島の地下施設を調査しているおおわしの部隊。その筆頭とも言える、響、白雪、神通の3人組は、何やら怪しい壁を見つける。目で見たところではわからなかったが、触れて初めてわかった
そこから指紋認証か何かを疑っているのだが、そもそもそこが何に繋がっているかはわからない。白雪がハッキングしようにも、接続出来そうな端末も見当たらない。
「私の手の高さでざらついたということは、阿手自身が触れていたわけではないのかな」
「そうですね。響さんは小柄な方ですから、大人が触れたという高さでもありませんね。いや、逆にフェイク?」
「大人でも、手を下ろして触れればその高さですから、あえてそうしている可能性も」
3人で様々な憶測が飛び交う。だが、話しているだけでは何も始まらない。まず早速響が壁をノックし、音から確かめ始めた。
「内側に空洞があるようには聞こえないけど、壁が厚いのかな。余程厳重に何かを隠している?」
「なら、砲撃などでも傷つかないようにしているのでしょう」
「流石に壊すは難しいということだね」
神通は砲撃の準備もしていたが、壁が薄ければ薄いでその内側にあるモノを破壊してしまう。厚いなら厚いで意味がない可能性がある。今回は後者であるため、主砲を下ろした。
「私達ではおそらく開くことが出来ない認証装置。ハッキングを仕掛けようにも、接続端子がまるで見つからない」
「遠隔ハッキングをしようにも、案の定ここはスタンドアローンみたいですね。何処で整備しているのかもわかりません」
「その上で、破壊も難しくしている……というのなら、ここが一番怪しいということになりますね」
それだけ厳重に隠しているということは、これまででも特に重要なモノが隠されているとしか思えない。
だが、今のこの施設には水爆が設置されているのだ。それで爆破してもいいように造られているとは到底思えない。そこがシェルターのようにされているとしても、真上で爆発されたら流石にここまで木っ端微塵だろう。
それでもここにこのようにしているということは、緊急事態が起こらない限りは誰にも触れられたくない、破壊など以ての外ということも考えられる。
「……これまでの研究成果、かな」
「あり得ますね。おおよそ30年分の」
「ならば、開かねばなりません」
より一層入念に付近を調べていく3人。そして、発見する。
「裏切り者の鎮守府にもこういう仕掛けがあったんだっけ」
「入口の逆側にスイッチですね。でも、高さが微妙なのは……」
「阿手自身の高さに合わせているからだろうね」
ざらついた壁の反対側、その床に近いくらいの壁に、さらにざらついた壁。その位置からして、PT小鬼群と化した阿手の身長だとちょうどいい高さである。
「あちらの壁は、奴が使っていた集積地の高さになるわけかな」
「そうですね。ちょうどいいとは思えませんが、2人がかりでなければ開かないということですね」
試しに響と神通でそのざらついた壁を同時に触れてみる。しかし、当然ながら反応はない。
「生体認証は当然入ってるか。でも、こちらが阿手の高さなのだとしたら」
「制御用の端末くらい、近くにあるでしょうね。こんな感じに」
その壁の真下、床の部分に、全く違和感なく配置された蓋。注意深く見ても、その境界線がまるで見えないような完璧な隠し具合。調査隊でも見逃すレベルの、精巧な擬態。
「ここからアクセスしましょうか。有線でなら確実にハッキング出来ますから」
「任せたよ。でも、気をつけて」
「はい。その辺は特機に任せます」
安全のために1人1体持たされている特機。白雪についている特機は、任せろと言わんばかりに床に降り立つと、その床の蓋を開きつつ、内側に何もないことを確認し、端末を露わにした。
「ありがとうございます。それでは、腕の見せ所ですね」
「そればっかりは白雪頼りだからね」
タブレットでその端末に直接繋ぎ、物凄い速さで操作。少し顔を顰めたようだが、内部へと潜り込み、無理矢理にでもこの隠し部屋であろう場所を隠す扉にアタックを仕掛ける。
「余程見られたくないんでしょうね。かなり厳重です」
「君でも難しいかい?」
「はい。でも、
少しして、触れられる壁とはまた違うところが音を立て始める。開くまでは途切れ目すらわからないほどピッタリとくっついた壁だったのだが、開いてみればそこは引き戸であったとわかる。
しかし──
「すごいな、ここまで厳重だと、逆に感心するよ」
そこに現れたのは更なる扉。しかもこちらはアナログ式。まるで金庫のような造りであり、ダイヤルキーなどがいくつも設置されていた。
「まぁ、これなら私の出番だ。デジタルは白雪に一任するけどね」
「お願いします。アナログはどうも苦手で」
「適材適所さ」
続いて響が前に出る。今回のアイテムは聴診器のようで、それを扉に当てながらダイヤルをゆっくりと回し始める。
