深海棲艦も一緒に仕事してるでち」
「ビックリ、ですって」
その筆頭と思われる2人が、代表として深雪達の前まで向かってきた。後始末屋として穢れ対策として全身をウェットスーツに身を包んだ潜水艦は、一同の前まで来ると、小さく頭を下げる。
「うみねこ潜水艦隊のリーダーやってます、伊58です、呼びにくいだろうから、ゴーヤでいいよ」
「リーダー補佐の、呂500、ですって。ろーちゃんって、呼んでね」
伊58と呂500の2人は、うみどり潜水艦隊に目をやって、ああと納得したように伊26に視線を合わせる。
「ニムちゃんがここのリーダー?」
「えっ、ちょっと違うかなぁ。ニム達はリーダーとかそういうの決めてないから」
「いや、それでいいと思うぜ。ニムが纏め役だ。フーミィも言うこと聞くからな」
伊26が少し恥ずかしそうにするが、伊203もそれでいいと頷く。速さ重視で暴走気味な伊203すら止められる伊26は、ある意味でここのリーダーとも言えるだろう。スキャンプすらこう言って認めているのだから、相当なモノである。
「ゴーヤ達うみねこ潜水艦隊は、ニムちゃんの指示に従うように、多摩ちゃんてーとくに言われてるからね。いろいろ教えてもらえる?」
「教えてほしいですって!」
「ん、わかった。じゃあ、まずはニムがみんなに教えるところから始めるね。深雪ちゃん、電ちゃん、まずは先に行って煙幕撒いてもらっていいかな」
「ああ、それで煙幕が薄いところがあったら呼ぶわ」
当初は伊26と共に煙幕を撒いていき、『ソナー』によって空洞などが無いかを調べるように進めていくつもりだったが、ひとまず撒いていくことを優先することになった。それこそ、阿手の完全否定を早急に進めなければ、作業中に残された罠にかかってしまう可能性だってある。海底の安全を確保してから、同業者に手伝ってもらった方がいいだろう。
そんな深雪と電に伊58は目をやり、少し驚いた表情をした。
「は、話には聞いてたけど、駆逐艦が深海棲艦の格好して潜水艦と同じように出来てるのって、凄い違和感あるでち……」
「だよなぁ。あたし達も、出来るって知ったの昨日だからな」
「作業はちゃんと出来ているので、安心してほしいのです」
「ま、まぁ、心配はしてないでち。あのうみどりで活動してる同業者なんでちから。いい仕事、期待してるでち」
こちらも特異点に対しては好意的。むしろ、特異点云々よりも、仕事が出来るかどうかの方を重要視している。見た目に惑わされないというのはありがたい話であった。
「まぁ、見た目とか全然気にしないよ。だって、ここにいるろーとか、その筆頭だから」
「どういうことだ?」
「この子、昔はめっちゃくちゃ大人しくて、まさに借りてきた猫みたいだったんでち。でも、今はご覧の通り。改装で見た目も結構変わるから」
「でっちがいい人だったから、ろーちゃんお仕事に慣れましたって」
呂500は艦娘の中でも有名な、改装前後で大きく
ともかく、見た目どうこうより、中身を重視するというのはそこから来ている。うみねこ潜水艦隊は、艦娘が提督をやっているだけあって、スペック以上に実力主義。戦力として誰かより劣っていたところで、後始末作業に貢献出来るかどうかで全てが決まっている。
そこでリーダーを張っている伊58は、後始末屋としても相当な実力者であり、リーダー補佐を勤めている呂500は匹敵するほど努力を重ねてきたのだろうと思われる。
「ともかく、今日からよろしく頼むぜ。マジで仕事が多いから」
「うん、ここに来るまでに少し見回してきたけど、こんな規模の後始末、うちの海域でも無かったでち」
「うんうん、今までで一番大きかったのでも、ここまでじゃ無かったですって」
「陸上施設型の後始末でも、ここまでじゃあ無いでち。これは……やり甲斐があるでちねぇ」
ここでわかる伊58の性質。少しワーカホリック気味であり、沢山の仕事を目にして、燃え上がるような性格のようである。そんな伊58でも嫌がるような仕事はあるようだが。
「よし、それじゃあニムちゃん、説明お願いするでち」
「りょーかいです! お仕事始めましょー!」
ここからは、非常に頼りになる同業者も交えての作業となる。後始末の経験があるというだけでも作業効率が一気に上がり、昨日までと比べれば片付くスピードは段違いと言えるようになるだろう。
「よし、それじゃああたし達は早速煙幕撒きに行くか」
「なのです!」
深雪と電もやる気充分。作業する者達の安全を確保するため、まずは早いところ島の周囲を煙幕で覆い、罠を全て消し去っていった。
この特異点の作業、知らない者には重要性が全くわからないのだが、伊26からの説明によって、伊58筆頭のうみねこ潜水艦隊はゾッとすることになる。特異点のおかげで自分達は安全に、不安なく作業が出来ると知るや否や、作業中の深雪と電に礼をするように頭を下げる者まで現れる始末だった。
作業はひたすらに進んでいく。同じことの繰り返しかもしれないが、昨日よりは明らかに残骸の減り方が速くなり、作業が進んでいると実感出来るモノだった。
しかし、それはあくまでも目の前だけ。この島は、まだまだ大きい。
うみねこ潜水艦隊、リーダーはやはり潜水艦といえばこいつ、ゴーヤこと伊58。その相棒は、やはり二次創作でもカップリングが多い、ろーちゃんこと呂500。この組み合わせは鉄板。