白雪と神通は、それを固唾を呑んで見守る。だが、失敗のことは全く気にしていない。万が一、この扉の向こう側から響に危害を加えるような何かが出てこないことを祈っているのみ。
「……よし、1つ目。次」
いとも簡単に1つ目の施錠を開放。だが、ロックは3つある。残り2つも迅速に開いていく。
「相変わらず、素晴らしい手際ですね」
「私にはこれくらいしか取り柄が無くてね」
「謙遜はよろしくないですよ」
そんな和やかな雰囲気の中で、2つ目、3つ目と施錠を開放。そしてついにとびらが開く……と思いきや。
「重たっ……艤装のパワーアシストを使ってもコレかい」
「深海棲艦のパワーの方が強いということですかね」
「かもしれませんね……駆逐艦では難しいかもしれません」
その扉が、異常に重かった。ロック以外でも、物理的に開きにくくする程の周到さ。
しかし、ここまで来たらもう開くだけ。神通が扉のノブを握ると、ふっと小さく息を吐いて思い切り開いた。日頃の鍛錬がこういうところで発揮され、軽巡洋艦とは思えないくらいの膂力を発揮する。
「流石。私達では足りないところを補ってくれるのは、いつも神通さんだ」
「むしろ私はこれくらいしか取り柄がありませんからね。今回は隠し扉の位置もわかりませんでしたし」
「それだけ阿手が入念だったってことさ。パワーだって立派な取り柄だよ。私達に無いモノなんだから」
適材適所と何度も言っている通り、調査には時折力業が必要になることもあるため、神通はどちらかと言えばそれが専門。注意力も3人の中ではトップだが、残念ながら今回はそれが上手く発揮することはなかった。
開いた扉の先に存在したのは、まさに求めていたモノだった。
「スパコン……ここにこれまでの研究成果を入れていた可能性は高いですよね」
あまり広くない部屋に鎮座していたのは、ほぼそこを埋め尽くすくらいのサイズのスーパーコンピュータ。電力が今でも供給されているあたり、余程重要ということだろう。
白雪がすぐさまタブレットを接続する。内部にアクセスすると、画面内に夥しい量のデータが現れる。ご丁寧にも、むしろこういうところだけは几帳面に、フォルダには年月日まで記載され、自身の研究結果を並べていた。
「うわ……これ、本当に30年分あるかもしれませんよ……。ファイル数……1万を超えてます」
「凄まじいね……でも、データとして管理しているなら、これのコピーをとって脱出はあり得たわけだ。この施設を爆破して、これ自体が失われたところで痛くなかったと」
「これを消さなかったのは、使わずに済むならまだここに居座る気でいたからでしょうね」
話しているうちに、白雪はその膨大なデータを一時的に全てコピーすることを試みる。しかし、あまりにも容量が大きく、タブレットでは全て持って帰ることは不可能と判断した。
しかし、わざわざここまで来てデータを精査していくのも時間がかかる。出来ればここで、要所を判定して、重要なモノだけを持ち帰りたい。
「一つずつ見ていくなんて、確実に時間の無駄です。うまく選定出来ればいいんですけど、流石に万を超えるデータを選定するのにも時間がかかります。なので、この場でAIを組み上げようかと思います」
ここで白雪が思い付いたのが、データの取捨選択をすることが出来るAIの開発。自分の手を使わずとも、膨大なデータを全て走破し、自分達の欲しい情報のみをピックアップする、サポートAIを。
「そんなこと、すぐに出来るのかい?」
「勿論。こんなこともあろうかと、土台は既に出来上がっています。これまではそこまでのことが必要なかったので持ち出しませんでしたが、今回はそんなこと言ってられません。これは流石に量が多すぎます」
言いながらも指はもう動いている。このスパコン内部を全て見て回る、ただそれだけで充分な、ここでの相棒は、あっという間に作り上げられた。
「とても単純ですからね。検索のシステムにAIのシステムを組み込んだだけです。対話型とかそういうシステムは不要ですから。では、
曖昧ではあるが、膨大なデータの中から、特に重要であろう内容がありそうなフォルダをゴリゴリ検索し、片っ端からコピーしていく。しかし、全てをコピーするわけでもなく、AIが取捨選択して、限られたデータを見つけ出し、それを持ってきているだけ。
「時間はかかりますので、少々お待ちを。もしかしたら、これだけでは済まないかもしれませんし」
「だね。ここが終わっても、調査は続けた方がいいだろうね」
スパコンがここ1つとは限らない。他にもデータを分けて保管している可能性も考えられる。
「まずは1つ目です。他にもどんどん探していきましょう」
発見された阿手の研究データ。他にも何かあると考えているが、まずはコレだけでも大きな収穫である。
膨大すぎる量のデータからある程度検索をかけて情報を絞り込むのは、ちょっと星の本棚(仮面ライダーW)っぽさある。